フリーランスの秘密保持契約(NDA)の注意点|具体的トラブルからNDAの必要性・記載例・使い方を解説

契約書類の締結はフリーランスにとって大切な業務です。業務内容、成果物の定義、報酬額などは誰もが気にするチェックポイントですが、それ以外にも確認が必要なものがたくさんあります。確認するべきポイントを押さえながら署名前に内容をきちんと確認しましょう。

秘密保持契約書(NDA)の内容をきちんと確認せずに署名をしてしまうと、のちのち後悔する可能性が!フリーランスは自分の身を自分で守らなければなりません。契約書類の中でも重要なNDAについて学びます。

フリーランスにとって秘密保持契約書(NDA)は取引の自由度にも影響する重い契約

秘密保持契約書とは情報の開示者(相手先企業)と情報の受領者(フリーランス側)との間で締結され、秘密情報が適切に管理されることを保証するための契約書です。英語では「Non-disclosure agreement」と言われ、NDAと略して呼ばれることが多いです。

NDAに署名することで、フリーランスは法的に秘密情報を守る義務を負うことになります。契約の内容によっては、その後のフリーランス活動や取引先獲得の自由度が大きく左右されます。顧客との信頼関係にも関わる大切な契約です。

秘密保持契約書の契約内容

秘密保持契約書とは、取引先の秘密情報や顧客情報などの取り扱いや双方の秘密保持義務、開示された秘密情報の利用目的などについて定めた契約です。フリーランスの場合は、取引を通じて知り得た取引先企業の秘密情報を必要な業務以外の目的で使用したり第三者に開示・漏洩したりしないことを制約する内容になっています。

署名するにあたって、秘密情報の範囲や開示の可否、契約終了時や契約違反時の取扱いについてきちんと確認が必要です。知らなかった、読んでなかったでは済まされないので自己防衛のためにも秘密保持契約についてきちんと理解をしておきましょう。

秘密保持契約書とはビジネスの守秘義務を取りまとめた契約

企業とフリーランス間で取り交わされる秘密保持契約書は以下のような形になっています。

・秘密情報の定義

どこまでの情報を秘密情報とするかを明記しています。

・秘密保持義務の定義

秘密情報を管理する方法と、誰にまで開示してよいのかをまとめている箇所で、秘密保持契約の中核をなす規定です。

・目的外使用の禁止

秘密情報をどこまでの範囲で利用してよいのかを明記してあります。

・秘密情報の返還、破棄のルール

契約終了時や企業からの要請があった場合など、一定の事由が発生した場合においての秘密情報の返還義務や破棄義務が書かれています。

・損害賠償、差止めのルール

秘密保持契約に違反した場合に、どのようなペナルティがあるか、損害賠償義務だけでなく賠償の範囲まで書かれてあります。

・有効期限、存続条項

フリーランスの場合の秘密保持義務の存続期間は契約期間と同じであることが一般的です。

秘密保持契約は取引を検討する段階でクライアントと締結するもの

フリーランスの場合は、業務契約を結ぶ前に企業と打ち合わせする場面も出てきます。企業側の内部情報を提供される前には必ず秘密保持契約を締結しておき、秘密情報を開示される前に結ぶのが鉄則です。

CHECK

・秘密保持契約とは、取引先の機密情報の取り扱いに関して定めた契約
・内容によってはフリーランスとしての取引先の自由度が制限されることもある
・秘密保持契約は、取引の開始前でも情報を提供される前に締結が必要

秘密保持契約はクライアントの雛形を活用する場合もあるが自前を持っておくべき

秘密保持契約書は企業側から出されることが多いものですが、プロのフリーランスとしてひな形を用意しておくと良いでしょう。

秘密保持契約書 テンプレート:NDA(秘密保持契約書)経済産業省公式ひな形【参考資料2】各種契約書等の参考例 (令和6年2月改訂版)

