フリーランス新法のリアルを調査!トラブル回避のために知っておきたいことを解説

フリーランスとして働くうえで、突然の報酬未払いや一方的な契約解除などのトラブルに遭遇した経験がある人は、決して珍しくありません。とはいえ、発注者との関係性を重んじて「声を上げにくい」「泣き寝入りするしかない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

そのような背景の中、2024年10月に施行されたのが「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」です。フリーランス新法は、これまでグレーだった取引のあり方に一定の基準を設けるもので、フリーランスにとって大きな転換点といえます。

しかし、実際のところ、フリーランス新法の中身や実態はどうなっているのでしょうか。本記事では、フリーランス新法の基本知識をはじめ、フリーランス新法施行後の実態、発注側のクライアントや受注側のフリーランスがそれぞれ取るべき行動、実際にどのような契約トラブルが防げるのかなどについて解説します。

フリーランス新法はフリーランスを守るための法律

2024年10月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」は、フリーランスと発注者の間で起こりやすい契約トラブルを防ぐために制定されました。

この法律では、契約条件の明示や報酬の支払い期日など、発注者に対して具体的な義務が課されます。違反があった場合には、公正取引委員会が是正勧告や命令を出すことができ、従わなければ企業名と違反内容が公表される仕組みです。

フリーランス協会が公開している『フリーランス白書 2024』でも、最も期待されている行政対応として「違反事例の公開」が挙げられており、透明性の確保への関心が高まっています。

最大のメリットは、フリーランスが一方的な契約変更や報酬の未払いといったトラブルから守られる点です。明文化されたルールがあることで、声を上げづらい立場にある人でも法的な後ろ盾を得やすくなりました。

また、後ほど詳しく解説しますが、適用されるのは法人だけでなく、発注者が個人事業主であっても、事業者であれば対象になります

今のフリーランスの実態は?

それでは、実際のところ、今フリーランスとして働く人たちはどんな状況に置かれているのでしょうか。ここでは、現場の声やデータをもとに、その実情を見ていきましょう。

低賃金かつ過酷な労働

フリーランスの中には、「下請け」として正当な対価が支払われないまま、重い業務を抱えている人も少なくありません。中には実質的に雇用と変わらない働き方を強いられ、偽装請負のような状態になっているケースも見受けられます

実際、『フリーランス白書 2024』によると、今の働き方「全般」に対して満足している人は約7割いる一方で、「収入」「社会的地位」に満足している人は約3割に留まっています。

また、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約の発注者が一方的な都合により、『今回は、当初に取り決めた報酬の額の8割しか支払えない』と伝えてきた場合」の対応について、約3割ものフリーランスが「そのまま受け入れる(受け入れないと、今後の取引が切られる又は減らされるおそれがあったため)」と回答しているのが現状です。

フリーランス新法では、契約内容の明示義務や報酬の支払いルールが整備され、こうした不公平な扱いを是正することが期待されています。

報酬の未払い

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明示する義務が発注者側に課されているため、遅延トラブルの予防につながることが期待できます。

報酬が約束の期日に支払われず、何度も催促してようやく振り込まれるといった経験をしたことのあるフリーランスも少なくありません。実際に、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』でも、契約書に記載するべき事項として「支払期日」を重視する人は約半数にのぼっており、報酬の遅延や未払いがフリーランスにとって大きな不安要素であることが分かります。

契約条件の不透明さ

フリーランス新法では、発注者に契約条件の明示が義務づけられており、曖昧なまま業務が始まることを防ぐ効果が期待されています。業務内容や報酬、納期など、契約の根幹となる条件が曖昧なまま仕事が始まるケースは今も少なくありません。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』では、「取引条件が十分示されなかった」と答えた人が23.0%、交渉できないまま契約した人は57.9%にのぼっています。

フリーランス同士の取引によるトラブルも少なくない

フリーランス同士の取引によるトラブルも珍しくありません。主なトラブルとして、納期遅延や契約不履行、報酬の未払い、事前合意のない作業追加などが挙げられています。

このような取引もフリーランス新法の対象となり得ることから、フリーランス同士の取引によるトラブルの減少が期待されます。『フリーランス白書 2024』によると、発注時・受注時ともに、約1割のフリーランスが他のフリーランスとの契約トラブルを経験しているのが実情です。

一方で、実際には形式的な対応にとどまり、形骸化してしまうリスクもあるのが現実です。制度に頼るだけでなく、フリーランス自身が自らを守る意識を持つことも、今後いっそう重要になっていくでしょう。

フリーランス新法の認知度は?

フリーランス新法が施行されてから、しばらく経ちます。それでは、フリーランス新法は、一体どの程度浸透しているのでしょうか。

フリーランス新法の認知度は8割

『フリーランス白書 2024』によると、「フリーランス新法」という名称を見聞きしたことがある人は83.6%にのぼります。この結果を見ると、法律名自体はかなり広く知られており、フリーランスの間でも一定の認知は進んでいるといえるでしょう。

一方、内容を理解している人は少ない

認知度が8割以上にのぼる一方で、同調査によると、新法の内容をある程度理解しているフリーランスは、33.7%にとどまっています。さらに、「あまりよく知らない」が約半数、「見聞きしたことがない」も16%近く存在するのが現状です。つまり、名称だけが一人歩きし、制度の中身までは浸透していないといえるでしょう。

フリーランス新法に期待することは?

