フリーランスの所得税は「売上」ではなく「所得(売上-経費)」に課税され、消費税は2年前の課税売上が1,000万円超で納税義務が発生します。この記事では用語の定義から消費税判定・確定申告の計算例まで5つの実務ハックで解説します。

目次

この記事でわかること

用語の定義から消費税判定・確定申告の計算例まで5つの実務ハックで解説します。読み終えれば、申告書に記入すべき正しい金額の求め方と消費税納税義務の発生時期を自分で判定できます。

この記事の結論

フリーランスの税務で押さえるべき核心は「課税対象は所得(売上から経費を引いた金額)であり、消費税の納税義務は課税売上1,000万円が判定ライン」という2点です。「売上」「収入」「所得」「課税所得」の4語はそれぞれ意味が異なり、確定申告で誤った数字を使うと過剰納税や申告ミスにつながります。この記事を読めば、自分の申告書に記入すべき正しい金額の求め方と消費税納税義務の発生時期を自分で判定できます。

今日やるべき1つ

昨年1年間の売上合計と経費合計を会計ソフトまたはExcelで集計し、「売上-経費=所得」の数字を確認してください(所要時間15分)。

状況別ショートカット

状況読むべきセクション所要時間
「売上」「所得」の違いが曖昧フリーランスの課税売上は4語で整理3分
消費税の納税義務が自分に当てはまるか知りたいフリーランスの消費税は2段階で判定4分
確定申告で正しい金額を使いたいフリーランスの課税売上を3分で診断3分
業務委託報酬の実際の受取額の計算方法が知りたいフリーランスの課税売上は2事例で比較3分
節税ハックをすぐ実践したいフリーランスの課税売上管理は5つの仕組みで解決5分

フリーランスの課税売上は4語で整理

「売上」「収入」「所得」「課税所得」は似た言葉に見えて、税務上は明確に異なる4つの概念です。この違いを混同していると、確定申告で記入する数字を誤る原因になります。

売上と収入は実務上同義だが所得税には使わない

フリーランスが1年間に業務委託先から受け取った報酬の合計が「売上」です。「収入」も同じ意味で使われることが多く、会計上はほぼ同義として扱われます。ただし、所得税の申告書では「売上」という用語が正式名称として使われます。業務から得た報酬の合計を「売上」の欄に記入すると理解してください(freee公式:フリーランスの税金の種類と節税対策)。

「売上=収入」は出発点の数字であり、税金はこの数字にそのままかかるわけではありません。所得税は売上から経費を差し引いた後の「所得」に課税される仕組みなので、売上が高くても経費が多ければ納税額は抑えられます。

所得は売上から経費を引いた利益に相当する

所得の計算式は「売上-必要経費=所得」です。個人事業主の所得税計算は5ステップで完了し、青色申告を選択している場合は、さらに最大65万円(電子申告かつ複式簿記の場合)または10万円の青色申告特別控除を差し引くことができます。この控除が適用できるかどうかで、同じ売上でも課税される所得が大きく変わります。

青色申告特別控除額は10万円・55万円・65万円の3段階があります。電子申告(e-Tax)かつ複式簿記の要件を満たした場合に65万円控除が適用され、複式簿記のみ(紙申告)の場合は55万円、簡易簿記の場合は10万円となります(国税庁:青色申告特別控除(タックスアンサーNo.2072))。所得税・住民税・国民健康保険料はすべて「所得」を起点に計算されるため、所得の数字を正確に把握することが節税の出発点です。

課税所得は所得からさらに控除を引いた最終数字

課税所得は「所得-所得控除(基礎控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除等)=課税所得」で求められます。所得税率は課税所得の金額帯によって5%から45%の7段階(超過累進課税)で変わります。課税所得が195万円以下なら5%、900万円超1,800万円以下なら33%が適用されます(国税庁:所得税の税率(タックスアンサーNo.2260))。

所得が同じでも受けられる控除の種類と金額によって課税所得は変動します。申告で正しい控除を適用することが、納める税額を合法的に最小化する唯一の手段です。よくある間違いとして、基礎控除(48万円)の申告漏れや社会保険料控除の計上漏れがあります。確定申告書を作成する際は「所得から差し引かれる金額」欄を必ず確認してください。

