この記事でわかること
65歳以上の個人事業主は在職老齢年金の対象外のため、事業収入に関係なく年金を全額受け取れます。事業所得が年間20万円を超えた場合は公的年金との合算申告が義務となります。公的年金等控除110万円・青色申告65万円・社会保険料控除を組み合わせると、課税所得を年間170万円以上圧縮できます。
65歳以上で個人事業を続けながら「年金が減らされてしまうのでは」と感じている方もいます。結論として、個人事業主には在職老齢年金の減額ルールが適用されないため、事業収入がいくらあっても年金は1円も減りません。事業所得が20万円を超えた年だけ確定申告を行えば、受給額に影響はなく節税も実現できます。
この記事の結論
65歳以上の個人事業主は在職老齢年金の制限を受けないため、事業収入の多寡にかかわらず老齢基礎年金・老齢厚生年金を全額受け取れます。事業所得が年間20万円を超える場合は、公的年金(雑所得)と合算して確定申告を行う義務が生じます。65歳以上は公的年金等控除が最低110万円適用されるため、青色申告の65万円控除と組み合わせると課税所得を大幅に圧縮できます。
今日やるべき1つ
日本年金機構から届いている「公的年金等の源泉徴収票」を手元に用意し、年金収入の合計額が400万円を超えるか、事業所得が20万円を超えるかを確認してください(5分)。
状況別ショートカット
状況 | 読むべきセクション | 所要時間 |
申告が必要か今すぐ判断したい | 3分 | |
確定申告書の書き方を知りたい | 5分 | |
控除を最大化したい | 5分 | |
年金を増やしたい | 3分 | |
申告ミスを防ぎたい | 5分 |
65歳以上個人事業主の年金全額受給は制度で保証
個人事業主として収入を得ながら年金を受け取る場合、在職老齢年金の減額が心配な方もいます。ただし個人事業主にはこの制度が適用されないため、事業収入の額にかかわらず年金を満額受給できます。
在職老齢年金は個人事業主に適用外
在職老齢年金は、会社員・パートタイマーなど厚生年金に加入している人が対象の制度です。老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額の合計が50万円(2024年度)を超えた場合に年金が減額されます。個人事業主は厚生年金ではなく国民年金に加入しており、総報酬月額という概念が存在しません。そのため在職老齢年金の計算対象外となり、事業所得が月100万円あっても老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方を満額受け取れます。「稼ぐほど年金が削られる」という懸念は個人事業主には当てはまりません。
老齢基礎年金の満額は月68,000円程度(2025年度)
2025年度の老齢基礎年金満額は月68,000円程度(年額約816,000円)です。これは20歳から60歳の40年間(480ヶ月)すべての期間で国民年金保険料を納めた場合の金額です。未納・免除期間があるとその比率に応じて減額されます。ねんきん定期便やねんきんネットで自分の納付月数を確認し、受給見込み額を把握しておくことが将来の収支計画に直結します。
確定申告の義務は年金に影響しない
確定申告を行っても、行わなくても、個人事業主の年金受給額は変わりません。ただし確定申告で算出された「合計所得金額」は住民税の計算基準となるため、間接的に手取りに影響します。合計所得金額が125万円以下であれば65歳以上は住民税が非課税となる場合があります(各市区町村の規定による)。控除を適切に申告しないと住民税が発生し、国民健康保険料の算定にも影響するため、申告内容を丁寧に作成することが節税の基本です。個人事業主の住民税計算については別記事でも詳しく解説しています。
国民年金・厚生年金の制度詳細は日本年金機構 老齢年金の受給で確認できます。
CHECK
ねんきんネットにログインし、年金見込み額と納付月数を確認してください(5分)
よくある質問
Q: 65歳以上の個人事業主でも厚生年金には加入できますか?
A: 個人事業主は原則として国民年金(第1号被保険者)に加入するため、厚生年金には加入できません。法人化して自分を代表取締役として雇用する形にすれば厚生年金加入が可能になります。
Q: 事業を廃業すれば年金が増えますか?
