フリーランスとして働く中で、報酬が支払われなかったり、契約書の内容が曖昧で後からトラブルになったりした経験はありませんか。
企業には法務部や顧問弁護士がいる一方、フリーランスは個人として直接責任を負います。トラブルが発生した場合、個人事業主としての債務が生じた場合、個人資産が差し押さえの対象となる可能性があります。契約の知識が不足していると、不利な条件で契約を結んでしまい、将来の売上機会を失うリスクも存在します。
2024年11月に施行されたフリーランス保護法により、取引条件の明示義務や支払い期日の規制など、フリーランスを保護する法的枠組みが整備されました。この法律を正しく理解し、適切に活用することで、トラブルを未然に防ぎ、万が一の際にも迅速に対応できます。
この記事は、フリーランスとして活動するエンジニア・デザイナー・コンサルタント・ライターなど、すべての業種の方に役立ちます。特に、報酬未払いや契約トラブルに直面した経験がある方、契約書の内容に不安を感じている方、フリーランス保護法の具体的な活用方法を知りたい方にとって、実務で即座に使える情報を提供します。
この記事でわかること
- フリーランスが遭遇する5大トラブルと初動対応の具体策
- フリーランス保護法の重要ポイントと実務への影響
- 契約書チェックと弁護士活用で費用を抑える実践手法
フリーランスが遭遇する5大トラブルと初動対応
フリーランスとして活動する際、報酬未払い・契約不備・ハラスメント・無茶振り・案件飛びなどのトラブルに直面するリスクは誰にでもあります。実際に多発している5つの代表的なトラブルと、それぞれの初動対応を解説します。
報酬未払い・減額トラブル
納品したにもかかわらず報酬が支払われない、あるいは一方的に減額されるケースです。
フリーランス保護法の施行により、報酬の支払い期限は原則として給付を受領した日から60日以内の「できる限り短い期間」と法律で定められました。この期限を超える支払い設定は法律上認められていません。
初動対応の3ステップ
- 契約書・発注メール・納品記録などの証拠をすべて保管する
- 内容証明郵便で支払い請求を行う
- 金額によっては少額訴訟や支払督促を検討する
報酬未払いについては、金額が小さい場合でも泣き寝入りする必要はありません。弁護士に依頼しなくても、相談だけで自分で動く範囲での対応方法を教えてもらえます。
契約内容の不備・一方的な変更
クライアントから提供された契約書をチェックせずにサインしてしまい、後から不利な条件が判明するケースです。
特に大手企業との契約では、契約書の変更を受け入れない方針をとっている企業もあります。
初動対応の3ステップ
- 契約締結前に弁護士に契約書をチェックしてもらう
- 修正できる範囲で交渉を試みる
- 明らかに不利でも受け入れざるを得ない場合は、リスクを理解した上で判断する
契約書のチェックは、実際にトラブルが発生してから対応するよりも、事前の予防策として極めて重要です。業務内容・報酬・支払い条件・成果物の権利・禁止事項については、必ず確認が必要です。
ハラスメント(パワハラ・セクハラ)
実態として下請けのような形で使われているフリーランスは、取引先からの圧力が強く、暴言や嫌がらせを受けるケースがあります。
パワハラの中には暴言など軽く感じられるものもありますが、実際には名誉毀損罪に該当する可能性があります。セクハラについては、内容によっては刑事罰の対象となる場合もあります。
初動対応の3ステップ
- ハラスメントの内容を記録する(日時・場所・発言内容・証拠)
- 弁護士または警察に相談する(刑事事件として扱える場合もある)
- 仕事を失うことを恐れず、毅然とした対応をとる
取引先だから、この仕事がないと生活できないからといって我慢する必要はありません。そこで仕事を繋げたとしても、将来の自分のためにならないため、遠慮なく相談すべきです。
不当な仕事のやり直し・無茶振り
業務委託の期間が1か月以上または期間が定められていない場合、フリーランス保護法により、不当な給付内容の変更ややり直し強制が禁止されています。
具体的には、委託者が給付の内容を明確にせず、後から「給付の内容に適合しない」といってやり直しをさせることは違法です。