フリーランス新法への期待は、賛否が分かれています。

『フリーランス白書 2024』によると、フリーランス新法によって契約トラブルが軽減されることに「期待している」と答えた人(10段階評価で6以上)は、全体の6割にのぼります。一方で、4割は「それほど期待していない」(5以下)と回答しており、評価は分かれているのが実情です。

ここでは、『フリーランス白書 2024』をもとに、特に期待値が高かったポイントを中心に見ていきましょう。

契約条件の明確化・取引先の意識向上

契約書に明記されるべき内容を曖昧にされた経験を持つ人は少なくありません。フリーランス新法によって契約条件の書面化が義務づけられることで、法務知識の乏しい発注者にも意識改革が促されることが期待されています。

契約の基本が最低限守られるという前提が整うことは、大きな安心につながるでしょう。

不当な契約変更・解除の防止

フリーランスとして働くにあたって、発注側の都合で突然契約が打ち切られたり、報酬が一方的に減額されたりする不安を抱える人は多いです。

フリーランス新法ではこれらの行為が禁止され、契約解除には30日前の通知または正当な理由の提示が必要になりました。

ただし、解除そのものが禁止されているわけではなく、30日前の通知または正当な理由があれば契約の終了は可能です。民法651条1項では、「各当事者は、いつでも委任を解除することができる」ことが定められており、業務委託契約もこれに該当します。任意解除そのものが法的に制限されるわけではないため、過度な期待をしすぎないよう注意が必要です。

支払い遅延の解消・取引の健全化

納品から日にちが経っているにも関わらず、なかなか報酬が支払われないといった声は少なくありません。フリーランス新法では支払い期日を定め、遅延には罰則があるため、健全な取引慣行の定着が期待されています。

特に資本金の少ない企業との取引では、大きな抑止力になるでしょう。

育児・介護への配慮

フリーランスには、子育てや介護をしながら働いている人もいます。子供がまだ幼く、体調不良の際の対応に追われ、頭を抱えているケースもあります。子育てや介護と両立しながら働くフリーランスにとって、柔軟な働き方への配慮は切実な課題です。

フリーランス新法の施行によって、6ヶ月以上の契約では、こうした事情に応じた業務配分を発注者に求めることが可能になります。このように、声を上げにくかった状況が制度によって後押しされることに、期待が寄せられています。

どんな契約トラブルが防げるの?

ここでは、フリーランス新法によって具体的にどのような契約トラブルの防止につながるか、なぜ防げるようになるのかについて深掘りします。

口頭契約や曖昧な契約条件によるトラブル

フリーランスという働き方の特性上、契約が曖昧になりやすく、口頭でのやりとりや条件の不明確さによるトラブルが目立っていました。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約において、業務を開始する前に、依頼者から、取引条件が書面・メール・SNS・規約など形に残る方法(保存・記録可能な方法)で十分に示されていますか」という質問に対し、条件が十分に示されていないと感じるフリーランスは、約4割にのぼっています。

フリーランス新法では、契約前に発注者が契約条件を「書面または電子データ」で明示することが義務化されました。これにより、口頭だけでの契約や曖昧な取り決めを避ける仕組みが整います。そのため、「言った・言わない」といったトラブルの防止や、契約時点での認識ズレの減少が見込めるでしょう。

報酬の未払いや遅延

フリーランスの取引では、報酬の支払い遅延や未払いなどのトラブルも少なくありません。支払いスケジュールが明確に定められていなかった、「後で払う」といったあいまいな対応をされた、などの声も聞かれます。

こうした問題に対応するため、フリーランス新法では、報酬の「支払い期日」を契約時に明記することが発注者に義務づけられました。

さらに、報酬は原則として60日以内に支払うことが定められており、トラブルが起きた際にも法的根拠に基づいて催促しやすくなっています。「いつ支払われるのか」が明確になることで、フリーランス側の安心感にもつながります。

一方的な契約解除や報酬減額

一方的な契約解除や報酬減額もよく見られるケースです。これを受けて、6ヶ月以上の契約を解除する場合は、事前の通知や正当な理由の開示が求められるようになりました。また、報酬の一方的な減額や変更も禁止されており、突然の契約変更に対する歯止めが期待されています。

契約内容が明文化されることで、フリーランス側が不利益を被りにくくなる仕組みが整います。こうした規定によって、クライアント側の不誠実な対応を抑制する効果も期待できるでしょう。

ハラスメントや不当な要求

正規雇用ではないことから「外注」として軽視され、不当な扱いを受けるケースは後を絶ちません。

納品した成果物に対して、過度な修正を求められたり、必要以上に厳しいフィードバックを受けたりするといった声も多く聞かれます。単発や短期契約が多いため、関係性を築きにくいのも要因の1つです。

フリーランス新法では、発注者によるハラスメント防止措置も義務の1つとされています。業務に関係のない私的な連絡や高圧的な言動、過度な修正要求なども、対象になり得る行為です。働くうえでの安心感を高めると同時に、フリーランスが泣き寝入りせず、適切な対応を求めやすくなることが期待されます。

契約内容の不透明さと交渉のしにくさ

業務委託という立場柄、報酬や工数について意見を伝えにくいと感じるフリーランスは少なくありません。

また、契約内容の不透明さに対する不安の声も多く聞かれます。契約内容の不透明さに契約条件の文書やデータによる明示が義務化されることで、交渉の土台が明確になります。

これによって、曖昧なスタートや、「とりあえずやってみてから相談」といった取引のあり方が減ることが想定されます。また、発注側の認識も改まり、交渉が前提となる習慣への一歩につながるでしょう。

フリーランスが条件提示や質問をしやすくなる環境が、少しずつ整備されることが期待されます。

 【発注側】クライアント側の対応はどう変わる?