A: 廃業自体で年金額が増えることはありません。繰下げ受給を選択した場合は65歳以降1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されるため、廃業タイミングと繰下げの組み合わせで受給戦略を立てることが有効です。
65歳以上個人事業主の申告要否は3分で診断
事業所得と年金の両方をもらっている場合、申告義務の有無をはっきり判断できない方もいます。以下のフローで3分以内に判定できます。
Q1: 公的年金の年間受給合計は400万円を超えていますか?
Yesの場合 → 確定申告が必要です(Result A へ)。Noの場合 → Q2へ進んでください。
Q2: 年金以外の所得(事業所得・給与所得・不動産所得等の合計)は年間20万円を超えていますか?
Yesの場合 → 確定申告が必要です(Result B へ)。Noの場合 → Q3へ進んでください。
Q3: 医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン控除など「還付を受けられる控除」がありますか?
Yesの場合 → 申告義務はありませんが、還付のために申告することを強くおすすめします(Result C へ)。Noの場合 → 今年は確定申告不要です(Result D へ)。**
Result A: 年金400万円超 → 必須申告年金源泉徴収票・青色申告決算書・社会保険料控除証明書を準備し、翌年2月16日〜3月15日に申告してください。源泉徴収済みの税額を精算するため、納税額が発生するケースがほとんどです。
Result B: 事業所得20万円超 → 必須申告年金400万円以下でも事業所得が20万円を超えた段階で申告義務が生じます。青色申告を選択していれば最大65万円の特別控除が受けられるため、事業所得が少額でも青色申告の届出を済ませておくことが長期的に有利です。
Result C: 還付狙い申告 → 義務なしだが強く推奨医療費が年間10万円超(または所得の5%超)であれば医療費控除が適用されます。5年以内の過去分でも遡及申告が可能なため、過去の申告状況も確認してください。
Result D: 今年は申告不要**来年以降に事業所得が増加する可能性がある場合は、今から青色申告承認申請書を税務署に提出しておくことで、来年分から65万円控除が適用されます。
CHECK
Q1とQ2に該当する金額をメモ帳に書き出し、申告義務の有無を確定してください(3分)
よくある質問
Q: 年金が400万円以下で事業所得も20万円以下なら、住民税も申告不要ですか?
A: 所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告が別途必要になるケースがあります。各市区町村の住民税担当窓口に確認してください。
Q: 事業所得がマイナス(赤字)の場合はどうなりますか?
A: 青色申告者であれば、事業所得の赤字を翌年以降3年間繰り越して繰越控除が可能です。白色申告者には繰越控除の制度がありません。なお事業所得の赤字を公的年金等の雑所得と損益通算することはできません。
65歳以上個人事業主の申告は3ステップで完了
書類が多く何から手をつければいいか分からないのは、合算申告で特によくある状況です。以下の3ステップで申告書類の準備から提出まで体系的に進められます。
ステップ1:源泉徴収票と帳簿を手元に揃える
準備する書類は主に5種類です。年金源泉徴収票(日本年金機構から1月下旬〜2月上旬に郵送)、事業収支の帳簿・青色申告決算書または収支内訳書、社会保険料(国民年金保険料・国民健康保険料)の支払証明書、生命保険料控除証明書、医療費の領収書またはe-Taxで利用できる医療費通知書の5点を揃えてください。年金源泉徴収票に記載されている「支払金額」が公的年金の総収入額、「源泉徴収税額」が既に天引きされた所得税の金額です。この2つの数字は申告書に転記するため、受け取ったらすぐに保管してください。書類が1つ欠けると申告作業がいったん止まるため、1月中に揃える習慣が遅延防止の最短経路です。確定申告の必要書類については別記事で一覧化しています。
ステップ2:公的年金等控除を適用して課税所得を計算する
65歳以上の場合、年金収入(公的年金等収入金額)に応じた控除が自動的に適用されます。年金収入が330万円以下であれば控除額は110万円です。年金収入が330万円超410万円以下なら「収入×25%+27.5万円」、410万円超770万円以下なら「収入×15%+68.5万円」という計算式が適用されます(国税庁 公的年金等控除の計算)。たとえば年金収入が180万円の場合、控除額は110万円のため雑所得は70万円となります。次に事業所得(売上-必要経費)を加算し、社会保険料控除・基礎控除(48万円)等を差し引いた残りが課税所得です。課税所得に所得税率を乗じた税額から源泉徴収済み税額を差し引いた差額が、納付額または還付額になります。
