フリーランスが家族に専従者給与を払うと年間38万円以上の節税になるケースがある一方、給与額が少ない場合は配偶者控除を失うだけで損になります。国税庁の制度解説をもとに、使うべきでない5条件と損益分岐点を解説します。

目次

この記事でわかること

年間給与38万円未満なら配偶者控除を維持した方が手取りが増える理由と、使わないほうがいい5つの具体的条件を把握できます。損益分岐点の試算方法を10分で実行できるようになります。税務調査で否認されない3つの要件を整理し、記録管理の実務手順を習得できます。

この記事の結論

専従者給与は「使えば必ず得」ではありません。年間給与が38万円未満の場合や、家族の業務実態が6か月以下の場合は、配偶者控除・扶養控除を維持した方が手取りが増えます。給与額・事業利益・家族の勤務実態の3点を先に確認してから判断することが、税務リスクを避ける最短ルートです。

今日やるべき1つ

家族への年間給与予定額を計算し、配偶者控除(38万円)と比較してください(10分)。

状況別ショートカット

状況読むべきセクション所要時間
使わないほうがいい条件を知りたい専従者給与は5条件で使わないほうがいい3分
配偶者控除とどちらが得か比較したい専従者給与と配偶者控除は38万円で分岐4分
自分のケースを診断したい専従者給与の採用を3分で診断3分
税務調査リスクを把握したい専従者給与の否認は3要件で防止4分
実際に導入する手順を知りたい専従者給与は5つの仕組みで管理5分

専従者給与は5条件で使わないほうがいい

「家族に給与を払えば節税になる」という話は広く知られています。ただ、自分の状況を確認しないまま導入すると、むしろ税負担が増えるケースがあります。使わないほうがいい条件を先に知っておくことが、判断ミスを防ぐ最初のステップです。

年間給与が38万円未満なら配偶者控除の方が有利

専従者給与を採用すると、配偶者控除(最大38万円)と扶養控除(38〜63万円)が同時に使えなくなります(国税庁「配偶者控除」)。たとえば年間給与を24万円に設定した場合、失う配偶者控除38万円の方が大きくなるため、課税所得はむしろ増加します。給与として経費計上する金額が、失う所得控除の合計額を上回らなければ、制度を使う経済的根拠がありません。節税効果の前提となる「最低ライン」を超えているかを最初に確認してください。

事業利益が年間300万円未満では効果が薄い

事業所得が低い段階では所得税の税率自体が低いため、給与を経費にしても節税額が小さくなります。年間利益が100万円の場合、仮に給与を60万円経費にできても、税率5〜10%の節税額は3〜6万円程度です。一方、青色申告の届出・源泉所得税の計算・給与台帳の整備という事務負担は、利益水準に関係なく毎年発生します。事務コストを金銭換算したとき、節税額を上回るケースがあることを見落とさないでください。

家族が年間6か月以下しか従事しない場合は要件を満たさない

青色事業専従者給与の適用には、「その年を通じて6か月を超えて従事している」ことが必要です(国税庁「青色事業専従者給与に関する届出」)。パートタイムや育児・介護で業務時間が限られている場合、年間の従事期間が6か月以下になることがあります。要件を満たさないまま給与を経費計上した場合、税務調査で全額否認されるリスクがあります。家族の実際の稼働スケジュールを月単位で確認してから判断してください。

家族が別の勤務先に雇用されている場合は専従者になれない

「専従者」とは、その事業に専ら従事している人を指します。家族が他の会社に正社員・パートとして雇用されている場合、原則として専従者の要件を満たしません(国税庁「青色事業専従者給与に関する届出」)。たとえば配偶者が週3日パートに出ている状況では、事業への従事が「専ら」とは認定されない可能性が高くなります。複数の収入源を持つ家族へ給与を支払いたい場合は、実態に基づいて税理士に事前確認してください。

白色申告者は専従者給与を経費計上できない

白色申告では、家族への給与そのものを経費にする制度は存在しません。代わりに「事業専従者控除」として、配偶者86万円・その他の親族50万円を所得から控除できます。この控除は届出不要で自動的に適用できる一方、実際に払った金額より少なくなることもあります。専従者給与の経費計上を目的とするなら、まず青色申告の承認を受けることが大前提です(国税庁「青色申告の承認申請」)。白色申告のまま「家族に給与を払えば経費になる」と思い込んでいるケースは、実務上よくある誤解です。開業届と青色申告を同時提出することで、最初から専従者給与の活用を視野に入れた申告体制を整えることができます。

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▶ 今すぐやること: 家族の年間従事予定月数を数えて6か月を超えるか確認する(5分)

Q: 専従者給与をやめたくなった場合、途中でやめられますか?

