フリーランスの少額減価償却資産の特例とは?|減価償却のルールと計算手順を具体例で解説

固定資産を一定期間にして会計処理する減価償却は、節税効果やキャッシュフローの改善といったメリットのあるものです。適用方法にはいくつか選択肢があります。フリーランスと減価償却について詳しく知りましょう。

減価償却資産に該当する資産は原則として減価償却を行い、耐用年数に応じて割って費用に計上する必要があります。フリーランスの場合は特例適用することで減価償却せずに一括経費計上ができる場合もあります。

フリーランスは30万円未満の減価償却資産は一括経費計上できる

フリーランスは、30万円未満の減価償却資産に関しては少額減価償却資産の特例を利用して一括経費計上が可能です。パソコンを買い替えたり、新しいソフトを導入したり、オフィスの引っ越しをした際など、通常よりも必要経費が増えた年度に使える制度を知っておきましょう。

そもそもフリーランスの経費と減価償却とは

まず、「経費」とは事業活動を行うために必要な支出のことです。

一方「減価償却」とは固定資産を耐用年数に応じて分割計上することを指します。減価償却により発生した「減価償却費」は経費の一部となります。

減価償却の対象になる資産や金額は定められていますので、資産ごとの耐用年数や減価償却方法を確認しておくことが重要です。

経費計上の減価償却は分割して経費化すること

減価償却とは、長期間使用する資産の価値を複数年で分割して経費として計上する処理のことです。

事業の運営に使用する固定資産の中で時間の経過とともに価値が減っていくもので、取得価額が10万円以上、耐用年数が1年以上のものが対象となります。

減価償却の定額法と定率法の違い

減価償却には主に定額法と定率法の2つの方法がありますが、フリーランスの場合は「定額法」を使用することが一般的です。

定額法のメリットとして、毎年同額の減価償却費を計上できてわかりやすく計算が簡単ということが挙げられます。

定額法:毎年均等に減価償却を行う方法です。資産の取得金額をその耐用年数で割り、毎年同じ減価償却額を経費として計上します。

定率法:初年度に多く減価償却し、減少した金額で償却する方法です。最初のうちは高い額が経費として計上され、その後は徐々に減少します。

そもそも経費になる例・ならない例

事業活動を行うために必要な支出は経費として計上できますが、プライベートなど業務と関係ない支出は経費として認められません。経費になる例・ならない例を以下表でまとめています。

  計上できる例計上できない例
事業関連外注費営業やマーケティング関連業務などの外注料金やライターやデザイナーへの報酬家事代行など業務とは無関係な代行
 広告宣伝費インターネット広告、チラシ広告、SNSやインフルエンサーとのコラボ費用や名刺作成費用など
 通信費事業用の電話代、インターネット代、モバイル通信費用家の固定回線など業務では使わないもの
 事務用品費事務所で使用する文房具や消耗品、コピー用紙などプライベートで利用するもの
 消耗品費電池、事務用品など業務で使うものプライベートで利用するもの
 接待交際費クライアントとの打ち合わせカフェ代や会食費、贈答品業務に関係ない飲食代
 交通費業務に関連する電車代やタクシー代、ガソリン代個人的な移動の交通費
 旅費交通費出張費用としての飛行機や新幹線、宿泊費用個人的な観光などの費用
オフィス関連家賃事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要)
 光熱費事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要)
 保険料事業用の損害保険や生命保険事業主自身の保険料
 設備投資パソコンやオフィス家具、カメラ機材など、事業に必要なものプライベートで利用するもの
 ソフトウェア費用業務で使用するソフトウェアの購入費用やサブスクリプション費用プライベートで利用するもの
人件費給与社員やアルバイトへの給与
 社会保険料雇用保険や健康保険、年金などの社会保険料
教育・研修関連研修費業務やスキルアップに関連する研修やセミナーの参加費用
 書籍費業務に役立つ書籍や資料購入代金個人の趣味で購入したもの

経費化できる減価償却の対象となる資産

フリーランスの減価償却の対象となる主な資産は以下の通りです。経費と同じく、事業に関連するもののみが対象になります。

  • パソコン・タブレット・スマートフォン:仕事で使用するパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど。
  • オフィス機器:プリンター、スキャナー、コピー機、FAXなど、業務で使用する電子機器。
  • ソフトウェア:会計ソフトやデザインソフトなど業務で使用するソフトウェア。
  • 車両:事業用に使用する自動車やバイク、トラックなど。
  • 家具・備品:事務所で使用する机、椅子、棚、書類整理用のキャビネットなど。
  • 建物:事業用に借りている事務所や店舗。

※プライベートで使用しているものは減価償却対象になりません。

業務に使用しない固定資産や、時間が経っても価値が減少しない固定資産に関しては、減価償却の対象にはならず、大きな例で言うと土地は減価償却の対象ではありません。

減価償却の分割は耐用年数により決定されている

減価償却を行う場合、税務署が定めた耐用年数に基づいて償却します。主な資産の耐用年数は以下の通りです。

資産の種類耐用年数
パソコン・タブレット4年
携帯電話・スマートフォン10年
プリンター・コピー機・スキャナーなどの事務機器5年
ソフトウェア(業務用)5年
事務机、いす及びキャビネット(金属製のもの)15年
事務机、いす及びキャビネット(金属製以外のもの)8年
カメラ5年
自動車6年
軽自動車4年
バイク3年
自転車2年

さらに詳しい耐用年数は国税省の減価償却ページもご確認ください。

CHECK

・価値が時間とともに減少する固定資産は減価償却する
・フリーランスは30万円未満の減価償却資産は一括経費計上できる
・対象資産や分割年数は法で決められている

少額減価償却資産の特例で一括で損金算入する

少額の減価償却資産とは取得価格10万円未満の資産のことを指し、この資産に関しては減価償却せずに費用を全て経費計上することができます。

これに加えて、青色申告法人である中小企業者の場合は「少額減価償却資産の特例」が適用となり、購入金額が10万円以上30万円未満の資産についてその年に一括で経費計上できます。これは青色申告を行っているフリーランスも対象となっており、一括で減価償却することで税負担軽減につなげられます。

少額減価償却資産の特例の概要

少額減価償却資産の特例とは、10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した場合に合計300万円までを限度に、即時償却(全額損金算入)が認められる制度です。青色申告をしている中小企業および個人事業主が対象となっています。

減価償却の手続きを避けたい場合や、経費を増やして利益額を減らすことで減税対策をしたい場合に有用です。

少額減価償却資産の特例の対象となる資産は取得価格が30万円未満

1つあたりの取得価格が30万円未満かどうかで対象になるか判断されます。

また、自社の経理処理が消費税込みで処理をしているか、税抜きで処理をしているかによって、判断する価格が変わってくることにも注意しましょう。

少額減価償却資産の特例の上限は事業年度で300万円までが対象

1年間に特例として計上できる資産の上限額は300万円となっています。300万円を超えるものに関しては適用外となります。

ひとつの資産を特例の対象と対象外に分けることはできないため、上限金額ぎりぎりまで使いたいので資産を分けて計上する、ということはできません。

少額減価償却資産と一括償却の償却方法の違い

「少額減価償却資産の特例」とは別に、「一括償却資産制度」による減価償却手法もあります。

一括償却資産とは、すべての事業者を対象に10万円以上20万円未満の減価償却資産を3年間で均等償却できる制度です。

例えば15万円(10万円以上20万円未満の)のパソコンを購入した場合にできる処理方法は以下の3パターンになります。

①耐用年数に応じて減価償却

②一括償却資産として処理

③少額減価償却資産の特例で処理(青色申告をしている場合)

