目次

この記事でわかること

在宅作業時間を基準にすると按分比率は20〜40%が目安で、月額料金×比率の計算1本で経費額が決まります。スマホ代とネット代はそれぞれ別の基準で按分すると税務調査時の説明力が上がります。会計ソフトの自動設定を使えば、毎月の計算作業は10分以内に完結します。

フリーランスの通信費は月額料金×按分比率で経費額が決まり、在宅作業時間を基準にすると20〜40%が目安です。国税庁の家事関連費規定に基づき、この記事では計算式・仕訳・税務調査対策まで5ステップで解説します。

この記事の結論

フリーランスの通信費按分は「月額料金×事業利用比率」の計算式1つで完結し、在宅作業時間を記録すれば税務調査にも対応できます。スマホ代とネット代はそれぞれ異なる基準で按分し、継続して同じ計算根拠を使うことが否認リスクを下げる最大のポイントです。計算そのものよりも「なぜその比率なのか」を説明できる記録を残すことが、実務上の核心です。

今日やるべき1つ

今月の通信費の請求書を開き、スマホ代とネット代の月額をメモして按分比率(事業時間÷総時間)を計算してください(15分)。

状況別ショートカット

状況読むべきセクション所要時間
按分比率の計算式を今すぐ知りたい通信費按分は3基準で計算3分
仕訳の書き方が分からない通信費の仕訳は2パターン3分
税務調査が不安で根拠資料の作り方を知りたい税務調査は根拠資料で対応5分
スマホとネット代の違いを整理したいスマホとネット代は別基準で按分3分
会計ソフトでの設定方法を知りたい通信費按分は5つの仕組みで管理5分

通信費按分は3基準で計算

家事按分とは、事業と私用が混在する支出のうち、事業に使った分だけを必要経費として計上する考え方です。国税庁の所得税基本通達45条では、家事関連費の経費算入には「業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合」という条件が定められています。実務では、この「区分できる状態」を作ることが計算の出発点になります。家事按分割合の費用別の決め方と根拠の作り方については別記事でも詳しく解説しています。

按分比率の基本計算式は月額×比率

経費計上額を計算する基本式は「月額料金×按分比率=経費計上額」です。月額6,000円のスマホ代で事業利用比率が24%なら、6,000円×0.24=1,440円が経費になります。月額15,000円の回線で28%なら4,200円です。計算自体は単純な掛け算ですが、「按分比率をどう算出するか」に実務の大半の労力が集中します。比率の計算根拠を1度確立すれば、毎月の計算は5分以内で完結します。

使用時間・使用日数・使用量の3基準

按分比率を求める方法は、使用時間ベース・使用日数ベース・使用量ベースの3種類があります。使用時間ベースは「1日のうち業務に使った時間÷その日の総使用時間」を平均した値で、在宅フリーランスに最も適合します。使用日数ベースは「月の業務稼働日数÷月の総日数」で、外出が多い職種や移動中に業務利用が多い場合に説明しやすい基準です。使用量ベースは通話明細やデータ使用量を実際に集計する方法で、手間はかかりますが根拠として最も説得力があります。どの基準を選んでも問題ありませんが、選んだ基準を毎月変えると税務調査時に一貫性を問われます。基準の「正確さ」よりも「継続性」が実務では重視されます。

按分比率の目安は20〜40%

実務上、フリーランスの通信費の按分比率は20〜40%の範囲に収まることが多いです(マネーフォワード「インターネット費用の経費算入」)。1日8時間労働で業務のみスマホを使うケースでは、8時間÷24時間=33%という計算になります。これは目安であり、業務時間が長いフリーランスが40%を超える比率を設定することも、業務実態を記録して説明できれば問題ありません。50%を超える場合は税務調査で実態確認が求められやすいため、記録の密度を上げてください。なお通信費按分割合は50〜70%が目安という解説もあり、業務形態によって異なります。

CHECK

▶ 今すぐやること: 今月のスマホ代とネット代の月額を請求書で確認し、1日の業務使用時間をメモして按分比率を1つ計算する(15分)

Q: 按分比率に法的な上限はありますか?

A: 所得税法上、明確な数値上限は定められていません。業務の実態に基づく合理的な根拠があれば認められます(国税庁「必要経費の知識」)。50%を超える場合は根拠記録を厚くしてください。

Q: 青色申告と白色申告で按分の扱いは違いますか?