なお公的年金等控除額は、申告者本人の「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」が1,000万円を超えるか否かによっても異なります。
ステップ3:e-Taxで申告書を作成・送信する
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、申告書の作成から送信まで自宅で完結します。マイナンバーカードとICカードリーダーまたはスマートフォン(マイナポータルアプリ)があれば利用可能です。e-Tax上の「確定申告書等作成コーナー」では画面の指示に沿って数値を入力するだけで申告書が自動生成されます。公的年金等の収入金額・源泉徴収税額・事業所得の金額・各種控除額を入力すると、納税額または還付額が自動計算されます。e-Taxで青色申告すると65万円の青色申告特別控除が適用されますが、書面申告の場合は控除額が55万円に下がります。この差額10万円が毎年節税できると考えると、e-Tax導入の初期設定(約30〜60分)は十分に回収できる投資です。e-Taxのセットアップ手順については別記事で詳しく解説しています。
年金受給と事業所得を合算申告した際に65歳以上の公的年金等控除110万円を適用して課税所得を計算したケースは、年金受給しながら働き続けるときの注意点は?#個人事業主でも報告されています。初めて合算申告を行う方はe-Taxの入力画面で「年金の雑所得」と「事業所得」を別々のフォームに入力する流れを体感することで、制度の理解が一気に深まります。
CHECK
e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、年金収入額を入力して公的年金等控除額を自動計算で確認してください(10分)
よくある質問
Q: 青色申告承認申請書はいつまでに提出すれば間に合いますか?
A: その年の1月1日から事業を開始した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出してください。すでに事業を継続している場合は、適用を受けたい年の3月15日までに提出してください。
Q: 年金源泉徴収票を紛失した場合はどうすればいいですか?
A: 日本年金機構(0570-05-1165)に連絡すると再発行が可能です。マイナポータルの「ねんきんネット」でも電子版の確認ができます。
65歳以上個人事業主の控除は4種で節税
使えるのに使っていない控除が1つあるだけで、数万円単位の差が生じます。4種の控除を組み合わせることが、課税所得を最大限に圧縮する確実な方法です。
公的年金等控除は65歳で110万円に拡大
65歳未満の公的年金等控除(最低控除額)は60万円ですが、65歳になった年から最低控除額が110万円に増加します。これは申告する年の12月31日時点の年齢で判定されます(国税庁 公的年金等控除の計算)。年金収入が180万円の場合、65歳未満は雑所得が120万円(180万円-60万円)ですが、65歳以上は雑所得が70万円(180万円-110万円)となり、課税対象が50万円少なくなります。この50万円に対する所得税(税率5%の場合)は2.5万円の節税に相当し、住民税(10%)を合わせると7.5万円の差になります。65歳の誕生日を迎えた年の申告から必ず適用してください。
社会保険料控除は全額控除が可能
国民年金保険料・国民健康保険料・介護保険料はすべて「社会保険料控除」として全額控除できます。2025年度の国民年金保険料は月額16,980円(年額203,760円)です。支払証明書(ねんきん定期便と一緒に10〜11月頃に送付)がないと申告できないため、紛失した場合は日本年金機構 国民年金保険料の控除を参照して再発行を依頼してください。国民健康保険料の支払額は、各市区町村から送付される納税通知書で確認できます。これらを合算して申告書の「社会保険料控除」欄に記入するだけで、全額が課税所得から差し引かれます。社会保険料控除の申告方法は別記事でも詳しく解説しています。
青色申告特別控除は最大65万円
青色申告を選択し、複式簿記で帳簿をつけてe-Taxで申告すると最大65万円の特別控除が受けられます(書面申告は55万円、簡易帳簿は10万円)。65歳以上の個人事業主で青色申告をまだ選択していない方は、最優先で税務署に「青色申告承認申請書」を提出してください。必要経費が少ない事業形態(フリーランスのコンサルティングや執筆業など)でも、65万円控除の恩恵は毎年着実に積み上がります。
医療費控除は5年遡って申告可能