①耐用年数に応じて減価償却②一括償却資産として処理③少額減価償却資産の特例で処理
償却年数4年(パソコンの耐用年数が4年)3年(3年の均等償却が適用される)1年(即時償却が可能)
会計処理初年度:減価償却費 3万7,500円2年目:減価償却費 3万7,500円3年目:減価償却費 3万7,500円4年目:減価償却費 3万7,500円初年度:減価償却費 5万円2年目:減価償却費 5万円3年目:減価償却費 5万円初年度:減価償却費 15万円

少額減価償却資産の特例の適用には青色申告が必要 

少額減価償却資産の特例を適用できるのは、青色申告書を提出している事業者のうち、常時使用する従業員数が500人以下である事業者に限定されています。

特例を適用したい場合は、青色申告で確定申告を行う必要があるので注意しましょう。

少額減価償却資産の特例は節税にメリットがある

少額減価償却資産の特例を使う大きなメリットは節税効果です。実際に支払った金額を同じ年度のうちに経費として計上することで利益額を抑え、課税対象額を低くすることで節税効果を得られます。

CHECK

・フリーランスは少額減価償却資産の特例が適用される
・少額減価償却資産の特例により年300万円まで全額損金算入可能
・少額減価償却資産の特例は節税にメリットがある

少額減価償却資産の特例を適用する注意点

少額減価償却資産の特例は、10万円未満の減価償却資産や一括償却資産との違いを理解しどれが最適なのかを判断して選択する必要があります。

また、資産の購入金額が基準を超えている場合や事業用途でない資産には適用されないので注意しましょう。

節税対策になる一方で利益が減るケースも

少額減価償却資産の特例を利用すると、その年度に全額を経費として計上するので帳簿上の利益額が減少します。

利益が減少することは、税負担軽減や資金繰り改善に有利である反面、銀行からの融資を受けにくくなるなどのメリットもあります。

消費税の処理の方法で会計の扱いが変わる

インボイス制度により免税事業者と課税事業者のどちらかを選択するフリーランスが出てきました。免税事業者は消費税の納付義務が免除されており税抜きで会計を行います。

課税事業者は消費税の納税義務があり、税込みで会計を行います。少額減価償却資産の特例が適用される30万円までに費用が収まるかどうか、税抜きか税込みのどちらで判断するべきなのか自社の会計方法をきちんと把握しておく必要があります。

CHECK

・少額減価償却資産の特例を適用するには注意が必要
・短期的な利益の減少によるデメリットもある
・消費税の処理の方法で会計の扱いが変わる

減価償却は、フリーランスにとって節税やキャッシュフローの改善に有効な手段です。特に、30万円未満の資産には一括経費計上ができる特例があり、これを活用することで税負担を軽減し、経営の安定性を高めることができます。

フリーランスこそ会計ソフトで経理作業を効率化|推奨ツール・導入後の効率的な会計業務の始め方

フリーランスが売上を上げる行為に集中するためには、事務処理や経理作業などのバックオフィス業務を効率化させるのがカギになります。特に経理作業は専門知識が必要で、初心者にとっては時間がかかるもの。会計業務を楽にするツールを導入することで効率化を図ります。

フリーランスが会計業務を効率よく進めるためのツールとして、会計ソフトの導入が非常に重要です。初心者でも使いやすく、事業をサポートする機能が豊富なソフトを選ぶことがポイントです。

青色申告のフリーランスには会計ソフトが必須

青色申告をするには原則として仕訳帳と総勘定元帳の2つの帳簿が必要になります。仕訳帳は日々の取引を日付順に記録する帳簿で、総勘定元帳は仕訳帳に記録された取引を勘定科目ごとに記録する帳簿です。どちらも経理の知識がある程度ないと作成が難しいのですが、会計ソフトを使うことで知識がなくても効率的に申告準備を進めることができます。

迷ったら導入すべき会計ソフトおすすめの会計ソフトの特徴と強み

会計ソフトは入力された取引をもとに自動で仕訳を行い帳簿を作成してくれるだけでなく、青色申告や確定申告に必要な書類を自動で作成する機能を持っているものもあります。これらの機能を持っているソフトを使うことで、正確な帳簿管理や確定申告をスムーズに済ませることができるのです。

会計初心者向けに優しいfreee会計

フリーランス向けに設計されたfreee会計は、会計知識がない人でも操作がわかりやすく、自動仕訳やレポート作成機能が豊富です。請求・支払業務から会計帳簿・決算書の作成、経営管理まで、会計をスムーズに効率化してくれます。

マイクロ法人フリーランス向けなMoneyForwardクラウド確定申告

MoneyForwordクラウド確定申告は、ステップに沿って入力していくだけで確定申告に必要な書類をカンタンに作成できるサービスです。銀行口座やクレジットカードからの取引明細自動取得、勘定科目の自動提案などの機能も充実しています。

領収書が多い人向けな弥生のクラウド確定申告ソフト

やよいの青色申告は、青色申告に対応した機能が充実しており、簿記知識がない人でも仕訳や帳簿の管理が簡単に行えるのが特徴です。1日あたり10,000枚まで領収書を取り込める機能があり、領収書が多い人に向いている会計ソフトです。

大手シェア会計ソフトから選べば間違いない

フリーランスによく選ばれているのは、freee・マネーフォワード・弥生の三大会計ソフトです。これらの会計ソフトにはフリーランスに必要な機能が備わっており、未経験でも使いやすい仕様になっているので3つのうちから選んで使ってみると良いでしょう。

CHECK

・会計ソフトを使えば経理知識がなくても確定申告がスムーズになる
・さまざまな会計ソフトの違いを知り、自分に合ったものを選ぶ
・大手シェア会計ソフトから選べば間違いない

会計ソフトでできること・メリット・デメリット

会計ソフトを導入するメリットは経理業務の効率と正確性が大幅に向上することです。会計ソフトでできることを詳しく知り、何がどう便利になるのかを把握しましょう。

会計ソフトの主な機能

会計ソフトは会計が初めての人でもわかりやすく経理処理ができるようになるツールです。銀行やカードの取引データを自動で取り込んだり、売上や経費を自動で計算してくれたり、必要な帳簿類を自動で作成してくれるなどとても心強い存在です。AI機能を搭載した会計ソフトではデータの自動入力だけでなく、数字のチェックもしてくれるなど便利な機能が追加されています。