フリーランス新法の施行により、発注者にはいくつかの義務が課されるようになりました。従業員を使用しているかどうかによって義務の範囲は異なりますが、すべての発注者に契約条件の明示が求められます。

さらに、報酬支払いルールの明確化やハラスメント対策など、発注側の責任が明文化された点も特徴です。

ここでは、主に発注側が対応すべき義務について見ていきましょう。

契約条件の書面化と明確化

発注者は、契約前にフリーランスへ業務内容や報酬などの条件を文書や電子データで明示する義務があります。

これにより、口頭でのあいまいな取り決めや「言った・言わない」のトラブルを防ぐことが目的です。情報を形として残すことが、安心して業務を進める土台になります。

報酬の支払い期日の設定・期日内の支払い

報酬の支払いは、最大60日以内に支払うことが原則となりました。契約時点で具体的な期日を明記することが義務化され、報酬遅延の防止につながります。支払いのタイミングが明確になることで、フリーランスにとっても安心材料となるでしょう。

禁止行為の明確化

フリーランス新法では、禁止行為も明確化されました。発注者は、フリーランスに対して不当な契約変更や報酬の減額、返品の強要などを行ってはなりません。

これらは禁止行為として明示されており、違反した場合は是正勧告や企業名の公表などの対象となります。フリーランスの立場を守るための明確なラインが設けられた形です。

ハラスメント防止措置の義務化

クライアントによるパワハラやモラハラの防止も、発注者の義務として明文化されました。これには、業務上の指導を超えた言動や、過度な修正要求、プライベートへの干渉などが該当します。発注者は、適切な対応を講じることが必須です。これにより、フリーランスが安心して働ける環境づくりが求められています。

募集情報の正確性の確保

求人や業務委託の募集においても、発注者は内容を正確に記載する義務を負います。誤解を招く曖昧な表現や実態と異なる条件を提示することは、フリーランス新法の違反にあたる可能性があります。

そのため、初期段階から誠実な情報の提供が必須です。

育児・介護と業務の両立に対する配慮

6ヶ月以上の契約では、フリーランス側の申し出に応じて、育児や介護との両立に配慮した業務配分を行う義務があります。

働く環境やライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を実現しやすくなる制度です。多様な働き方を支えるための新たな仕組みとして、注目されています。

長期契約時の契約解除ルールの明示

6ヶ月以上の契約を中途解除する場合は、あらかじめ定められた期間前の通知(事前通知)や、正当な理由の開示が必要です。

急な打ち切りによる不利益を防ぎ、安定した受注環境を整えることが目的です。継続的な契約ほど、こうしたルールの整備が安心感につながります。

【受注側】フリーランスは実際に何をすればいい?

フリーランス新法の施行によって、発注者に義務が課されるようになりましたが、受注側も内容を理解し、自衛する姿勢が必要不可欠です。

ここでは、契約書の確認や報酬の支払い期日、トラブル対応など、フリーランス自身がやるべき基本的なポイントを整理します。

契約書を必ず受け取り、内容を確認する

業務委託契約は、口頭ではなく必ず書面または電子データで取り交わしましょう。

業務範囲や報酬額、支払い方法に加え、納品形式や工数についての確認も重要です。たとえば、ライターなら修正回数、翻訳者ならフォーマットや提出方法、報酬が税込価格か税抜価格かなど、見落としがちなポイントがトラブルの原因になります。

想定以上に工数が多く、「思っていたよりも負荷が重い」と不満を抱えるフリーランスは少なくありません

フリーランスはアルバイトや正社員のように時給や月給制ではなく、成果物やプロジェクト単位で報酬が支払われることが多いため、最初の段階で工数や条件を明確にしておくことが重要です。

また、途中解約や違約金の有無についても、事前に確認しておくと安心です。

報酬の支払い期日を確認する

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明記する義務があります。

支払いのタイミングが契約書に記載されていない、もしくは不明瞭な場合は必ず確認しましょう。原則として、業務の完了または給付の受領から60日以内の支払いが求められます。

不当な契約解除や報酬減額に注意する

契約期間中に一方的に契約を解除されたり、報酬を減額された場合は、違法となる可能性があります。6ヶ月以上の契約では、事前通知や正当な理由の説明が必要です。

契約内容をしっかりと記載・保管し、不当な対応には適切に対応しましょう。

ハラスメント被害に対処する

業務と関係のない連絡や高圧的な言動、過度な修正要求などは、ハラスメントに該当する場合があります。

発注者側には防止措置の義務があるため、問題を感じた場合は相談窓口の活用も視野に入れましょう。

たとえば、「個人LINEではなくSlackやChatworkなどのビジネスチャットを使う」「やりとりはDMではなくオープンなチャンネルで行う」といった工夫も有効です。不快なやりとりがあった場合に備えて、日頃から記録や証拠を残しておくとよいでしょう。

フリーランス新法はすべてのフリーランスに適用されるの?