クライアントとの秘密保持契約の契約方法

秘密保持契約は企業側から提示されることがほとんどです。もし取引契約時に秘密保持契約が含まれていない場合は、相手企業に確認を入れることをおすすめします。

昨今、秘密保持契約は電子契約で締結することが多い

秘密保持契約に限らず、企業との契約は電子契約で行われるのが主流になっています。電子契約の流れは難しいものではないので契約前に理解しておきましょう。

秘密保持契約書に収入印紙を貼付する必要はない

契約書によっては印紙の貼付が求められるものもありますが、秘密保持契約書は印紙は不要です。また、電子契約を行う契約書類は印紙貼付の対象外となっています。

CHECK

・秘密保持契約は企業側から提示されることが多いが、提示されなかった場合は確認が必要
・収入印紙の貼付は不要

フリーランスの秘密保持契約に関する具体的なトラブル

秘密保持契約の内容をきちんと確認しなかったために発生しうるトラブルについてまとめました。何を確認しなければいけなかったのかがわかる内容になっているので、チェックしてご自身に当てはまるか確認してみてください。

「著作権の所在」を明確にせずポートフォリオに掲載できなかった

ケース事例

フリーランスのデザイナーとして企業から依頼を受けてロゴをデザインした。契約により著作権は依頼元の企業に帰属することが明記されていた。

トラブル内容

デザイナーはこのロゴをポートフォリオに掲載することができなくなります。

防止策

自身の作品実績をポートフォリオに載せることが出来ないのは売上にも関わる大きな問題です。ポートフォリオに掲載することを視野に入れ、NDA内の著作権欄の確認が必要です。

「競業避止義務」が広く設定されており仕事の範囲が狭くなってしまった

ケース事例

フリーランスのデザイナーとして、企業と契約を結び特定のプロジェクトのためにデザインを提供していた。契約にはプロジェクト終了後1年間は競合する同業企業にサービスを提供しない旨が含まれていた。

トラブル内容

プロジェクト終了後、新しい取引先を探す際に一定期間同じ業界からの案件が受けられなくなり、案件数が減ってしまった。

防止策

競業避止義務とは、情報・ノウハウの流出を防ぐために他の企業への就職を制限するものです。フリーランスの契約で必ず盛り込まなければいけない内容ではないですが、取引先の企業との契約に入っている場合は、適応範囲や期間を確認しましょう。

秘密保持契約に違反した場合は差止請求や損害賠償請求になる

ケース事例

フリーランスのコンサルタントとして、NDAを結んでA社のマーケティング戦略を請け負っていた。契約期間終了後、別の企業でのコンサルティングの際にA社の戦略を事例として紹介した。

トラブル内容

企業の秘密情報を外部に漏らしたとして損害賠償を請求された。

防止策

意図せずともNDAの契約内容に違反した場合は、損害賠償を請求される可能性があります。その場合フリーランスとして個人で払いきれない金額とならないよう、損害賠償限度額を定めておくのが良いでしょう。取引額を限度とすると定めるのが一般的です。

CHECK

・きちんと確認をしないとトラブルにつながるので要注意
・「著作権の所在」「競業避止義務」の項目はチェックするべし
・違反した場合の損害賠償の内容も確認しよう

フリーランスが秘密保持契約を締結する際のチェックポイント

仕事に大きく影響する契約書になるので、締結する前には内容をきちんとチェックしましょう。チェックするポイントは以下のとおりです。

秘密情報の定義(範囲)が広すぎないか

何が秘密情報とされているのか定義欄を確認し、企業側の考える定義と自分の考える定義の相違がないかを確認します。

存続条項の対象および期間が長すぎではないか

秘密保持の履行対象期間が契約終了後もずっと続くような内容になっている場合は、一度企業側へ確認をした方が良いでしょう。

損害賠償が民法の規定に比べて重すぎではでないか

秘密保持義務違反があった場合、企業側は損害賠償請求をすることが可能です。その際に請求できる損害は、原則として民法416条(損害賠償の範囲)に沿うものになるので、比較して妥当なものになっているか確認しましょう。

第四百十六条 
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

特約事項として受領側の義務が増えていないか

特約事項が加えられている場合はその内容の確認も行いましょう。企業への定期的な報告義務の追加など、フリーランス側の追加作業が発生する可能性もあるので、実現可能かどうかも検討します。