A: 年の途中での変更・廃止は原則できません。一度届出をした給与額の変更は「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出する必要があり、増額は原則として認められません。

Q: 扶養控除と専従者給与は同時に使えますか?

A: 使えません。専従者として届出を行った家族は、その年の扶養控除・配偶者控除の対象から外れます(国税庁「扶養控除」)。

専従者給与と配偶者控除は38万円で分岐

「専従者給与を使うべきか、配偶者控除のままでいいか」はフリーランスに共通する判断の難しさです。どちらが有利かは家族の給与設定額と事業者本人の所得税率によって決まるため、比較の枠組みを持っておくことが判断の土台になります。

年間給与38万円が最低限の損益分岐点

配偶者控除は最大38万円の所得控除です。専従者給与を経費にするためには、失う配偶者控除38万円分を超える節税効果が必要になります。年間給与38万円を経費計上した場合、課税所得は38万円減少し、税率が10%なら節税額は3.8万円、20%なら7.6万円です。同時に配偶者控除38万円×税率分も失うため、純粋なプラスは「給与額から38万円を引いた部分×税率」にとどまります。給与が38万円ちょうどでは損得はほぼゼロであり、それ以上の給与を払える場合に初めてメリットが出始めます。

事業者の税率が高いほど専従者給与の優位性が高まる

所得税は累進課税のため、事業者本人の課税所得が高いほど節税効果が大きくなります。所得税率の早見表を確認すると、課税所得330万円超〜695万円以下で税率20%、695万円超〜900万円以下で税率23%が適用されます。年間給与100万円を経費計上した場合、税率20%なら20万円、税率23%なら23万円の節税になります。ただし家族側には給与所得として所得税・住民税が課される可能性があるため、家族側の税負担も必ず合計して判断してください。家族の給与収入が年間103万円以下であれば、家族側の所得税はゼロのまま維持できます。

家族側の社会保険料負担は見落とされやすい

専従者給与を月額10万円(年120万円)に設定した場合、家族の収入が130万円を超えると、配偶者が自分で国民健康保険や国民年金保険料を負担するケースが生じます。この負担額は年間20〜30万円程度になることがあり、事業者側の節税額を大幅に圧縮します。節税効果の計算には、所得税・住民税の減少額だけでなく、社会保険料の増加分を差し引いた「実質的な手取り増加額」で判断することが必要です。

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▶ 今すぐやること: 自分の課税所得を確認して、専従者給与100万円を経費計上した場合の節税額を試算する(10分)

Q: 配偶者特別控除との関係はどうなりますか?

A: 専従者として届出をすると、配偶者特別控除も同様に適用できなくなります。配偶者の給与が年間103万円超の場合は配偶者特別控除の対象でしたが、専従者給与を採用した時点でこの控除は失われます。

Q: 専従者給与はいくらに設定するのが一般的ですか?

A: 業務内容・勤務時間・同種業務の相場を基準に決める必要があります。月額8〜15万円程度が実務では多く見られますが、労務の対価として合理的であることが最重要です。金額の根拠を記録しておいてください。

専従者給与の採用を3分で診断

以下の質問に順番に答えることで、3分で判断の方向性が分かります。

Q1: 現在、青色申告をしていますか?

Yesの場合はQ2へ進んでください。Noの場合は、まず青色申告への切り替えを検討してください(専従者給与は青色申告が前提です)。

Q2: 家族は年間6か月を超えて事業に従事していますか?

Yesの場合はQ3へ進んでください。Noの場合はResult C(専従者給与は要件未達)に該当します。

Q3: 家族は他の会社に雇用されていますか?

Yesの場合はResult D(専従者の要件を満たさない可能性が高い)に該当します。Noの場合はQ4へ進んでください。

Q4: 家族への年間給与予定額は38万円を超えますか?