初動対応の3ステップ
- 業務委託時に仕様を明確に文書化しておく
- 仕様変更や追加作業が発生した場合は、必ず文書で合意を取る
- 不当なやり直し要求には、法的根拠を示して断る
フリーランス保護法では、業務委託後に検査基準を厳しくすることで、従来の検査基準であれば合格とされたものを不合格とする行為も禁止されています。
多重下請け構造によるトラブル
5層・7層といった多重下請け構造の案件では、マージンが多く抜かれるだけでなく、問題が発生した際の対応が極端に遅れます。
フリーランスが直接契約している会社に相談しても、その会社がさらに上位の会社に相談し、伝言ゲームが始まるため、問題の実態が正確に伝わりません。最悪の場合、フリーランスのせいにされることもあります。
初動対応の3ステップ
- 契約前に商流の深さを確認する
- 商流が浅い案件(2〜3層まで)を選ぶ
- トラブル時の連絡体制を事前に確認しておく
商流が深い案件は、単価が低くなるだけでなく、トラブル時の解決スピードや正確性にも大きく影響します。
CHECK
報酬未払いは60日以内の支払い義務違反で法的対応が可能
契約書は締結前のチェックで不利な条件を回避できる
商流が深い案件はトラブル時の対応が極端に遅れる
契約書チェックで防げるトラブル|3つの契約類型と注意点
フリーランスのトラブルの多くは、契約段階で適切なチェックを行うことで未然に防げます。フリーランスが締結する代表的な契約類型と、それぞれの注意点を解説します。
業務委託契約の3つの類型
業務委託契約は法律上定義された言葉ではありませんが、一般的には企業の業務の一部を専門性の高い外部の会社やフリーランスに委託する契約を指します。
この業務委託契約は、大きく3つの契約類型に分けられます。
①請負契約
請負契約は、受託者が仕事の完成を約束し、注文者がその結果に対して報酬を支払う契約です。
納品物が規定されており、それを実際に納めることで報酬が支払われます。システム開発でスマートフォンアプリを設計書に沿って開発し、納品までするような契約が請負契約に該当します。
②委任契約
委任契約は、法律行為を委任する契約です。
訴訟行為を弁護士に代理でやってもらう、所得税の確定申告を税理士に依頼するといった法律行為をお願いする場合に締結されます。
③準委任契約
準委任契約は、委任契約で扱われる法律行為以外の業務・事務を処理する契約です。
フリーランスのコンサルタントが最もよく締結するのがこの準委任契約です。準委任契約では、成果物の完成責任ではなく、業務遂行そのものに対して報酬が支払われます。
準委任契約で特に注意すべき5つのポイント
準委任契約は、フリーランスにとって最も身近な契約形態ですが、雇用契約とは異なる特性があるため、誤解によるトラブルが発生しやすい契約でもあります。
①1人月の稼働時間の定義
準委任契約は、稼働率というタイムチャージ方式で報酬が計算されることが多いのですが、実は法律上、1人月・稼働率100%の状態が何時間かは規定されていません。
雇用契約の感覚で「1か月は大体160時間だろう」と思っていると、実際には200時間、300時間といった過重労働が発生するケースがあります。
契約締結時に、稼働率100%、あるいは1か月といった場合の時間数がどれくらいなのかを必ず確認しておくことが大切です。
②働く時間帯の自由と制約
準委任契約では、働く時間帯について法律上の規定はありません。
雇用契約と違って、深夜に働いたからといって深夜残業手当が発生することはありません。ただし、成果を出すことが重要な準委任契約では、必要な会議に参加したり、プロジェクトメンバーとコミュニケーションを取ったりする必要があります。
夜中の3時に会議をするのは現実的ではないため、プロジェクトメンバーが動いている時間になるべく合わせつつ、自己管理をしっかり行うことが求められます。
③働く場所の規定
準委任契約では、働く場所も規定されていません。
雇用契約では正社員にオフィスで働くよう指定できますが、準委任契約ではこの指定はできません。そのため、自宅やオフィス以外の場所で働くことも可能です。ただし、情報漏洩などのリスクを考慮し、適切な場所を選ぶ必要があります。
