知らなきゃ損!個人事業主に忍び寄る“事業税”の正体?

個人事業主として活動していると避けて通れないのが「個人事業税」の存在です。この記事では、個人事業税の定義から計算方法、支払い方法、そして未払いの際のリスクまで、事業を営む上で必要な知識をわかりやすく解説します。特に対象となる業種と対象外の業種、税額の計算例、支払い方法などの具体的な情報を中心に、個人事業主の方々が確実に税務を管理できるようサポートします。

個人事業税は年収290万円超で課税対象となる地方税です。デザイナーなら3%、医師や弁護士は5%の税率がかかります。8月と11月の納付を怠れば延滞金や財産差押えのリスクが生じます。納付した税金は翌年の経費計上が可能です。事業形態と収入を正確に把握し、納税時期に備えた資金計画を立てておくことが不可欠です。

個人事業税の基本

個人事業税とは

個人事業税は、個人で事業を営む方に課される地方税の一種です。法人の場合は法人事業税が課されますが、個人事業主の場合は個人事業税が課税されます。この税金は都道府県が徴収し、地方の行政サービスを支えるための財源となっています。

課税対象となる事業

個人事業税が課税されるのは、法で定められた特定の事業を営む個人事業主です。

ただし、すべての個人事業主が課税対象となるわけではありません。

【主な対象事業】

区分税率対象事業
第一種事業5%物品販売業、不動産貸付業、製造業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理飲食店業 など
第二種事業4%畜産業、水産業、薪炭製造業 など
第三種事業5%医業、歯科医業、薬剤師業、弁護士業、公認会計士業、税理士業、理容業、美容業、社会保険労務士業 など
3%デザイン業、諸芸術家業、装蹄師業 など

課税対象外の事業

以下の事業は個人事業税の対象外となります。

  • 農業
  • 林業
  • 鉱物の掘採事業
  • 水産動植物の採取事業
  • 給与所得者
  • 不動産の譲渡による所得
  • 山林所得
  • 利子配当所得
  • ブロガー、アフィリエイターなどの雑所得として申告している場合

個人事業税は経費になるのか

個人事業税は、所得税や住民税と異なり、翌年の確定申告で経費として計上することができます。つまり、2023年分として2024年に支払った個人事業税は、2024年分の確定申告(2025年2〜3月)で経費として計上できます。

ただし、個人事業税そのものは事業税なので、個人事業税の計算上は経費として認められません。これは二重控除を防ぐためです。

CHECK

・個人事業税は都道府県が徴収する地方税で、特定の事業を行う個人事業主が納税義務を負う
・業種により税率が3~5%で変わり、非課税となる事業も存在する
・支払った個人事業税は翌年の確定申告で経費にできるが、事業税の計算では経費にならない

個人事業税の計算と納付

個人事業税の計算方法

個人事業税の計算は以下の手順で行います。

  1. 課税標準額の算出: 事業所得 – 事業主控除額(年間290万円)= 課税標準額
  2. 税額の計算: 課税標準額 × 税率(事業の種類により異なる)= 税額

個人事業税の事業主控除と繰越控除

個人事業税では、すべての課税対象事業について一律で290万円の事業主控除が適用されます。これは事業主自身の労力分を経費として認める考え方に基づいています。そのため、年間の事業所得が290万円以下の場合、個人事業税は課税されません。

また、事業税の対象となる所得の計算上生じた損失は、翌年以降に繰り越すことができます。この制度を利用すれば、赤字が出た年の損失を、翌年以降の黒字から差し引くことができます。

個人事業税の計算例:WEBデザイナーの場合

WEBデザイナー(第三種事業・税率3%)の年収が600万円の場合の個人事業税を計算してみましょう。

  1. 事業所得:600万円
  2. 事業主控除:290万円
  3. 課税標準額:600万円 – 290万円 = 310万円
  4. 税額:310万円 × 3% = 93,000円

この場合、年間93,000円の個人事業税が課税されることになります。

支払い時期と方法

個人事業税は、原則として年に1回、8月頃に都道府県から納税通知書が送られてきます。ただし、税額が一定額(通常1万円)を超える場合は、8月と11月の年2回に分けて納付することになります。

例えば、先ほどの計算例で税額が93,000円の場合

  • 第1期分(8月納付):46,500円
  • 第2期分(11月納付):46,500円

なお、個人事業税は前年の所得に対して課税されるため、開業初年度は納税の義務は発生しません。

主な支払い方法は以下の通りです:

  1. 金融機関での窓口納付:納税通知書を持参して納付
  2. コンビニエンスストアでの納付:納付書のバーコードがある場合
  3. eLTAX(エルタックス)による電子納税:オンラインで納付
  4. クレジットカード納付:自治体によって対応が異なる
  5. 口座振替:事前に手続きが必要

CHECK

・所得から290万円の事業主控除を差し引き、業種別税率を掛けて税額を算出
・年間所得が290万円以下なら課税されず、損失は翌年以降に繰り越せる
・納付は8月と11月の年2回で、金融機関やオンラインなど複数の方法がある

個人事業税のリスク管理と対策

未払いのリスク

個人事業税を未払いにした場合のリスクは以下の通りです。

リスク内容
延滞金の発生納期限を過ぎると、年14.6%(最初の2ヶ月は年7.3%)の延滞金が加算されます
督促状の送付納期限から20日以内に督促状が送付されます
財産の差し押さえ督促状の指定期限までに納付しない場合、預金口座や不動産、給与などの財産が差し押さえられる可能性があります
事業継続への影響税金の滞納は、融資や許認可の取得にも悪影響を及ぼします

納税猶予制度

災害や病気など、やむを得ない理由で納税が困難な場合には、納税の猶予制度を利用できる場合があります。

主な猶予制度には以下のようなものがあります:

  1. 換価の猶予:一時的に納税資金の調達が困難な場合に適用
  2. 徴収の猶予:災害や病気などの理由で納税が困難な場合に適用

猶予を受けるには、管轄の都道府県税事務所に申請が必要です。承認されれば、最長で1年間(特別な場合は最長2年間)の納税猶予が認められます。

個人事業主のための事業税対策

個人事業税は、一定の事業を営む個人事業主が支払う地方税です。年間の事業所得が290万円を超えると課税対象となり、事業の種類によって税率が異なります。WEBデザイナーであれば税率は3%、医師や弁護士などの専門職は5%となります。

適切な納税管理のためには、以下の点に注意しましょう。

  1. 事業所得の正確な把握と記録
  2. 納税時期の把握と資金計画
  3. 翌年の経費計上の忘れがないよう記録を残す
  4. 必要に応じて税理士に相談する

CHECK

・滞納すると延滞金が発生し、最悪の場合、財産が差し押さえられる恐れがある
・納税が難しい時は、納税猶予の制度を活用できるか、税事務所に問い合わせてみる
・正確な所得把握や納税時期の管理を徹底し、経費計上を忘れないように記録する

個人事業税は、一定の事業を営む個人事業主が支払う地方税です。年間の事業所得が290万円を超えると課税対象となり、事業の種類によって税率が異なります。

WEBデザイナーであれば税率は3%、医師や弁護士などの専門職は5%となります。納付は基本的に8月と11月の年2回で、未払いの場合は延滞金や財産の差し押さえなどのリスクがあります。

また、個人事業税は翌年の確定申告で経費として計上できるため、しっかりと記録を残しておくことが大切です。正しい知識を持って適切に納税し、安心して事業を継続させましょう。