年間の医療費が10万円を超えた場合(または所得の5%を超えた場合)に医療費控除が適用されます(国税庁 医療費控除の概要)。領収書を取っておくか、健康保険組合から送付される「医療費通知」を利用してください。確定申告の期限(3月15日)を過ぎた後でも、還付申告であれば5年以内であれば遡って申告できます。「去年は申告しなかった」という場合でも、医療費が多かった年があれば遡及申告で還付を受けられます。セルフメディケーション税制(対象の市販薬購入費が年12,000円超の場合に適用)との選択適用になるため、金額が大きい方を選んでください。また小規模企業共済の掛金(月最大7万円、年最大84万円)も全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できるため、年金と事業所得の合計が高い方には追加の節税手段として有効です。
CHECK
手元の社会保険料控除証明書の金額を合算し、年間の控除合計額を計算してください(5分)
よくある質問
Q: 生命保険料控除と個人年金保険料控除は65歳以上でも使えますか?
A: 年齢制限はなく65歳以上でも利用可能です。一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料それぞれ最大4万円(旧契約は5万円)、合計最大12万円まで控除できます。保険会社から10〜11月に送付される「控除証明書」で申告します。
Q: 配偶者控除は事業所得があると使えなくなりますか?
A: 申告者本人の合計所得金額が1,000万円以下であれば配偶者控除・配偶者特別控除が利用できます。配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)であれば満額38万円の配偶者控除が受けられます。
65歳以上個人事業主の年金は3制度で増額
65歳以降でも活用できる増額制度が複数あります。事業収入で生活費を賄えている期間を活用すれば、受取総額を大幅に増やせます。
繰下げ受給で最大84%増額
65歳から年金を受給せずに繰り下げると、1ヶ月ごとに0.7%増額されます。66歳0ヶ月から受給開始すると8.4%増(12ヶ月×0.7%)、70歳0ヶ月から受給開始すると42%増(60ヶ月×0.7%)、上限の75歳0ヶ月から受給開始すると84%増(120ヶ月×0.7%)となります。事業収入で生活費が賄えている65歳以上の個人事業主にとって、繰下げ受給は長生きリスクに対応できる制度として機能します。受給開始を遅らせた期間の年金は受け取れないため、健康状態と資金繰りを考慮した上で判断してください。「健康に不安がない」「事業収入がある程度安定している」の2条件を満たすなら、70歳まで繰下げた場合の損益分岐点を超えて長生きする確率が統計的に高い方には合理的な選択とされています。損益分岐点の年齢は受給開始年齢や個人の状況により異なるため、日本年金機構のシミュレーションツールで確認してください。
国民年金基金で上乗せ給付
国民年金基金は、第1号被保険者(個人事業主・フリーランス)専用の公的年金上乗せ制度です(国民年金基金 加入案内)。加入できるのは65歳未満のため、65歳未満で加入した場合は継続して掛金を拠出できます。掛金は全額社会保険料控除の対象となるため、節税しながら老後資金を積み立てられます。給付額は加入口数・加入年齢・給付の種類(終身型・確定型)によって異なります。すでに65歳以上で新規加入はできない方でも、過去に加入していれば受給資格がある可能性があるため、国民年金基金連合会(0120-65-4192)に確認してください。国民年金基金とiDeCoを併用する場合の掛金上限についても事前に確認しておくと計画が立てやすくなります。
iDeCoで掛金全額を所得控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)は制度改正により、個人事業主(国民年金第1号被保険者)の場合、国民年金に任意加入している65歳未満まで加入できます(加入要件の詳細はiDeCo公式サイト 加入資格でご確認ください)。掛金の上限は月額68,000円です(国民年金基金との合算)。掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できるため、税率20%の方なら月1万円の掛金で年間2.4万円の節税になります。運用益も非課税で複利運用されるため、受取時には「退職所得控除」または「公的年金等控除」が適用されます。原則60歳未満で途中解約できない点が唯一の制約のため、生活費として必要な資金はiDeCoに入れないことが重要です。
CHECK
ねんきん定期便で65歳受給開始時の年金見込み額を確認し、70歳繰下げ(42%増)した場合の金額を計算してください(5分)
よくある質問
Q: 繰下げ受給中に死亡した場合、掛け捨てになりますか?