契約書で出社を求められ、それを承諾した場合は、契約書の内容が優先されるため注意が必要です。
④契約更新時の業務内容確認
プロジェクトが長期化すると、契約当初の業務内容から変わってしまうケースがよくあります。
問題なのは、難易度が高くなっているにもかかわらず、単価が同じままになっていることです。準委任契約のタイムチャージ方式では、人月単価は委託された業務の難易度や専門性に応じて決まります。
難易度が高くなっている業務には、それに見合った単価が設定されるべきです。契約更新のタイミングで、委託業務に対して単価が妥当かどうかをしっかり確認してください。
⑤商流制限条項の妥当性
禁止事項の中に「商流制限」という条項が含まれていることがあります。
マッチングプラットフォームを利用している場合、プロジェクト終了後に一定期間、クライアントと直接契約を結ぶことを禁止する条項です。この制限期間が3年、5年といった長期に及ぶ場合、民法90条(公序良俗違反)との抵触が問題になる可能性があります。
あまりに長い期間の商流制限が設定されている場合は、専門家に相談することを推奨します。
契約書に記載されるべき11の基本項目
準委任契約書には、一般的に以下の11項目が記載されています。これらの項目を理解し、それぞれについて適切な内容が記載されているかをチェックすることが、トラブル予防の第一歩です。
| 項目 | 確認ポイント |
| 業務内容 | 委託する業務が具体的に記載されているか |
| 報酬 | 委託業務に対する報酬額が明確か |
| 支払い条件 | 報酬がいつどのように支払われるか、振込手数料・交通費の扱いは明確か |
| 成果物の権利 | 著作権・知的財産権を誰が保持するか |
| 再委託 | 第三者への再委託が許可されているか |
| 秘密保持 | 業務上知った情報の取り扱い |
| 契約の解除 | 契約違反時の解除条件 |
| 契約期間 | 自動更新の有無、中途解約の条件 |
| 禁止事項 | 商流制限を含む禁止事項の内容と妥当性 |
| 管轄裁判所 | トラブル時の裁判所の指定 |
| 反社会的勢力の排除 | 反社会的勢力との関係排除の条項 |
支払い条件については、フリーランス保護法により60日を超える支払い期限は違法となるため、必ず確認が必要です。出張が発生する場合の交通費・宿泊費の取り扱いについても、明確にしておくことでトラブルを防げます。
成果物の権利については、プログラムやコンテンツを作成する場合、著作権譲渡が発注内容に含まれることを業務委託時に明示していないと、後から著作権の譲渡を求めることは、不当な経済上の利益の提供要請として禁止されます。
CHECK
準委任契約では1人月の時間数が法定されておらず契約時の確認が必須
契約更新時は業務難易度の変化に応じた単価見直しが重要
成果物の著作権譲渡は委託時の明示がないと後から要求できない
フリーランス保護法の重要ポイント|2024年11月施行の新ルール
2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスの取引を保護し、就業環境を整備するための画期的な法律です。
この法律により、フリーランスに業務を委託する企業には様々な義務が課され、違反した場合には罰則が適用されます。
フリーランス保護法の2つの柱
フリーランス保護法には、大きく分けて2つの内容が含まれています。
1つ目は、事業者がフリーランスに業務委託する取引におけるフリーランスの保護です。フリーランスは取引主体として弱い立場にあるため、それを保護するための規制を設けています。取引関係における保護の規制です。
2つ目は、フリーランスに対するハラスメント防止措置の義務付けやフリーランス募集の適正化など、フリーランスの就業環境の整備です。フリーランスは労働者ではないものの、労働者と同じような保護を与えることを目的としています。
下請法との違い
フリーランス保護法は、しばしば下請法と比較されますが、いくつかの重要な違いがあります。
適用対象の違い
下請法は資本金が1,000万1円以上の会社だけが規制対象でしたが、フリーランス保護法は資本金が小さい法人や個人事業主が委託する場合も適用対象となります。
フリーランスがフリーランスに委託する場合も、一部の規制については適用があります。