フリーランス新法のリアルを調査!トラブル回避のために知っておきたいことを解説

フリーランスとして働くうえで、突然の報酬未払いや一方的な契約解除などのトラブルに遭遇した経験がある人は、決して珍しくありません。とはいえ、発注者との関係性を重んじて「声を上げにくい」「泣き寝入りするしかない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

そのような背景の中、2024年10月に施行されたのが「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」です。フリーランス新法は、これまでグレーだった取引のあり方に一定の基準を設けるもので、フリーランスにとって大きな転換点といえます。

しかし、実際のところ、フリーランス新法の中身や実態はどうなっているのでしょうか。本記事では、フリーランス新法の基本知識をはじめ、フリーランス新法施行後の実態、発注側のクライアントや受注側のフリーランスがそれぞれ取るべき行動、実際にどのような契約トラブルが防げるのかなどについて解説します。

フリーランス新法はフリーランスを守るための法律

2024年10月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」は、フリーランスと発注者の間で起こりやすい契約トラブルを防ぐために制定されました。

この法律では、契約条件の明示や報酬の支払い期日など、発注者に対して具体的な義務が課されます。違反があった場合には、公正取引委員会が是正勧告や命令を出すことができ、従わなければ企業名と違反内容が公表される仕組みです。

フリーランス協会が公開している『フリーランス白書 2024』でも、最も期待されている行政対応として「違反事例の公開」が挙げられており、透明性の確保への関心が高まっています。

最大のメリットは、フリーランスが一方的な契約変更や報酬の未払いといったトラブルから守られる点です。明文化されたルールがあることで、声を上げづらい立場にある人でも法的な後ろ盾を得やすくなりました。

また、後ほど詳しく解説しますが、適用されるのは法人だけでなく、発注者が個人事業主であっても、事業者であれば対象になります

今のフリーランスの実態は?

それでは、実際のところ、今フリーランスとして働く人たちはどんな状況に置かれているのでしょうか。ここでは、現場の声やデータをもとに、その実情を見ていきましょう。

低賃金かつ過酷な労働

フリーランスの中には、「下請け」として正当な対価が支払われないまま、重い業務を抱えている人も少なくありません。中には実質的に雇用と変わらない働き方を強いられ、偽装請負のような状態になっているケースも見受けられます

実際、『フリーランス白書 2024』によると、今の働き方「全般」に対して満足している人は約7割いる一方で、「収入」「社会的地位」に満足している人は約3割に留まっています。

また、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約の発注者が一方的な都合により、『今回は、当初に取り決めた報酬の額の8割しか支払えない』と伝えてきた場合」の対応について、約3割ものフリーランスが「そのまま受け入れる(受け入れないと、今後の取引が切られる又は減らされるおそれがあったため)」と回答しているのが現状です。

フリーランス新法では、契約内容の明示義務や報酬の支払いルールが整備され、こうした不公平な扱いを是正することが期待されています。

報酬の未払い

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明示する義務が発注者側に課されているため、遅延トラブルの予防につながることが期待できます。

報酬が約束の期日に支払われず、何度も催促してようやく振り込まれるといった経験をしたことのあるフリーランスも少なくありません。実際に、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』でも、契約書に記載するべき事項として「支払期日」を重視する人は約半数にのぼっており、報酬の遅延や未払いがフリーランスにとって大きな不安要素であることが分かります。

契約条件の不透明さ

フリーランス新法では、発注者に契約条件の明示が義務づけられており、曖昧なまま業務が始まることを防ぐ効果が期待されています。業務内容や報酬、納期など、契約の根幹となる条件が曖昧なまま仕事が始まるケースは今も少なくありません。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』では、「取引条件が十分示されなかった」と答えた人が23.0%、交渉できないまま契約した人は57.9%にのぼっています。

フリーランス同士の取引によるトラブルも少なくない

フリーランス同士の取引によるトラブルも珍しくありません。主なトラブルとして、納期遅延や契約不履行、報酬の未払い、事前合意のない作業追加などが挙げられています。

このような取引もフリーランス新法の対象となり得ることから、フリーランス同士の取引によるトラブルの減少が期待されます。『フリーランス白書 2024』によると、発注時・受注時ともに、約1割のフリーランスが他のフリーランスとの契約トラブルを経験しているのが実情です。

一方で、実際には形式的な対応にとどまり、形骸化してしまうリスクもあるのが現実です。制度に頼るだけでなく、フリーランス自身が自らを守る意識を持つことも、今後いっそう重要になっていくでしょう。

フリーランス新法の認知度は?

フリーランス新法が施行されてから、しばらく経ちます。それでは、フリーランス新法は、一体どの程度浸透しているのでしょうか。

フリーランス新法の認知度は8割

『フリーランス白書 2024』によると、「フリーランス新法」という名称を見聞きしたことがある人は83.6%にのぼります。この結果を見ると、法律名自体はかなり広く知られており、フリーランスの間でも一定の認知は進んでいるといえるでしょう。

一方、内容を理解している人は少ない

認知度が8割以上にのぼる一方で、同調査によると、新法の内容をある程度理解しているフリーランスは、33.7%にとどまっています。さらに、「あまりよく知らない」が約半数、「見聞きしたことがない」も16%近く存在するのが現状です。つまり、名称だけが一人歩きし、制度の中身までは浸透していないといえるでしょう。

フリーランス新法に期待することは?

フリーランス新法への期待は、賛否が分かれています。

『フリーランス白書 2024』によると、フリーランス新法によって契約トラブルが軽減されることに「期待している」と答えた人(10段階評価で6以上)は、全体の6割にのぼります。一方で、4割は「それほど期待していない」(5以下)と回答しており、評価は分かれているのが実情です。

ここでは、『フリーランス白書 2024』をもとに、特に期待値が高かったポイントを中心に見ていきましょう。

契約条件の明確化・取引先の意識向上

契約書に明記されるべき内容を曖昧にされた経験を持つ人は少なくありません。フリーランス新法によって契約条件の書面化が義務づけられることで、法務知識の乏しい発注者にも意識改革が促されることが期待されています。

契約の基本が最低限守られるという前提が整うことは、大きな安心につながるでしょう。

不当な契約変更・解除の防止

フリーランスとして働くにあたって、発注側の都合で突然契約が打ち切られたり、報酬が一方的に減額されたりする不安を抱える人は多いです。

フリーランス新法ではこれらの行為が禁止され、契約解除には30日前の通知または正当な理由の提示が必要になりました。

ただし、解除そのものが禁止されているわけではなく、30日前の通知または正当な理由があれば契約の終了は可能です。民法651条1項では、「各当事者は、いつでも委任を解除することができる」ことが定められており、業務委託契約もこれに該当します。任意解除そのものが法的に制限されるわけではないため、過度な期待をしすぎないよう注意が必要です。

支払い遅延の解消・取引の健全化

納品から日にちが経っているにも関わらず、なかなか報酬が支払われないといった声は少なくありません。フリーランス新法では支払い期日を定め、遅延には罰則があるため、健全な取引慣行の定着が期待されています。

特に資本金の少ない企業との取引では、大きな抑止力になるでしょう。

育児・介護への配慮

フリーランスには、子育てや介護をしながら働いている人もいます。子供がまだ幼く、体調不良の際の対応に追われ、頭を抱えているケースもあります。子育てや介護と両立しながら働くフリーランスにとって、柔軟な働き方への配慮は切実な課題です。

フリーランス新法の施行によって、6ヶ月以上の契約では、こうした事情に応じた業務配分を発注者に求めることが可能になります。このように、声を上げにくかった状況が制度によって後押しされることに、期待が寄せられています。

どんな契約トラブルが防げるの?

