この記事でわかること
請負契約と委任・準委任契約で再委託の可否が正反対になる理由がわかります。再委託を許可する際に最低限必要な「事前承認・NDA・損害賠償条項」の3点を具体的な文言とともに把握できます。3分の診断フローで自分の案件が再委託可能かどうかを即座に判定できます。
請負契約なら再委託は原則自由ですが、委任・準委任契約では発注者の許可が必須です。この記事では契約形態ごとの再委託可否から、許可する際の条件と契約書の文言まで実務視点で解説します。
この記事の結論
再委託は「外注の一種」であり、外注(業務委託)の一部として位置づけられます。請負契約では原則として再委託が認められますが、委任・準委任契約では発注者の事前承認がなければ契約違反となります。どちらの形態に該当するかを契約書で確認し、再委託を認める場合は「事前承認・NDA・品質基準」の3条件を契約書に明記することが最低限必要です。
今日やるべき1つ
現在進行中の業務委託契約書を開き、「請負契約」か「委任・準委任契約」のどちらに該当するかを確認してください(3分)。
状況別ショートカット
| 状況 | 読むべきセクション | 所要時間 |
| 用語の違いを整理したい | 再委託・外注・下請けは3層構造で整理 | 3分 |
| 契約形態ごとの可否を知りたい | 契約形態で変わる再委託の可否は3パターン | 4分 |
| 自分の状況を診断したい | 再委託の可否を3分で診断 | 3分 |
| 許可する際の注意点を知りたい | 再委託リスクを管理する5つの実務ハック | 5分 |
| 実際のトラブル事例を知りたい | 再委託トラブルは2パターンで比較 | 4分 |
再委託・外注・下請けは3層構造で整理
ビジネス現場では混用されがちですが、法的な意味では明確な上下関係があります。「再委託と外注は同じ意味では?」という疑問は多くの実務担当者が抱くもので、この構造を整理することで契約書の読み方が変わります。
外注は最広義の概念、再委託はその一部
外注とは、企業が特定の業務をフリーランスや外部業者に依頼する行為の総称です。発注者から外注先への直接契約であれば、すべて「外注」に該当します。一方、再委託は外注の一形態であり、「一次委託が存在した上で、受託者がさらに第三者に委託する」という構造を持ちます。つまり外注は再委託を包含する概念であり、再委託は必ず外注の一形態として存在します。この構造を把握しておくと、「再委託禁止」と書かれた契約書の意味が即座に理解できます。
業務委託は外注と実質同義
業務委託とは、外部に業務を委託する契約全般を指す言葉であり、外注と概ね同義として扱われます。ただし、業務委託という言葉は契約形態(請負・委任・準委任)によって法的な性質が大きく変わります。外注という言葉が「依頼する行為」を指すのに対し、業務委託は「契約関係の枠組み」を指すニュアンスがある点が実務上の使い分けポイントです。この区別を知っておくと、相手方から「業務委託で」と言われた際に、契約形態の確認を怠るリスクを避けられます。外注契約書テンプレートの必須項目や書き方も合わせて確認しておくと、実務対応がスムーズになります。

下請けは請負契約に限定される狭義の概念
下請けは、請負契約に基づく再度の請負のみを指します。再委託が委任・準委任契約も含む広い概念であるのに対し、下請けは請負契約の中だけに存在する概念です。下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用対象になるのもこの「下請け」関係であり、委任契約に基づく再委託には下請法は原則として適用されません。下請けと再委託を混同したまま下請法の適用を誤判断するケースが実務で最も多く、この違いを押さえることで法的リスクの見落としを防げます。フリーランスへの下請法の適用条件と新法との違いについても把握しておくと判断精度が上がります。

CHECK
▶ 今すぐやること: 手元にある契約書の名称が「請負」「委任」「準委任」のどれかを確認する(3分)
Q: 外注と業務委託はまったく同じ意味ですか?
A: 実質的にはほぼ同義ですが、厳密には「外注」が依頼行為の総称、「業務委託」が契約関係の枠組みを指す言葉です。契約書のタイトルに「業務委託契約」と書かれていても、内容によって請負・委任・準委任のいずれかに分類されます(厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方へ」)。
Q: 再委託は必ず「二重外注」になるのですか?