課税売上は消費税の計算専用の概念

「課税売上」は消費税の計算においてのみ登場する用語で、所得税の計算では使いません。具体的には、消費税が課される取引(標準税率10%または軽減税率8%が適用される売上)の合計です。フリーランスが受け取る業務委託報酬のほとんどは課税売上に該当します。

課税売上の金額は消費税の納税義務判定と納付額の計算に直接使うため、所得の計算とは別に管理する必要があります。「課税売上が1,000万円を超えたか」という基準を把握しておかないと、消費税の納付義務が発生しているのに無申告という状態になりかねません。税務上のリスクが高いため、売上が700万円を超えたあたりから毎月の課税売上を確認する習慣をつけてください。消費税免税の2条件と実務ハックも合わせて確認しておくと、課税事業者への移行タイミングを事前に把握できます。

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▶ 今すぐやること: 直近12か月の売上合計を会計ソフトまたは銀行明細で集計し、「売上-経費=所得」を計算してください(15分)

Q: 消費税を受け取っていない場合でも課税売上に含まれますか?

A: 課税売上は消費税を受け取ったかどうかではなく、消費税が課税される取引の売上総額を指します。内税(請求額に消費税込み)の場合も取引総額が課税売上に含まれます。税込金額から消費税相当額を除いた金額が「税抜売上」として記帳されます。

Q: 源泉徴収された金額は売上から除いて計算するのですか?

A: 源泉徴収は「売上から引く」ものではありません。源泉徴収された金額も含めた請求額全体が売上(課税売上)です。源泉徴収は取引先が仮払いしている所得税の前払いであり、確定申告で精算します。「実際に受け取った金額=売上」ではないことが重要なポイントです。

フリーランスの消費税は2段階で判定

消費税の納税義務があるかどうかは、「2年前の課税売上」と「前年の1月から6月の課税売上」という2段階の基準で判定します。この仕組みを理解せずに独立から数年が経過し、気づいたら課税事業者になっていたというケースも珍しくありません(マネーフォワード:フリーランスでも消費税を払わなければならない場合)。

判定基準1は「2年前の課税売上が1,000万円超」

消費税の納税義務は基本的に、基準期間(個人事業主の場合は前々年)の課税売上が1,000万円を超えた場合に発生します(消費税法第9条)。2024年の課税売上が1,000万円を超えた場合、2026年から消費税課税事業者になります。起業後の最初の2年間は原則として前々年が存在しない(または売上が少ない)ため、免税事業者として扱われます。

「1,000万円の判定は翌年からではなく翌々年から」という点は見落としがちです。2024年に1,000万円を超えたとしても、2025年は引き続き免税事業者のままです。ただし、2025年の1月から6月の課税売上が1,000万円を超えた場合は特定期間のルールが適用されるため、2段階目の基準も確認が必要です。

判定基準2は「前年1月~6月の課税売上が1,000万円超」

特定期間(前年の1月1日から6月30日まで)の課税売上が1,000万円を超えた場合は、当年から消費税課税事業者になります(消費税法第9条の2)。前々年の売上が少なくても、前年の上半期に売上が急増した場合は当年から課税事業者になることがあります。

この特定期間の判定では、売上の代わりに同期間の給与等支払額を使って判定することも可能です。個人事業主が従業員を雇用している場合に選択できる方法ですが、フリーランスで一人で活動している場合は課税売上での判定が一般的です(弥生:フリーランスの納める税金ガイド)。

免税事業者でも消費税を請求することは問題ない

免税事業者であっても、取引先に消費税を上乗せして請求することは法律上問題ありません。受け取った消費税を国に納付する義務がないため、受け取った消費税相当額は事業上の収益として手元に残ります。これを「益税」と呼ぶ場合があります。

ただし、2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されており、免税事業者が発行する請求書は「適格請求書(インボイス)」として認められません。取引先(課税事業者)は免税事業者への支払いについて仕入税額控除ができないため、取引に影響が出るケースがあります。免税事業者のインボイス対応の選択肢を参考に、免税事業者のままでいるか課税事業者に登録するかは、取引先の構成(法人か個人か)と売上規模を踏まえて判断してください。

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▶ 今すぐやること: 2年前(前々年)の課税売上合計を確認し、1,000万円を超えているか確認してください(10分)

Q: インボイス登録をした場合、免税事業者に戻ることはできますか?

A: 適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)として登録した後でも、一定の手続きを経て登録を取り消すことは可能です。取り消し後は再度免税事業者になる条件(前々年の課税売上が1,000万円以下等)を満たす必要があります。

Q: 起業初年度は必ず免税事業者ですか?