ここでは、フリーランス新法によって具体的にどのような契約トラブルの防止につながるか、なぜ防げるようになるのかについて深掘りします。

口頭契約や曖昧な契約条件によるトラブル

フリーランスという働き方の特性上、契約が曖昧になりやすく、口頭でのやりとりや条件の不明確さによるトラブルが目立っていました。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約において、業務を開始する前に、依頼者から、取引条件が書面・メール・SNS・規約など形に残る方法(保存・記録可能な方法)で十分に示されていますか」という質問に対し、条件が十分に示されていないと感じるフリーランスは、約4割にのぼっています。

フリーランス新法では、契約前に発注者が契約条件を「書面または電子データ」で明示することが義務化されました。これにより、口頭だけでの契約や曖昧な取り決めを避ける仕組みが整います。そのため、「言った・言わない」といったトラブルの防止や、契約時点での認識ズレの減少が見込めるでしょう。

報酬の未払いや遅延

フリーランスの取引では、報酬の支払い遅延や未払いなどのトラブルも少なくありません。支払いスケジュールが明確に定められていなかった、「後で払う」といったあいまいな対応をされた、などの声も聞かれます。

こうした問題に対応するため、フリーランス新法では、報酬の「支払い期日」を契約時に明記することが発注者に義務づけられました。

さらに、報酬は原則として60日以内に支払うことが定められており、トラブルが起きた際にも法的根拠に基づいて催促しやすくなっています。「いつ支払われるのか」が明確になることで、フリーランス側の安心感にもつながります。

一方的な契約解除や報酬減額

一方的な契約解除や報酬減額もよく見られるケースです。これを受けて、6ヶ月以上の契約を解除する場合は、事前の通知や正当な理由の開示が求められるようになりました。また、報酬の一方的な減額や変更も禁止されており、突然の契約変更に対する歯止めが期待されています。

契約内容が明文化されることで、フリーランス側が不利益を被りにくくなる仕組みが整います。こうした規定によって、クライアント側の不誠実な対応を抑制する効果も期待できるでしょう。

ハラスメントや不当な要求

正規雇用ではないことから「外注」として軽視され、不当な扱いを受けるケースは後を絶ちません。

納品した成果物に対して、過度な修正を求められたり、必要以上に厳しいフィードバックを受けたりするといった声も多く聞かれます。単発や短期契約が多いため、関係性を築きにくいのも要因の1つです。

フリーランス新法では、発注者によるハラスメント防止措置も義務の1つとされています。業務に関係のない私的な連絡や高圧的な言動、過度な修正要求なども、対象になり得る行為です。働くうえでの安心感を高めると同時に、フリーランスが泣き寝入りせず、適切な対応を求めやすくなることが期待されます。

契約内容の不透明さと交渉のしにくさ

業務委託という立場柄、報酬や工数について意見を伝えにくいと感じるフリーランスは少なくありません。

また、契約内容の不透明さに対する不安の声も多く聞かれます。契約内容の不透明さに契約条件の文書やデータによる明示が義務化されることで、交渉の土台が明確になります。

これによって、曖昧なスタートや、「とりあえずやってみてから相談」といった取引のあり方が減ることが想定されます。また、発注側の認識も改まり、交渉が前提となる習慣への一歩につながるでしょう。

フリーランスが条件提示や質問をしやすくなる環境が、少しずつ整備されることが期待されます。

 【発注側】クライアント側の対応はどう変わる?

フリーランス新法の施行により、発注者にはいくつかの義務が課されるようになりました。従業員を使用しているかどうかによって義務の範囲は異なりますが、すべての発注者に契約条件の明示が求められます。

さらに、報酬支払いルールの明確化やハラスメント対策など、発注側の責任が明文化された点も特徴です。

ここでは、主に発注側が対応すべき義務について見ていきましょう。

契約条件の書面化と明確化

発注者は、契約前にフリーランスへ業務内容や報酬などの条件を文書や電子データで明示する義務があります。

これにより、口頭でのあいまいな取り決めや「言った・言わない」のトラブルを防ぐことが目的です。情報を形として残すことが、安心して業務を進める土台になります。

報酬の支払い期日の設定・期日内の支払い

報酬の支払いは、最大60日以内に支払うことが原則となりました。契約時点で具体的な期日を明記することが義務化され、報酬遅延の防止につながります。支払いのタイミングが明確になることで、フリーランスにとっても安心材料となるでしょう。

禁止行為の明確化

フリーランス新法では、禁止行為も明確化されました。発注者は、フリーランスに対して不当な契約変更や報酬の減額、返品の強要などを行ってはなりません。

これらは禁止行為として明示されており、違反した場合は是正勧告や企業名の公表などの対象となります。フリーランスの立場を守るための明確なラインが設けられた形です。

ハラスメント防止措置の義務化

クライアントによるパワハラやモラハラの防止も、発注者の義務として明文化されました。これには、業務上の指導を超えた言動や、過度な修正要求、プライベートへの干渉などが該当します。発注者は、適切な対応を講じることが必須です。これにより、フリーランスが安心して働ける環境づくりが求められています。

募集情報の正確性の確保

求人や業務委託の募集においても、発注者は内容を正確に記載する義務を負います。誤解を招く曖昧な表現や実態と異なる条件を提示することは、フリーランス新法の違反にあたる可能性があります。

そのため、初期段階から誠実な情報の提供が必須です。

育児・介護と業務の両立に対する配慮

6ヶ月以上の契約では、フリーランス側の申し出に応じて、育児や介護との両立に配慮した業務配分を行う義務があります。

働く環境やライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を実現しやすくなる制度です。多様な働き方を支えるための新たな仕組みとして、注目されています。

長期契約時の契約解除ルールの明示

6ヶ月以上の契約を中途解除する場合は、あらかじめ定められた期間前の通知(事前通知)や、正当な理由の開示が必要です。

急な打ち切りによる不利益を防ぎ、安定した受注環境を整えることが目的です。継続的な契約ほど、こうしたルールの整備が安心感につながります。

【受注側】フリーランスは実際に何をすればいい?