サービス委託の範囲
下請法では、サービスの提供委託については、他社から委託を受けたサービスを下請け事業者に発注する場合に適用がありました。つまり、自社のためにサービスの提供を下請け事業者に委託するケースは適用外でした。
一方、フリーランス保護法では、自社が利用するサービスの委託についても適用があります。この点で、フリーランス保護法はより広い範囲をカバーしています。
取引条件の明示義務
フリーランス保護法で最も広く適用される規制が、取引条件の明示義務です。
フリーランスに業務を委託した場合、直ちに取引条件を書面または電子メールで明示することが義務付けられました。
明示が必要な項目
取引条件として明示が必要な具体的な内容は以下の通りです。
| 明示項目 | 内容 |
| 業務委託事業者の社名 | 委託する企業の正式名称 |
| 業務委託をした日 | 契約締結日 |
| 給付の内容 | 品目・品種・数量・規格・仕様など(著作権譲渡を含む場合は必ず記載) |
| 納期・納品場所 | 納期および引き渡し場所、またはサービス提供を受ける場所 |
| 検査完了期日 | 検査を行う場合のみ記載が必要 |
| 報酬の額 | 具体的な金額(時間単価の場合は算定方法) |
| 支払い期日 | 現金以外の方法で支払う場合はその方法も明示 |
特に注意が必要なのは、フリーランスに成果物の著作権を譲渡させる場合、それを必ず給付の内容に記載しておかなければならない点です。
業務委託時に著作権譲渡について明示していなかった場合、後になって著作権を譲渡させることは、不当な経済上の利益の提供要請として禁止されます。
内容が定められないことについて正当な理由がある事項については、定められない理由とその事項について定める予定の期日を明示すればよいとされています。その場合は、後日フリーランスと十分な協議の上、速やかにその事項を定め、直ちに補充の明示が必要です。
支払い期日の規制
フリーランスに対する報酬の支払いは、原則として60日以内の「できる限り短い期間」と法律で義務付けられました。
具体的には、委託者が給付を受領する日(納品物を受け取った日、またはサービスの提供を受けた日)から60日以内のできる限り短い期間を、報酬の支払い期日としなければなりません。
注意を要するのは、納品物を委託者側で検査する場合でも、検査完了日から60日以内ではなく、納品を受けた日から60日以内である点です。
再委託の場合の例外
委託内容が他の事業者からの委託業務の再委託である場合、元の委託者から自社への支払い期日から30日以内のできる限り短い期間でよいという例外があります。
自社への発注者からまだ支払いがない段階で、フリーランスに対する支払い期日が来てしまうことを避けるための措置です。
ただし、この例外を適用する場合は、フリーランスに対して再委託であること、元委託者の氏名・名称等、および元委託者の対価の支払い期日を明示する必要があります。
7つの禁止行為
フリーランス保護法では、業務委託の期間が1か月以上または期間が定められていない場合に、以下の7つの行為が禁止されています。
①不当な給付の受領拒絶の禁止
フリーランスに業務委託した後で、後になって受け取りを拒否することは禁止されています。
業務委託後に検査基準を厳しくすることで、従来の検査基準であれば合格とされたものを不合格とすることは、この禁止に該当します。
②不当な報酬の減額の禁止
自社への発注者からのキャンセルや仕様の変更等により、フリーランスにすでに発注してしまった業務が不要になったことを理由に、フリーランスの報酬から差し引くことは禁止されています。
③不当返品の禁止
フリーランスから納品物を受け取りながら、不当に返品することは禁止されています。
フリーランスとの間で業務委託者は自由に返品できるという契約をしていたとしても、この禁止の対象となる点に注意が必要です。納品物に契約不適合(不良)があった場合は返品が認められますが、納品後6か月を経過した後の返品は禁止されます。
この6か月という期間は、商法526条に基づく“通知期間”に関する一般的な目安です。
④買い叩きの禁止