A: 個人事業主の場合、開業年と翌年は基準期間の売上が存在しないため、原則として免税事業者になります。ただし、開業時に消費税課税事業者選択届出書を提出した場合は、自らの意思で課税事業者になることができます。インボイス対応が必要な取引がある場合はこの選択を検討してください。

フリーランスの課税売上を3分で診断

自分の税務上の状況を把握するために、以下の質問に沿って確認してください。

Q1: 今年の確定申告における事業所得が48万円(基礎控除額)を超えていますか?

Yes → Q2へ進んでください。No → 原則として確定申告の義務はありませんが、源泉徴収されている場合は還付申告が可能です。国税庁の確定申告特集ページで確認してください。

Q2: 前々年(2年前)の課税売上は1,000万円を超えていましたか?

Yes → 今年から消費税課税事業者です。「本則課税」または「簡易課税」いずれかの方式で消費税を申告・納付する必要があります。No → Q3へ進んでください。

Q3: 前年の1月1日から6月30日の課税売上は1,000万円を超えていましたか?

Yes → 今年から消費税課税事業者です(特定期間による判定)。消費税申告の準備を開始してください。No → 今年は免税事業者として消費税の納付義務はありません。ただしインボイス登録の有無によって取引先への影響が異なるため、取引実態を確認してください。

課税事業者に該当した場合は、消費税の申告方式(本則課税か簡易課税か)の選択が必要です。消費税の簡易課税制度を選択できるのは前々年の課税売上が5,000万円以下の場合で、業種別のみなし仕入れ率を使うことで計算が簡略化されます。コンサルタント・デザイナー等は第5種(みなし仕入れ率50%)が適用されます。

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▶ 今すぐやること: 2年前と前年上半期(1月~6月)の課税売上金額を会計記録から確認し、1,000万円との比較メモを作成してください(10分)

Q: 青色申告と白色申告で所得の計算方法は変わりますか?

A: 所得の基本計算式(売上-必要経費=所得)は同じです。青色申告では最大65万円(電子申告かつ複式簿記の場合)または10万円の青色申告特別控除を所得から追加で差し引けます。白色申告には特別控除がありません。同じ売上・経費でも、青色申告を選択することで課税所得を最大65万円圧縮できます。

Q: アルバイト収入がある場合、売上と合算しますか?

A: アルバイト収入(給与)は「給与所得」として分類され、フリーランスの「事業所得」とは別の所得区分です。確定申告では両方を合計した「総所得金額」を計算しますが、給与所得には給与所得控除が自動的に適用されます。事業所得とは別に計算した上で合算してください。

フリーランスの課税売上は2事例で比較

消費税と源泉徴収が同時に発生するケースは、実務上の計算が複雑になりやすい部分です。業務委託報酬の受け取り時に「結局いくら来るのか」と実際の金額が分からないまま進めてしまうと、資金繰りが乱れる原因になります。

ケース1(消費税・源泉徴収あり・正確に把握して対応したケース)

Webデザイナーの田中さん(仮名)は取引先から「デザイン費20万円+消費税10%=合計22万円、ただし源泉徴収税額(税抜報酬20万円×10.21%=20,420円)を差し引く」という条件で業務委託を受けました。請求書の段階で計算を正確に把握していたため、実際の受取額が199,580円であることを事前に把握し、資金繰りに織り込んでいました。

「業務委託費20万円+消費税10%=22万円、そこから源泉徴収額(税抜報酬×10.21%)が差し引かれて実際の受取は199,580円」という実務例があります(freee公式Q&A:確定申告)。源泉徴収の計算を把握していなかった場合、受取額が予想より約2万円少なく資金繰りが乱れる可能性がありました。個人事業主の源泉徴収の仕組みを事前に理解しておくことで、このようなトラブルを防げます。

ケース2(消費税の扱いを誤認して損をしたケース)

ITエンジニアの山田さん(仮名)は免税事業者であるにもかかわらず、請求書に消費税を記載していませんでした。取引先から「免税なら消費税不要」と言われたためです。しかし免税事業者であっても消費税を上乗せ請求することは適法であり、受け取った消費税相当額は納付不要のため手元に残ります。

免税事業者が消費税を請求しなかったケースとして、「後から課税事業者でも免税事業者でも請求できると知った」という事例があります(Freenance:売上・収入・所得の定義と税計算例)。税抜売上600万円の場合、消費税を適切に上乗せ請求していれば年間60万円(消費税10%分)が手元に残った計算になります。

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▶ 今すぐやること: 直近の請求書を1枚確認し、消費税の記載有無と源泉徴収の計算が正しいかをチェックしてください(5分)

Q: 源泉徴収された税金は返ってきますか?