フリーランス新法の施行によって、発注者に義務が課されるようになりましたが、受注側も内容を理解し、自衛する姿勢が必要不可欠です。

ここでは、契約書の確認や報酬の支払い期日、トラブル対応など、フリーランス自身がやるべき基本的なポイントを整理します。

契約書を必ず受け取り、内容を確認する

業務委託契約は、口頭ではなく必ず書面または電子データで取り交わしましょう。

業務範囲や報酬額、支払い方法に加え、納品形式や工数についての確認も重要です。たとえば、ライターなら修正回数、翻訳者ならフォーマットや提出方法、報酬が税込価格か税抜価格かなど、見落としがちなポイントがトラブルの原因になります。

想定以上に工数が多く、「思っていたよりも負荷が重い」と不満を抱えるフリーランスは少なくありません

フリーランスはアルバイトや正社員のように時給や月給制ではなく、成果物やプロジェクト単位で報酬が支払われることが多いため、最初の段階で工数や条件を明確にしておくことが重要です。

また、途中解約や違約金の有無についても、事前に確認しておくと安心です。

報酬の支払い期日を確認する

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明記する義務があります。

支払いのタイミングが契約書に記載されていない、もしくは不明瞭な場合は必ず確認しましょう。原則として、業務の完了または給付の受領から60日以内の支払いが求められます。

不当な契約解除や報酬減額に注意する

契約期間中に一方的に契約を解除されたり、報酬を減額された場合は、違法となる可能性があります。6ヶ月以上の契約では、事前通知や正当な理由の説明が必要です。

契約内容をしっかりと記載・保管し、不当な対応には適切に対応しましょう。

ハラスメント被害に対処する

業務と関係のない連絡や高圧的な言動、過度な修正要求などは、ハラスメントに該当する場合があります。

発注者側には防止措置の義務があるため、問題を感じた場合は相談窓口の活用も視野に入れましょう。

たとえば、「個人LINEではなくSlackやChatworkなどのビジネスチャットを使う」「やりとりはDMではなくオープンなチャンネルで行う」といった工夫も有効です。不快なやりとりがあった場合に備えて、日頃から記録や証拠を残しておくとよいでしょう。

フリーランス新法はすべてのフリーランスに適用されるの?

「フリーランス新法」という名前から、すべてのフリーランスが対象だと思われがちですが、実はそうではありません。発注者や契約の条件によって、適用の有無が変わる仕組みになっています。

それでは、一体どのようなフリーランスに適用されるのでしょうか。

発注者が「特定業務委託事業者」の場合に適用される

フリーランス新法は、発注者が「特定業務委託事業者」に該当する場合、より多くの義務が課されるようになっています。

「特定業務委託事業者」とは、フリーランスに業務委託を行う事業者のうち、以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 法人であって、2人以上の役員がいる、または、従業員を使用している事業者
  • 個人事業主であって、従業員を使用している事業者

つまり、従業員を使用しているか、一定の組織体制がある発注者が「特定業務委託事業者」となります。ただし、従業員を使用していない事業者であっても、「業務委託事業者」として契約条件の明示義務など一部の義務は共通で課されるため、完全に対象外というわけではありません

一方、受注者側である「特定受託事業者(=フリーランス)」は、以下のいずれかに該当する人を指します。

  • 個人であって、従業員を使用していない者
  • 法人であって、1人代表のみ、かつ従業員を使用していない者

この定義には業種の制限はなく、ライター、エンジニア、一人親方、フードデリバリー、弁護士なども含まれます(いずれも従業員を使用していない場合に限ります)。

なお、フリーランス同士の取引であっても、発注側が「事業者」として業務を行っていれば、明示義務などが適用されるケースがあります

参照:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 (フリーランス・事業者間取引適正化等法) Q&A|内閣官房

働き方によって適用範囲が変わる可能性がある

契約上は業務委託でも、実態として発注者の指揮命令下で働いているケースなど、労働者性が強い場合は、労働基準法などの労働関係法令が適用される可能性があります。

この場合、フリーランス新法ではなく、雇用に近い立場として別の法制度が適用されるため、注意しましょう。働き方の「実態」によって判断される点が、ポイントです。

フリーランス同士の取引でも適用されるケースがある

発注者がフリーランスであっても、事業者として業務を委託していれば、法律の適用対象となる場合があります。従業員を使用していない場合は、「特定業務委託事業者」には該当しませんが、契約条件の明示義務など一部の規定は適用されます。

取引形態よりも事業者性が判断基準となるため、注意してください。

単発案件や短期間の取引でも適用される場合がある

契約期間の長さにかかわらず、契約内容が業務委託に該当し、発注者が事業者であればフリーランス新法の適用対象となります。

一方で、発注者が個人で業として行っていない場合(例:一般消費者など)は対象外です。あくまでも事業者としての発注かどうかが重要です。

フリーランス新法の今後の課題は?

フリーランス新法には、契約トラブルを減らす仕組みが盛り込まれていますが、課題が残っているのも事実です。ここでは、施行後に見えてきた運用面での懸念や、今後の改善点について見ていきましょう。

契約書の義務化が形骸化する可能性

契約書の書面交付が義務化されても、実際の運用が形式的にとどまる懸念があります。実際に、株式会社みらいワークスが実施した『フリーランス・副業プロフェッショナル人材への働き方とキャリアに関する実態調査』によると、約7割の人が、フリーランス新法施行後に「特に大きな変化は感じていない」と回答しています。

また、テンプレをそのまま流用したり、実態と異なる条件が記載されるケースも想定されます。フリーランスが本当に守られるには、契約書の中身に目を通し、必要があれば交渉することが重要です。

報酬未払いや遅延の実効性

報酬支払いのルールは整備されましたが、未払いへの対応がフリーランス任せになりやすい点が課題です。泣き寝入りを防ぐには、支払い遅延の事実を示す証拠の記録や、相談窓口の利用も視野に入れる必要があります。

制度があっても、実効性を持たせるためのサポート体制が求められます。

フリーランスが交渉力を持てるとは限らない

法的なルールが整っても、実際の取引現場では「言いづらい」「断られるかもしれない」といった心理的ハードルが残っています。『令和4年度フリーランス実態調査結果」では、20%のフリーランスが「交渉の余地はあったが、実際には交渉を行わなかった」と回答しているのが実情です。制度を活かすには、交渉することが当たり前になる環境づくりも必要となります。

フリーランス側の意識や知識が追いつかない可能性

制度が整備されても、「知らなかった」「契約書をよく読まなかった」という状態では、守られる権利も活かしきれません。最低限の法律知識や契約の読み方を理解することが、自衛の第一歩となります。

フリーランス新法をきっかけに、フリーランス自身が契約への意識を高めることが求められています。

発注側の法順守が徹底されない可能性

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、約4人に1人のフリーランスが「契約書に明記されていた条件が、後から一方的に変更されたことで不利益を受けた」と述べています。

制度があっても、発注者側の意識や理解が不十分なままでは、トラブルは防ぎきれません。法の順守を促す周知や、違反事例の公開が重要になっていくでしょう。

発注側が発注を控える可能性

制度によってフリーランスが守られるようになる一方で、発注する側が面倒と感じて発注自体を控える可能性も懸念されています。

人事と現場が離れている場合に、ルールを理由に契約を打ち切られてしまったケースなどが考えられます。

とくに大企業などで、法務や人事が厳格に動く場合、現場が柔軟に契約できなくなるケースも想定されるでしょう。制度の意義を正しく伝え、発注側にも理解とメリットを感じてもらう働きかけが求められます。

フリーランス新法は、うまく使えば心強い味方に

フリーランス新法は、私たちフリーランスの気持ちに寄り添い、守ってくれる、「フリーランスの味方」ともいえる制度です。

会社に属していない私たちは、これまで契約や仕事において「自己責任」を強いられることも少なくありませんでした。しかし、会社に守られていない働き方だからこそ、社会がルールで守る仕組みが必要です。

契約トラブルや報酬の未払いといった、長年見過ごされがちだった問題に対して、ようやくルールが整い始めました。契約条件の明示義務や報酬の支払期日の設定、ハラスメント防止措置など、これまで「空気」だったマナーが、明確な義務としてルール化された点は大きな進展です。

一方で、実態がいまだ偽装請負に近いと感じている声も多く、SNSなどでは「フリーランス新法施行後も、環境の変化を実感できない」「フリーランス新法を知らない人が多い」という意見も少なくありません。認知度は高くても、理解度や運用面でのギャップはまだ大きいのが現状です。