A: 家事按分の基本的な計算方法は青色・白色どちらも同じです。白色申告でも業務上の必要性と実態が説明できれば経費として認められますが、青色申告は帳簿の整備義務があるため記録が整いやすい利点があります。

要点整理

本セクションの要点を整理します。計算式は「月額×按分比率」の1本のみです。3つの基準(時間・日数・使用量)から1つを選んで固定してください。50%超の場合は記録の密度を上げてください。

スマホとネット代は別基準で按分

スマホ代とインターネット代を同じ割合で按分しているケースは多いですが、実務では別々の基準で計算することが説明力を高めます。費目ごとに根拠を分けると、税務調査時に「なぜその割合なのか」を具体的に説明できる状態になります。

スマホ代は通話と通信に分けて計算

スマホ代の按分では、通話料と通信料(データ通信費)を分けて考えると根拠が明確になります。通話料については、通話明細から業務通話の合計時間または金額を抽出し、全通話に占める業務通話の割合を算出する方法が根拠として最も強いです。大手キャリアは月次の通話明細を無料でダウンロードできるため、業務通話に「★」や「業務」と手書きメモするだけで1ヶ月の記録が完成します。データ通信については業務利用分を完全に切り分けることが難しいため、在宅作業時間ベースの按分比率を適用することが一般的です。スマホ代全体に1つの比率をかけるより、この2段階の計算をすることで、税務調査時に「どう計算したか」を説明しやすくなります。

ネット代は在宅作業時間で計算

自宅のインターネット回線代は、家族と共用しているケースが多く、按分計算で最も迷いやすい費目です。個人事業主が在宅で業務をしている場合、在宅作業時間ベースの計算が実態に即しています。1日10時間のうち業務が6時間なら、6÷10=60%が按分比率の候補になります。家族も同じ回線を使っている場合は、個人の業務使用時間÷世帯全員の総使用時間で計算すると説明力が上がります。月額5,000円の回線で30%按分なら1,500円が経費です。週単位で業務時間をメモするだけで根拠として成立します。また家事按分計算ツールを使った5つの仕組みで確定申告を正確化する方法も参考になります。

事業専用回線を分けると按分が不要になる

按分計算の手間を根本から解消する方法として、事業専用のSIMやモバイルルーターを契約する選択肢があります。専用回線の費用は全額経費として計上でき、按分比率の計算も根拠記録も不要になります。月額1,500〜3,000円程度の格安SIMを業務専用にするだけで、毎月の計算作業がゼロになります。ただし実際に専用端末として使い分けをしていないと、名目だけの「専用」とみなされるリスクがあります。端末・SIMカード・ストレージのアカウントを物理的に分けることがセットで必要です。

CHECK

▶ 今すぐやること: スマホの通話明細をダウンロードし、直近1ヶ月の業務通話に印をつけて業務通話比率を計算する(20分)

Q: 家族と同じスマホ契約を業務でも使っている場合、按分できますか?

A: 業務利用の実態があれば按分可能です。家族名義の回線でも、実際に業務で使用している事実と使用比率を説明できる記録があれば経費算入できます。家族名義の場合は名義と使用実態の乖離を説明できるようにしておいてください。

Q: 複数のスマホを持っている場合はどうなりますか?

A: 1台が業務専用であれば全額経費、もう1台が私用専用であれば経費計上不可、というシンプルな管理が最も安全です。複数台すべてを按分する計算は複雑になるため、可能であれば用途で端末を分けてください。

要点整理

スマホ代は通話料とデータ通信料を分けて按分してください。ネット代は在宅作業時間÷総使用時間で計算してください。月の通信費が10,000円を超える場合は専用回線の分離が費用対効果の高い選択です。

通信費の按分をどう判断するか3分で診断

「自分の通信費の按分方法は適切か」を3分で判定できます。

Q1: 業務専用の回線または端末を所有していますか?

Yesの場合はResult Aへ。Noの場合はQ2へ。

Q2: 1日の業務使用時間を記録またはおおよそ把握していますか?

Yesの場合はQ3へ。Noの場合はResult Dへ。

Q3: 毎月同じ計算基準(時間・日数・使用量)を継続して使っていますか?