Yesの場合はResult A(専従者給与を採用する価値あり)に該当します。Noの場合はResult B(配偶者控除・扶養控除の維持を検討)に該当します。

Result A: 採用を前向きに検討

年間給与38万円超で、青色申告・6か月超従事・専従のいずれも満たす場合は、専従者給与が有利になる可能性があります。事業利益・税率・家族側の税負担を合わせて試算してください。

Result B: 配偶者控除維持を検討

給与が38万円未満の場合、配偶者控除38万円を失う損失の方が大きくなりやすいです。給与額を引き上げられる状況になってから再検討することが現実的です。

Result C: 要件未達のため使用不可

6か月以下の従事では青色事業専従者給与の要件を満たしません。白色申告の事業専従者控除(配偶者86万円控除)に留めることを検討してください。

Result D: 専門家に確認が必要

家族が他の会社に雇用されている場合、専従者の要件を満たさない可能性があります。認められるケースもあるため、税理士へ相談してください。確定申告の税理士費用の相場を確認した上で、専門家への依頼を検討することをお勧めします。

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▶ 今すぐやること: Q1〜Q4を自分の状況に当てはめてResultを確認する(3分)

Q: 青色申告への切り替えはいつまでに手続きが必要ですか?

A: 承認を受けようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります(新規開業の場合は開業日から2か月以内)(国税庁「青色申告の承認申請」)。

専従者給与の否認は3要件で防止

税務調査で専従者給与が否認されると、支払った給与全額が経費から除外され、追徴課税と延滞税が発生します。否認される理由の大半は「相当額でない」「業務実態がない」「記録がない」の3点に集中しています。

給与額は同種業務の相場と比較して設定する

「相当な金額」とは、事業内容・業務量・同種業務の市場賃金を踏まえた合理的な金額を意味します(国税庁「青色事業専従者給与に関する届出」)。たとえば経理補助を週20時間担当している場合、地域の最低賃金×時間数を目安にすると根拠が明確になります。根拠なく月額30万円などの高額を設定すると、税務調査で「利益操作」とみなされるリスクがあります。一方、実態に比べて極端に低い金額でも「専ら従事している」実態に疑問が生じます。労務の対価として合理的な範囲に収めることが、否認リスクを最小化する基本です。

業務内容・時間・担当業務を記録として残す

税務調査で最初に確認されるのは「実際に働いていた証拠」です。業務日誌・作業ログ・メールのやり取りなど、家族が実際に業務を行った記録が存在しない場合、給与の支払い実態を疑われます。「家でできる経理補助」「クライアントへの電話対応」などの業務内容を月次でメモ程度でも記録しておくことが現実的な対策です。記録は紙・デジタルどちらでも問題ありませんが、作成日時が確認できる形式が望ましいです。

振込記録を支払証跡として保存する

現金手渡しで給与を支払っている場合、支払事実を客観的に証明することが困難になります。銀行振込を使えば、通帳・振込明細に支払日・支払額・支払先が記録として残り、税務調査での説明が容易になります。振込記録がない場合は税務署から支払い自体を疑われることがあります。月額給与は必ず振込で支払い、源泉所得税の納付記録とあわせて保管してください。なお、個人事業主の税務調査対策として、日頃から帳簿を整備しておくことが最大の防衛策です。

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▶ 今すぐやること: 家族の業務内容を書き出し、直近1か月の勤務実績メモを作成する(15分)

Q: 届出書に記載した金額を変更することはできますか?

A: 変更する場合は「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出する必要があります。増額については原則認められない運用ですが、変更届を出せば次の期から変更できます。

Q: 源泉所得税の納付はいつまでに必要ですか?

A: 原則として給与を支払った月の翌月10日までに納付します。「納期の特例」を申請すれば、1月〜6月分を7月10日・7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できます(国税庁「源泉所得税の納期の特例」)。従業員(専従者を含む給与の支払いを受ける者)が常時10人未満の場合に申請できます。

専従者給与は5つの仕組みで管理

いったん導入すると年間を通じた管理が必要になります。手続きや記録管理に手間をかけたくない場合、利益がまだ少ない段階では無理に導入しなくてもよいという示唆もあります(フリーランスの節税実体験)。5つの仕組みを整えておけば、事務負担を最小限に抑えながら否認リスクを回避できます。

ハック1: 届出書提出で給与経費化の基盤を1日で整備

【対象】: 青色申告を行っており、家族に年間38万円超の給与を払う予定の個人事業主

【手順】: 国税庁の「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を入手し(5分)、給与額・支給時期・給与の計算方法を記入して税務署に提出します(30分)。提出後、届出書の控えを保管し、最初の給与振込を実施して証跡を作ります(当日中)。