特に受注者側であるフリーランス自身の知識不足も、課題の1つです。制度の中身を知らなければ、たとえ不当な取引を受けていても気づけず、適切に対応できないまま泣き寝入りしてしまう可能性があります。

フリーランス新法は、上手に活用すれば私たちフリーランスの強い味方になってくれます。制度を形骸化させないためにも、法制度に頼りきるのではなく、フリーランス自身が理解や知識を深め、自衛意識を持つことが、今後さらに重要になっていくのではないでしょうか。

確定申告の還付金はいつ届く?還付金を確実に受け取るための重要ポイント

確定申告で税金が戻ってくる「還付金」。いつ頃入金されるのか、どのくらいの金額が戻ってくるのかは多くの方の関心事です。本記事では確定申告の還付金の時期や金額の目安、また万が一入金されない場合の対処法についてわかりやすく解説します。

確定申告の還付金を確実に受け取るためには、早めに申告を行うことが最も重要です。申告方法や時期によって振込までの期間が異なりますので、特にe-Taxを利用することで早く処理が完了します。万が一振込が遅れる場合は、冷静に税務署に問い合わせを行い、対応を進めることをおすすめします。

確定申告の還付金とは

確定申告の還付金とは、納めすぎた税金が返ってくるお金のことです。年末調整だけでは対応できないケースや、フリーランスの方など確定申告が必要な方にとって重要な制度です。

年末調整の還付金が発生するケース

年末調整後でも、医療費控除を受ける場合やふるさと納税(寄附金控除)を年末調整で申告していない場合には還付金が発生します。

また、住宅ローン控除を初めて受ける場合や副業の収入がある場合にも確定申告をすることで還付金を受け取れることがあります。

年末調整の追加徴収が発生するケース

逆に追加で税金を納める必要が生じるケースもあります。例えば、複数の会社から給与をもらっているが年末調整を一方でしか行っていない場合や、給与以外の所得(不動産所得、株式譲渡益など)がある場合です。

また、年の途中で退職しその後に収入があった場合も追加徴収の対象となることがあります。

CHECK

・還付金は納めすぎた税金の返金
・ふるさと納税や医療費控除で還付金が発生する
・追加徴収が必要な場合もあるため注意が必要

確定申告から始まる還付金の時期

確定申告をした後、還付金はいつ頃振り込まれるのでしょうか。申告の方法や時期によって異なります。

還付金が入金される目安

還付金の入金時期は申告方法によって大きく異なります。e-Taxで申告した場合は申告から約1〜3週間、紙の申告書で申告した場合は申告から約1〜2カ月が目安です。

なお、確定申告期間(2月16日〜3月15日)は混雑のため、通常よりも時間がかかることが多いです。還付申告は確定申告期間前でも前年の1月1日から行うことができるため、早めの申告がおすすめです。

還付金が入金される流れ

還付金が入金されるまでの流れは、まず確定申告書を提出し(e-Taxまたは紙)、税務署による申告内容の審査を経て還付金が計算されます。その後、指定口座への振込が行われ、振込の約1週間後に「還付金のお知らせ」が郵送されます。

CHECK

・還付金の入金時期は申告方法で異なる
・e-Tax申告は1〜3週間、紙申告は1〜2カ月
・確定申告後、税務署が審査し振込が行われる

確定申告の還付金の金額

還付金はどのくらいの金額になるのでしょうか。計算方法や具体例を見てみましょう。

計算方法

還付金の基本的な計算方法は以下の通りです。

還付金 = 既に納めた税金 – 確定申告で計算した正しい税額

控除が適用されることで「確定申告で計算した正しい税額」が減り、その差額が還付金として戻ってきます。

計算例

例えば、年収500万円の会社員Aさんが以下の控除を受ける場合

  • 医療費控除:10万円(実際の医療費が20万円の場合)
  • ふるさと納税:4万円

この場合、約4〜5万円の還付金が期待できます。

還付金早見表

年収医療費控除10万円医療費控除30万円ふるさと納税5万円住宅ローン控除(初年度)
300万円約1万円約3万円約4,000円約10万円
500万円約2万円約6万円約7,000円約20万円
800万円約3万円約9万円約1万円約40万円

※上記は一般的な目安であり、実際の還付額は個人の状況により異なります。

CHECK

・還付金は納めた税金と正しい税額の差額
・控除を受けることで税額が減り還付金が発生
・還付金額は年収や控除内容で異なる

還付金が振り込まれないときの対処法

申告から時間が経っても還付金が振り込まれない場合の対処法をご紹介します。

e-Taxで確定申告をした場合

e-Taxで申告した場合は、まずe-Taxの「メッセージボックス」で処理状況を確認しましょう。申告から3週間以上経過している場合は、e-Tax作成コーナーヘルプデスクか申告した税務署に直接問い合わせるとよいでしょう。

税務署に持ち込み・郵送をして確定申告した場合

紙の申告書で申告した場合は、申告から1〜2カ月が経過しても入金がない場合に申告した税務署に電話で問い合わせましょう。問い合わせの際は、氏名・住所・生年月日、マイナンバー、申告した時期や方法、還付金の振込先口座情報などを準備しておくとスムーズです。

CHECK

・e-Tax申告後は「メッセージボックス」で確認する
・3週間以上経過した場合は税務署に問い合わせる
・紙申告後は1〜2カ月経過で税務署に連絡する

確定申告の還付金は、適切に手続きを行えば確実に受け取ることができます。早めに申告することで還付金も早く受け取れますので、控除を受ける予定がある方は、確定申告期間の混雑を避けて早めに申告すると良いでしょう。また、還付金が振り込まれない場合も、まずは落ち着いて税務署に問い合わせてみることをおすすめします。

「納めすぎ」にサヨナラ!フリーランスのための住民税スマート戦略

フリーランスとして働く方にとって、税金の管理は事業運営の重要な側面です。特に住民税は、所得税と比べて注目されることが少ないものの、年間の税負担として無視できない金額になります。適切な知識と対策を持つことで、合法的に住民税を抑え、手元に残る収入を増やすことが可能です。

この記事では、フリーランスの人が実践できる住民税の仕組みと効果的な節税方法について解説します。

フリーランスの住民税節税には青色申告や正確な経費計上、iDeCoなどの控除制度活用が必須です。年間で数万円の違いが生まれるため、専門家に相談しながら計画的に対策を講じましょう。また、税制は毎年変わるので最新情報のチェックも欠かせません。適切な節税で手取り収入を最大化し、ビジネスの安定と成長につなげていきましょう。

住民税の基礎知識

住民税とは何か

住民税は主に「所得割」と「均等割」の2つから構成されています。所得割は前年の所得に応じて計算され、均等割は所得にかかわらず一定額が課税されます。

これに加え、金融資産からの収入に対して課税される「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」もあります。フリーランスの方が特に注意すべきは所得割で、これが住民税の大部分を占めることになります。

住民税の種類と概要

種類概要税率・金額フリーランスへの影響
所得割前年の所得に応じて課税される一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)住民税負担の大部分を占める
均等割所得に関わらず一定額課税される年間約5,000円(自治体により異なる)所得が少なくても最低限の負担あり
利子割預金利子などに課税される5%預金額が多い場合は影響あり
配当割株式配当に課税される5%投資収入がある場合に影響
株式等譲渡所得割株式売却益に課税される5%投資活動を行う場合に影響