A: 死亡した場合、未支給年金として遺族が一括で受け取れます。また遺族が一定の要件を満たす場合は遺族年金が支払われます。繰下げ中に死亡しても必ずしも損にはならない仕組みです。
Q: iDeCoの運用中に事業収入がゼロになった場合どうなりますか?
A: 掛金の拠出を月5,000円の最低額まで減額するか、「運用指図者」に切り替えて掛金拠出を停止することが可能です。口座管理手数料(月数百円程度)は継続してかかります。
65歳以上個人事業主の申告ミスは5項目で防止
年金と事業所得の合算申告は、計算の連携部分でミスが発生しやすい構造になっています。5つのハックで申告精度を高め、修正通知を受け取る事態を防いでください。
ハック1: 公的年金等控除額の自動計算ツールで計算ミスをゼロにする【対象】: 手計算で公的年金等控除を計算しているすべての申告者
【手順】: e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」を開き(所要5分)、「収入金額等」の「公的年金等」欄に源泉徴収票の「支払金額」を入力し(2分)、「65歳以上」を選択して控除額が自動計算されることを確認してください(1分)。
【ポイントと理由】: e-Taxの自動計算機能に完全委任することで計算ミスがゼロになります。公的年金等控除の計算式は年齢(65歳以上か未満か)・受給額の区分・他所得の有無の複数変数が絡むため、手計算で全条件を正確に処理することは熟練者でも困難です。e-Taxの自動計算は国税庁が更新管理しているため、制度改正があっても常に最新のロジックが反映されています。年金収入額を複数の計算式に当てはめて手動で確認する作業は不要です。e-Taxの計算結果を正として申告してください。
【注意点】: 「支払金額」(総受給額)と「源泉徴収税額」(天引き済み所得税)を混同しないでください。入力する数字は「支払金額」のみです。
CHECK
e-Taxの「公的年金等」欄に源泉徴収票の「支払金額」のみを入力する、「65歳以上」を選択して自動計算結果を確認する、手計算での再検証は不要(e-Taxの結果をそのまま使う)の3点を押さえてください。
ハック2: 事業所得の計上漏れを帳簿と請求書の突合で防止
【対象】: 請求書・領収書を手動管理している個人事業主
【手順】: 会計ソフト(freee・マネーフォワードクラウド等)に年間の請求書発行記録をすべて入力し(所要30分)、入金済みとなった売上合計が帳簿の売上合計と一致することを確認し(15分)、差異がある場合は請求書番号ごとに突合して未計上分を特定してください(10〜30分)。
【ポイントと理由】: 毎月入金確認のタイミングで会計ソフトに記帳することで計上漏れを防止できます。年末まとめ入力では「12月末に請求して翌1月入金」の取引が翌年分と混在し、計上年度を誤るリスクがあります。毎月更新すれば差異が翌月には発見できるため、修正工数が最小化されます。会計ソフトの自動仕訳機能を使えば入力時間を月30分以内に短縮できます。
【注意点】: インボイス登録をしていない場合、取引先から消費税の値引き要求を受けるケースが増えています。インボイス登録の有無と事業所得の計算ルールを混同しないよう注意してください。
CHECK
年間の請求書発行総額と帳簿の売上合計が一致している、12月末請求・1月入金の取引の計上年度が正しい、会計ソフトに未入力の売上がないの3点を確認してください。
ハック3: 源泉徴収票は3種類を区別して申告書に転記
【対象】: 年金以外にも給与収入や報酬がある65歳以上の個人事業主
【手順】: 手元にある源泉徴収票を「年金用(日本年金機構発行)」「給与用(雇用先発行)」「報酬用(取引先発行)」の3種に仕分けし(5分)、年金用は申告書の「公的年金等」欄、給与用は「給与所得」欄、報酬用は「事業所得」または「雑所得」欄に記入し(10分)、各欄の合計所得金額が手元の源泉徴収票の合計額と一致することを確認してください(5分)。