Yesの場合はResult Bへ。Noの場合はResult Cへ。

Result A: 全額経費計上が可能

業務専用回線・端末は按分不要で全額経費です。月額費用を「通信費」で全額計上してください。専用性を維持するため、私用利用は月1〜2回以内に抑えてください。

Result B: 現状の方法を継続

計算基準と記録が整っています。毎月の計算を同じ手順で継続し、請求書と業務時間記録を7年以上保管してください(所得税法上、帳簿書類の保存期間は原則7年です)。

Result C: 基準を1つに固定する必要あり

按分比率の根拠はあっても、基準が月によってバラついていると税務調査で一貫性を問われます。今月から使用時間・日数・使用量のいずれか1つに絞って固定し、その基準を記録してください。

Result D: 業務時間の記録から始める

記録がない状態では按分の根拠を作れません。週単位で業務時間をメモするシートを作成し、1ヶ月後に按分比率を計算してください。0から始める場合は「週40時間労働のうち業務使用8時間」のような概算でも、その根拠をメモとして残せば一定の説明力があります。

CHECK

▶ 今すぐやること: 自分のResult(A〜D)を確認し、Result Dの場合は今日から業務時間メモを開始する(5分)

Q: 記録なしで按分している場合、さかのぼって修正できますか?

A: 過去分は通話明細やカレンダー記録から概算の根拠を作成することが可能ですが、精度は現時点からの記録に劣ります。今年度の確定申告に向けて、今月から記録を始めることを優先してください。

Q: 副業として行っているフリーランス業務の場合、按分の考え方は変わりますか?

A: 基本的な計算方法は同じです。副業の業務時間は本業より短くなるため、按分比率は低くなる傾向があります。業務に使った時間を副業と本業で分けて記録しておくと説明しやすくなります。

重要ポイント

診断結果に応じて次の一手が決まります。Result A以外は全員、記録の仕組みを今月中に作ることが先決です。

通信費の仕訳は2パターン

通信費の仕訳には、按分後の金額を直接計上するシンプルな方法と、全額計上後に私用分を振替する方法の2パターンがあります。どちらも税務上認められており、会計ソフトの使い方や管理の好みに合わせて選択できます。

按分後の金額を通信費で直接計上

最も簡単な方法は、按分後の経費額のみを「通信費」として計上し、残りは帳簿に記録しない方法です。月額6,000円×40%=2,400円の場合、借方と貸方の数字を合わせるため、以下の仕訳になります。

借方金額貸方金額
通信費2,400円普通預金6,000円
事業主貸3,600円

この処理を選ぶ場合は毎月の計算が必要になりますが、帳簿が見やすくシンプルです。

全額計上後に事業主貸で振替

もう1つの方法は、いったん全額を「通信費」として計上し、月末または年末に私用分を「事業主貸」へ振替する方法です。月中は以下のとおり計上します。

借方金額貸方金額
通信費6,000円普通預金6,000円

月末に私用分3,600円を振替します。

借方金額貸方金額
事業主貸3,600円通信費3,600円

この処理は会計ソフトの按分機能と相性が良く、freeeやマネーフォワードでは固定の按分比率を設定すれば自動で振替仕訳を生成できます(freee「家事按分の計算・仕訳方法」)。手動で計算する手間を省きたい場合はこの方法が実務的です。

勘定科目は「通信費」を使用

インターネット回線料・スマホ代・通話料はすべて「通信費」の勘定科目を使います。切手代や速達料金も通信費として計上して問題ありません。ただし電話機や端末の購入費用は「消耗品費」または「備品」として区別して計上します。購入価格が10万円未満なら消耗品費、10万円以上なら備品として減価償却の対象になります(所得税法施行令138条・139条)。端末代を通信費に誤計上するケースは税務調査で指摘されやすいため、購入時に勘定科目を確認する習慣をつけてください。個人事業主の勘定科目一覧と5分類の整理も合わせて確認することをお勧めします。

CHECK

▶ 今すぐやること: 会計ソフトの設定画面を開き、通信費の按分比率を固定設定できる機能があるか確認する(10分)

Q: 年間12ヶ月分の仕訳をまとめて処理してもよいですか?

A: 確定申告時にまとめて処理することは可能ですが、月次で処理しておくと年末の作業が大幅に減ります。毎月の請求書が届いたタイミングで仕訳するルーティンを作ってください。

Q: クレジットカード払いの場合、仕訳の日付はいつになりますか?