CHECK

・秘密情報の範囲、対象の期間は必ず確認する
・損害賠償の規定内容を民法と照らし合わせて妥当なものかも確認する
・特約事項で提示される義務も確認すること

秘密保持契約書に関して気を付けなければいけないことが多すぎて不安になる必要はありません!チェックするべき項目を押さえておけば大丈夫。トラブルを防止し、フリーランスとしての活動をスムーズに進めるためにしっかりと対応しましょう。

フリーランスの電子契約|導入ステップ・おすすめツール・契約締結の流れを具体的に解説

フリーランスにとって契約書はとても大切なもの。口頭やメールだけでの案件受注は報酬未払いなどのトラブルにつながるので、契約書を取り交わすのは非常に重要です。案件を数多く回すフリーランスにとって効率的に契約書をやり取りできるシステムの導入は大きなメリットがあります。

電子契約システムの特徴やメリット、各種サービスの比較などをまとめています。自身の仕事スタイルや取引先との関係性なども考慮しながらあなたに合ったものを選びましょう。

電子契約とは電子データのみをやりとりする仕組みで完結する契約

電子契約とは紙は使わずにオンラインで契約書確認や署名を行うことを言います。法的有効性を担保するために誰がサインしたのかを証明し、サインした日時をタイムスタンプで保存しておく手法が使われています。紙で契約書を作成する場合は作成、印刷、封入、先方へ郵送、ファイリングなどの作業が発生していましたが、電子契約ではボタンひとつで完結できます。

電子契約の改ざんされていないことを証明するための機能

オンラインの場合、本当の担当者が実際にサインをしたものなのかどうかわからないという不安があるかもしれません。電子契約のサービスでは、契約書が改ざんされていないことを証明し、その信頼性を確保するためのさまざまな手段が使われています。

電子契約では「誰が」「何を」作成したか証明する電子署名

電子署名は、誰が送ったかを証明するための「公開鍵暗号方式」と改ざんされていないデータだと証明する「ハッシュ値」という、2つの仕組みから成り立っています。それぞれの暗号データを電子文書に添付して相手先に送信することで不正を防ぐことができます。

「いつ」「何を」作成したか証明するタイムスタンプ

タイムスタンプとは、電子契約の時刻に関する信頼性を担保するための技術的な仕組みです。契約書の内容や署名が行われた日時を記録するため、契約書がいつ締結されたのか、文書の内容が改ざんされていないかを確認するために利用されています。

CHECK

・電子契約とはオンラインで契約書確認や署名を行うことを指す
・電子契約システムには改ざんを防止する様々な技術が使われている
・電子契約システムは署名の正当性が確保されている安心できるサービス

フリーランスが電子契約システムを導入するメリット

フリーランスや個人事業主だからこそ、電子契約システムの導入メリットが大きいのをご存じですか?事務作業の専任がおらず自分1人ですべての業務をこなさなければならない場合、自動化できるものはシステムに任せるのが効率的ですし、ミス防止にも役立ちます。契約内容がきちんと保存されるだけでなく、支払い条件や支払いスケジュールがわかりやすくなるなど多くのメリットがあります。

コンプライアンスの強化につながる

取引先との契約書類は電子帳簿保存法に従ったデータ保存が法律で定められています。真実性を確保する要件(データが削除・改ざんされていないことが確認できる状態を保っていること)と検索機能を確保する要件(誰もがすぐに確認できる状態を確保していること)を満たした電子契約システムによりコンプライアンス(法令遵守)強化になります。

書面契約での手間・時間を省く

紙ベースの契約書を印刷・郵送・署名・捺印する手間が省け、契約締結までの時間が大幅に短縮されます。また、紙の契約書の保管の手間やスペースも省くことができます。

報酬未払いなどトラブル防止の証拠を残す

いつまでに報酬を支払うかなど、取引先と合意して契約した内容は適切な保存が必要です。システム上で保存することで、契約内容をめぐるトラブル防止に役立ちます。

電子取引データの保管場所に困らなくなる

電子取引データは、契約書類が作成・受領されてから7年間保存することが義務付けられています。保存場所はパソコン上でもクラウドサーバー上でもどこでも問題ないのですが、電子契約システムを導入するとシステム上で保存されるので便利です。