【コツと理由】: 届出前に支払った給与は経費として認められません。届出書の提出が「経費計上の開始点」になるため、先に届出、後に支払いの順序が必須です。この順序が崩れると、その年の給与が全額経費として使えなくなるという構造的なリスクがあります。

【注意点】: 届出書に記載した金額を自由に変更することはできません。最初から無理のない金額を設定してください。「最初に高額に設定して後で下げる」ことはできても「後から引き上げる」ことは原則として認められません。

ハック2: 給与台帳と振込記録で証拠を月1回30分で整備

【対象】: 専従者給与を支払っており、税務調査リスクを最小化したい個人事業主

【手順】: 月初に給与台帳(氏名・支給額・源泉税額・手取額)を記入し(10分)、銀行振込で給与を支払い振込明細を保存します(5分)。源泉所得税を計算し、納付書に記入して納期に納付します(15分)。

【コツと理由】: 振込記録は第三者機関(銀行)が日付・金額を証明するため、自作書類と比べて証拠力が格段に高くなります。現金手渡しを続けた場合、否認されたときの追徴税額(給与総額×税率+延滞税)は月数百円の振込手数料と比較して明らかに割高です。

【注意点】: 振込手数料を節約しようとして現金渡しにすることは避けてください。月数百円の手数料を節約するために否認リスクを高めることは、コスト対効果として合理的ではありません。

ハック3: 業務ログで従事実態を月次5分で記録

【対象】: 家族が事業補助をしているが、記録を取っていない個人事業主

【手順】: スマートフォンのメモアプリや表計算ソフトに「日付・業務内容・作業時間」を記録する形式を作り(10分)、家族に月末にその月の業務内容を入力してもらいます(5分/月)。記録を3月末まで保管し、確定申告書類と一緒に整理します(5分/年)。

【コツと理由】: 記録がない状態は「実態がないのと同じ」として税務調査で扱われます。税務署は記録の存在を業務実態の証拠とみなすため、実態があっても記録がなければ否認対象になります。記録の作成そのものが、給与の正当性を守る直接的な盾になります。

【注意点】: 「後からまとめて書く」ことは避けてください。日付の整合性が崩れると、記録の信頼性が疑われます。月次で当月分を記録するサイクルを最初から習慣化してください。

ハック4: 損益分岐点の試算で給与額を数値で決定

【対象】: 専従者給与の金額設定で迷っており、「いくらが適切か」分からない個人事業主

【手順】: 自分の課税所得(事業利益から青色申告特別控除最大65万円を引いた額)を確認し(5分)、所得税率を確認して「給与額×税率」で節税額を計算します(5分)。「節税額 − 失う配偶者控除額×税率 − 家族側の所得税増加額 − 社会保険料増加額」を計算し、プラスになる給与額を特定します(10分)。

【コツと理由】: 家族側の所得税・住民税・社会保険料の増加分を差し引いた「世帯全体の実質手取り」で判断しないと、節税しているつもりで世帯の可処分所得が減ることがあります。所得税・住民税・社会保険料のすべてを合算した「世帯収支」で試算することで、最適な給与額が数値として特定できます。

【注意点】: 所得税の節税額だけを計算することは避けてください。住民税(約10%)・社会保険料(条件によって年20〜40万円増)を含めた計算をしなければ、実際には損をするケースを見落とします。

ハック5: 会計ソフトで給与・源泉税の計算を自動化

【対象】: 専従者給与の記帳・源泉所得税計算に毎月時間をかけている個人事業主

【手順】: freee・弥生・マネーフォワードクラウドなどの会計ソフトに専従者給与の設定を登録し(30分)、毎月自動計算される給与・源泉税額を確認して振込・納付に使います(5分/月)。年末調整・源泉徴収票の発行を会計ソフトから出力します(1時間/年)。

【コツと理由】: 源泉所得税の税額表参照や納期管理を手動で行うと、計算ミスや納付漏れが発生しやすく、不納付加算税(納付額の10%)が課される可能性があります。会計ソフトへの初期設定30分の投資が、毎月の作業時間を約20分削減し、計算ミスをゼロにします。

【注意点】: 会計ソフトが自動計算した源泉税額をそのまま使えばよいと考えて、設定内容の確認を怠ることはやめてください。給与額の変更や扶養人数の変更があった場合は設定更新が必要です。

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▶ 今すぐやること: 会計ソフトに専従者給与の設定を入力して、今月分の給与・源泉税額を自動計算させる(30分)

Q: 専従者給与の届出書はどこで入手できますか?