自動仕訳機能

仕訳とは、ビジネスにおいて発生した取引を「借方」と「貸方」に分けて仕訳帳に記入することです。記入する際には適切な勘定科目を選ぶ必要がありますが、会計ソフトでは自動で判別して仕訳伝票を作成してくれます。

領収書やレシートのスキャン保存機能

紙でもらった領収書やレシートをスキャナーでスキャンしたり、スマートフォンのカメラで撮影すると、日付や金額を自動でデータ化して会計ソフトに取り込んでくれる機能です。手入力によるミスを防止し、何よりも時短につながります。

銀行口座やクレジットカードとの連携機能

会計ソフトを銀行口座やクレジットカードと連携すると、取引情報が自動で会計ソフトに取り込まれ、支払い詳細や未払金の状態など、取引情報をリアルタイムに正確に把握することができます。

帳簿や資金繰り表などのレポート作成機能

確定申告の際に提出が必要な帳簿や、キャッシュフローを把握するための資金繰り表を自動で作成してくれる機能です。資料をまとめる時間を取られることなく売上推移や支払いスケジュールなどを素早く把握することができます。

確定申告書類の自動作成機能

フリーランスが行う会計処理の中で一番大変なのが確定申告です。毎月の収支データを会計ソフトに蓄積しておけば確定申告に必要な書類を作る手間を減らせるだけでなく、控除額の確認や記載漏れ防止などミスを防ぐことができます。

メリットは簿記の知識不要で効率的な会計業務

フリーランスが会計ソフトを使う大きなメリットは簿記や会計の知識がなくても経理業務を効率的に進められることです。自分でエクセルなどで数字の管理を行う手間と比べてスピーディに会計処理を行い、仕訳の自動化やチェック機能によりミスが少ないのが心強いポイントです。デメリットよりもメリットのほうがはるかに大きいので、会計ソフトの導入は積極的に検討しましょう。

デメリットはランニングコストのみ

機能が充実している会計ソフトを使う場合は費用がかかるのがデメリットではあるものの、その分削減できる手間や時間を考えると決して高い投資ではないでしょう。

CHECK

・会計ソフトの導入はフリーランスにとってメリットが多い
・大きなメリットは経理業務の効率と正確性が大幅に向上すること
・会計ソフトはメリットが多いので導入は積極的に

法人とフリーランスでは必要な確定申告書類の違いがある

法人とフリーランスの大きな違いは、法人登記しているかどうかです。法人登記をすると申告先や税金の種類、税率などが変わります。また、フリーランスといわれる働き方の中にも、法人を設立せずに個人で事業を営む個人事業主のフリーランスもいれば、1人で事業を回しながら法人化しているマイクロ法人フリーランスといった人もいます。

個人事業主フリーランスの場合

個人事業主とは法人ではなく個人で事業を営む自営業者のことを指します。個人事業主で確定申告をするには青色申告がおすすめですが、会計ソフトを使うことで以下の必要書類を簡単に作成することができます。

確定申告で必要な書類:

  • 確定申告書B
  • 収支内訳書
  • 青色申告決算書(青色申告の場合)

マイクロ法人フリーランスの場合

マイクロ法人とは、代表者ひとりで経営している法人のことです。実態としては個人事業主と変わらないことが多いですが、法人格の有無、経費の取り扱い方法などが大きく異なります。確定申告においても、法人に準じた申告が必要になるため個人事業主の確定申告よりも複雑な決算申告及び税務申告が必要になります。提出が必要な書類の種類も増えるので、税理士に依頼することが多いです。

確定申告で必要な書類:

  • 総勘定元帳
  • 領収書綴り
  • 決算報告書
  • 勘定科目明細書
  • 法人事情概況説明書
  • 法人税の申告書
  • 消費税の申告書
  • 地方法人税の申告書

CHECK

・法人とフリーランスでは必要な確定申告書類が異なる
・個人事業主の確定申告は比較的簡単
・マイクロ法人の場合は確定申告においても、法人に準じた申告が必要になる

本当に必要な会計ソフトの比較ポイント・選び方

会計ソフトには様々な種類があり、事業規模や自身の会計知識量にあったものを選ぶのが良いでしょう。会計ソフトを選ぶ際にチェックしておきたい比較ポイント4点を紹介します。

クラウド型であること

会計ソフトにはパソコンにダウンロードして使用する「インストール型」とインターネットにアクセスしてブラウザで使用する「クラウド型」があります。銀行の入出金記録やクレジットカードの明細などを連携して読み込むことができ、税制度の改正などにも対応してアップデートされるクラウド型がおすすめです。

青色申告に対応していること

フリーランスの確定申告に欠かせない会計ソフトは、青色申告で必要な複式簿記に対応しており、e-Tax対応で書類作成から提出までをオンラインで済ませることができるものが必須です。

口座やカードなど外部連携機能が豊富であること

会計ソフトには銀行やクレジットカードなど金融機関や電子マネーと連携してデータを自動入力し、入力の手間を削減する機能がついています。自身が使っている金融機関との連携が対応されているかどうかチェックをしましょう。

有料プランの費用が高すぎないこと

クラウド型会計ソフトにかかる費用は年間1万円前後が目安です。フリーランスとして必要な機能を満たしているものであれば十分です。必要以上にハイスペックなソフトを導入すると費用も高くなるので気を付けましょう。

会計ソフト導入後の効率的な会計業務の始め方

会計ソフトを導入したら初期設定が肝心です。自社の取引先に合わせた仕訳設定や、必要な書類のフォーマットを設定しておきます。なにかが必要になった時に設定から始めようとすると、欲しいデータがまとまっていなくていちからやり直し、といったことになりかねません。

事業用口座を開設し会計ソフトに紐づける

プライベートのお金と混ざらないように事業用口座をまず開設し、口座と会計ソフトの紐づけを行います。これにより入出金のデータを自動的に取り込むことができます。

ビジネスカードを​つくり会計ソフトに紐づける

銀行口座だけでなく、ビジネス用のクレジットカードを使う場合はカードと会計ソフトの紐づけを行うことで取引情報を自動的に取り込めます。支払いの詳細や未払金の管理が簡単になります。

​請求書や​見積書の​ツールを用意する

会計ソフトに用意されているテンプレートをもとに、請求書や見積書のフォーマットを作っておきます。

月末毎に会計ソフトで入出金の仕訳を行う

会計ソフトで自動仕訳を行うには、事前に自動仕訳ルールを設定しておきます。自動仕訳ルールとは、勘定科目などの仕訳内容を記憶し、明細が取り込まれた際に自動で仕訳できるようにしておくことです。この設定をすることで仕訳候補に勘定科目や摘要が反映されるため、仕訳業務が簡単に完了します。

最初はお金の流れを知るために会計業務は​自分で​行うべし

会計ソフトが出てくる前までは会計業務の負担削減手段として税理士に頼んでやってもらうことも選択肢の一つでしたが、現在では優秀な会計ソフトがその役割を担ってくれています。フリーランスとして自身の資金繰りを把握しておくために、まずは会計ソフトを使いながら自分で会計業務の一連の流れを経験しておくことをおすすめします。