【ポイントと理由】: 年金は「雑所得(公的年金等)」として扱われるため、給与所得欄に記入すると課税所得の計算が狂います。申告書のどの欄に記入するかは、収入の「種類」ではなく「所得区分」で判断してください。報酬(業務委託料)を「給与収入」として計上することは誤りです。業務委託は事業所得または雑所得として処理します。
【注意点】: 年金の源泉徴収票に記載されている「社会保険料等の金額」は介護保険料等が天引きされた額です。この金額を「支払金額」と合算して計算しないよう注意してください。
CHECK
源泉徴収票の種類(年金用・給与用・報酬用)を申告前に仕分けする、年金は「公的年金等」欄のみに記入する、業務委託料は給与所得欄ではなく事業所得欄に記入するの3点を確認してください。
ハック4: 申告期限前の1ヶ月で書類確認リストを実行
【対象】: 初めて合算申告を行う65歳以上の個人事業主、または過去に申告ミスがあった方
【手順】: 1月末に源泉徴収票の受取を確認し(5分)、2月初旬に社会保険料控除証明書・生命保険料控除証明書の有無を確認し(10分)、2月中旬にe-Taxで申告書の下書き入力を完了させ(60分)、2月末に税務署の相談窓口(要予約)または税理士に内容確認を依頼してください(30〜60分)。
【ポイントと理由】: 「1月から書類確認→2月に入力→3月は確認のみ」という前倒しアプローチで、書類不足による申告期限超過を防止できます。3月15日前後は税務署の窓口が最も混雑し、電話相談も繋がりにくくなります。2月中に入力を完了させれば、不明点が生じても税務署に余裕をもって確認できます。書類確認だけなら1月末に30分で完了できます。税理士費用の相場については別記事で詳しく解説しています。
【注意点】: 申告期限(3月15日)を過ぎると、納税額がある場合は延滞税が発生します。期限内申告が最優先です。
CHECK
1月末に源泉徴収票を受け取っている、2月中旬までにe-Taxで下書き入力を完了させている、2月末までに税務署または税理士への確認予約を入れているの3点を確認してください。
ハック5: 住民税への影響を申告前に試算して納税計画を立てる
【対象】: 国民健康保険料や介護保険料の負担額が気になる65歳以上の個人事業主
【手順】: e-Taxの入力画面で合計所得金額の試算値を確認し(5分)、各市区町村の国民健康保険料試算ツール(例:保険料の試算 – 東京都国民健康保険料試算)に入力して翌年度の保険料を概算し(10分)、節税できる控除の追加適用(iDeCo・小規模企業共済等)を検討してください(15分)。
【ポイントと理由】: 確定申告で決まる合計所得金額は住民税・国民健康保険料・介護保険料のすべてに連鎖します。合計所得金額が125万円以下であれば住民税が非課税となる場合があります(住民税非課税の基準は各市区町村で異なります)。この閾値を事前に把握しておくことで、iDeCoへの追加拠出などで意図的に合計所得金額を調整できます。申告後に住民税決定通知書が届いてから初めて金額を確認する対応ではなく、申告前に試算することで納税計画を主体的に立てられます。
CHECK
e-Taxで合計所得金額の試算値を確認している、住民税非課税ライン(125万円)と自分の合計所得金額を比較している、iDeCo・小規模企業共済の追加拠出余地を検討しているの3点を確認してください。
CHECK
e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」で合計所得金額の試算入力を行い、住民税課税ラインと比較してください(15分)
よくある質問
Q: 確定申告を期限後に提出した場合のペナルティはどのくらいですか?