どこでも契約書を発行できる

インターネットを介してどこからでも契約書を発行・確認ができるため、クライアントとすぐに契約を結ぶことができます。多くの電子契約システムはスマートフォンやタブレットでも利用可能なため、紙の契約書と比べると格段に手軽に契約書発行が可能になります。

印紙税がかからなくなる

同じ契約書でも紙で発行した場合は収入印紙が必要ですが、電子契約書では収入印紙は不要です。印紙税の節約になり、コストが削減できるというメリットがあります。

電子契約システム導入にはクライアントの同意が不可欠

契約とは自社と取引先の双方の合意の上で行うものです。取引先相手が電子契約システムを使うことに同意していないと契約締結ができません。もし紙でのやりとりを基本としている取引先と契約を交わす場合は、電子契約システムの仕組みやメリットを理解してもらうことからはじめ、契約がスムーズに進むように調整しましょう。

CHECK

・フリーランスにとって電子契約システムの導入は多くのメリットがある
・業務効率化やトラブル防止、コンプライアンス強化などにつながる
・電子契約システム導入には取引先の同意を得る必要がある

無料から使えるおすすめ電子契約サービス

業務のオンライン化に伴い電子契約システムを導入する企業が増えています。それに伴いさまざまなサービスが出てきているので、料金、機能、セキュリティ面、使いやすさ、などの視点からフリーランスとして使いやすいものを選びましょう。

クラウドサイン

弁護士ドットコムが提供する日本の法律に特化した弁護士監修のクラウド型電子契約サービス。シンプルなUIで誰でも使いやすく、契約締結から契約書管理まで可能にします。弁護士監修なので日本の法律に幅広く対応しており安心して始められます。

GMOサイン

月額料金8,800円と低コストで始められるクラウド型の電子契約サービスです。電子認証局を子会社に持つGMOが提供するサービスで、フリーランスのスモールスタートにも適しています。

freeeサイン

freeeサイン は契約業務をワンストップでカバーする電子契約サービスです。文書作成から締結。保管まで全てクラウド上で行うことができます。freee会計と連携させることで承認済みの申請を自動的に電子署名業務に繋げることができます。

Acrobat sign

アドビの電子サインサービス「Acrobat Sign」はPCやモバイルから署名ができるサービス。承認完了までの時間をスピーディーにするだけでなく、コスト削減や管理の手間軽減にも役立ちます。

BtoBプラットフォーム契約書

「BtoBプラットフォーム 契約書」はWEBだけで契約が完了する高度な電子契約システムです。企業間の契約締結・保管・共有を電子化で処理してくれます。

Dropbox Sign

あらゆるドキュメントに法的拘束力のある署名を追加でき、署名依頼の進捗を追跡も可能。Dropboxのアカウントと連携することにより、Dropboxのストレージ上にDropbox Signのフォルダが作成され、署名済みのドキュメントが自動で格納されて便利です。

CHECK

・まずは無料で使えるものから試してみよう
・会計ソフトなどほかのサービスとの連携しやすさも要確認
・導入することで契約業務の効率化と時間短縮につながる

フリーランス向けの電子契約システムの選び方

フリーランスにとって契約はとても大切なもの。自分にとっても取引先にとっても使いやすい電子契約システムを導入することがポイントです。

必要な契約書類形態に対応しているか

以下に挙げるような、企業が取り交わす文書・契約書のほとんどが電子契約で締結可能になっています。これらの中からフリーランスがよく使う秘密保持契約や業務委託契約書に対応していて使いやすいシステムを選びます。

使い続けるにあたり費用は適切か

電子契約システムの費用はさまざま。月額制と従量課金制があり、オプションによって料金が追加されるものもあるので、じっくりと比較し、事業規模に合わせた費用感のシステムから使い始めましょう。まずは無料でテスト利用してみるのもおすすめです。

取引相手が活用しているツールであるか

電子契約を結ぶ際に相手にも負担がかからないシステムを選ぶことが大切なので、頻繁にやりとりする取引先が使っているツールを優先して導入すると良いでしょう。

数ある電子契約システムの中から、自分に合ったサービスを見つけて契約業務を効率化させましょう。トラブルの防止になるだけでなく、業務効率化、コスト削減などビジネスの進行をスムーズにしてくれます。