労務費や原材料価格、エネルギーコストなどのコストが上昇したため、フリーランスが報酬の引き上げを求めたにもかかわらず、フリーランス側の要請に対して理由を示さず、従来の報酬額のまま据え置くことは禁止されています。
フリーランスから報酬の引き上げを求められた場合、必ずしも応じる必要はありませんが、誠実に協議せずに据え置くことは許されません。
⑤物の購入強制・サービスの利用強制の禁止
自社のものや自社のサービスをフリーランスに強制的に購入させたり、フリーランスごとに目標額を定めて購入または利用を要請したりすることは禁止されています。
⑥不当な経済上の利益の提供要請の禁止
フリーランスから不当に経済的な利益を自社に提供するよう求めることは禁止されています。
前述の通り、業務委託時に知的財産権の譲渡や許諾を明示していなかったにもかかわらず、後になって著作権等を譲渡させることは、この禁止に該当します。
⑦不当な給付内容の変更・やり直し強制の禁止
一度フリーランスにさせた仕事について、不当にやり直しをさせたり、不当に納品内容を変更させたりすることは禁止されています。
フリーランスから給付の内容を明確にするよう求められたのに、委託者が正当な理由なく給付の内容を明確にせず、フリーランスに継続して作業を行わせ、その後「給付の内容に適合しない」といってやり直しをさせることは禁止違反に当たります。
保護される対象と規制対象
フリーランス保護法では、保護される「特定受託事業者」と、規制を受ける「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」がそれぞれ定義されています。自分がどの立場に該当するかを正しく理解することが重要です。
保護される「特定受託事業者」
フリーランス保護法で保護される対象は「特定受託事業者」と呼ばれます。以下の2つのパターンがあります。
- 従業員を使用しない個人事業主(一般的なフリーランス)
- 代表者1人以外に役員や従業員がいない法人
特に注意が必要なのは、法人でもフリーランス保護法の保護対象になる場合がある点です。「従業員を使用する」とは、週の所定労働時間が20時間以上で、かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇用していることを意味します。
そのため、所定労働時間が20時間未満のパート社員のみを雇用している事業者で、代表者が1人の場合は、フリーランス保護法の保護対象となります。
規制対象となる「業務委託事業者」と「特定業務委託事業者」
取引条件の明示義務は、「業務委託事業者」という非常に広い範囲に適用されます。
業務委託事業者とは、フリーランスに物の製造や加工、プログラムやコンテンツの作成、サービスの提供等を委託する事業者を指します。この業務委託事業者には個人事業主も該当するため、フリーランスからフリーランスへの業務委託の場合でも、取引条件の明示規制はかかってきます。
一方、支払い期日の規制や不当なやり直し強制の禁止といったその他の規制については、「特定業務委託事業者」のみに適用されます。特定業務委託事業者とは、以下の3つをすべて満たした事業者です。
- 従業員を使用する個人事業主、または従業員がいる法人、または2人以上の役員がいる法人であること
- フリーランスに対して業務を委託する事業者であること
- その委託内容が物の製造や加工の委託、プログラムやコンテンツ等の作成の委託、サービスの提供の委託のいずれかであること
CHECK
取引条件の明示義務はフリーランス間の委託でも適用される
報酬の支払い期日は給付受領日から60日以内が法定上限
7つの禁止行為は業務委託期間1か月以上の場合に適用
弁護士・公的窓口の活用法|費用を抑えて相談する実践手法
フリーランスにとって弁護士は敷居が高いと感じるかもしれませんが、適切に活用することでトラブルを未然に防ぎ、万が一の際にも迅速に対応できます。
弁護士や公的窓口を効果的に活用する方法を解説します。
弁護士に相談すべき4つのタイミング
弁護士への相談は、トラブルが深刻化する前の早期対応が最も効果的です。以下の4つのタイミングでは、積極的に弁護士を活用することで、リスクを最小限に抑えられます。
①契約締結前の契約書チェック
取引先から提供される契約書は、取引先に有利に作られています。何もチェックせずに契約するのは非常に危険です。