A: 国税庁のWebサイトから「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」をダウンロードできます。管轄の税務署窓口でも入手できます(国税庁「青色事業専従者給与に関する届出」)。

Q: 専従者給与に源泉所得税はかかりますか?

A: かかります。専従者も「給与所得者」として扱われるため、月額の給与から源泉所得税を徴収して翌月10日までに納付する義務があります。給与額が月額88,000円未満の場合は源泉徴収不要となる場合があります(扶養人数等の条件による)。

専従者給与と白色申告は4点で制度が異なる

白色申告と青色申告では、家族への給与に関して制度の仕組みが根本的に異なります。白色申告のままでも家族への税制優遇があるのかという点を4つの観点で整理します。

白色申告は事業専従者控除で最大86万円を控除

白色申告では、家族への給与そのものを経費にすることはできません。代わりに「事業専従者控除」として、配偶者は最大86万円、その他の親族は最大50万円を事業所得から直接控除できます。この控除は届出不要で確定申告書に記載するだけで適用できるため、事務負担が非常に少ない点が利点です。

青色申告の専従者給与は届出額の範囲内で経費計上できる

青色申告では、届出書に記載した金額の範囲内で実際に支払った給与を全額経費にできます。たとえば年間120万円の給与を払えば、白色申告の86万円控除を超えた分が追加で節税になります。事業利益が大きい場合、白色申告の上限控除額では節税が頭打ちになるため、青色申告への切り替えが合理的な選択となります。

白色申告で86万円超を家族に払っても経費は86万円まで

白色申告で家族に月額10万円(年120万円)を払っていても、控除額の上限は86万円です。差額34万円分は経費にならず、かつ家族側には給与収入として所得税が課される可能性があります。「払った分だけ経費になる」という誤解は白色申告では成立しません。白色申告で家族に高額を払っているケースは、青色申告への切り替えを優先的に検討してください。

青色申告への切り替えで事務負担は増えるが節税余地は広がる

青色申告では複式簿記と貸借対照表の作成が必要になります。会計ソフトを使えば、この作業は月1〜2時間程度に抑えられます。青色申告65万円控除の条件を満たす電子申告等の要件を加えると、事業所得全体での節税額は白色申告より年間13万円以上(税率20%の場合)大きくなります。事務負担の増加と節税余地の拡大をトレードオフとして判断してください。

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▶ 今すぐやること: 今年の申告形式(青色・白色)を確認し、白色申告の場合は来年の青色申告切り替えを検討する(5分)

Q: 白色申告の事業専従者控除を使うには何か手続きが必要ですか?

A: 届出は不要です。確定申告書の「事業専従者に関する事項」欄に家族の氏名・続柄・生年月日・専従の月数を記入するだけで控除が適用されます。

Q: 途中で白色申告から青色申告に変更した場合、その年から専従者給与を使えますか?

A: 承認を受けた年から適用できます。ただし3月15日までに申請が必要なため、年途中からの適用はできません。翌年からの適用を想定して手続きを進めてください。

専従者給与は2ケースで損得が逆転

専従者給与が「得になるケース」と「損になるケース」を実例で見ると、同じ制度でも状況次第で結果が正反対になることが分かります。

ケース1(得になったパターン): 事業利益700万円・配偶者に月10万円の給与を支払ったケース

フリーランスのWebディレクターが、事務・経理補助をしている配偶者に月額10万円(年120万円)の専従者給与を支払った事例です。事業者本人の課税所得は給与額分だけ減少し、税率23%が適用される所得帯で年約27.6万円の節税になりました。配偶者側の給与収入年120万円は、給与所得控除55万円を引いても所得65万円となり、基礎控除48万円と差し引いた課税所得17万円に5%の税率で約8,500円の所得税が発生しました。世帯全体の純節税額は約26.7万円となり、配偶者控除38万円×23%=8.7万円を大きく上回った形です。

手続きや記録管理に手間をかけたくない場合、利益がまだ少ない段階では無理に導入しなくてもよいという示唆もあります(フリーランスの節税実体験・注意点)。事業利益が200万円程度のままであれば、税率10%により節税額は12万円程度にとどまり、事務負担とのコスト対比でメリットが薄かった可能性があります。