フリーランスの印鑑作成完全ガイド|用途別の種類・契約書での使い方・電子印鑑の活用法

フリーランスとして仕事をスタートするときに印鑑を作ったほうが良いのか、必要ないのか?と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。「印鑑を新しく作らなくてもフリーランスとして始めることができるが、あったほうが便利なので作ったほうが良い」というのが結論です。では、どのような場合に必要なのか?どんな種類の印鑑が必要なのか?をこの記事でわかりやすく説明します。

フリーランスであっても印鑑を作りましょう!法人登記と異なり必ず必要ではありませんが、事業用の印鑑を使うことでビジネス上の信頼度がアップして取引先とのやりとりが好印象になりますよ。

フリーランスは「個人の実印と銀行印」だけでも始められる

フリーランスとして仕事を始めたい場合、印鑑が必要な場面は大まかに以下2つに分類されます。

  • 事業用の銀行口座を開設する
  • 事業を行う中で発生する書類捺印に使う

まず、フリーランスとして事業を始めるにあたり、プライベートの口座と分けた新しい銀行口座が必要です。個人の銀行口座とビジネスの銀行口座を兼用すると、お金の管理がしづらくなり、会計ソフトとの連携や確定申告の手続きの手間が大きくなります。事業用に分けた口座開設のためにまず「事業用の銀行口座を開設するための銀行印」が必要です。

実際に事業を始めた際、契約書や請求書などさまざまな書類に捺印をする場面が出てきます。ビジネスとしての信用度アップのためには屋号(ビジネス名、ブランド名)の入った事業用の印鑑で捺印ができれば良いですが、屋号がなく新しく印鑑を作る余裕がない場合は「個人の実印」を使っても問題ありません。

なお、2021年4月以降は税制改正により税務署に提出する書類への押印が不要になりました。開業届も確定申告書も印鑑なしで提出できるようになっています。会社間のやりとりでも電子署名やデジタル文書による契約が一般的になってきており、契約の際に印鑑を使う機会が減りました。これらの理由により最近では事業用の印鑑がなくても「個人の印鑑(個人の実印)」で事業を行うことが可能になっています。

フリーランスが作るべき印鑑は「事業用の丸印・角印・銀行印」

新しい印鑑を作らなくてもフリーランスとして事業を始めることは出来ますが、私用と事業用で用途を分けて印鑑をそろえておくことをおすすめします。

事業用の印鑑を使い分けることで以下のようなメリットが生まれます。

  • フリーランスとしての信用度が上がる

事業用の印鑑を使うことによりビジネスの信頼性や信用度が高まります。プロフェッショナルとして事業を行っていることを相手に印象付け、安心して取引をしてもらうことが出来ます。屋号を持っている場合は屋号が記された印鑑を使うとさらに良いでしょう。

  • プライバシー保護や紛失時の損害防止になる

印鑑を一つにまとめることで、個人情報が漏れやすくなり紛失時のリスクが高まります。私用と事業用で印鑑を使い分けることにより、不要な個人情報が漏れるリスクを回避することが出来ます。

事業用に印鑑を新調する際、フリーランスとして持っておきたいのは「丸印」「角印」「銀行印」の3点。ちなみに銀行印と個人の実印は兼用可能なので「丸印」と「角印」の2点のみでも手続き面では問題ないのですが、印影の悪用などのリスクがあるのでおすすめできません。「丸印」も「角印」も「銀行印」もインターネットの印鑑専門店で買うことが出来ます。

将来法人化を考えている場合は、法人設立登記の際に「丸印」「角印」「銀行印」の3点セットが必要になるので、今のうちに作っておくと良いでしょう。

CHECK

印鑑を新しく作らなくても「個人の実印」と「銀行印」でフリーランスは始められる
信頼確保やリスク防止の観点からは個人用の印鑑と事業用の印鑑は分けたほうが良い
フリーランスとして作るべき印鑑は「丸印」「角印」「銀行印」の3点セット