契約を結ぶ前に、あらかじめ弁護士に見てもらい、修正できる範囲で修正していくことが必要です。相手が中小企業や元フリーランスが立ち上げた会社であれば、十分に交渉の余地があります。
ただし、大手企業の場合は、そもそも契約書の変更を受け入れない方針をとっているところもあります。その場合、明らかに不利だと思っていながらも契約せざるを得ないこともあるため、相談だけでもしておくことで、リスクを把握できます。
②クレーム・トラブル発生時
実際に契約を結び、取引が始まった後にクレームがあり、こちらとしては問題ないと思っているのに、相手がすごく問題視して責められているというケースでは、それ以上トラブルを発展させず収束させるために弁護士を使うことが有効です。
立場が弱いからとすべて申し訳ないという形で対応する方もいらっしゃいますが、それも1つの方法です。ただし、いわれのないことをいわれているという納得いかない思いが少しでもあるのであれば、弁護士を使った方がよいでしょう。
③ハラスメントを受けた場合
取引先からハラスメントを受けた場合、特にパワハラで暴言があったり、名誉毀損に該当するような発言があれば、それは犯罪です。
セクハラについても、許されない犯罪となる場合があります。このような場合は、弁護士または警察に堂々と相談すべきです。
なんとなく取引先だから、この仕事がないと生活できないからといいづらいという気持ちがあるかもしれません。ただ、そこで仕事を繋げたとしても将来の自分のためになりませんので、遠慮なく相談してください。
④報酬未払い・減額時
報酬未払いや一方的な減額についても、泣き寝入りする必要はありません。
金額によっては弁護士に依頼すると費用の方が高くなるケースもありますが、何か方法がないか相談だけでもしてみて、弁護士に依頼せず自分で動く範囲で何かできないかを教えてもらえます。
費用を抑えて弁護士を活用する3つの方法
弁護士への相談は高額というイメージがありますが、実際には費用を抑えながら活用できる方法が複数あります。予算に合わせて最適な方法を選ぶことで、法的サポートを受けやすくなります。
①無料相談の活用
多くの弁護士事務所では、初回無料相談を実施しています。30分〜1時間程度の相談で、問題の概要を把握し、基本的な方向性を教えてもらえます。
複数の弁護士事務所で無料相談を受けることで、自分に合った弁護士を見つけることもできます。
②顧問契約の検討
顧問契約という形で、月々1万円前後の費用で、何か問題があった時には相談できる体制を整えておく方法があります。
着手金や報酬金を都度払うよりも、予防的に相談できる環境を作っておくことで、トラブルの早期発見・早期対応が可能になります。
③弁護士保険の利用
弁護士保険に加入しておくことで、実際にトラブルが発生した際の弁護士費用をカバーできます。
月々数千円の保険料で、万が一の際に数十万円から数百万円の弁護士費用をカバーできるため、検討する価値があります。
公的相談窓口の活用
弁護士以外にも、フリーランスが無料で相談できる公的窓口があります。
フリーランス・トラブル110番
厚生労働省が設置している相談窓口で、フリーランス特有のトラブルについて無料で相談できます。相談内容によっては弁護士が対応し、法的なアドバイスを受けられます。
法テラス
経済的に余裕がない場合、法テラスを利用することで無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。収入が一定基準以下であれば、誰でも利用可能です。
労働局・労働基準監督署
労務トラブルについては、労働局や労働基準監督署に相談することもできます。
フリーランスは労働者ではありませんが、実態として労働者と同様の扱いを受けている場合は、相談に乗ってもらえるケースがあります。
CHECK
契約締結前のチェックが最も費用対効果の高いトラブル予防策
初回無料相談や顧問契約で弁護士費用を抑えられる
フリーランス・トラブル110番など公的窓口も積極活用できる
トラブル予防の実践ノウハウ|契約から日常業務まで
トラブルが発生してから対応するよりも、日頃からトラブルを予防する仕組みを作っておくことが、フリーランスとして長く安定して活動するためのポイントです。