住民税の発生条件と納付時期

住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税され、翌年の6月から翌々年の5月までの期間に納付します。

所得が一定額以下の場合は非課税となる可能性がありますが、この基準は自治体によって異なります。

フリーランスの人は、通常4期に分けて納付書で支払うか、前年に確定申告で「自動引き落とし(特別徴収)」を選択することもできます。

住民税の計算方法と税率

住民税の税率は、所得割が一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)、均等割が年間約5,000円程度(自治体により異なる)です。計算式は以下の通りです。

住民税(所得割)= (前年の所得金額 – 所得控除額)× 10% – 税額控除額

例えば、課税所得が300万円のフリーランスの場合、住民税の所得割は約30万円となります。ただし、実際にはさまざまな控除が適用されるため、この金額から減額されることが一般的です。

年収別の住民税計算事例

年収所得控除後の課税所得住民税所得割(10%)均等割合計住民税(概算)
300万円約200万円約20万円約5,000円約20.5万円
500万円約350万円約35万円約5,000円約35.5万円
700万円約500万円約50万円約5,000円約50.5万円
1,000万円約750万円約75万円約5,000円約75.5万円

※所得控除は個人の状況により異なるため、上記は一般的なケースでの概算です。

CHECK

・住民税は所得割と均等割があり、フリーランスは所得割に注意が必要
・住民税は前年の所得に基づき、翌年6月から納付開始
・税率は所得割10%、均等割約5,000円で、収入によって負担が変動

フリーランスが活用できる住民税節税の基本戦略

青色申告を活用する

青色申告は最大65万円の控除(電子申告の場合)が受けられるため、住民税の計算の基となる課税所得を大幅に減らせます。白色申告の控除額(10万円)と比較すると、その差は歴然です。

例えば、年間所得500万円のフリーランスが青色申告を行うと、最大で約6.5万円の住民税が節約できる計算になります。

経費を正確に計上する

事業に関連する支出は適切に経費として計上しましょう。オフィス賃料、通信費、交通費、ソフトウェア利用料など、事業のために使った費用は課税所得を減らすことができます。

例えば、月5万円の経費を見逃していた場合、年間60万円の所得増加につながり、住民税では約6万円の追加負担となってしまいます。

特例制度を利用する

「少額減価償却資産の特例」を利用すると、30万円未満の設備投資を一括で経費計上できます。また、「短期前払費用」として、12か月以内に提供を受ける役務の対価は、支払時に全額経費計上することが可能です。

これらの特例を活用することで、購入した年の課税所得を減らし、結果的に翌年の住民税を抑えることができます。

CHECK

・青色申告で最大65万円控除し、住民税を節約
・事業経費を正確に計上して課税所得を減少
・特例制度を利用し、設備投資で住民税を軽減

中長期的な住民税節税対策と最新動向

各種控除・共済制度の活用

iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済などの制度を活用すると、掛金が全額所得控除の対象となり、住民税算基礎となる所得を減らせます。

例えば、年間24万円をの計iDeCoに拠出すると、住民税で約2.4万円の節税効果が期待できます。

ふるさと納税の戦略的活用

ふるさと納税は、2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除されるため、効果的な節税手段となります。年収や家族構成に応じた最適な寄附額を計算し、計画的に活用しましょう。

例えば、年収500万円の独身者であれば、年間約8万円までのふるさと納税が最も効率的な節税になります。

扶養控除の確認と定額減税の影響

親や子どもを扶養に入れることで、住民税の所得控除を受けられる場合があります。条件をしっかり確認し、適用可能な場合は申告しましょう。

また、2024年6月に実施された定額減税により住民税にも影響がありました。所得に応じて一定額の住民税が減額される制度です。

税制は毎年のように変更があるため、常に最新情報をチェックし、その年の税制改正に合わせた対策を講じることが重要です。

フリーランスの節税方法と効果比較

節税方法概要年間の節税効果(住民税)手続きの難易度長期的メリット
青色申告最大65万円の所得控除約6.5万円★★★記帳習慣が身につく
経費の正確な計上事業関連支出の徹底管理支出額の10%★★事業分析にも役立つ
少額減価償却資産の特例30万円未満の資産を一括経費化購入額の10%設備投資の負担軽減
iDeCo年間最大27.6万円が所得控除最大約2.8万円★★老後資金の形成
小規模企業共済年間最大84万円が所得控除最大約8.4万円退職金積立にもなる
ふるさと納税2,000円超の部分が控除年収による(最大約10万円)返礼品も受け取れる
扶養控除扶養家族による控除約4〜6万円/1人★★家族構成で変動

CHECK

・iDeCoや小規模企業共済で所得控除を受けて節税
・ふるさと納税を活用し、最適な寄附額で節税効果
・扶養控除や定額減税を活用し、住民税負担を軽減

フリーランスにとって住民税の節税は、年間の手取り収入を大きく左右する重要な要素です。青色申告の活用、経費の正確な計上、特例制度の利用、各種控除・共済制度の活用、ふるさと納税の戦略的な実施など、さまざまな方法を組み合わせることで、合法的に住民税を抑えることができます。

また、税制は毎年のように変更があるため、最新情報をチェックしておくことも大切です。2024年の定額減税のような一時的な措置も含め、自分の状況に合わせた最適な対策を講じることで、フリーランスとしての経済的な安定を図りましょう。税理士などの専門家に相談することも、効果的な節税戦略を立てる上で有益です。

フリーランスの少額減価償却資産の特例とは?|減価償却のルールと計算手順を具体例で解説

固定資産を一定期間にして会計処理する減価償却は、節税効果やキャッシュフローの改善といったメリットのあるものです。適用方法にはいくつか選択肢があります。フリーランスと減価償却について詳しく知りましょう。

減価償却資産に該当する資産は原則として減価償却を行い、耐用年数に応じて割って費用に計上する必要があります。フリーランスの場合は特例適用することで減価償却せずに一括経費計上ができる場合もあります。

フリーランスは30万円未満の減価償却資産は一括経費計上できる

フリーランスは、30万円未満の減価償却資産に関しては少額減価償却資産の特例を利用して一括経費計上が可能です。パソコンを買い替えたり、新しいソフトを導入したり、オフィスの引っ越しをした際など、通常よりも必要経費が増えた年度に使える制度を知っておきましょう。

そもそもフリーランスの経費と減価償却とは

まず、「経費」とは事業活動を行うために必要な支出のことです。

一方「減価償却」とは固定資産を耐用年数に応じて分割計上することを指します。減価償却により発生した「減価償却費」は経費の一部となります。

減価償却の対象になる資産や金額は定められていますので、資産ごとの耐用年数や減価償却方法を確認しておくことが重要です。

経費計上の減価償却は分割して経費化すること

減価償却とは、長期間使用する資産の価値を複数年で分割して経費として計上する処理のことです。

事業の運営に使用する固定資産の中で時間の経過とともに価値が減っていくもので、取得価額が10万円以上、耐用年数が1年以上のものが対象となります。

減価償却の定額法と定率法の違い

減価償却には主に定額法と定率法の2つの方法がありますが、フリーランスの場合は「定額法」を使用することが一般的です。

定額法のメリットとして、毎年同額の減価償却費を計上できてわかりやすく計算が簡単ということが挙げられます。

定額法:毎年均等に減価償却を行う方法です。資産の取得金額をその耐用年数で割り、毎年同じ減価償却額を経費として計上します。

定率法:初年度に多く減価償却し、減少した金額で償却する方法です。最初のうちは高い額が経費として計上され、その後は徐々に減少します。

そもそも経費になる例・ならない例

事業活動を行うために必要な支出は経費として計上できますが、プライベートなど業務と関係ない支出は経費として認められません。経費になる例・ならない例を以下表でまとめています。