A: はい、再委託は発注者・一次受託者・再受託者の3者が存在する「二重外注」の構造になります。発注者から直接依頼を受けたフリーランスが、さらに別のフリーランスに一部業務を委託すれば再委託に該当します。
契約形態で変わる再委託の可否は3パターン
「再委託が禁止されるか否か」を理解するには、契約形態の違いが9割を占めます。契約書を1枚確認するだけで判断できます。
請負契約は再委託が原則自由
請負契約とは、「成果物の完成」を目的とした契約です。民法第632条に基づき、仕事の完成があれば手段は問わないため、受託者が第三者に再委託することは原則として認められます(民法第625条第1項は委任契約における復受任者選任の制限を定めており、請負契約には直接適用されません)。ただし、契約書に「再委託禁止」の特約が明記されている場合はその限りではありません。ウェブ制作やシステム開発などで「納品物さえ完成すれば問題ない」という発注形態は多くの場合、請負契約に該当します。したがって、特約なしで再委託が発生しているとしても、契約違反にはなりません。
委任契約・準委任契約は再委託が原則禁止
委任契約は「一定の法律行為の処理」を、準委任契約は「法律行為以外の事務処理」を目的とする契約です(民法第643条・第656条)。この2形態では、受任者は自ら業務を遂行する義務があり(民法第644条の善管注意義務)、発注者の承認なしに第三者に業務を引き渡すことは民法第625条第2項に基づき原則として許可されません。コンサルティング業務やプロジェクトマネジメント、情報システム運用保守などは準委任契約が採用されるケースが多く、再委託には必ず発注者の事前承認が必要です。「フリーランスに任せてあるから大丈夫」という感覚のまま放置すると、そのフリーランスが無断再委託していた場合に契約違反が発生します。準委任契約と請負契約の違いと判断基準を一度確認しておくと、契約形態の識別が速くなります。

特約で再委託を禁止・許可どちらにも設定できる
請負契約であっても、「本業務の再委託を禁止する」という特約を設ければ再委託を制限できます。逆に委任・準委任契約でも、「事前書面承認を条件として再委託を認める」という条項を設ければ許可可能です。重要なのは「契約書に明示的に記載すること」であり、口頭の合意だけでは後日トラブルの原因になります。実務では「一切禁止」と「条件付き許可」の二択で設計するのが最も管理しやすい形式です。
| 契約形態 | 再委託の原則 | 特約による変更 |
| 請負契約 | 可能 | 禁止特約で制限可 |
| 委任契約 | 禁止 | 承認条項で許可可 |
| 準委任契約 | 禁止 | 承認条項で許可可 |
CHECK
▶ 今すぐやること: 契約書の目的条項を確認し、「成果物の完成」か「事務処理の委託」かを判断する(5分)
Q: 契約書のタイトルに「業務委託契約」とだけ書かれている場合、再委託は可能ですか?
A: タイトルだけでは判断できません。契約書の目的条項と業務内容を確認し、「成果物の完成」が目的なら請負、「事務処理の遂行」が目的なら準委任として解釈されます。曖昧な場合は弁護士への確認が確実です(Freee「再委託とは?禁止されるケースや注意点について解説」)。
Q: 準委任契約で発注者に無断で再委託した場合、どのようなリスクがありますか?
A: 契約違反として契約解除の原因となり得ます。また、再委託先が引き起こした損害についても一次受託者が責任を負う場合があります。無断再委託は損害賠償請求のリスクも含むため、事前の書面承認を必ず取得してください。
再委託の可否を3分で診断
以下の診断フローで3分以内に判定できます。
Q1: あなたの立場はどちらですか?
発注者(業務を依頼する側)の場合はQ2へ進んでください。受託者(業務を受ける側)の場合はQ3へ進んでください。
Q2: 締結した契約書に「再委託禁止」の条項がありますか?
禁止条項がある場合はResult A(再委託は契約違反)へ進んでください。禁止条項がない場合はQ4へ進んでください。
Q3: 受託した契約は何を目的としていますか?
「成果物の完成」が目的の場合はQ5へ進んでください。「事務処理・業務の遂行」が目的の場合はResult B(原則として再委託禁止)へ進んでください。
Q4: 契約形態は請負・委任・準委任のどれですか?
請負契約の場合はResult C(再委託は原則自由、ただし品質管理が必要)へ進んでください。委任・準委任契約の場合はResult D(書面承認条項の追加を検討)へ進んでください。
Q5: 発注者から再委託の許可を得ていますか?