A: 確定申告で年間の所得税額を計算し、源泉徴収された合計額の方が多い場合は差額が還付されます。源泉徴収された金額は「所得税の前払い」であり、申告書に「源泉徴収税額」として記入することで精算されます。還付申告は確定申告期間外でも5年以内であれば申請可能です。

Q: 消費税の本則課税と簡易課税はどちらが有利ですか?

A: 経費(仕入れ)が多い業種は本則課税の方が有利になる場合があります。コンサルタントやライター等の経費が少ない業種は、みなし仕入れ率50%の簡易課税を選んだ方が納付額が少なくなるケースが多いです。売上・経費構成によって数字が変わるため、試算してから選択してください。

フリーランスの課税売上管理は5つの仕組みで解決

競合記事の多くは「帳簿をつけましょう」という一般論にとどまっています。ここでは課税売上管理と申告精度を高める、実務で即日使える5つの仕組みを解説します。

ハック1: 月次の課税売上累計確認で消費税義務発生を6か月前に把握

【対象】: 売上が年間600万円以上のフリーランスで、消費税の納税義務発生時期を把握したい方

【手順】: 毎月末に課税売上の月次累計を確認し、年換算で1,000万円ラインに近づいていないかチェックします(所要時間5分/月)。次に前年の1月から6月の課税売上合計を7月1日時点で確認し、特定期間基準(1,000万円超)に該当するか判定します。該当する場合は当年内に消費税申告の準備を開始してください。

【コツと理由】: 「1,000万円が見えてきた時点(残り200万円)で準備を始める」と課税事業者移行後の混乱を防止できます。消費税の申告方式(本則課税 vs 簡易課税)の選択は原則として事前届出が必要であり、超えてから慌てて決めると最適な方式を選べない可能性があります。前々年の実績が判定ラインに近い場合は6か月前から準備を開始することで、簡易課税の届出期限(適用を受けようとする課税期間の開始日の前日まで)に余裕をもって対応できます。

【注意点】: 消費税の納税義務判定に「今年の売上」を直接使う必要はありません。今年の売上が判定に影響するのは最短でも翌々年からです。不要な届出書の提出は避けてください。

ハック2: 請求書5点セットで消費税と源泉徴収の誤記をゼロにする

【対象】: 業務委託報酬の請求書に消費税・源泉徴収を正確に記載したいフリーランス全般

【手順】: 請求書に必ず含める5点セットを定型化します。税抜報酬金額・消費税額(10%または8%)・税込合計金額・源泉徴収税額(税抜報酬×10.21%)・差引振込請求額の5項目を毎回記載します(所要時間:テンプレート作成30分、以降は1分/件)。また取引開始時に取引先の課税事業者・免税事業者の区分と源泉徴収の要否を書面で確認してください。不明点は請求書送付前にメールで確認することで、支払後の修正を防げます。

【コツと理由】: 実務では「消費税の課税区分」と「源泉徴収の対象判定」が記載されている請求書の方がトラブルが少なくなります。源泉徴収の計算対象は税抜報酬額(消費税を除いた金額)であり、消費税込みの金額に10.21%をかけると過少控除になります。5点セットを定型化することで経理処理の速度が上がり、取引先からの問い合わせ対応時間を短縮できます。

【注意点】: 個人へ支払われる給与・賃金以外の業務委託報酬には原則として源泉徴収が必要です。ただし法人が支払者の場合と個人が支払者の場合では源泉徴収の要否が異なります。「法人取引先は必ず源泉徴収する」「個人取引先は不要なケースもある」というルールを先に確認し、判断が難しい場合は取引先の経理部門に問い合わせてください。