一般的なアドバイスを超えた、実務で使える具体的なノウハウを紹介します。
証拠保全の体系的管理手法
「契約書を保管しておく」だけでは、実際のトラブル対応には不十分です。
フリーランスとして活動する上で、以下の3層構造で証拠を体系的に管理しておくことで、万が一のトラブル時に圧倒的に有利な立場を確保できます。
第1層:契約関連書類の保管
契約関連書類(契約書・発注書・発注メール・見積書・受領書)を、案件ごとにフォルダ分けしてクラウドストレージに保管します。
重要なのは、紙の契約書もスキャンしてPDF化し、同じ場所に保管することです。
第2層:コミュニケーション記録の保管
業務進行に関するコミュニケーション記録(メール・チャット・議事録・口頭での指示をメモ化したもの)を保管します。
特に、仕様変更や追加作業の依頼があった際のやり取りは、後から「いった・いわない」の争いになりやすいため、必ずテキストで残しておきます。
第3層:成果物の納品記録の保管
成果物の納品記録(納品メール・受領確認メール・納品物のバックアップ・作業時間のログ)を保管します。
報酬未払いや不当な受領拒絶に対抗する際、「確かに納品した」という証拠が極めて重要になります。
この3層構造で証拠を管理することで、トラブル発生時に必要な証拠をすぐに取り出せ、弁護士に相談する際もスムーズに状況を説明できます。
口頭指示の即時文書化テクニック
実務では、クライアントが口頭でしか指示を出さないケースが多々あります。
後から「言った・言わない」のトラブルにならないよう、口頭指示を確実に文書化する実践的なテクニックを紹介します。
24時間以内メール確認法
口頭で指示を受けた場合、24時間以内に以下の形式でメールを送ります。
「本日の打ち合わせで、以下の内容について指示をいただきました。認識に相違がないかご確認ください。もし相違がある場合は、○月○日までにご連絡ください。連絡がない場合は、この内容で進めさせていただきます」
この手法のポイントは、「相違がある場合のみ連絡してください」という形にすることで、クライアントの手間を最小限にしつつ、黙示の承認を得られる点です。
契約更新時の単価交渉スクリプト
契約更新時に単価交渉をしたいと思っても、どのように切り出せばよいか分からない方が多いのが実情です。
クライアントとの関係を悪化させずに、適切な単価交渉を行うための具体的な3段階の会話スクリプトを紹介します。
第1段階(現状確認)
「契約当初と比較して、現在の業務内容や難易度について、私の認識を共有させていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
第2段階(差分の提示)
「契約当初は○○の業務でしたが、現在は△△も担当しており、難易度が上がっていると感じています。この認識は合っていますでしょうか」
第3段階(提案)
「業務内容の変化を踏まえ、次回の契約更新時に単価について協議させていただけないでしょうか。市場相場を調べた上で、具体的な金額を提案させていただきます」
再委託案件のリスク評価チェックリスト
多重下請け構造の案件では、どの程度のリスクがあるのか、どのような基準で受注判断すればよいのかが分かりにくいという課題があります。
再委託案件を受ける前に確認すべき具体的なチェックリストを紹介します。
商流深度スコアリング
以下の項目について、それぞれ点数を付けます。5点満点中3点以下の場合は、案件を受けるリスクが高いと判断します。
| チェック項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
| 商流の深さ | 2層(直接契約) | 3層 | 4層以上 |
| エンドクライアントの情報開示 | 社名・担当者名が明示 | 社名のみ明示 | 非開示 |
| トラブル時の連絡体制 | エンドまで直接連絡可能 | 1層上まで連絡可能 | 直接契約先のみ |
| 単価の透明性 | エンドの予算が明示 | 自社の受注額が明示 | 非開示 |
| 契約書の整合性 | エンドと整合 | 一部整合 | 不明 |
このスコアリングで合計15点以下の案件は、トラブル時の対応困難や報酬未払いのリスクが高いため、受注を慎重に検討すべきでしょう。