フリーランスが日常的に使用する事業用印鑑「丸印」と「角印」の役割の違い

フリーランスとして日常的に使う「丸印」と「角印」の違いを説明します。ちなみに「銀行印」は銀行などの金融機関で口座開設をする為の印鑑ですので、日常的に使うものではありません。

屋号名と代表者名が記載される「丸印」は重要な契約に使う印鑑

丸印はその名の通り丸い形の印鑑です。二重構造になっており、外枠に屋号、内枠に代表取締役之印という文字が入る作りになっています。実印、代表印とも呼ばれ、契約書や取引書類などの法的な文書に使います。屋号がない場合は、プライベートの印鑑とは別に事業用の丸印を個人名で作れば問題ありません。

屋号名のみ記載される「角印」は見積書・請求書など対外書類に使う印鑑

角印は四角い形の印鑑で、屋号だけが入ったもので屋号印とも呼びます。丸印が二者間の正式な契約書など重要な書類に使われるのに対して、角印は領収書や請求書といった対外書類に使います。

企業によっては「角印が押されていない見積書は受け付けない」といったルールもあるので、フリーランスであっても作っておいて損はないでしょう。

角印は印鑑登録をするものではないので法的効力はなく、種類としては認印(確認した旨を示すためのもの)に分類されます。

屋号がない場合は角印を作らなくても事業用の丸印で代用可能です。ただ、角印があったほうが対外的な信用度が上がるので屋号と角印の作成はぜひ検討しましょう。

CHECK

「丸印」は屋号と代表者が記載されており契約書など法的な書類に使う
「角印」は屋号が記載されており見積書・請求書など対外書類に使う
「角印」は種類としては法的効力のない認印に分類される

「実印」の手続きが必要な場合は個人の実印と印鑑証明書で対応する

フリーランスとして事務所を設けるため不動産契約をしたい、自動車を使う仕事をするので自動車を購入してローンを組みたいといった際に「実印」が必要になることがあります。「実印」とは、役所に印鑑登録している公的に認められた印鑑のことを指し、重要な契約や手続きをする時に欠かせないものです。

フリーランスは法人登記の印鑑登録がないので会社としての実印というものがなく、実印が求められる取引の際には印鑑登録している「個人の実印」と「印鑑証明書」で対応します。

印鑑登録は住民票登録されている市区町村の窓口にて、本人確認できる証明書と申請書を提出すれば手続き出来ます。もし個人の印鑑登録が済んでいない場合はフリーランスを始める時に手続きをしておくと良いでしょう。

フリーランスが印鑑を購入する時に注意すべきポイント・ルール

それぞれの印鑑を作る際に最低限押さえておきたいポイントや、一般的な仕様を説明します。まず印鑑の大きさですが、丸印>銀行印>角印の順にサイズが小さくなるのが一般的です。効力が大きな印鑑ほど大きく作られます。

男性用は大きめ、女性用はやや小さめが推奨されることが多いですが、その通りに作らないと使えないということはありません。自分の好みや使いやすさに合わせて作りましょう。

印鑑に使う書体ですが、選び方があります。事業で使うものは「偽造されにくさ」「耐久性」「読みやすさ」などを考慮したフォントを選ばなければいけません。また、作る際には自分の目でデザイン確認を行いましょう。

素材に関しては、動物の角や牙、木材、チタンなどの金属など様々なものがありますので、予算や好みに応じて選ぶことが出来ます。

「丸印」は欠けにくい「吉相体」で13.5〜15.0mm以上の大きさにする

  • サイズ

13.5〜15.0mm以上

  • 書体

重要な取引で使う丸印に良く使われるのが「吉相体」です。「印相体」とも呼ばれます。文字の線が外枠に向かって広がるようなデザインになっており、末広がりで縁起が良いとされています。線が太く、文字と枠が接する部分が多いので欠けにくいというメリットがあります。

<<吉相体 のイメージ画像>>

「角印」は見やすい「隷書体」で18.0〜24.0mmの大きさにする

  • サイズ

18.0〜24.0mm

  • 書体

角印は記載されている法人名が読みやすいようにシンプルな「隷書体」がおすすめです。バランスの取れたデザインの文字は明瞭で堅実な印象を与えてくれ、文字数に合わせて縦横のアレンジがしやすい書体です。