ハック3: 青色申告特別控除65万円を確実に取るための3要件チェック

【対象】: 青色申告を選択しているまたは今後選択を検討しているフリーランスで、控除額を最大化したい方

【手順】: まず青色申告承認申請書を開業から2か月以内(または申告年の3月15日まで)に税務署へ提出しているか確認します(所要時間5分)。次に会計ソフトまたは帳簿が「複式簿記」に対応しているか確認します。freee・マネーフォワードクラウド・弥生のいずれかを使用していれば自動的に複式簿記が記録されます。最後にe-Tax(電子申告)で申告書を提出しているかを確認します。この3要件(青色申告承認・複式簿記・電子申告)をすべて満たした場合のみ65万円控除が適用されます。

【コツと理由】: 「青色申告を選べば自動的に65万円控除になる」という誤解があります。実際には「複式簿記+電子申告」という2つの追加要件を満たして初めて65万円控除になります。複式簿記の要件を満たさない場合の控除額は10万円であり、55万円の差が生じます。所得税率が20%の場合、65万円控除と10万円控除の差額55万円に20%をかけると年間11万円の納税額の差になります。会計ソフトの月額費用(1,000円前後)を大きく上回る節税効果があるため、未導入の場合は早期に導入してください。

【注意点】: 青色申告承認申請書の提出期限は「申告したい年の3月15日まで」(開業初年の場合は開業日から2か月以内)です。この期限を1日でも過ぎると当年は白色申告になるため、開業直後または年初に確認してください。申請書を提出済みかどうかわからない場合は、税務署に電話で確認すれば答えてもらえます。窓口に行く必要はありません。7

ハック4: 必要経費の記録を「事業目的の説明」付きで管理し否認リスクをゼロにする

【対象】: 経費計上の判断に迷いがあるフリーランスで、税務調査のリスクを下げたい方

【手順】: 支出が発生した際に、金額・日付・支払先に加えて「事業目的(1行以内)」を帳簿に記録します(所要時間30秒/件)。通信費であれば「業務用スマートフォンの月額料金」、書籍代であれば「Pythonの学習のためのプログラミング書籍」のように記録します。また自宅兼事務所の家賃・光熱費は「業務使用割合」(自宅床面積のうち事務所スペースが20%なら20%)を算出し、その割合を経費として計上します。この「按分計算の根拠」をメモとして残しておくと、税務調査時に証拠として提示できます。

【コツと理由】: 実務では「事業との関連性を説明できるかどうか」が否認の分かれ目になります。税務調査では「なぜこの支出が事業に必要だったのか」を問われることがあり、目的が記録されていない経費は否認されるリスクがあります。事業目的を1行記録しておくだけで、調査時の説明負担が大幅に軽減されます。経費として認められないケースの多くは「金額が大きい」のではなく「説明が不十分」という理由によるものです。

【注意点】: 生活費と事業費が混在する項目(スマートフォン・自宅家賃等)は全額を経費計上できません。「仕事で使った時間の割合」「スペースの割合」等で按分する必要があります。家事按分割合の決め方と根拠の作り方を参考に、実態に即した按分率を設定することが重要です。100%経費計上しようとすると調査時に問題になることがあります。

ハック5: 売上1,000万円前後での「免税 vs 課税」判断を試算で選ぶ

【対象】: 年間売上が800万円から1,200万円の範囲にあるフリーランスで、課税事業者登録の判断に迷っている方

【手順】: まず年間の課税仕入れ(外注費・ソフトウェア・機材購入等)の消費税相当額を合計します(所要時間30分)。次に課税売上に含まれる消費税相当額を計算します(課税売上×10/110)。「課税売上の消費税-課税仕入れの消費税」が本則課税での納付額です。次に簡易課税での納付額を計算します(課税売上の消費税×(1-みなし仕入れ率))。両方の金額を比較し、少ない方の計算方式を選択してください。この試算を毎年更新することで最適な申告方式を維持できます。

【コツと理由】: 本則課税と簡易課税のどちらが有利かは、取り扱う業種と経費構成によって最適解が変わります。コンサルタント・ライター・デザイナーは経費(仕入れ)が少ないため、みなし仕入れ率50%の簡易課税の方が有利になるケースが多いです。ITエンジニアでクラウドサービスの外注費が売上の40%以上を占める場合は、本則課税の方が実際の仕入税額控除が大きくなることがあります。年間10万円前後の差が生じることもあるため、毎年試算してから選択してください。

【注意点】: 簡易課税を選択した場合は、原則として2年間は変更できないルールがあります(消費税法第37条第2項)。選択後に経費が急増しても本則課税に戻すことができないため、翌年以降の経費見込みを考慮した上で選択してください。2年分の事業計画を踏まえて決定することが重要です。

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▶ 今すぐやること: 上記5つのハックから「月次課税売上確認(ハック1)」を今月分から開始し、会計ソフトに課税売上の月次レポートを設定してください(10分)

Q: 必要経費として認められる費用はどこで確認できますか?