書面で許可を得ている場合はResult E(再委託可能、NDA締結を推奨)へ進んでください。許可を得ていない場合はResult B(まず発注者に書面での承認申請が必要)へ進んでください。
Result A: 契約書に禁止条項がある以上、再委託は認められません。発注者に条項の変更交渉をするか、業務をすべて自身で遂行する体制を確保してください(対応時間の目安: 1週間以内)。
Result B: 委任・準委任契約での無断再委託は契約違反です。発注者に書面で再委託承認の申請を行い、NDA締結と品質基準の設定をセットで提案してください(対応時間の目安: 申請から回答まで3〜5営業日)。
Result C: 請負契約で禁止条項がない場合、再委託は原則自由です。ただし一次受託者として再委託先の成果物の品質管理責任を負うため、定期的な進捗確認と最終成果物のチェック体制を整備してください(整備時間の目安: 初回のみ2時間)。
Result D: 委任・準委任契約で現在再委託の許可条項がない場合、契約書を改訂して「書面承認を条件とした再委託許可条項」を追加してください。追加せずに再委託を行うと将来的なトラブルの原因になります(契約書改訂の目安: 弁護士レビューを含め2週間)。
Result E: 書面許可を得た再委託は問題なく実施できます。再委託先との間でもNDAを締結し、発注者の機密情報が保護される体制を確保してください(NDA締結の目安: 3営業日)。
CHECK
▶ 今すぐやること: 上記の診断を実施し、自分がResult A〜Eのどれに該当するかを確認する(3分)
Q: 口頭で再委託の許可を得ていれば問題ありませんか?
A: 口頭での許可は後日「言った・言わない」のトラブルになります。許可は必ずメールまたは書面で記録に残してください。理想的には契約書の変更覚書として保存してください。
Q: フリーランスが発注者に無断で再委託した場合、発注者はフリーランスに損害賠償を請求できますか?
A: 委任・準委任契約の場合、無断再委託は契約違反となるため損害賠償請求が可能です。実際に損害が発生した事実と因果関係の立証が必要になりますが、まず契約解除が認められ、その後に損害賠償請求を行うケースが一般的です。
再委託トラブルは2パターンで比較
実務で起きる再委託トラブルを2つのケースで見ていきます。
ケース1(成功パターン): 準委任契約での再委託を事前承認で適切に処理
IT企業のプロジェクトマネージャーAさんは、大型システム開発案件の一部(フロントエンド実装)を担当フリーランスが対応しきれないと判断した段階で、発注者に対して書面(メール)で再委託承認申請を行いました。申請には再委託先のスキルシート、見積もり、NDA締結済みの証明を添付し、発注者から3営業日で承認を得ました。最終的にプロジェクトは予定納期に完了し、発注者・一次受託者・再受託者の三者間で責任の所在が明確なまま終結しました。
「再委託を検討したとき、まず発注者に相談したら思ったよりすぐ許可してもらえた」というユーザーの報告があります(xDesigner「再委託が原則禁止な業務委託契約の形態と発注前にできるリスク」)。
Aさんが発注者への報告なしに再委託を進めていれば、準委任契約の性質上、契約違反となり途中での契約解除と損害賠償請求のリスクがありました。「許可を得るひと手間」が後のトラブルを防ぎます。
ケース2(失敗パターン): 請負契約での無断多段階再委託による品質崩壊
Webデザイン会社のBさんは、クライアントから請負契約でロゴ・バナー制作の案件を受注しました。納期が迫ったため発注者に報告せずに別のフリーランスCさんに再委託し、CさんもさらにDさんに再委託しました。最終成果物は当初の指示内容と大きく乖離しており、修正費用と納期遅延が発生しました。発注者への報告義務は果たしていたものの、品質管理の責任は一次受託者であるBさんが全面的に負うこととなりました。
「再委託を繰り返すほど伝言ゲームになり、最後に届く成果物が別物になることがある」という声があります(業務委託契約書の達人「再委託と外注の違いは何ですか?」)。
Bさんが再委託先(Cさん)との間で明確な仕様書と中間確認のフローを設定していれば、多段階化による品質劣化は防げました。請負契約では再委託は合法でも、品質管理の責任からは逃れられません。
CHECK
▶ 今すぐやること: 現在進行中の案件で再委託が発生している場合、中間成果物の確認スケジュールを今週中に設定する(30分)
Q: 多段階再委託(二次・三次)は法律で禁止されていますか?