「フリーランス新法」という名前から、すべてのフリーランスが対象だと思われがちですが、実はそうではありません。発注者や契約の条件によって、適用の有無が変わる仕組みになっています。

それでは、一体どのようなフリーランスに適用されるのでしょうか。

発注者が「特定業務委託事業者」の場合に適用される

フリーランス新法は、発注者が「特定業務委託事業者」に該当する場合、より多くの義務が課されるようになっています。

「特定業務委託事業者」とは、フリーランスに業務委託を行う事業者のうち、以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 法人であって、2人以上の役員がいる、または、従業員を使用している事業者
  • 個人事業主であって、従業員を使用している事業者

つまり、従業員を使用しているか、一定の組織体制がある発注者が「特定業務委託事業者」となります。ただし、従業員を使用していない事業者であっても、「業務委託事業者」として契約条件の明示義務など一部の義務は共通で課されるため、完全に対象外というわけではありません

一方、受注者側である「特定受託事業者(=フリーランス)」は、以下のいずれかに該当する人を指します。

  • 個人であって、従業員を使用していない者
  • 法人であって、1人代表のみ、かつ従業員を使用していない者

この定義には業種の制限はなく、ライター、エンジニア、一人親方、フードデリバリー、弁護士なども含まれます(いずれも従業員を使用していない場合に限ります)。

なお、フリーランス同士の取引であっても、発注側が「事業者」として業務を行っていれば、明示義務などが適用されるケースがあります

参照:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 (フリーランス・事業者間取引適正化等法) Q&A|内閣官房

働き方によって適用範囲が変わる可能性がある

契約上は業務委託でも、実態として発注者の指揮命令下で働いているケースなど、労働者性が強い場合は、労働基準法などの労働関係法令が適用される可能性があります。

この場合、フリーランス新法ではなく、雇用に近い立場として別の法制度が適用されるため、注意しましょう。働き方の「実態」によって判断される点が、ポイントです。

フリーランス同士の取引でも適用されるケースがある

発注者がフリーランスであっても、事業者として業務を委託していれば、法律の適用対象となる場合があります。従業員を使用していない場合は、「特定業務委託事業者」には該当しませんが、契約条件の明示義務など一部の規定は適用されます。

取引形態よりも事業者性が判断基準となるため、注意してください。

単発案件や短期間の取引でも適用される場合がある

契約期間の長さにかかわらず、契約内容が業務委託に該当し、発注者が事業者であればフリーランス新法の適用対象となります。

一方で、発注者が個人で業として行っていない場合(例:一般消費者など)は対象外です。あくまでも事業者としての発注かどうかが重要です。

フリーランス新法の今後の課題は?

フリーランス新法には、契約トラブルを減らす仕組みが盛り込まれていますが、課題が残っているのも事実です。ここでは、施行後に見えてきた運用面での懸念や、今後の改善点について見ていきましょう。

契約書の義務化が形骸化する可能性

契約書の書面交付が義務化されても、実際の運用が形式的にとどまる懸念があります。実際に、株式会社みらいワークスが実施した『フリーランス・副業プロフェッショナル人材への働き方とキャリアに関する実態調査』によると、約7割の人が、フリーランス新法施行後に「特に大きな変化は感じていない」と回答しています。

また、テンプレをそのまま流用したり、実態と異なる条件が記載されるケースも想定されます。フリーランスが本当に守られるには、契約書の中身に目を通し、必要があれば交渉することが重要です。

報酬未払いや遅延の実効性

報酬支払いのルールは整備されましたが、未払いへの対応がフリーランス任せになりやすい点が課題です。泣き寝入りを防ぐには、支払い遅延の事実を示す証拠の記録や、相談窓口の利用も視野に入れる必要があります。

制度があっても、実効性を持たせるためのサポート体制が求められます。

フリーランスが交渉力を持てるとは限らない

法的なルールが整っても、実際の取引現場では「言いづらい」「断られるかもしれない」といった心理的ハードルが残っています。『令和4年度フリーランス実態調査結果」では、20%のフリーランスが「交渉の余地はあったが、実際には交渉を行わなかった」と回答しているのが実情です。制度を活かすには、交渉することが当たり前になる環境づくりも必要となります。

フリーランス側の意識や知識が追いつかない可能性

制度が整備されても、「知らなかった」「契約書をよく読まなかった」という状態では、守られる権利も活かしきれません。最低限の法律知識や契約の読み方を理解することが、自衛の第一歩となります。

フリーランス新法をきっかけに、フリーランス自身が契約への意識を高めることが求められています。

発注側の法順守が徹底されない可能性

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、約4人に1人のフリーランスが「契約書に明記されていた条件が、後から一方的に変更されたことで不利益を受けた」と述べています。