「銀行印」は偽造しにくい「篆書体」で12.0〜13.5mm以上の大きさにする

  • サイズ

12.0〜13.5mm以上

  • 書体

銀行印は悪用を防ぐため、偽造や盗用防止に効果の高い「篆書体」にしましょう。日本国パスポートやお札にも採用されている書体です。

「電子印鑑」の準備も電子契約のために同時に進めておく

電子契約で契約を取り交わすケースも増えているため、印鑑を作るタイミングで電子印鑑も同時に作ってしまいましょう。「電子印鑑」とは、パソコン上の文書に印鑑を押印できるようにするものです。「電子印鑑」の準備方法は2通りあります。

  • 印影画像を自分でスキャンする

印鑑を白い紙にきれいに押印し、スキャナーでスキャンをしてパソコンに取り込みます。正方形にトリミングをし、背景を透過させればオンライン捺印として使える電子印鑑画像が出来上がります。

  • 電子印鑑作成ソフトを使う

自分で作った電子印鑑画像データは簡単に複製されやすくリスクが高いものです。セキュリティ対策として画像データに使用者情報を持たせた「電子印鑑」がおすすめです。誰が押印したのかを識別することで、偽造や悪用のリスク軽減効果があります。「電子印鑑GMOサイン」や「My電子印鑑」など識別情報付きの電子印鑑を作成する有料サービスに申込をし、印鑑のデータを送るだけで作成することができます。

CHECK

フリーランスの活動で実印が求められる場合は個人の実印を使う
事業用印鑑は大きさやフォントにはルールがある
電子印鑑はセキュリティの高い識別情報付きのものがおすすめ

印鑑を作る費用は「消耗品費」として事業経費に全額計上できる

印鑑の購入や印鑑登録にかかった費用は事業経費として計上可能です。勘定科目は定められていませんが、消耗品費として処理されることが一般的です。確定申告の際に漏れのないように収支にまとめておきましょう。

フリーランスが事業用印鑑を紛失した場合は「銀行・警察」へすぐに連絡

印鑑は会社の顔となる大切なもの。持ち歩くものではないので紛失することは少ないはずですが、紛失・盗難には十分注意が必要です。紛失した場合は、印鑑の種類によって対応が変わってきます。

  • 銀行印を紛失した場合

すぐに銀行と警察に届け出ます。銀行には早めの連絡が必要なので、夜間など窓口が開いていない時間帯は「紛失受付センター」へ連絡します。銀行へ印鑑紛失の旨が伝わると該当の印鑑での入出金や取引が停止され、悪用を防ぐことが出来ます。その後新しい印鑑を用意して銀行印の登録をしなおします。警察には紛失届を提出します。

  • 印鑑登録している実印を紛失した場合

印鑑登録をしている市町村と警察へ届け出ます。印鑑登録書と本人確認が出来る証明書と共に、印鑑登録亡失届を役所へ提出します。これにより印鑑証明書が不正に発行されるのを防ぐことが出来ます。もし印鑑が見つからない場合は、以前の印鑑登録を廃止し新しい印鑑の登録も行います。同時に警察には紛失届を提出します。

  • 印鑑登録していない印鑑(丸印、角印)を紛失した場合

会社の取引時に使う大切な印鑑なので、きちんと警察に届け出をします。誰かが落とし物として届けてくれた際にすぐに連絡がもらえるように警察署で紛失届出証明書や盗難届出証明書をもらっておきます。

新たな気持ちでスタートする決意も込めて、フリーランスを始める際には「丸印」「角印」「銀行印」の3点セットを作りましょう。電子契約が主流になってきているので同時に電子印鑑の用意もおすすめします。

本格的な活動を視野に入れて事業用の印鑑を作る

印鑑を使う機会が減ってきているとはいえ、信用度を上げるために欠かせない事業用の印鑑。WEBデザイナーなどWEB案件が中心のフリーランスであっても是非作っておきましょう。

フリーランスにとって、コミュニケーション能力やスケジュール管理能力と並び事務処理力も大切なスキルの一つです。取引先へ提出する書類の見やすさや印鑑の有無によって信用力が左右されることも留意すると安定的な案件獲得につながります。

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