CHECK

・会計ソフトは青色申告に対応しているものを選ぶこと
・事業規模や自身の会計知識量にあったものを選ぶのが良い
・お金の流れを知るために、まずは自分でやってみること

自分の事業規模や、自身の経理知識の度合いに合わせた会計ソフトを選び導入することで、日々の経理業務だけでなく確定申告まで効率的に済ませることができます。

フリーランスが開業届を迷わず提出するために|記入のコツ・押印の有無・控えの保存まで完全対応

「開業届の提出」はオンラインでいつでも提出可能で、事業内容などが決まっていれば簡単に手続きができます。

フリーランスにとって開業届はビジネススタートの記念となるもの。簡単な手続きで、オンラインでいつでも申請可能なので、後回しにせずに早めに提出してしまいましょう。

開業届はフリーランス活動を始めてから原則1月以内に提出

開業届とは個人が事業を開業したことを税務署に申告する書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」と言います。

営利目的で事業を開始した場合、利益の発生有無に関わらず開始1ヶ月以内に開業届を税務署に提出する義務があります。

開業届を出すことで、フリーランスとして正式に活動を開始したことを示す節目になりますので、きちんと手続きをしておきたいものです。開業届を出すことで得られるさまざまなメリットもありますので、独立を考えている方は準備を進めておきましょう。

開業届を提出しなくとも「罰則」はない

開業届の提出は法律で義務付けられているものの、実は開業届を出さないで事業を行っていても罰則はありません。

その代わり未提出にはデメリットもあります。

開業届を出さないと確定申告は「白色申告」のみ

確定申告は毎年1月1日から12月31日までの所得金額を税務署へ提出し、納税額を確定させるための必要な手続きです。「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があります。「青色申告」には要件を満たせば最大で65万円の控除を受けられる特別控除があり、節税の大きなメリットがあります。開業届と同時に青色申告承認申請書を提出していないと控除のない「白色申告」しかできなくなってしまいます。

開業届を出していなくてもインボイス制度には登録できる

2023年10月1日から導入された「インボイス制度」とは、消費税の仕入税額控除の金額を正しく計算するための制度です。適格請求書(インボイス)を発行するには課税事業者となり適格請求書発行事業者の登録が必要となっています。このインボイス制度の登録は、開業届提出有無に関係なく行うことができます。

開業届を提出する目安は「所得が48万円」を超える場合

フリーランスは所得合計が48万円以下であれば確定申告をする必要がありません。所得から基礎控除の48万円を差し引くと課税所得が0円になるためです。所得が48万円を超える見込みがある場合は、開業届を提出しておきましょう。

フリーランスは開業届の提出はメリットが多い

開業届を出した場合に得られるメリットは多くあります。最も大きいのが控除による節税の効果です。それ以外のメリットもしっかり押さえておきましょう。

青色申告の活用で確定申告時の節税につながる

「最大65万円の特別控除が受けられる」「赤字を繰り越せる」などの節税メリットがあるのが青色申告です。青色申告を行うには、開業届を提出した後、青色申告承認申請書を税務署に提出しておく必要があります。

小規模企業共済で退職金替わりのセーフティネットができる

小規模企業共済制度とはフリーランスや経営者向けの共済制度で、事業をやめる際に積立金額に応じた退職金を受け取ることができます。退職金のないフリーランスが万が一の備えに入るこの共済は、開業届を提出している事業者のみが加入することができます。

屋号付きの事業用銀行口座・法人用クレジットカードを作れる

開業届を出すことで、個人名義ではなく屋号が名義になった事業用銀行口座や法人用クレジットカードを作ることができます。プライベートと事業のお金の管理を分けることで、事業収益や経費の管理をしやすくなります。

保育園に就労証明書として提出できる

保育園を利用するためには、親が働いていることを証明する必要があります。フリーランスの場合は就労証明書に加えて業務委託契約書や税務署の受付印が押印された開業届の控えの提出が必要になります。開業届を出すことで、開業届の控えをフリーランスで仕事をしている証拠書類として提出することができます。

CHECK

開業届はフリーランス活動を始めてから1月以内に提出する
開業届を提出することでさまざまなメリットが得られる
青色申告をしたい場合は開業届と同時に青色申告承認申請書も提出する

開業届を提出すると失業手当はもらえなくなるため要注意

会社を退職してからすぐに開業届を提出した場合、失業手当や再就職手当は受給できません。退職後、失業手当を受け取りながら準備の時間を取りたいと考えている場合は実際に事業を開始するまで開業届を出さないほうがよいでしょう。

開業届の提出のスムーズな進め方と必要な準備物

開業届の提出は事前の準備をしておけばオンラインですぐに手続きができます。

開業までの流れ・全体像

項目内容
開業日を決める事業の開始日を決めます。事業用オフィスを借りた日、ホームページを開設した日、など基準は何でもかまいません。
屋号を決める事業の開始日を決めます。事業用オフィスを借りた日、ホームページを開設した日、など基準は何でもかまいません。
開業届の提出管轄の税務署へ、個人事業の開業・廃業等届出(開業届)を提出します。事業開始から1ヶ月以内と定められています。
青色申告承認申請書の提出管轄の税務署へ、青色申告承認申請書を提出します。事業開始から2ヶ月以内と定められています。
国民健康保険・国民年金への加入住んでいる市区町村の役所で手続きを行います。会社員から独立した場合は会社の健康保険からの切り替えを行います。
銀行口座の開設プライベート用とは別に事業用の銀行口座の開設をします。
ホームページの準備集客のためにホームページや自身のポートフォリオページを用意します。
帳簿をつけ始める開業準備費用も経費にできますので、開業手続きにかかった費用を記録に残しておきます。
名刺や印鑑など備品をそろえる実際に事業を行うにあたり必要になるものをそろえておきます。

開業届に必要な書類とスムーズな開業のための準備物

開業届を提出する際に必要なのは以下2点のみです。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)に記入をしたもの
  • マイナンバーカード

マイナンバーカードを持っていない場合は、「マイナンバー通知カード(マイナンバーの番号がわかるもの)」と「マイナンバーを記載した住民票の写し(身元確認ができる書類)」を用意します。

マイナンバーカードがある場合とない場合で、手続きの流れが大きく変わるので注意が必要です。マイナンバーカードがないとオンラインでの申請ができない場合がありますので事前に作っておくことをおすすめします。

屋号名

開業届には屋号を記入する欄があります。屋号とは会社でいう法人名にあてはまるもので、フリーランスが事業を行う際に使用するものです。開業届の提出に屋号の記入は必須ではないですが、フリーランスとしてビジネスを行う上で取引先からの信用獲得や屋号名義での銀行口座開設などのメリットが多いです。

屋号名

開業届には「職業」および「事業の概要」を記入する欄があります。書き方としては特に決まりがないのでありのままを記載します。

書き方例)