制度があっても、発注者側の意識や理解が不十分なままでは、トラブルは防ぎきれません。法の順守を促す周知や、違反事例の公開が重要になっていくでしょう。

発注側が発注を控える可能性

制度によってフリーランスが守られるようになる一方で、発注する側が面倒と感じて発注自体を控える可能性も懸念されています。

人事と現場が離れている場合に、ルールを理由に契約を打ち切られてしまったケースなどが考えられます。

とくに大企業などで、法務や人事が厳格に動く場合、現場が柔軟に契約できなくなるケースも想定されるでしょう。制度の意義を正しく伝え、発注側にも理解とメリットを感じてもらう働きかけが求められます。

フリーランス新法は、うまく使えば心強い味方に

フリーランス新法は、私たちフリーランスの気持ちに寄り添い、守ってくれる、「フリーランスの味方」ともいえる制度です。

会社に属していない私たちは、これまで契約や仕事において「自己責任」を強いられることも少なくありませんでした。しかし、会社に守られていない働き方だからこそ、社会がルールで守る仕組みが必要です。

契約トラブルや報酬の未払いといった、長年見過ごされがちだった問題に対して、ようやくルールが整い始めました。契約条件の明示義務や報酬の支払期日の設定、ハラスメント防止措置など、これまで「空気」だったマナーが、明確な義務としてルール化された点は大きな進展です。

一方で、実態がいまだ偽装請負に近いと感じている声も多く、SNSなどでは「フリーランス新法施行後も、環境の変化を実感できない」「フリーランス新法を知らない人が多い」という意見も少なくありません。認知度は高くても、理解度や運用面でのギャップはまだ大きいのが現状です。

特に受注者側であるフリーランス自身の知識不足も、課題の1つです。制度の中身を知らなければ、たとえ不当な取引を受けていても気づけず、適切に対応できないまま泣き寝入りしてしまう可能性があります。

フリーランス新法は、上手に活用すれば私たちフリーランスの強い味方になってくれます。制度を形骸化させないためにも、法制度に頼りきるのではなく、フリーランス自身が理解や知識を深め、自衛意識を持つことが、今後さらに重要になっていくのではないでしょうか。

フリーランスの秘密保持契約(NDA)の注意点|具体的トラブルからNDAの必要性・記載例・使い方を解説

契約書類の締結はフリーランスにとって大切な業務です。業務内容、成果物の定義、報酬額などは誰もが気にするチェックポイントですが、それ以外にも確認が必要なものがたくさんあります。確認するべきポイントを押さえながら署名前に内容をきちんと確認しましょう。

秘密保持契約書(NDA)の内容をきちんと確認せずに署名をしてしまうと、のちのち後悔する可能性が!フリーランスは自分の身を自分で守らなければなりません。契約書類の中でも重要なNDAについて学びます。

フリーランスにとって秘密保持契約書(NDA)は取引の自由度にも影響する重い契約

秘密保持契約書とは情報の開示者(相手先企業)と情報の受領者(フリーランス側)との間で締結され、秘密情報が適切に管理されることを保証するための契約書です。英語では「Non-disclosure agreement」と言われ、NDAと略して呼ばれることが多いです。

NDAに署名することで、フリーランスは法的に秘密情報を守る義務を負うことになります。契約の内容によっては、その後のフリーランス活動や取引先獲得の自由度が大きく左右されます。顧客との信頼関係にも関わる大切な契約です。

秘密保持契約書の契約内容

秘密保持契約書とは、取引先の秘密情報や顧客情報などの取り扱いや双方の秘密保持義務、開示された秘密情報の利用目的などについて定めた契約です。フリーランスの場合は、取引を通じて知り得た取引先企業の秘密情報を必要な業務以外の目的で使用したり第三者に開示・漏洩したりしないことを制約する内容になっています。

署名するにあたって、秘密情報の範囲や開示の可否、契約終了時や契約違反時の取扱いについてきちんと確認が必要です。知らなかった、読んでなかったでは済まされないので自己防衛のためにも秘密保持契約についてきちんと理解をしておきましょう。

秘密保持契約書とはビジネスの守秘義務を取りまとめた契約

企業とフリーランス間で取り交わされる秘密保持契約書は以下のような形になっています。

・秘密情報の定義

どこまでの情報を秘密情報とするかを明記しています。

・秘密保持義務の定義

秘密情報を管理する方法と、誰にまで開示してよいのかをまとめている箇所で、秘密保持契約の中核をなす規定です。

・目的外使用の禁止

秘密情報をどこまでの範囲で利用してよいのかを明記してあります。

・秘密情報の返還、破棄のルール

契約終了時や企業からの要請があった場合など、一定の事由が発生した場合においての秘密情報の返還義務や破棄義務が書かれています。

・損害賠償、差止めのルール

秘密保持契約に違反した場合に、どのようなペナルティがあるか、損害賠償義務だけでなく賠償の範囲まで書かれてあります。

・有効期限、存続条項

フリーランスの場合の秘密保持義務の存続期間は契約期間と同じであることが一般的です。

秘密保持契約は取引を検討する段階でクライアントと締結するもの

フリーランスの場合は、業務契約を結ぶ前に企業と打ち合わせする場面も出てきます。企業側の内部情報を提供される前には必ず秘密保持契約を締結しておき、秘密情報を開示される前に結ぶのが鉄則です。

CHECK

・秘密保持契約とは、取引先の機密情報の取り扱いに関して定めた契約
・内容によってはフリーランスとしての取引先の自由度が制限されることもある
・秘密保持契約は、取引の開始前でも情報を提供される前に締結が必要