  計上できる例計上できない例
事業関連外注費営業やマーケティング関連業務などの外注料金やライターやデザイナーへの報酬家事代行など業務とは無関係な代行
 広告宣伝費インターネット広告、チラシ広告、SNSやインフルエンサーとのコラボ費用や名刺作成費用など
 通信費事業用の電話代、インターネット代、モバイル通信費用家の固定回線など業務では使わないもの
 事務用品費事務所で使用する文房具や消耗品、コピー用紙などプライベートで利用するもの
 消耗品費電池、事務用品など業務で使うものプライベートで利用するもの
 接待交際費クライアントとの打ち合わせカフェ代や会食費、贈答品業務に関係ない飲食代
 交通費業務に関連する電車代やタクシー代、ガソリン代個人的な移動の交通費
 旅費交通費出張費用としての飛行機や新幹線、宿泊費用個人的な観光などの費用
オフィス関連家賃事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要)
 光熱費事務所/自宅兼事務所(家事按分が必要)
 保険料事業用の損害保険や生命保険事業主自身の保険料
 設備投資パソコンやオフィス家具、カメラ機材など、事業に必要なものプライベートで利用するもの
 ソフトウェア費用業務で使用するソフトウェアの購入費用やサブスクリプション費用プライベートで利用するもの
人件費給与社員やアルバイトへの給与
 社会保険料雇用保険や健康保険、年金などの社会保険料
教育・研修関連研修費業務やスキルアップに関連する研修やセミナーの参加費用
 書籍費業務に役立つ書籍や資料購入代金個人の趣味で購入したもの

経費化できる減価償却の対象となる資産

フリーランスの減価償却の対象となる主な資産は以下の通りです。経費と同じく、事業に関連するもののみが対象になります。

  • パソコン・タブレット・スマートフォン:仕事で使用するパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど。
  • オフィス機器:プリンター、スキャナー、コピー機、FAXなど、業務で使用する電子機器。
  • ソフトウェア:会計ソフトやデザインソフトなど業務で使用するソフトウェア。
  • 車両:事業用に使用する自動車やバイク、トラックなど。
  • 家具・備品:事務所で使用する机、椅子、棚、書類整理用のキャビネットなど。
  • 建物:事業用に借りている事務所や店舗。

※プライベートで使用しているものは減価償却対象になりません。

業務に使用しない固定資産や、時間が経っても価値が減少しない固定資産に関しては、減価償却の対象にはならず、大きな例で言うと土地は減価償却の対象ではありません。

減価償却の分割は耐用年数により決定されている

減価償却を行う場合、税務署が定めた耐用年数に基づいて償却します。主な資産の耐用年数は以下の通りです。

資産の種類耐用年数
パソコン・タブレット4年
携帯電話・スマートフォン10年
プリンター・コピー機・スキャナーなどの事務機器5年
ソフトウェア(業務用)5年
事務机、いす及びキャビネット(金属製のもの)15年
事務机、いす及びキャビネット(金属製以外のもの)8年
カメラ5年
自動車6年
軽自動車4年
バイク3年
自転車2年

さらに詳しい耐用年数は国税省の減価償却ページもご確認ください。

CHECK

・価値が時間とともに減少する固定資産は減価償却する
・フリーランスは30万円未満の減価償却資産は一括経費計上できる
・対象資産や分割年数は法で決められている

少額減価償却資産の特例で一括で損金算入する

少額の減価償却資産とは取得価格10万円未満の資産のことを指し、この資産に関しては減価償却せずに費用を全て経費計上することができます。

これに加えて、青色申告法人である中小企業者の場合は「少額減価償却資産の特例」が適用となり、購入金額が10万円以上30万円未満の資産についてその年に一括で経費計上できます。これは青色申告を行っているフリーランスも対象となっており、一括で減価償却することで税負担軽減につなげられます。

少額減価償却資産の特例の概要

少額減価償却資産の特例とは、10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した場合に合計300万円までを限度に、即時償却(全額損金算入)が認められる制度です。青色申告をしている中小企業および個人事業主が対象となっています。

減価償却の手続きを避けたい場合や、経費を増やして利益額を減らすことで減税対策をしたい場合に有用です。

少額減価償却資産の特例の対象となる資産は取得価格が30万円未満

1つあたりの取得価格が30万円未満かどうかで対象になるか判断されます。

また、自社の経理処理が消費税込みで処理をしているか、税抜きで処理をしているかによって、判断する価格が変わってくることにも注意しましょう。

少額減価償却資産の特例の上限は事業年度で300万円までが対象

1年間に特例として計上できる資産の上限額は300万円となっています。300万円を超えるものに関しては適用外となります。

ひとつの資産を特例の対象と対象外に分けることはできないため、上限金額ぎりぎりまで使いたいので資産を分けて計上する、ということはできません。

少額減価償却資産と一括償却の償却方法の違い

「少額減価償却資産の特例」とは別に、「一括償却資産制度」による減価償却手法もあります。

一括償却資産とは、すべての事業者を対象に10万円以上20万円未満の減価償却資産を3年間で均等償却できる制度です。

例えば15万円(10万円以上20万円未満の)のパソコンを購入した場合にできる処理方法は以下の3パターンになります。

①耐用年数に応じて減価償却

②一括償却資産として処理

③少額減価償却資産の特例で処理(青色申告をしている場合)

①耐用年数に応じて減価償却②一括償却資産として処理③少額減価償却資産の特例で処理
償却年数4年(パソコンの耐用年数が4年)3年(3年の均等償却が適用される)1年(即時償却が可能)
会計処理初年度:減価償却費 3万7,500円2年目:減価償却費 3万7,500円3年目:減価償却費 3万7,500円4年目:減価償却費 3万7,500円初年度:減価償却費 5万円2年目:減価償却費 5万円3年目:減価償却費 5万円初年度:減価償却費 15万円

少額減価償却資産の特例の適用には青色申告が必要 

少額減価償却資産の特例を適用できるのは、青色申告書を提出している事業者のうち、常時使用する従業員数が500人以下である事業者に限定されています。

特例を適用したい場合は、青色申告で確定申告を行う必要があるので注意しましょう。

少額減価償却資産の特例は節税にメリットがある

少額減価償却資産の特例を使う大きなメリットは節税効果です。実際に支払った金額を同じ年度のうちに経費として計上することで利益額を抑え、課税対象額を低くすることで節税効果を得られます。

CHECK

・フリーランスは少額減価償却資産の特例が適用される
・少額減価償却資産の特例により年300万円まで全額損金算入可能
・少額減価償却資産の特例は節税にメリットがある

少額減価償却資産の特例を適用する注意点

少額減価償却資産の特例は、10万円未満の減価償却資産や一括償却資産との違いを理解しどれが最適なのかを判断して選択する必要があります。

また、資産の購入金額が基準を超えている場合や事業用途でない資産には適用されないので注意しましょう。

節税対策になる一方で利益が減るケースも

少額減価償却資産の特例を利用すると、その年度に全額を経費として計上するので帳簿上の利益額が減少します。

利益が減少することは、税負担軽減や資金繰り改善に有利である反面、銀行からの融資を受けにくくなるなどのメリットもあります。

消費税の処理の方法で会計の扱いが変わる

インボイス制度により免税事業者と課税事業者のどちらかを選択するフリーランスが出てきました。免税事業者は消費税の納付義務が免除されており税抜きで会計を行います。

課税事業者は消費税の納税義務があり、税込みで会計を行います。少額減価償却資産の特例が適用される30万円までに費用が収まるかどうか、税抜きか税込みのどちらで判断するべきなのか自社の会計方法をきちんと把握しておく必要があります。