A: 納税額がある場合は無申告加算税(15〜20%)と延滞税(年率7.3〜14.6%程度)が課されます。ただし期限後でも税務署から指摘を受ける前に自主申告すれば、無申告加算税が5%に軽減されます。早期の自主申告が最善の対応です。
Q: 税理士に依頼した場合の費用目安はどのくらいですか?
A: 個人事業主の確定申告代行は3万〜10万円が相場です。事業規模・帳簿の整備状況・控除の複雑さによって変わります。年間の節税額と比較して判断してください。
65歳以上個人事業主の年金と申告を完全にまとめる
65歳以上の個人事業主は在職老齢年金の対象外であり、事業収入がいくらあっても年金は全額受け取れます。事業所得が年間20万円を超えた場合は公的年金との合算で確定申告が義務となるため、年金源泉徴収票・社会保険料控除証明書・青色申告決算書の3点を1月末に揃えることが申告作業の最短経路です。公的年金等控除(110万円)・青色申告特別控除(65万円)・社会保険料控除を組み合わせれば、課税所得を年間170万円以上圧縮できます。
確定申告は義務の履行であると同時に、払いすぎた税金を取り戻す唯一の機会です。65歳以上で活動を続ける個人事業主の方には、青色申告の選択・e-Taxの活用・控除の最大化という3点を毎年着実に実行していただきたいと考えています。
状況 | 次の一歩 | 所要時間 |
申告要否を判断したい | Q1(年金400万円超か?)とQ2(事業所得20万円超か?)を確認する | 3分 |
書類が揃っていない | 年金源泉徴収票・社会保険料控除証明書・帳簿の3点を確認する | 10分 |
青色申告を始めたい | 税務署に「青色申告承認申請書」を持参または郵送する | 30分(書類作成) |
年金を増やしたい | ねんきんネットで繰下げ受給シミュレーションを実行する | 10分 |
控除を最大化したい | e-Taxで社会保険料控除・iDeCo掛金控除の入力額を確認する | 15分 |
※本記事で紹介した情報は2025年6月時点のものです。
65歳以上の個人事業主と年金に関するよくある質問
Q: 個人事業主が65歳以上になると年金保険料の支払いはどうなりますか?
A: 国民年金保険料は60歳までの加入が原則のため、65歳時点では原則として支払い義務はありません。ただし受給資格期間(10年)を満たしていない場合は65歳未満まで任意加入が可能です。60〜65歳の間に任意加入していた場合は保険料の控除申告が必要です。
Q: 年金と事業所得の合計が高い場合、青色申告以外に節税できる方法はありますか?
A: 小規模企業共済の掛金(月最大7万円、年最大84万円)が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できます。廃業・解約時に共済金が受け取れるため、老後資金の積立と節税を同時に実現できます。65歳以上でも継続加入・新規加入ともに可能です。
Q: 確定申告で赤字が出た場合、年金収入と相殺できますか?
A: 事業所得の赤字は損益通算として給与所得・不動産所得等と相殺できますが、公的年金等の雑所得との通算はできません。ただし青色申告の場合は赤字を翌年以降3年間繰り越して(繰越控除)、翌年以降の事業所得から差し引くことが可能です。