秘密保持契約はクライアントの雛形を活用する場合もあるが自前を持っておくべき

秘密保持契約書は企業側から出されることが多いものですが、プロのフリーランスとしてひな形を用意しておくと良いでしょう。

秘密保持契約書 テンプレート:NDA(秘密保持契約書)経済産業省公式ひな形【参考資料2】各種契約書等の参考例 (令和6年2月改訂版)

クライアントとの秘密保持契約の契約方法

秘密保持契約は企業側から提示されることがほとんどです。もし取引契約時に秘密保持契約が含まれていない場合は、相手企業に確認を入れることをおすすめします。

昨今、秘密保持契約は電子契約で締結することが多い

秘密保持契約に限らず、企業との契約は電子契約で行われるのが主流になっています。電子契約の流れは難しいものではないので契約前に理解しておきましょう。

秘密保持契約書に収入印紙を貼付する必要はない

契約書によっては印紙の貼付が求められるものもありますが、秘密保持契約書は印紙は不要です。また、電子契約を行う契約書類は印紙貼付の対象外となっています。

CHECK

・秘密保持契約は企業側から提示されることが多いが、提示されなかった場合は確認が必要
・収入印紙の貼付は不要

フリーランスの秘密保持契約に関する具体的なトラブル

秘密保持契約の内容をきちんと確認しなかったために発生しうるトラブルについてまとめました。何を確認しなければいけなかったのかがわかる内容になっているので、チェックしてご自身に当てはまるか確認してみてください。

「著作権の所在」を明確にせずポートフォリオに掲載できなかった

ケース事例

フリーランスのデザイナーとして企業から依頼を受けてロゴをデザインした。契約により著作権は依頼元の企業に帰属することが明記されていた。

トラブル内容

デザイナーはこのロゴをポートフォリオに掲載することができなくなります。

防止策

自身の作品実績をポートフォリオに載せることが出来ないのは売上にも関わる大きな問題です。ポートフォリオに掲載することを視野に入れ、NDA内の著作権欄の確認が必要です。

「競業避止義務」が広く設定されており仕事の範囲が狭くなってしまった

ケース事例

フリーランスのデザイナーとして、企業と契約を結び特定のプロジェクトのためにデザインを提供していた。契約にはプロジェクト終了後1年間は競合する同業企業にサービスを提供しない旨が含まれていた。

トラブル内容

プロジェクト終了後、新しい取引先を探す際に一定期間同じ業界からの案件が受けられなくなり、案件数が減ってしまった。

防止策

競業避止義務とは、情報・ノウハウの流出を防ぐために他の企業への就職を制限するものです。フリーランスの契約で必ず盛り込まなければいけない内容ではないですが、取引先の企業との契約に入っている場合は、適応範囲や期間を確認しましょう。

秘密保持契約に違反した場合は差止請求や損害賠償請求になる

ケース事例

フリーランスのコンサルタントとして、NDAを結んでA社のマーケティング戦略を請け負っていた。契約期間終了後、別の企業でのコンサルティングの際にA社の戦略を事例として紹介した。

トラブル内容

企業の秘密情報を外部に漏らしたとして損害賠償を請求された。

防止策

意図せずともNDAの契約内容に違反した場合は、損害賠償を請求される可能性があります。その場合フリーランスとして個人で払いきれない金額とならないよう、損害賠償限度額を定めておくのが良いでしょう。取引額を限度とすると定めるのが一般的です。

CHECK

・きちんと確認をしないとトラブルにつながるので要注意
・「著作権の所在」「競業避止義務」の項目はチェックするべし
・違反した場合の損害賠償の内容も確認しよう

フリーランスが秘密保持契約を締結する際のチェックポイント

仕事に大きく影響する契約書になるので、締結する前には内容をきちんとチェックしましょう。チェックするポイントは以下のとおりです。

秘密情報の定義(範囲)が広すぎないか

何が秘密情報とされているのか定義欄を確認し、企業側の考える定義と自分の考える定義の相違がないかを確認します。

存続条項の対象および期間が長すぎではないか

秘密保持の履行対象期間が契約終了後もずっと続くような内容になっている場合は、一度企業側へ確認をした方が良いでしょう。

損害賠償が民法の規定に比べて重すぎではでないか

秘密保持義務違反があった場合、企業側は損害賠償請求をすることが可能です。その際に請求できる損害は、原則として民法416条(損害賠償の範囲)に沿うものになるので、比較して妥当なものになっているか確認しましょう。

第四百十六条 
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

特約事項として受領側の義務が増えていないか

特約事項が加えられている場合はその内容の確認も行いましょう。企業への定期的な報告義務の追加など、フリーランス側の追加作業が発生する可能性もあるので、実現可能かどうかも検討します。

CHECK

・秘密情報の範囲、対象の期間は必ず確認する
・損害賠償の規定内容を民法と照らし合わせて妥当なものかも確認する
・特約事項で提示される義務も確認すること

秘密保持契約書に関して気を付けなければいけないことが多すぎて不安になる必要はありません!チェックするべき項目を押さえておけば大丈夫。トラブルを防止し、フリーランスとしての活動をスムーズに進めるためにしっかりと対応しましょう。