ケース2(損になったパターン): 事業利益200万円・配偶者に月3万円の給与を支払ったケース

売上が伸び始めた時期に「家族に給与を払えば経費になる」との情報を見て、配偶者に月額3万円(年36万円)を専従者給与として支払い始めた事例です。配偶者控除38万円を失ったことで、事業者の課税所得は38万円増加し、税率10%で3.8万円の税負担増になりました。一方、給与36万円を経費計上した節税額は3.6万円にとどまり、差し引き2,000円の損という計算になります。さらに給与台帳の作成・源泉税の計算・納付という事務作業が毎月発生したため、手間だけがかかった形になりました。

「専従者控除をやめて働きに出た方がよいかという相談があり、家計や働き方の損得が実務上の悩みとして表れている」と報告されています(専従者控除をやめて働きに出た方が良いか悩み)。事前に損益分岐点を試算していれば、年間給与38万円超の設定か、配偶者控除の維持かを適切に選択できた可能性があります。

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▶ 今すぐやること: ケース1とケース2の数値を自分の利益・給与設定に置き換えて損得を試算する(15分)

Q: 年の途中から専従者給与を始めることはできますか?

A: 届出書を提出すれば年の途中からでも開始できますが、その年の従事期間が6か月を超えることが要件です。年後半から始める場合は従事期間の要件を満たせないケースがあります。

専従者給与を正しく使う:38万円超で得になる3つのポイント

フリーランスが専従者給与を使うべきかどうかは「年間給与が38万円を超えるか」「業務実態が6か月超あるか」「世帯全体の手取りが増えるか」の3点で判断できます。この3つのいずれかを欠くと、節税のつもりが税負担増か税務リスクの増加につながります。

制度を正しく使えば年間20〜30万円規模の節税になる一方、誤って使うと追徴課税と事務負担だけが残ります。損益分岐点の試算は10〜20分で完了するため、まず「自分の利益×税率」と「失う控除額×税率」を計算することが最初の一歩です。

状況次の一歩所要時間
今年から使いたい損益分岐点を試算して3月15日までに届出書を提出1時間
迷っている課税所得・税率・家族の勤務実態を確認して診断を実施20分
使うのをやめたい変更届出書を提出し、来年から配偶者控除に切り替え30分
白色申告のまま来年の青色申告切り替えの申請期限(3月15日)を手帳に記録5分

フリーランス専従者給与に関するよくある質問

Q: 専従者給与を使うと必ず節税になりますか?

A: なりません。年間給与が38万円未満の場合や家族が他の会社に雇用されている場合は、配偶者控除・扶養控除を失うだけで税負担が増えるケースがあります。事前に損益分岐点を試算することが必須です。

Q: 家族が週3日しか手伝っていない場合でも専従者給与を使えますか?

A: 週3日の従事であっても、年間の従事日数が「6か月超」を満たし、かつ業務が「専ら」その事業に従事していると認められれば制度を使える可能性があります。業務実態の記録が必須で、他の仕事との兼業がある場合は要件を満たさない可能性があります(国税庁「青色事業専従者給与」)。

Q: 白色申告でも家族への給与を経費にできますか?

A: 白色申告では給与そのものを経費にすることはできません。代わりに「事業専従者控除」として配偶者86万円・その他の親族50万円を所得から控除できます。給与額がこの上限を超える場合は青色申告への切り替えが有効です。

Q: 専従者給与をやめた翌年から配偶者控除を再び使えますか?

A: 使えます。専従者として届出をしている年は控除が使えませんが、専従者給与をやめた翌年からは配偶者控除・扶養控除を再び適用できます。年の途中での変更はできないため、翌年からの切り替えを想定して計画してください。

Q: 税務調査で専従者給与が否認される典型的なケースを教えてください。

A: 主な否認理由は3つです。第一に給与額が業務内容に対して不相当に高い場合、第二に業務実態の記録がない場合、第三に実際の支払いが確認できない(振込記録なし・現金手渡しで台帳もない)場合です。この3点を整えることが否認リスクの回避に直結します。

【出典・参照元】

国税庁「青色事業専従者給与」

国税庁「配偶者控除」

国税庁「扶養控除」

国税庁「青色事業専従者給与に関する届出」

国税庁「青色申告の承認申請」

国税庁「源泉所得税の納期の特例」

フリーランスの節税実体験・注意点

専従者控除をやめて働きに出た方が良いか悩み

記事内容は2026年06月時点の税制・法令に基づいています。