A: 国税庁の「タックスアンサー(No.2210)」に必要経費の判定基準が記載されています。国税庁:必要経費に関するタックスアンサーで具体的な項目を確認してください。家賃・通信費・書籍費・消耗品費は一般的に認められますが、按分計算が必要なものは割合の根拠を記録しておく必要があります。

Q: 小規模企業共済は節税効果がありますか?

A: 小規模企業共済の掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。月額最大7万円(年間84万円)まで拠出可能であり、課税所得が500万円の場合に84万円の控除を適用すると所得税・住民税合計で概算20万円前後の節税効果が見込まれます(実際の節税額は税率によって異なります)。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営するため信頼性が高く、個人事業主の退職金制度として活用できます(中小機構:小規模企業共済)。

フリーランスの課税売上を正確に把握する:申告精度を高める3つのポイント

フリーランスの税務の核心は「所得税は所得(売上-経費)に課され、消費税の義務は課税売上1,000万円が判定ライン」という2点に集約されます。「売上」「収入」「所得」「課税所得」「課税売上」という5つの用語は確定申告で使う場面が異なるため、混同したまま申告すると計算ミスや過剰納税につながります。青色申告の65万円控除・必要経費の正確な記録・消費税納税義務の事前把握という3つを実践することで、税負担を合法的に最小化しながらコンプライアンスを保った申告が可能になります。

今年の売上と経費の数字を集計し、「所得=売上-経費」の実数を把握することから始めてください。その数字が48万円以下なら申告義務はなく、48万円を超えるなら青色申告特別控除の適用可否を確認してください。消費税については前々年の課税売上1,000万円という基準を毎年確認するだけで、突然の課税事業者移行による混乱を防ぐことができます。

状況次の一歩所要時間
売上・所得の数字が不明会計ソフトで年間収支レポートを出力15分
消費税義務の判定を確認したい前々年の課税売上合計を帳簿から抽出10分
青色申告65万円控除を取りたい電子申告(e-Tax)の設定と複式簿記の導入確認1時間
経費の正確な記録を始めたい会計ソフトに「事業目的」のメモ欄を追加して今月分から記録開始30分
課税事業者移行の試算をしたい年間の課税仕入れ消費税額を集計して本則 vs 簡易を比較30分

フリーランスの課税売上に関するよくある質問

Q: 売上が100万円しかないフリーランスでも確定申告が必要ですか?

A: 事業所得が48万円(基礎控除額)を超えた場合に確定申告の義務があります。売上100万円から必要経費を差し引いた所得が48万円以下であれば、確定申告の義務はありません。ただし、源泉徴収されている場合は還付を受けるための申告が有利です。給与所得と合算する場合は別途確認が必要です。

Q: 課税売上と所得は何が違いますか?

A: 課税売上は消費税計算のための概念であり、消費税が課税される取引の売上合計です。所得は所得税計算のための概念であり、売上から必要経費を差し引いた利益に相当します。課税売上は消費税の納税義務の判定に、所得は所得税の計算に、それぞれ別々に使用します。この2つを混同すると、消費税の申告を誤る原因になります。

Q: 消費税を請求していない場合でも課税売上に含まれますか?

A: 含まれます。課税売上は「消費税を受け取ったかどうか」ではなく「消費税が課される取引の売上金額」です。消費税を請求していない場合も、その取引が消費税の課税対象取引であれば課税売上に算入します。免税事業者として消費税を請求しないことと、課税売上の集計は別の問題です。

【出典・参照元】

freee公式:フリーランスの税金の種類と節税対策

koyano-cpa.gr.jp:個人事業主とフリーランスの違い

マネーフォワード:フリーランスでも消費税を払わなければならない場合

弥生:フリーランスの納める税金ガイド

freee公式Q&A:確定申告

Freenance:売上・収入・所得の定義と税計算例

国税庁:確定申告特集ページ

国税庁:必要経費に関するタックスアンサー

国税庁:青色申告特別控除(タックスアンサーNo.2072)

国税庁:所得税の税率(タックスアンサーNo.2260)

中小機構:小規模企業共済