職業欄:小売業   事業概要:ハンドメイドアクセサリーの製造販売

職業欄:デザイナー 事業概要:Webサイトのデザインや制作

開業届の職業欄は個人事業税に関係しますので、事業内容を適切に記入する必要があります。個人事業税とはフリーランスが納める税金の一つで、職種ごとに税率が異なります。「法定業種」に該当する場

開業届の作成・提出はオンライン対応で自宅から行う

開業届はオンラインで提出できます。税務署の窓口へ持参や郵送もできますが、オンラインが最もスムーズです。提出方法としては①e-Tax経由で提出、②会計ソフトのサービスを使う、の2つの手段があります。

①e-Tax(国税電子申告・納税システム)で開業届を提出

国税局のe-Taxのページから利用者識別番号と呼ばれる16桁のID番号を取得してログインした後、e-Taxソフトをダウンロードし、必要事項を入力すればオンラインで申請できます。少しややこしく感じるかもしれませんが、窓口の手続きよりもはるかに短時間で手続きできます。

ATTENTION

e-Tax

②会計ソフトのサービスを使う

クラウド会計ソフトの中には、フリーランスに対する開業支援サービスを行っているものがあります。freee開業マネーフォワード クラウド開業届などでは無料で開業届の作成・提出をオンラインで簡単に完了できます。

開業後に会計ソフトの導入を考えている場合は、簿記の知識が不要で簡単に使えるfreeeをおすすめしています。freeeの開業支援サービスを使えば、事業開始後の会計も同じシステムで楽に移行可能です。

青色申告も開業届と同時に提出を行う

控除のある青色申告をするには、開業時に青色申告承認申請書の提出が必要です。開業から2ヶ月以内に提出が必要なもので、開業届と同時に提出ができますので忘れないように一緒に出しておきましょう。

開業届の提出と同時にしなければならない保険の手続き

フリーランスは社会保険のうち労災保険と雇用保険には加入できないので、「健康保険」「年金保険」の2つに自己負担で加入することになります。将来の健康や生活を守るために必要なものですので、開業届を出してフリーランスになると同時に手続きを進めます。

健康保険への加入手続きを行う

フリーランスの健康保険の選択肢は以下の3つです。

  • 国民健康保険

自営業やフリーランスが加入する健康保険です。お住いの市区町村の役所に「退職証明書」「身分証明書」「マイナンバーがわかるもの」を持って手続きを行います。

  • 会社の健康保険を任意継続

勤めていた会社の健康保険を任意継続するためには、退職後20日以内に手続きを行う必要があります。任意継続ができるのは2年間のみで任意継続被保険者となった日から2年を過ぎると自動的に資格喪失となります。

  • 国民健康保険組合

会社員でなくても加入ができる、業種別に組織された健康保険の組合です。ご自身の事業内容で入れるものがないか一度確認してみましょう。

上記以外にも配偶者の扶養に入ることもできます。その場合は加入する健保に確認の上、要件の金額を超えないように注意が必要です。

国民年金への加入手続きを行う

フリーランスになるにあたり、厚生年金から国民年金への切り替えが必要になります。国民年金のみの場合、年金給付額は少なくなるため国民年金基金やiDeCoへの加入も検討しましょう。お住いの市区町村の役所に「年金手帳」「退職証明書」を持って手続きを行います。

CHECK

開業届を提出するにはマイナンバーを活用したオンライン手続きがおすすめ
マイナンバーカードの準備と、屋号・事業内容は早めに決めておくこと
青色申告や保険の手続きも開業届の提出と同時に行うこと

開業届はオンラインでいつでも簡単にできます!開業届の提出と同時に、確定申告の準備や健康保険・国民年金の変更手続きも必要です。フリーランスとして存分に仕事ができる環境整備のため、初めの手続きは抜かりなく行いましょう!

開業届や会計作業はツールで時短。活動の幅を広げる「仕事」に専念

開業届の提出はゴールではなくスタートです。取引先の開拓や実績作りなどやらなければならないことがたくさん始まります。

フリーランスで仕事をするうえで大切にしたい考えが「効率化」と「人脈づくり」です。事務手続きや経費処理など自分がやる必要のない作業は積極的に業務効率化させて時間を作っていきましょう。

効率化によりできた時間を有効活用し、案件獲得や実績作り、スキルアップを図ることに使います。フリーランスは人とのつながりが業界の情報収集や案件紹介につながるので、積極的にコミュニティや勉強の場に入っていると安心です。

フリーランスの確定申告はいくらから?|確定申告が必要な所得と対応に必要な書類・控除・修正申告方法

フリーランスは会社に属さず、自分の好きなタイミングで仕事をすることができる働き方です。自由があることがメリットですが、税金や保険などの手続きもすべて自分自身で行わなければなりません。

お金の手続きの中で大きなものが確定申告。「難しい」「面倒くさい」といったイメージがありますが、個人事業主向けの会計ソフトの多様化や、申請手続きのオンライン化などによって以前と比べて楽になりました。どこから手を付けてよいのか全く分からない方でもわかりやすく、確定申告についてまとめています。

確定申告は会計ソフトを使えば簡単!そんなに大げさにとらえる必要はありません。準備するべきことをしっかりと把握し、毎月の収支を記録付けしておけばスムーズに手続きができます。

年間20万円以上の事業所得がある場合には確定申告が必要 

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日の1年間の所得(収入から経費を引いた額)をもとに所得税額を確定する手続きのことです。

売上から経費を引いた所得が年間20万円を超える場合は副業であっても確定申告が必要になります。

個人事業主やフリーランスの場合は、所得が48万円を超えると確定申告をする必要がありますが、所得が満たない場合や赤字の場合は申告が不要になります。ただし、不動産投資や株取引をしている場合は本業に関わらず申告が必要です。

CHECK

確定申告とは所得税等の額を計算して確定させる手続きのこと
フリーランスなどの事業所得がある人や会社員の副業で年間20万円を超える人が対象
赤字の場合は確定申告の義務はありません

確定申告の必要書類や具体的な申告の流れと準備

青色申告と白色申告の大きな違いは「控除があるかどうか」です。控除とは、所得税を計算する際に所得金額から差し引ける金額のことです。控除があることで、所得税や住民税などの税金を低く抑えることができます。

青色申告で提出したほうが、はるかに節税のメリットが大きいので、青色申告の準備が間に合わなかったといった場合以外は基本的に青色申告での手続きをおすすめします。

青色申告と白色申告では必要書類や記帳方法が異なる

青色申告をするためには、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と「開業届」を所管の税務署に提出する必要があります。白色申告をするために必要な申請はないので、上記2点を提出していなければ自動的に白色申告になります。

白色申告のほうが簡単といわれていますが、会計ソフトを利用すれば手間はほとんど変わりません。

青色申告白色申告
提出に必要な書類所得税の確定申告書
収支内訳書
※家計簿のようなかんたんなもの
所得税の確定申告書
青色申告決算書
※会計ソフトを使った帳簿のかたちのもの
記帳方法勘定科目で仕訳をした帳簿形式売上と経費が分かればよい
節税メリット最大で65万円控除の優遇措置
住民税、健康保険料も引き下げ
遇措置なし
その他メリット赤字を3年間繰り越しできる
家族への給料、家賃や電気代を経費にできる
30万円未満の固定資産を全額経費にできる
開業時期に関係なく申告できる