A: 法律で一律に禁止されているわけではありませんが、多段階になるほど品質管理と責任の所在が複雑になります。下請法の適用関係や労働者派遣法との境界線に関しては、公正取引委員会の下請取引適正化推進講習会テキストでも段階的な責任関係の明確化が推奨されています。
再委託リスクを管理する5つの実務ハック
契約書に「禁止」とも「許可」とも書いていない曖昧な状態のまま進めている案件は、以下の5つの仕組みを導入することで主要リスクの大半を事前に防止できます。
ハック1: 再委託禁止特約の明文化で契約違反リスクをゼロにする
【対象】: 発注者として、委任・準委任契約を締結する企業の担当者
【手順】: まず、契約書の業務内容条項を開き「事務処理の遂行」が目的かを確認します(2分)。次に、再委託禁止の特約文言を条項として追加します(例: 「受託者は、本業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない。ただし、発注者の事前書面承認を得た場合はこの限りでない」)(15分)。最後に、弁護士または法務担当者に文言レビューを依頼し、最終確認を行います(3営業日以内)。
【コツと理由】: 「再委託禁止」とだけ書けば十分と思われがちですが、実際には「発注者の事前書面承認を条件とした例外条項」を同時に設けておく方が運用上のトラブルを防ぎます。「禁止のみ」の条項では緊急時に発注者が承認したくてもできない硬直した状態になり、一次受託者が承認申請を躊躇して無断再委託に走ります。例外条項を設けることで承認申請のフローが明確になり、双方の行動が透明化されます。
【注意点】: 口頭許可はトラブルの原因になるため「書面のみ有効」と明記してください。「事前に連絡すればOK」というルールが「事後報告でも問題ない」と解釈されるケースがあるため、「事前・書面・承認取得後」という3要件をセットで明記してください。
ハック2: 再委託承認時のNDA3層構造で情報漏洩リスクを大幅に削減
【対象】: 再委託を許可する発注者・一次受託者のいずれかの立場にある担当者
【手順】: まず、発注者と一次受託者の間のNDA(秘密保持契約)が締結済みかを確認します(5分)。次に、一次受託者と再委託先の間でも同等レベルのNDAを締結するよう一次受託者に要求し、締結証明の提出を求めます(3営業日)。最後に、発注者・一次受託者・再委託先の3者間でNDAの対象情報が一致しているかをチェックリストで確認します(30分)。秘密保持契約書テンプレートの無料作成方法を参考にすると、NDA整備の工数を大幅に削減できます。

【コツと理由】: 「発注者と一次受託者の間だけNDAを結べばよい」と思われがちですが、「一次受託者と再委託先の間のNDA締結を発注者が確認するプロセス」が欠かせません。一次受託者のNDA遵守義務が再委託先に自動的に引き継がれるわけではないため、NDAのない再委託先が情報漏洩を起こした場合、発注者は再委託先に直接請求できません。3層構造にすることで、情報漏洩が発生した際の法的責任の追及先が明確になります。
【注意点】: NDAのひな形をそのままコピーして使い回すのは逆効果です。取り扱う情報の種類(個人情報・技術情報・価格情報)に応じてNDAの対象範囲を個別に設定してください。汎用的なNDAでは「このデータはNDAの対象外」という解釈が生じます。
ハック3: 中間確認フローで多段階再委託の品質劣化を翌週に発見
【対象】: 再委託先を複数使用しているか、再委託先が別の業者に依頼している可能性がある案件の一次受託者
【手順】: プロジェクト開始時に「週次進捗報告(作業完了率・課題・次週計画の3項目)」のフォーマットを作成し、再委託先に送付します(1時間)。次に、全体工程の30%・60%・90%の3時点で中間成果物の確認を実施するスケジュールをカレンダーに登録します(15分)。最後に、中間確認で仕様との乖離が10%以上発生していた場合の修正対応フロー(誰が・何を・いつまでに)を1枚の文書にまとめます(30分)。
【コツと理由】: 「最終納品前に確認すればよい」とされることもありますが、実務では「工程の30%時点での最初の中間確認」が最もコスト効率の高い品質管理です。最終納品直前に仕様との乖離を発見すると修正コストが増大しますが、30%時点の修正は作業の一部をやり直すだけで済みます。特に多段階再委託では伝言ゲームにより要件が歪む確率が高く、30%確認で軌道修正する習慣が最終品質に直結します。
【注意点】: 再委託先に対して「毎日報告を求める」行動は逆効果です。業務委託において過度な介入は「指揮命令権の行使」と判断され、雇用関係(偽装請負)と見なされます。進捗確認は「週次かつ成果ベース」に留め、作業方法への指示は避けてください。
ハック4: 一次受託者との損害賠償条項で再委託リスクの責任を明確化
【対象】: 再委託を許可する条件として契約書を設計する発注者側の担当者
【手順】: 契約書の損害賠償条項を開き、「再委託先の行為により発生した損害について一次受託者が全責任を負う」旨の文言が含まれているかを確認します(5分)。含まれていない場合、「再委託先が引き起こした損害は一次受託者が発注者に対して連帯して賠償するものとする」という条項を追加します(10分)。最後に、損害賠償の上限額(例: 委託料の3倍以内)も同時に設定し、双方の認識を合わせます(協議時間の目安: 1時間)。