フリーランスの基本契約と個別契約の違い|業務委託契約書の雛形・使い分け・注意点

フリーランスとして業務を委託する際は、口約束ではなくきちんと書面で契約を交わします。文面に残していなかったがために、取引内容に認識の相違がありトラブルにつながるケースが多く発生しています。契約書類は慎重に内容を確認して締結することが大切です。

フリーランスの約4割が口頭で業務契約を行っているという数字がありますが、口約束は絶対に避けましょう!2024年11月からは口約束で契約してはいけないという法律もできます。フリーランスとしてトラブル防止は身を守るための大原則です。

フリーランスの業務委託基本契約書・個別契約書は法的効力を持つ契約書類

フリーランスとして企業から案件をもらう際は、業務委託契約書の締結を行います。事前にきちんと契約書を結んでいないことにより、「納品イメージに相違があった」「報酬が支払われなかった」などのトラブルが発生する可能性が高まります。

2024年11月から施行される「フリーランス保護新法」より、報酬額や業務内容、納期などを明示した書面を取り交わすことが義務化されます。自分の身は自分で守るため、基本的にどのようなケースでもフリーランスは契約書を締結し、口約束で仕事を受けないようにしましょう。企業側から契約書が提示されない場合は、フリーランス側で用意して提示すると良いです。

業務委託基本契約書・個別契約書の中身

業務委託契約には、基本契約と個別契約があります。必ず両方作成しなければならないわけではないので、ケースバイケースで締結します。

継続的な取引を前提に基本契約書と個別契約書セットで契約をするもの

業務委託契約書において、基本契約書と個別契約書を分けて締結するのは、同一企業で複数のプロジェクトや業務に従事する場合がメインです。長期的な契約を前提にした場合に使われます。

基本契約書は取引全体に共通する事項について定める契約

基本契約書は委託者と受託者の一般的な責任や義務、報酬、機密保持などの基本事項をまとめたものです。支払方法、支払期限、所有権の移転時期など、毎回変わらない内容は基本契約で定めます。

個別契約書は委託する業務の詳細や作業など具体的な取引について定める契約

個別契約書は、業務委託の具体的な内容、範囲、期間、報酬、納期、成果の細かい仕様などを詳細にまとめたものです。プロジェクトごとの業務内容などその都度内容が変わるものに関しては個別契約で定めます。

業務委託基本契約書・個別契約書は取引が決まった際にクライアントと締結する

業務委託契約書は、クライアントと事前打ち合わせをして業務内容や報酬金額をすり合わせたのちに、書面としてまとめます。双方が内容に相違のないことを確認したうえで署名をし締結となります。

クライアント雛形での締結になるかどうかはケース・バイ・ケース

業務委託契約書は基本的に発注側(企業側)が提示するケースがほとんどですが、もし企業側から契約書の提示がない場合は確認を入れましょう。先方で書類を用意していない場合は、フリーランス側から書類をまとめる流れでも問題ありません。

CHECK

・基本契約書は取引全体に共通することをまとめたもの
・個別契約書は個別業務の詳細内容についてまとめたもの
・業務委託契約書は、取引が決まった際に必ずクライアントと書面で締結する

業務委託契約・請負契約・準委任契約の違い

業務委託契約には、内容により「請負契約」「準委任契約」があります。成果物に対する責任の有無などによって種類が変わってきます。

 

請負契約は納品義務があり完成責任が対象の契約

請負契約とは、受託者が定められた期日までに仕事を完成させ成果物を納品することを約束する内容の契約で、実際に成果物が納品されたときに報酬が支払われます。

準委任契約は納品義務がなく作業の遂行が対象の契約

準委任契約とは、発注者が事務処理などの業務遂行を依頼し、受託者がその約束を守ることで報酬が支払われる契約です。報酬額は稼働時間をベースに計算されるのが一般的です。

一回の取引に活用する業務委託契約書の主な記載内容

業務委託契約書の概要や記載するべき項目は以下の通りです。

委託業務の内容 

  • 委託料(報酬額)・・・金額は漏れずに設定
  • 支払条件、支払時期、支払い方法など・・・企業側の支払いサイトとすり合わせて明記
  • 成果物の権利・・・権利が委託者と受託者のどちらに帰属するか明記
  • 再委託の可否・・・受託者自身が業務を行わず、第三者に委託出来るかどうかを決める項目
  • 秘密保持に関する条項・・・秘密保持契約書を別に締結する場合もあります
  • 反社会的勢力の排除・・・全国での「暴力団排除条例」の施行後、ほぼすべての契約書に盛り込まれるようになったもの
  • 禁止事項の詳細・・・企業側から業務を行う際に禁止する事柄を記載
  • 契約解除の条件・・・無条件解除ができる期間や条件、一般的な解除条件などを記載
  • 損害賠償について・・・当事者の一方に契約解除や契約違反、債務不履行などがあった場合の損害賠償責任や額について定めるもの
  • 契約期間について・・・契約の有効期間
  • 所轄の裁判所について・・・裁判になった場合、第一審の裁判所をどこにするかを記載
  • その他の特記事項・・・お互いに伝えておきたい項目がある際に記載