青色申告と白色申告の確定申告の流れ

青色申告と白色申告は、事前準備の有無と提出書類が異なりますが、スケジュールはどちらも同じです。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告する必要があります。

青色申告白色申告
事前準備開業届を提出
青色申告承認申請書を提出
なし
月々のお金の管理複式簿記
※会計ソフトで管理可能
単式簿記
※会計ソフトで管理可能
必要書類の準備青色申告決算書の作成
※会計ソフトで作成可能
控除証明書の準備
収支内訳書の作成
※会計ソフトで作成可能
確定申告書の作成※会計ソフトで作成可能※会計ソフトで作成可能
確定申告書を税務署へ提出
※2月15日から3月15日まで
※年によって期限日が異なる場合があります
税務署の窓口に直接or郵送にて提出もしくはe-Taxからオンラインで提出税務署の窓口に直接or郵送にて提出もしくはe-Taxからオンラインで提出
税金の納付・還付預金口座の引き落としor振込履歴を確認
※税務署から納付書などのお知らせはありません
預金口座の引き落としor振込履歴を確認
※税務署から納付書などのお知らせはありません

確定申告後に間違いが見つかった場合は修正申告も行う

提出済みの確定申告の内容にミスが見つかった場合は、できるだけ早く修正申告を行います。よくあるケースとしては、「計上するべき売上が漏れていた」「利用できる控除を入れ忘れた」というものがありますので、提出前にいま一度確認しましょう。

申告内容の修正はe-Taxページの「確定申告書等作成コーナー>新規に更正の請求書・修正申告書を作成する」のボタンから申請可能です

領収書の保管や会計ソフトによる記帳を毎月行っておく

事前の申請や毎月の帳簿作成、そして確定申告に必要な項目を自動でまとめてくれるのが会計ソフトです。事務処理の効率が各段にアップしますので、法人化していないし売上額がまだまだだと思っていても、会計ソフトは早い段階で導入することをお勧めします。

会計ソフトを導入するメリット

  • 確定申告の負担を大幅に軽減できる
  • 経理業務を自動化できる
  • 簿記の知識がなくても経理業務ができる
  • 日々の収支管理を楽にできる
  • 会計ソフトにかかる費用は経費にできる
  • 見積書・請求書作成機能もある
  • スマホでも操作が可能

会計ソフトには「freee会計」や「マネーフォワードクラウド確定申告」などがあり、ニーズに合わせて選ぶことができますので詳しくは以下のリンクをご覧ください。

CHECK

青色申告と白色申告の違いは控除があるかどうか
青色申告は控除があり、必要書類を整えれば簡単に手続きできる
会計ソフトを導入すると確定申告の手続きだけでなく日々の記帳が楽になる

確定申告の対象となる所得や支払う税金の種類

確定申告の対象となるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3つです。会社員は給与所得ですが、フリーランスの場合は「事業所得」となり、確定申告の対象となります。

収入から経費を引いた事業所得が確定申告の対象

事業所得とは小売業やサービス業もしくは自営業で生じる所得を指します。個人事業主やフリーランスの所得が該当します。「所得とは収入から必要経費を引いた金額」のことなので、事業所得とは事業収入から必要経費等を差し引いた金額です。所得税はさらに所得控除を差し引いた額に課税されます。

フリーランスが計上できる経費の例

経費とは、事業を行う上で発生した費用のことです。フリーランスの場合ビジネスとプライベートの線引きが難しく判断に迷うこともありますが、客観的に事業に関わる費用であると説明できるかどうかを基準として判断しましょう。

<毎月発生する経費>

家賃:地代家賃
水道光熱費:水道光熱費
インターネット費:通信費
スマホや電話の通信費:通信費
レンタルオフィス費:賃借料
業務ソフトの使用料:消耗品費

<都度発生する経費>

ホームページ作成を外注した代金:広告宣伝費
パソコンなどを購入した代金:10万円未満は消耗品費、10万円以上は減価償却資産
打合せのカフェ代金:会議費
勉強会に参加した代金:教育費
文房具購入費:消耗品費
ガソリン代:消耗品費
電車やバス代:交通費

確定申告で支払う主な税金の種類

個人事業主やフリーランスにかかる税金は「所得税」「住民税」「消費税」「事業税」の4種類です。どの税金にどのような控除が使えるか知ることで、節税につながりますのでそれぞれしっかり把握しましょう!

所得税

毎年1月1日から12月31日の期間に得た収入から、経費を差し引いた所得に課税される税金です。

所得税=(所得 – 所得控除)× 税率 – 税額控除

住民税

住民税とは、納税者の住所や事業所を置いている都道府県及び市町村に納める税金のことです

住民税 = 均等割(一定額)+所得割(※所得に自治体の税率をかけたもの)

事業税

各都道府県に支払う事業を行っていることに対して支払う税です。年間の事業所得が事業主控除額である290万円以下になる場合は、事業税を納付する必要はありません。

事業税額=(所得-各種控除)×税率

消費税

個人事業主の売上高が1000万円を超えた場合、その2年後から消費税の納税義務が発生します。

消費税額=売上金額に含まれる消費税額-仕入れ・経費に含まれる消費税額

税金がかかる所得は所得控除後の課税所得金額が対象 

所得税の額を計算するもとになる「所得」とは、所得から所得控除を差し引いた残りの金額を指します。以上のことから、確定申告の際には控除額の大きさが重要になってきます。

所得控除と税額控除の違い

税率をかける前の課税所得から控除を行う「所得控除」とは別に、計算した税額から直接控除する「税額控除」というものもあります。配当控除、住宅ローン控除、外国税額控除などが該当します。

フリーランスが活用する代表的な所得控除

基礎控除、配偶者控除(特別控除)、扶養控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除

所得控除は15種類あり、内訳は以下の通りです。丸がついているものが、よく使われている控除になります。

物的控除人的控除
雑損控除
〇医療費控除
〇社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
〇生命保険料控除
地震保険料控除
寄附金控除
〇基礎控除
〇配偶者控除
配偶者特別控除
〇扶養控除
障害者控除
寡婦控除
ひとり親控除
勤労学生控除

CHECK

所得とは収入から必要経費を引いた金額のこと
事業を行う上で発生した費用を経費とすることができる
フリーランスで使える控除はきちんと知っておくと良い

確定申告をしなかった場合・忘れてしまった場合の対処法

確定申告の提出が漏れるとペナルティが課されることがあるため毎年の申告期間は忘れないようにカレンダーに書き込んでおきましょう。

確定申告を忘れると無申告加算税や重加算税などペナルティがある場合も

法定期間内に確定申告を行わなかった場合、ペナルティとして追加で税徴収されることがあります。

加算税と言われ、「期限までに確定申告をしなかった」場合は無申告加算税、「期限後に修正をした」場合は過少申告加算税、「悪質な隠ぺいがあった」とされた場合は重加算税が課される可能性があります。