業務範囲明確化のための仕様書テンプレート
業務内容の明確化は重要ですが、どの程度の詳細さで、どのような形式で記載すればよいのかは具体的に示されていないことが多いです。
後からトラブルにならないための、実践的な3要素明記テンプレートを紹介します。業務委託を受ける際、最低限以下の3要素を文書で明記します。
第1要素(実施すること)
具体的な作業内容を箇条書きで列挙します。「○○の要件定義書を作成する」「△△のプログラムを実装する」といった形で、成果物または作業内容を明示します。
第2要素(実施しないこと)
誤解されやすい部分について、「この業務には含まれません」という形で明記します。「テスト実施は含まれません」「デザイン素材の作成は含まれません」といった形です。
第3要素(追加作業の扱い)
「上記以外の作業が発生した場合は、別途協議の上、追加契約とします」という一文を必ず入れます。
CHECK
証拠は契約・コミュニケーション・納品の3層構造で保管
口頭指示は24時間以内にメール確認で文書化
再委託案件は商流深度スコアリングで受注判断
よくある質問
フリーランスのトラブル対応や契約交渉について、実務でよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q: 契約書がない口頭での業務委託でもトラブル対応はできますか?
発注メール・チャット・納品記録があれば契約の存在を証明できます。ただし契約条件が曖昧なためトラブル対応は困難です。
フリーランス保護法により書面または電子メールでの取引条件明示が義務化されており、口頭のみで取引条件を明示しないことは、法律上の義務に違反する可能性があります。
Q: 報酬未払いの場合、弁護士に依頼せずに自分で対応する方法はありますか?
60万円以下なら少額訴訟制度が利用できます。原則1回の審理で判決が出る簡易な手続きです。
支払督促制度や内容証明郵便での請求も効果的ですので、相手が争う場合は弁護士への相談を推奨します。
Q: 契約更新時に単価交渉をすると、契約を切られるリスクはありますか?
業務内容の変化や市場相場など客観的根拠に基づく交渉なら、リスクは低いです。
契約更新の1〜2か月前に切り出すことでクライアント側も予算調整できます。適正な報酬を支払わないクライアントとは早めに見切りをつけることも戦略です。
まとめ:フリーランスとして安心して働くための3つの基本原則
フリーランスとして活動する上で、適切な知識と予防策を持つことで、トラブルのリスクを大幅に減らせます。
2024年11月に施行されたフリーランス保護法により、取引条件の明示義務や支払い期日の規制など、フリーランスを保護する法的枠組みが整備されました。
契約締結前の契約書チェック、口頭指示の即時文書化、証拠の体系的管理といった実践的なノウハウを身につけることで、トラブルを未然に防げます。
弁護士や公的窓口の活用についても、無料相談・顧問契約・弁護士保険といった費用を抑える方法があります。「取引先だから」「この仕事がないと困るから」という理由で我慢する必要はありません。
今日から実践できる3つのポイント
- 契約締結前に必ず契約書を弁護士にチェックしてもらう体制を整える作る
- 口頭指示は24時間以内にメールで確認し文書化する習慣をつける
- 証拠を3層構造(契約・コミュニケーション・納品)で体系的に保管する
契約面での不安を解消し、安心してプロジェクトに集中できる環境を整えることが、フリーランスとして成功するための第一歩です。
【出典・参照元】
本記事は以下の情報源をもとに作成されています。
- 厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
- 公正取引委員会「2024年公正取引委員会 フリーランス法特設サイト」
- 公正取引委員会「下請法の運用基準」
- 法務省「民法(債権関係)改正の概要」
※記事内容は2025年11月20日時点の税制・法令に基づいています。税制改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省または弁護士にご確認ください。