A: 発生主義を適用するため、サービスを利用した月の日付(通常は請求日または月末)で計上することが一般的です。口座引落日ではなく、請求書の発行日を基準にしてください。

確認事項

2パターンのうち、会計ソフトを使っている場合は全額計上後の振替方式が自動化しやすいです。勘定科目は「通信費」に統一し、端末購入費は必ず別科目で処理してください。

税務調査は根拠資料で対応

税務調査で問われるのは「按分比率が何%か」ではなく「なぜその割合にしたのか」の説明です。実態に基づかない低い比率は経費の取りこぼしになります。根拠資料が揃っていれば、実態に即した比率は正当に主張できます。個人事業主の税務調査が来ない確率と7年分遡及リスクについても事前に把握しておくと安心です。

根拠資料は3種類を揃える

税務調査に備えて残すべき根拠資料は、請求書・使用実態記録・計算根拠メモの3種類です。請求書は通信キャリアのマイページからPDFで毎月ダウンロードして保存します。使用実態記録はカレンダーの業務日・Googleカレンダーの業務予定・スマホのスクリーンタイムなど、業務使用を示すデジタル記録が有効です。計算根拠メモは「〇年〇月:在宅業務時間7時間/1日の総使用時間12時間=58%、ただし家族共用のため÷2で29%を適用」のような計算式をメモ帳やスプレッドシートに残すだけで十分です。記録媒体の豪華さより、毎月同じ形式で継続することが説得力を生みます。所得税法上、帳簿書類の保存期間は原則7年(青色申告)または5年(白色申告)です。

税務調査で否認されるパターンを避ける

税務調査で家事按分が否認されるパターンには、根拠のない高い比率・年によって比率が大きく変わる・請求書や明細を紛失している・専用端末と言いながら私用記録が残っているの4つが代表的です(税理士法人「税務調査と家事按分」)。比率の一貫性は特に重視されており、昨年は20%・今年は50%という変化がある場合は、変化した理由を説明できる記録(業務量の増加・家族構成の変化など)が必要です。反対に、実態に則した高い比率も記録があれば認められます。

税務調査でやらなくていいことを知る

「税務署に事前に確認を取る必要がある」「按分比率を申告書に記載しなければならない」という思い込みは不正確です。按分比率は申告書への明記は不要であり、事前確認も必須ではありません。準備すべきは根拠資料であり、税務調査が来た場合に説明できる状態にしておくことで十分です。日々の記録に時間を使うことが実務上の正解です。

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▶ 今すぐやること: Googleスプレッドシートに「通信費按分記録」シートを作成し、今月の計算式と比率を入力する(15分)

Q: 税務調査の際、按分比率を下げるよう言われたらどうすればよいですか?

A: 根拠資料があれば主張を維持できます。調査官に説明できる記録(業務時間のカレンダー・通話明細)を提示してください。根拠なく指摘に従う必要はありません。

Q: 過去3年分の記録が手元にない場合はどうすればよいですか?

A: キャリアのマイページで通話明細は過去数年分ダウンロードできることが多いです。業務時間の記録はカレンダーや業務記録から復元し、概算でも計算根拠として記録に残してください。

要点整理

根拠資料の3点セット(請求書・使用実態記録・計算根拠メモ)を毎月同じ形式で積み上げることが、税務調査対策の全てです。比率の高低より一貫性が問われます。

通信費按分は5つの仕組みで管理

通信費の按分を毎月続けることへの負担感は大きいですが、仕組みを作れば1回あたりの作業は10分以内に収まります。5つのハックを組み合わせることで、計算・記録・保管のすべてを自動化または最小化できます。

ハック1: 会計ソフトの按分設定で計算ゼロにする

【対象】: 毎月の家事按分計算に時間をとられているフリーランス全員

【手順】: freeeまたはマネーフォワードの設定画面で「按分ルール」を開き、通信費の按分比率(例:30%)を登録します(10分)。次に、銀行口座またはカードを会計ソフトと連携し、通信費の自動取得を設定します(15分)。翌月から取引が自動分類され、按分後の経費額が自動計上される状態を確認してください(5分)。

【コツと理由】: 「最初に1度設定する」だけで以後の計算がゼロになります。会計ソフトの按分機能は固定比率を1度登録すれば、連携した口座・カードの通信費を自動的に分割仕訳します。この仕組みが機能する前提は、月額料金が固定で大幅に変動しないことです。使用量に応じて料金が変わるプランは、月ごとの手動修正が必要になります。