CHECK

・請負契約とは、完成品の納品義務がある契約
・準委任契約とは、事務などの業務の遂行に対する契約
・業務委託契約書に記載される内容はおさえておこう

クライアントとの業務委託基本契約書・個別契約書の契約方法

事前打ち合わせで業務内容や報酬面をすり合わせた後、企業側から契約書が送られることが主流です。企業側から送られてきた書面の内容が認識と合っているかを細かくチェックをしましょう。

書面での業務委託基本契約書には収入印紙を貼付する必要がある

業務委託契約書は書面でもオンライン契約でもどちらでもかまいません。書面での契約締結の場合は収入印紙が必要です。業務委託の契約期間が3ヶ月以上の場合は一律で4000円分の収入印紙を用意しなければなりません。

業務委託基本契約書・個別契約書は電子契約で締結することが多い

オンラインでの電子契約の場合は、3ヶ月以上の契約期間であっても印紙は免除されます。4000円お得になるので、電子契約で締結することが多くなっています。

国内シェアの高い主な電子契約サービス

パソコンやスマートフォンなどのデバイスから簡単に操作が出来、無料で使えるサービスがいくつもあります。電子契約の流れは難しいものではないので契約前に理解しておきましょう。

クラウドサイン

弁護士ドットコムが提供する日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービス。

電子印鑑GMOサイン

電子認証局を子会社に持つGMOが提供するサービスで、フリーランスのスモールスタートにも適しています。

DocuSign

世界180ヵ国以上で利用されており、様々な言語に対応しているため海外との取引における契約の際によく使われているサービスです。

CHECK

・書面での業務委託契約書には収入印紙が必要
・業務委託契約書を電子契約する場合は収入印紙は不要
・電子契約サービスについて知っておこう

トラブル防止に基本的にどのような案件でも契約を締結して進める

フリーランス新法施行後には、企業がフリーランスに業務委託をする際には書面での交付が必須となりました。これまでの口約束のみでは契約とみなされなくなります。書面はメールのみでも可能ではあるのですが、出来る限り業務委託契約書の形での締結をオススメします。

フリーランスが業務委託基本契約書・個別契約書を締結する際のチェックポイント

業務委託契約書は、委託業務の依頼内容や取引条件を定めた契約書です。フリーランスとして業務委託で委託した内容範囲や報酬額などを明記した大切な書類になるので、抜け漏れがないかチェックポイントに沿って確認します。

業務委託基本契約書のチェックポイント 

業務委託基本契約書は業務委託関係の基本的なルールや条件を定めているものです。この書類に契約のベースとなる内容が含まれています。

損害賠償の上限が定まっているか

万が一、損害賠償を請求された場合に備え、あらかじめ業務委託契約書において損害賠償の金額を定めておく必要があります。リーランスとして個人で払いきれない金額とならないよう、損害賠償限度額を定めておくのが良いでしょう。取引額を限度とすると定めるのが一般的です。

著作権、著作人格権の譲渡や行使しない規定があるか

業務委託契約において自身のデザインやアイデアが入った成果物を納品する場合は著作権の所在を明確にしておきましょう。「納品した制作物の著作権はクライアントに譲渡する」と記載されている場合が多いです。

競業避止義務での仕事の範囲が狭くなるリスクはないか

競業避止義務とは、情報・ノウハウの流出を防ぐために他の企業への就職を制限するものです。フリーランス側は同じような内容の他社案件を受注できなくなるなど不利益が生じる可能性があるものなので、適応範囲や期間を確認しましょう。

優先条項での基本契約書と個別契約書の内容の優先度が定義されているか

基本契約書と個別契約書の内容に矛盾がある場合にどちらを優先するかで揉めることもあります。基本契約と個別契約の優先関係について争いを避けるために、優先条項は必ず設けておくべきです。

業務委託個別契約書のチェックポイント

業務委託個別契約書には、具体的な業務内容や金額、業務の期間、委託者と受託者の責任や義務、機密保持などが明記されています。

委託する業務の範囲や責任の所在が明確かどうか

業務の範囲や成果物の内容について具体的にわかりやすく記載されているか確認します。

委託料の額や支払方法に齟齬がないか

金額や支払い納期が事前に打ち合わせた内容と相違がないかを確認します。請求書の締切日や支払い方法・タイミングについても確認しておくことが大切です。

納期や成果物の納品方法に無理がないか

成果物の納品時に企業側のチェックがある場合はその評価の基準、そして納期について確認します。

秘密保持の範囲や期間が無駄に広くないか

何が秘密情報とされているのか定義欄を確認し、企業側の考える定義と自分の考える定義の相違がないかを確認します。

解除条件が明確に記載されているかどうか

業務委託契約では契約書に定めた事由に該当した場合、双方が解除を申し出ることができます。その条件項目を確認します。

CHECK

・トラブル防止のために、どのような案件でも契約を締結するのが鉄則
・チェックポイントに沿って内容をしっかり確認する
・基本契約書と個別契約書の優先度の定義も確認すること

業務委託契約書は、業務内容や納期、報酬額の明確化だけでなく、著作権や秘密情報の取り扱いやトラブル時の賠償に関してなど非常に重要な事柄がまとめられている書類です。取引先との期待や責任を明確化し、良好な信頼関係を保つために必ず締結しなければいけないものです。

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