確定申告を忘れたことに気づいたらできる限り早く申告を行う

確定申告の提出を忘れてしまった場合。また、提出内容に不備があることに気づいた場合はできるだけ早く手続きを行いましょう。

確定申告を忘れていたとき

確定申告をすることを忘れていたときは、できるだけ早く申告するようにしてください。申告の必要があるにもかかわらず、申告をしなかった場合には、税務署長が所得金額や税額の決定を行う場合があります。
なお、税務署長が決定を行う場合や申告期限に遅れて申告した場合などには、加算税が賦課される場合があるほか、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税を併せて納付しなければなりませんので、ご注意ください。

税額を少なく申告していたとき

確定申告書を提出した後で、税額を少なく申告していたことに気付いたときは、「修正申告書」を提出して正しい税額に修正する必要があります。
修正申告書は、税務署長から更正を受けるまではいつでも提出できますが、なるべく早く申告してください。
修正申告によって新たに納める税額は、修正申告書を提出する日(納期限)までに、延滞税と併せて納めてください。

フリーランスでも税務調査で追徴課税がかかる場合も

確定申告終了後も、関係書類は保存が必要です。青色申告の場合、帳簿・決算関係書類は7年間、請求書、見積書などの書類は5年間の保存が義務付けられています。

実はフリーランスであっても税務調査が入ることがあります。

特に関係のない経費が多く計上されている、申告漏れが多い、といった場合は指摘が入る可能性があるので注意しましょう。確定申告は個人で完結できる作業ですが、不安な方は税理士にお願いすることもできます。

確定申告には「青色申告」と「白色申告」がありますが、メリットの多い「青色申告」がおすすめです。毎月の帳簿付けは是非会計ソフトを活用し、事務手続きを効率化しましょう。

確定申告は青色申告・白色申告どちらがいい?|フリーランスに最適な選択と控除・申告の際の注意点と時短テクニック

確定申告をスムーズに時短で済ませる方法をまとめています!経理の専門知識がなくても、ソフトやツールを駆使すれば以外に簡単にできますよ。

確定申告は年度末に必ず行う、税金を納付する手続きです。申告をしないとペナルティが課せられるので必ずやりましょう。「青色申告」と「白色申告」で申請書類や使える控除などが異なり自分に合った申告方法を選ぶことが出来ますが、フリーランスの場合は青色申告がおすすめです。

白色申告は所得330万円がボーダーライン。フリーランスなら迷わず青色申告 

白色申告をしても青色申告をしても所得税率は変わりません。所得の金額に応じて所得税は計算されます。この所得額を大きく左右するのが控除です。

所得金額ごとに税率と控除額が決まってきます。330万円を超えると控除額が大きく増加していますよね。

同じ収入であっても、控除を使う(青色申告で申請する)方が、控除を使わない(白色申告で申請する)場合よりも納税金額を低くすることができるのです。

所得330万円を超えるのであれば控除や赤字繰り越し、減価償却特例などのメリットが多い青色申告にしましょう。事業を開始したばかりで売上が少ない場合や、3年以上赤字が続いている場合は白色申告が向いています。帳簿をつけるのが難しそうだからなんとなく白色申告にしている方は、会計ソフトを使えば手間はほとんど変わらないので青色申告への切り替えを検討してみましょう。

白色申告に必要な書類

白色申告とは、帳簿の作成が簡単な申告方法ですが、基本的に税制上のメリットがありません。以前は記帳しなくても手続き可能だったのですが、2014年の法改正より白色申告も記帳が義務化されました。

フリーランスの白色申告では「収支内訳書」「確定申告書」の提出が必要です。

①収支内訳書

収入や支出の流れ、所得金額の詳細をまとめたものを指します。

②確定申告書

1年間の所得額や控除額をまとめ、税金の金額を算出するものを指します。

準備~提出方法

毎月のお金の流れをまとめるために、売上や経費が発生したら記録を残しておきます。これを記帳と呼びますが、白色申告のフォーマットは特に決まっていないので自分が分かりやすいようにまとめておきましょう。

会計ソフトを使うと効率化ができて便利です。

確定申告の時期になったら、必要書類の準備を進めます。ひとつひとつの取引について数量や単価、金額を正しく記帳し、それをもとに収支計算書、確定申告書と作成を進めます。
必要書類は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。会計ソフトを使っている場合は、会計ソフト上で確定申告に必要な書類を作成し、オンラインで提出可能です。

白色申告のメリット・デメリット

メリットデメリット
・事前申請が不要
・簡易な記帳で良い
・節税効果は見込めない
・赤字が繰り越しできない

青色申告を控除と経費の扱いの違いからおすすめする理由

青色申告は最大65万円の特別控除が受けられるなど、メリットの大きい申告方法です。仮に同じ収入だった場合、青色申告で確定申告をすれば税金がかかる所得を最大65万円少なくでき、その分納税額も少なくなり得になります。

また、経費に関しても白色申告よりも幅広く計上できることもメリットです。自宅で使うパソコンなど30万円未満のものは一括で経費計上、家賃や家族への給与も経費にできます。

青色申告に必要な書類

青色申告とは、原則として複式簿記で帳簿をつけることが義務付けられている手続き方法です。青色申告特別控除をはじめ、様々なメリットがあります。

フリーランスの青色申告では「青色申告決算書」「確定申告書」の提出が必要です。

①青色申告決算書

日々の帳簿付けの結果を決算書の形式で記入する書類です。1年間の利益を計算した「損益計算書」と、期末時点での資産状況を示す「貸借対照表」からなります。

②確定申告書

1年間の所得額や控除額をまとめ、税金の金額を算出するものを指します。

準備~提出方法

まず事前に「青色申告承認申請書」の申告をする年の3月15日までに提出します。間に合わなかった場合は、次年度のために早めに申請書を出しておきましょう。

青色申告は仕訳をした複式簿記の準備が必要です。自分で0から帳簿付けをするためには勉強が必要ですが、会計ソフトを使えば自動仕訳できれいにまとめてくれるので、やりながら学ぶこともできます。

確定申告の時期になったら、会計ソフトで必要書類の準備を進めます。画面上で入力が必要な項目をひとつひとつ埋めていけば、書類を自動作成しオンラインで提出まで完了できます。

青色申告のメリット・デメリット

メリットデメリット
・最大で65万円の特別控除で、税負担を減らせる(青色申告特別控除)
・減価償却なしで30万円までを一括全額経費計上で節税できる
・3年間の赤字の繰り越しができる
・家族への給料を経費にできる
・事務所兼用として自宅の家賃や電気代など生活費の一部を経費にできる
・事前の申請が必要
・細かい帳簿の作成が必要