【注意点】: 連携設定後に通信プランを変更した場合、按分比率の再設定が必要です。会計ソフト側のルールは自動更新されないため、プラン変更時に必ず設定を見直してください。

ハック2: スクリーンタイムで按分根拠を30秒で記録

【対象】: 業務使用時間の記録方法が分からないフリーランス

【手順】: iPhoneは「設定→スクリーンタイム」、Androidは「デジタルウェルビーイング」で月間の業務アプリ使用時間を確認します(5分)。業務関連アプリ(Slack・メール・GoogleDocs等)の合計時間を総使用時間で割り、按分比率の根拠値を算出します(5分)。月末にスクリーンショットを撮影してフォルダに保存し、計算根拠として記録してください(1分)。

【コツと理由】: スマホのスクリーンタイムをスクリーンショットするだけで、税務調査に対応できるデジタル証拠が完成します。スクリーンタイムはOSが自動集計するため、自己申告の時間記録より客観性が高く、税務調査時の説明材料として機能します。ただしゲームやSNSを業務用アカウントで使っている場合は業務アプリのみ抽出する必要があるため、仕事用と私用のアプリを意識して分けておくことが前提です。

【注意点】: スクリーンタイムはデバイスをリセットすると過去のデータが消えます。月末に必ずスクリーンショットを撮って保存する習慣が不可欠です。

ハック3: 通話明細から業務通話比率を月5分で計算

【対象】: 通話料の按分根拠を毎月作れていないフリーランス

【手順】: 月末にキャリアのマイページから通話明細PDFをダウンロードします(3分)。業務通話の相手先(クライアント・取引先・事業関連)の通話に「業」と印をつけ、合計通話時間を集計します(5分)。業務通話時間÷総通話時間を計算し、スプレッドシートに記録してください(2分)。

【コツと理由】: 通話明細から業務通話のみを抽出する方法が、税務上の根拠として最も説得力があります。通話明細は客観的な第三者記録であり、自己申告の時間記録より証拠能力が高いからです。クライアントとの通話が多い営業系フリーランスにとっては、通話明細による実績ベースの按分が、時間ベースより高い比率を正当化しやすいという利点もあります。

【注意点】: LINEやZoomなどのインターネット通話は通話明細に記録されないため、この方法だけでは業務通話の全量を把握できません。インターネット通話が業務の主体の場合は、スクリーンタイム(ハック2)と組み合わせて根拠を補完してください。

ハック4: 按分記録シートで年間管理を1ファイルに集約

【対象】: 按分の根拠記録がバラバラで確定申告時に困るフリーランス

【手順】: Googleスプレッドシートで「通信費按分記録」シートを作成し、月・費目・月額・按分比率・経費額・根拠の6列を設定します(20分)。毎月の通信費請求書が届いたタイミングでシートを更新し、その月の按分比率と計算根拠(例:業務時間7時間/総時間12時間)を入力します(5分)。確定申告時にシートを印刷またはPDFで保存し、根拠資料として7年以上保管してください(青色申告の場合)(5分)。

【コツと理由】: 按分比率の「正しさ」を求めるより、「毎月同じ形式で記録する」ことの方が税務上の価値があります。税務調査では「なぜその割合か」の一貫性が問われるため、フォーマットを統一して継続することが記録の信頼性を生みます。このシートが機能する前提は、毎月の更新を5分で完了できるほどシンプルな設計にすることです。

【注意点】: 毎月の更新を忘れると記録が途切れ、確定申告時にまとめて入力する羽目になります。請求書が届いたタイミングをトリガーにした即時入力ルールを最初に設定してください。

ハック5: 固定費の按分は年1回見直すだけで十分

【対象】: 毎月の按分比率の変動が手間で継続できないフリーランス

【手順】: 年初(または事業開始時)に直近3ヶ月の業務使用時間の平均を計算し、通年の固定按分比率を決定します(30分)。年間を通してその固定比率を使い、会計ソフトに設定します(10分)。翌年の年初に前年の実態と乖離がないか確認し、乖離が5ポイント以上の場合のみ比率を更新してください(15分)。

【コツと理由】: 「年初に固定比率を決めて通年適用する」方法は継続しやすく、合理的な運用として認められています。業務の繁閑による月々の使用時間の差は年間平均で平準化されるため、3ヶ月の平均値を固定比率として使うことで実態との乖離は概ね5%以内に収まります。この計算が機能する前提は、業務形態が年間を通じて大きく変わらないことです。副業開始や働き方の変化があった年は、その時点で比率を見直してください。