【コツと理由】: 「再委託先が起こした問題は再委託先の責任」と思われがちですが、発注者から見れば「一次受託者との契約関係のみが存在」します。発注者は再委託先に直接責任を問えないため、一次受託者が再委託先の行為に対して連帯責任を負う条項がなければ、発生した損害を誰から回収するかが曖昧になります。この条項を設けることで、一次受託者が再委託先の選定・管理に責任を持つインセンティブが生まれます。
【注意点】: 損害賠償の上限額を設定しない場合、一次受託者の経営規模を超えた損害賠償請求が発生した際に回収不能になります。上限を設ける一方で、故意・重過失の場合は上限を適用しない除外規定もセットで設けてください。損害賠償条項の設定だけで万全と思い込まず、実際の回収可能性(一次受託者の支払能力)も事前に確認してください。
ハック5: 再委託解除時の引き継ぎプロトコルで業務停止リスクをゼロにする
【対象】: 一次受託者が途中離脱または再委託先が途中離脱するリスクを想定する発注者
【手順】: 契約書に「中途解除時は○○営業日以内に業務引き継ぎ資料(作業完了率・未完了リスト・関連ファイル一覧)を提出する」という引き継ぎ義務を明記します(15分)。次に、機密情報が記録されているアカウント・システムのアクセス権限を発注者が直接管理できる体制を整えます(初回設定: 1時間)。最後に、万が一の代替フリーランス・業者のリストを常時2〜3名確保しておきます(リスト作成: 2時間)。
【コツと理由】: 「契約解除後に引き継ぎをお願いすれば対応してくれる」という前提は危険です。実務では「解除を告げた直後から連絡が途絶えるケース」が少なくありません。解除前にアクセス権限の回収と引き継ぎ資料の受け取りを完了させる手順をあらかじめ契約書に義務として明記することで、解除後の業務停止リスクを大幅に減らせます。特に再委託ありの案件では、一次受託者と再委託先の両方のアクセス権限と作業状況を把握しておく必要があります。
【注意点】: 解除後の引き継ぎをすべて一次受託者任せにする管理方法は逆効果です。発注者自身がシステムやファイル管理にアクセス可能な状態を常時維持し、引き継ぎが不完全でも業務を継続できる最低限の体制を作っておくことが最大のリスクヘッジです。
CHECK
▶ 今すぐやること: ハック1の契約書確認から着手し、「禁止特約の有無」と「損害賠償条項の有無」の2点を10分で確認する
Q: フリーランスが受託した業務の一部を別のフリーランスに頼むことは違法ですか?
A: 違法ではありませんが、契約形態によっては契約違反になります。準委任契約の場合は発注者の承認が必要です。請負契約であれば禁止特約がない限り問題ありません(LevTech「外注と委託の違いとは?業務委託の種類や外注先を選ぶ方法を解説」)。
Q: 外注費の勘定科目は「外注費」と「業務委託費」のどちらを使うべきですか?
A: どちらも同義の費用ですが、会社の会計方針により呼称が異なります。一般的には「外注費」として計上することが多く、請求書の摘要欄に「外注業務名」を明記しておくと税務調査時の説明が容易です(Freee「再委託とは?禁止されるケースや注意点について解説」)。外注費の源泉徴収が必要か判定する方法も併せて確認しておくと、経理処理の抜け漏れを防げます。

再委託許可の事前チェックは7項目で完了
以下の7項目を確認することで、再委託許可の判断漏れを防げます。
契約書関連チェック(3項目)
契約書に再委託禁止条項が「ない」または「書面承認付きで許可されている」ことを確認してください。禁止条項があるにもかかわらず再委託を認めようとする場合は、契約書の変更覚書が必要です。損害賠償条項に「再委託先の行為に対する一次受託者の連帯責任」が明記されているかを確認し、記載がなければ追加してください。また、契約期間中に再委託先が変更される場合に再度承認が必要かどうかを明記しているかも確認します。覚書の書き方テンプレートを使えば、契約書の変更覚書を短時間で整備できます。

情報管理関連チェック(2項目)
再委託先との間でNDAが締結されるか、発注者が証明を確認できる体制があるかをチェックします。発注者の機密情報(個人情報・価格情報・技術情報)がNDAの対象範囲に明示的に含まれているかも確認が必要です。
品質・納期管理関連チェック(2項目)
再委託先の実績・スキルを一次受託者が確認した証拠(ポートフォリオ・職務経歴書等)の提出を求め、受領しているかをチェックします。最終納品前の中間確認スケジュールが設定されており、発注者が中間成果物を確認できる機会が少なくとも1回あるかを確認してください。
この7項目すべてを確認すれば、再委託を許可するための最低限の体制が整います。「損害賠償条項の確認」と「NDAの証明受領」を省略したことでトラブルが発生するケースが多いため、この2点を特に注意して確認してください。
CHECK
▶ 今すぐやること: 上記7項目をチェックリストとしてコピーし、今週中に全項目を確認する(30分)
Q: 再委託を許可する際に「事前承認」は毎回必要ですか?