CHECK

所得330万円を超えるのであれば青色申告がおすすめ
青色申告はさまざまな控除があり経費計上の幅が広がる
事業を開始したばかりや赤字の場合は白色申告

白色申告の最大のメリットは経理事務の手間が必要ないこと

白色申告の最大のメリットは、事務手続きがシンプルで簡単なことです。白色申告をするために必要な事前申請は不要、お金の流れを管理する記帳も簡単にまとめてあれば問題ありません。

経理の知識がなくても、家計簿をつける感覚で「収入」と「支出」を分けて管理してまとめておけば手続きが可能です。

事業所得がまだ少なく経理作業に苦手意識があり、とにかく手間をおさえたい人に向いています。

青色申告で確定申告を行う流れ

確定申告書類を作る際には、適用される控除の証明書を手元に用意しておきます。流れとしてはまず帳簿をもとに「青色申告決算書」を作成し、決算書をもとに「確定申告書」を作成します。出来上がった書類を税務署に提出すれば、確定された額が引き落としされます。

会計ソフトで売上や経費の記帳を済ませる

フリーランスが使える会計ソフトはいくつかあります。青色申告に対応しており、初心者でも簡単に操作できるものを選びましょう。

会計ソフトに契約したら、まず名前や所在地などの事業情報と、銀行口座などの情報を登録します。その後、売上が発生した際や、経費が出た際に会計ソフトに入力をしていきます。銀行振込やクレジットカード支払いの場合は自動反映できますし、紙のレシートの場合はスキャンして読み込みすることが可能です。仕訳は自動仕分けができるように設定しておきましょう。

確定申告に必要な確定申告書と青色申告決算書を作成する

日々の記帳をきちんと行っていれば、確定申告の書類は簡単に作れます。会計ソフト内の「確定申告書類の作成」から指示に沿って、ステップごとに必要事項を入力していけば完成です。

確定申告書の書き方

会計ソフトで自動作成された内容は、以下項目がきちんと反映されているか最終チェックしましょう。

1ページ目・日付
・事業主の個人情報
・収入金額等
・所得金額
・所得から差し引かれる金額
・税金の計算
・延納の届出
・還付される税金の受取場所
2ページ目・年・住所・氏名
・所得の内訳
・譲渡所得、一時所得に関する事項
・特例適用条文等
・保険料控除等に関する事項
・本人に関する事項
・雑損控除に関する事項
・寄附金控除に関する事項
・配偶者や親族に関する事項
・事業専従者に関する事項
・住民税に関する事項
・個人事業税に関する事項

青色申告決算書の書き方

会計ソフトで自動作成された内容は、以下項目がきちんと反映されているか最終チェックしましょう。

1ページ目・3つの日付記入欄
・事業者情報
・売上(収入)金額・売上原価
・経費
・各種引当金・準備金等, 青色申告特別控除, 所得金額
2ページ目・月別売上(収入)金額 及び 仕入金額
・給料賃金の内訳
・専従者給与の内訳
・地代家賃の内訳
・貸倒引当金繰入額の計算
・青色申告特別控除額の計算
3ページ目・売上(収入)金額の明細
・仕入金額の明細
・減価償却費の計算
・利子割引料の内訳
・税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
・本年中における特殊事情
4ページ目・貸借対照表 – 資産の部
・貸借対照表 – 負債・資本の部
・製造原価の計算

e-Tax、もしくは郵送・税務署窓口から資料を提出する

会計ソフトで作成した確定申告書類は、税務署窓口に直接提出or郵送提出か、オンラインでの提出が可能です。会計ソフトで作成し書類をもとに、自分でe-Taxにログインして書類提出もできますが、事前に会計ソフトとe-Taxを連携させることで、会計ソフト上から電子申請を済ませることもできます。

ATTENTION

e-Tax

税制改正で確定申告の書式・記入方式の変更に注意

確定申告の書類記入方法や提出方法など、毎年少しずつ変更があります。特に最近ではDX化で押印が不要になり、マイナポータルとの連携がなされるなど、手続きがどんどん簡単になっています。最新の情報は国税庁のホームページでチェックしましょう。

CHECK

会計ソフトで日々の記帳を自動化するとスムーズ
確定申告の書類も会計ソフトから自動作成できる
事前連携をすれば、オンラインでそのまま提出も可能

確定申告をもっと効率化する手間削減のリアルテクニック

ちょっとした工夫で確定申告の手続きを楽にするテクニックはいくつかあります。

銀行口座をあらかじめ公私で分けて経費の仕分けの手間を無くす

事業用の銀行口座を作り会計ソフトに同期しておけば、カード決済の内容を自動で入力できます。

クレジットカードで経費決済をして紙の領収書の対応を減らす

紙の領収書は保管や整理に手間がかかります。なるべくオンラインでの決済でペーパーレス化しましょう。

領収書やレシートはスキャナーでデジタル化し会計ソフトに取り込む

紙でもらった領収書やレシートがある場合は、スマホのカメラで写真にし、スキャナーでデジタル化し保存します。会計ソフトに取り込むと自動で読み取りをしてくれるので便利です。

e-Taxで提出書類を省略しつつオンラインで確定申告を終わらせる

e-Taxでは控除証明書など申告の内容を証明する書類の添付をせずにオンライン申告ができます。e-Taxで電子申告することで青色申告特別控除額65万円が適用されます。

会計ソフトの自動仕訳のパターンを早めに設定しておく

毎月決まった支払いなどがある場合、会計ソフトの「自動仕訳ルール一括編集」の機能で仕訳パターンを設定しておくとあとから修正する手間を省くことができます。

会計ソフトの確定申告必要書類の自動作成機能を使う

自分で国税庁から書類をダウンロードして記入作成をしなくても、会計ソフトで確定申告書類の自動作成機能があるので活用しましょう。

受発注管理と会計ソフトを連携させ売上の自動取り込みをさせる

業務委託など複数の委託先から仕事を受けていて受注管理ツールなどを使っている場合、会計ソフトと連携させることで売上を自動で取り込みできます。

マイナポータル連携機能を活用して控除証明書を一括でダウンロードする

控除証明書を取り寄せてチェックをするのは手間がかかりますが、マイナポータル連携機能を使うとオンラインで管理可能になります。

分からないことは悩む前に国税相談専用ダイヤルに電話相談する

国税局のホームページでは税の相談を様々な形で受け付けています。タックスアンサー(よくある質問集)、税相談チャットボット、また電話での相談も可能です。

国税相談専門ダイヤル…0570-00-5901

確定申告は会計ソフトを使えばスムーズ!効率化のための様々なコツもあるので、知識のある人に積極的に質問しながら業務をアップデートしていきましょう。期限内にしっかり提出できるように日々の記帳も忘れずに!

青色申告でも節税と事務作業は徹底して効率化してコア業務に集中

確定申告などの事務処理はなるべくスムーズに終わらせ、売上をつくるコア業務に集中したいですよね。いかに効率的に、損なく済ませるかが重要になってきます。

会計ソフトを導入するのはもちろんですが、最新の情報やちょっとしたコツなどはネットからの情報ではなく人づてで入ってくることが多いです。フリーランスだからこそ、人とのつながりを積極的に作っておくことが業務効率化につながります。

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