【注意点】: 業務量が大幅に増減した年(案件の集中・育児による稼働減など)に前年の比率をそのまま使うことは避けてください。実態と乖離した比率を使い続けると、税務調査で説明できない状況になります。

CHECK

▶ 今すぐやること: 会計ソフトに按分設定がなければGoogleスプレッドシートで按分記録シートを作成し、今月分を入力する(20分)

Q: フリーランスになりたての場合、最初の按分比率はどう設定すればよいですか?

A: 最初の1ヶ月は実際の業務使用時間を意識してメモし、その実態から計算した比率を起点にするのが最も自然です。業務時間の見当がつかない場合は、1日8時間労働・そのうちスマホ業務使用2時間として25%を仮設定し、3ヶ月後に実態と照らし合わせて修正してください。なおフリーランスの開業資金の目安と調達法と合わせて事業の初期費用も把握しておくと安心です。

Q: 複数の取引先があり、クライアントごとに通信費を按分して計上できますか?

A: 通信費は事業全体に共通して使うコストであるため、クライアントごとに分割する必要はありません。事業全体の業務使用比率で1つの按分比率を算出し、一括で経費計上することが実務上の標準的な処理です。

要点整理

5つのハックのうち、まずハック1(会計ソフト設定)とハック4(按分記録シート)を今月中に実装してください。この2つを組み合わせるだけで、計算と記録の大半が自動化されます。

まとめ:通信費按分は記録で決まる

通信費の按分は「月額料金×事業利用比率」の計算式1つで完結します。比率の計算根拠を同じ形式で毎月記録し続けることが、税務上の最重要ポイントです。スマホ代は通話明細、ネット代は在宅作業時間で按分し、会計ソフトの自動化を使えば毎月の作業は10分以内に収まります。按分比率の高低ではなく、一貫した計算根拠の記録が、税務調査でも説明できる唯一の根拠になります。

今から始める最初の一歩は「今月の請求書を開いて月額を確認し、昨日1日の業務使用時間を思い出すこと」です。完璧な記録を目指す必要はなく、メモ1行から積み上げた記録の方が、後から作った精緻なシートより税務上の信頼性は高くなります。

状況次の一歩所要時間
按分比率をこれから決めたい直近1ヶ月の業務時間を計算して比率を算出する15分
記録を始めたいGoogleスプレッドシートで按分記録シートを作成する20分
仕訳を自動化したい会計ソフトの按分設定を登録する15分
税務調査が不安請求書PDFをフォルダにまとめて3年分確認する20分

フリーランス通信費按分に関するよくある質問

Q: 通信費の按分比率は確定申告書のどこに記載しますか?

A: 按分比率自体を申告書に記載する欄はありません。経費として計上した通信費の合計額(按分後)を「通信費」として必要経費の欄に記載するのみです。比率と計算根拠は別途手元で保管してください。

Q: 月によって仕事量が変わる場合、按分比率も毎月変えるべきですか?

A: 毎月変えることは可能ですが、変化の根拠を記録しておく必要があります。繁閑の差が大きい場合は、年間平均比率を固定して使う方が管理しやすく、税務調査時にも説明しやすいです。

Q: 按分できる通信費の費目はスマホ代とネット代だけですか?

A: 業務で使うすべての通信に関わる費用が対象です。固定電話料金・プロバイダ料金・VPN利用料・クラウドストレージの通信コンポーネントなども業務利用があれば按分計上できます(国税庁「所得税基本通達(家事関連費)」)。

Q: 事業開始1年目で実績記録がない場合はどうすればよいですか?

A: 1年目は業務使用の実態に基づく合理的な概算比率(25〜35%程度)を設定し、その根拠をメモとして残してください。「業務形態と1日の業務使用時間の概算から計算した」という説明ができれば、税務上は一定の合理性があるとみなされます。またフリーランスの開業費と節税の仕組みも参考に、1年目から正しく経費処理を整えることをお勧めします。

【出典・参照元】

国税庁「必要経費の知識」

国税庁「所得税基本通達(家事関連費)」

freee「家事按分の計算・仕訳方法」

マネーフォワード「インターネット費用の経費算入」

税理士法人「税務調査と家事按分」