A: 原則として毎回が推奨です。ただし、継続的な案件で同一の再委託先を使用し続ける場合は「一定期間の包括承認」を契約書に設けることで手続きを簡略化できます。包括承認の期間は最長6ヶ月を目安に設定し、その後は改めて確認するフローを組むと管理しやすくなります。
Q: チェックリストの7項目のうち、最低限だけ対応したい場合はどれを優先すべきですか?
A: 「①再委託禁止条項の確認」と「②損害賠償条項の確認」の2項目が最優先です。この2点が未確認のまま再委託を許可すると、損害発生時に法的手段を取ることが著しく困難になります。
再委託は契約形態で可否が決まる:今日から使える3つのアクション
再委託が合法かどうかは契約形態で9割が決まります。請負は原則自由、委任・準委任は原則禁止という基本ルールを押さえることが出発点です。再委託を許可する場合は「事前書面承認・NDA3層構造・損害賠償条項」の3点を契約書に明記することで、実務上の主要リスクをほぼカバーできます。チェックリストの7項目を一度整備してしまえば、以後の案件にテンプレートとして転用できるため、最初の投資時間(約2時間)は長期的に回収できます。
再委託を「禁止すれば安全、許可すれば危険」と二項対立で考えると、実務では最適解に至りません。適切な条件設定のもとで再委託を活用することで、自社のリソースを超えた案件を受注できるという事業上のメリットがあります。「どこまで許可するか」の判断基準を今回の内容で整理し、次の案件から即座に活用してください。
| 状況 | 次の一歩 | 所要時間 |
| 現在の契約書を確認したい | 契約書の目的条項と再委託条項を照合 | 10分 |
| 再委託禁止特約を追加したい | ハック1の文言例をコピーして法務に送付 | 15分 |
| NDA体制を整備したい | ハック2の3層NDAフローを社内で確認 | 30分 |
| トラブルが発生していて急ぎ対応が必要 | 弁護士への相談(初回無料相談: 1時間) | 当日〜翌営業日 |
※本記事で紹介した情報は2025年6月時点のものです。
フリーランス再委託と外注の違いに関するよくある質問
Q: 下請法はフリーランスへの再委託にも適用されますか?
A: 下請代金支払遅延等防止法(下請法)は「資本金の規模」と「取引の種類」によって適用が判断されます。親事業者(発注者)の資本金が1,000万円超で、フリーランスが個人事業主の場合、情報成果物・役務提供委託であれば下請法の対象になり得ます。詳細は公正取引委員会の下請取引適正化推進講習会テキストを参照してください。
Q: 再委託を断ることはフリーランスにとって不利になりますか?
A: 委任・準委任契約において再委託が禁止されている場合、再委託を行わずに自ら業務を完結させることは契約上の正しい行動です。「断れば仕事を減らされる」という懸念が生じることもありますが、無断再委託による契約違反の方が取引関係への影響ははるかに大きくなります。
Q: 海外フリーランスへの再委託に特別な注意点はありますか?
A: はい、3点の追加確認が必要です。第1に、支払い通貨と為替リスクの取り決めを契約書に明記すること。第2に、NDAの準拠法を日本法に指定し、トラブル時の管轄裁判所を日本の裁判所と明示すること。第3に、個人情報を取り扱う場合は個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の越境移転規制(第三者提供の制限)に抵触しないか確認することです。
【出典・参照元】
Freee「再委託とは?禁止されるケースや注意点について解説」
xDesigner「再委託が原則禁止な業務委託契約の形態と発注前にできるリスク」