CHECK

・少額減価償却資産の特例を適用するには注意が必要
・短期的な利益の減少によるデメリットもある
・消費税の処理の方法で会計の扱いが変わる

減価償却は、フリーランスにとって節税やキャッシュフローの改善に有効な手段です。特に、30万円未満の資産には一括経費計上ができる特例があり、これを活用することで税負担を軽減し、経営の安定性を高めることができます。

新車・中古車の購入やカーリースを活用したマイクロ法人・フリーランス向けの節税大全

個人事業主やマイクロ法人にとって、車は重要なビジネスツールです。しかし、単なる移動手段としてではなく、適切に経費処理を行うことで節税にもつなげることができます。

一方で、車の取得方法には「購入」と「リース」があり、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で最適な方法を選ぶ必要があります。本記事では、車を活用した節税方法に加え、「購入」と「リース」どちらがおすすめなのかについても詳しく解説します。

車の取得方法を正しく選べば、節税効果を最大化できます。長期使用なら購入、初期費用を抑えたいならリースが最適です。維持費も適切に経費計上すれば、無駄なく節税できます。事業スタイルに合った方法を選び、資金繰りを安定させましょう。

車の取得費用と減価償却 一括経費化は可能?

車の取得費用は経費になる?

事業用の車を購入する場合、その取得費用は経費になります。ただし、一括で計上することはできず、「減価償却」によって数年にわたって経費化する必要があります。

車の購入費用には以下のようなものが含まれます。

項目特徴
車両本体価格車そのものの購入価格。経費として計上可能
オプションカーナビ、ETC、ドライブレコーダーなどのオプション費用。これも経費として計上可能
納車費用車の納車に関する費用(運搬費用など)。経費として計上可能
登録諸費用自動車税、重量税、取得税などの登録に必要な費用。経費として計上可能
リサイクル料車のリサイクルに関わる費用(リサイクル料)は、経費計上できず、資産計上する必要がある

ただし、「リサイクル料」は経費計上できず、資産計上となる点に注意が必要です。

減価償却の仕組みと耐用年数

減価償却の定額法と定率法

車両の減価償却には、「定額法」と「定率法」の二つの方法があります。どちらを採用するかは、税務署のルールや事業主の節税戦略に基づいて決まります。

定額法は、車両の取得価額に対して毎年一定の金額を償却する方法です。具体的には、車両の取得価額を法定耐用年数で割り、その金額を毎年経費として計上します。例として、新車の普通車を600万円で購入し、法定耐用年数6年を選んだ場合、毎年100万円を経費として計上します。

一方、定率法は車両の帳簿価額(取得価額から既に償却された金額)に一定の償却率を掛けて償却費を計上する方法です。最初の数年間で多くの経費が計上されるため、初期の節税効果が高くなります。例えば、取得価格600万円の車両に対して定率法を適用すると、初年度は償却額が多く、後年度に向けて徐々に償却額が少なくなります。

項目定額法定率法
方法毎年一定の金額を償却車両の帳簿価額に対して一定の償却率を掛けて償却
償却額毎年同じ金額が償却される(均等償却)初期の年で大きな償却額が計上され、後年は少なくなる
メリット予算管理がしやすく、毎年同額を計上初期の節税効果が大きい
デメリット節税効果が長期間で分散される初期段階での償却額が大きく、後半に減少する
適用例取得価格を耐用年数で割って償却金額を決定取得価格に償却率を掛けて毎年の償却額を計算

リースの場合の計算方法

リース車両の場合、減価償却は行われません。リース契約に基づいて支払うリース料が全額経費として計上されます。したがって、リース車両の税務上の取り扱いは、購入した場合とは異なります。

リース契約におけるリース料は、支払いが発生した年度に全額経費として計上できます。リース契約は通常、月額の定額払いであり、リース料は契約期間中にわたって均等に分けて経費として認識されます。

項目メリットデメリット
経費計上の方法リース料全額が経費として計上され、初期費用が軽減されるリース契約終了後に車両を所有できない
予算管理月々のリース料が一定で予算管理がしやすい長期的に見るとリース料の総額が高くなる可能性がある
初期費用初期費用がほぼ不要で、資金繰りが安定しやすい車両の所有権がリース会社にあるため、自由な変更や改造ができない
経費処理の簡便さ減価償却の手続きが不要で、全額経費処理が簡単リース料支払いが続く限り、経費計上が続き、最終的なコストが膨らむ可能性がある

例えば、月額5万円のリース料を支払い、契約期間が3年の場合、リース料5万円×12ヶ月×3年=180万円を全額経費として計上できます。また、リース車両の場合、維持費(ガソリン代や保険料など)や修理費用についても、事業用の割合を按分して経費計上が可能です。

新車と中古車の減価償却の違い

車を事業用に購入する場合、減価償却は重要な節税手段です。新車と中古車では、減価償却の計算方法や期間が異なります。

新車を購入した場合、その減価償却は法定耐用年数に基づいて行われます。普通自動車は6年、軽自動車は4年が法定耐用年数として定められており、購入価格に対して均等に減価償却が行われます。例えば、新車の普通車を600万円で購入した場合、6年間にわたって毎年100万円ずつ経費計上することになります。

中古車を購入した場合、減価償却の期間は法定耐用年数を基準にしますが、実際には購入時の年式や車の状態によって、償却開始年数が短くなることがあります。例えば、4年落ちの普通車を購入した場合、耐用年数は通常6年ですが、償却開始年数はその年式に基づいて調整され、実質的には4年間程度で減価償却が終了する場合が多いです。このため、中古車の減価償却は新車よりも早く節税効果を得ることが可能となります。

中古型落ち4年がベスト?

中古車を購入する際、特に「型落ち4年」がベストな選択肢としておすすめされることがあります。その理由は、減価償却の観点から見ても、コストパフォーマンスが優れているからです。型落ち4年の車は、新車購入時の価格より大幅に値段が下がっており、購入価格に対する減価償却のメリットが大きくなります。

例えば、4年落ちの車を購入することで、減価償却の開始年数が短縮され、同じ金額であれば、新車よりも早く経費として計上できるメリットがあります。このような中古車を選ぶことにより、初期費用を抑えつつ、減価償却期間も短縮され、早期に節税効果を得られるため、特に事業を始めたばかりの方や、早期に経費を計上したい方にとって非常に有利です。

CHECK

・事業用車の取得費用は経費になるが、減価償却で数年に分けて計上が必要がある
・減価償却は法定耐用年数に応じて行う必要があり、新車と中古車で期間が異なる
・車両費は高額であるため、減価償却という形で数年にわたり経費計上する必要がある

車の維持費はどこまでが経費?

経費として計上できる車関連のもの・ならないもの

車を事業用に使う場合、その維持費の一部は経費として計上できますが、すべての費用が経費として認められるわけではありません。ここでは、経費として計上できるものとできないものを明確に区別して、適切な経費処理を行うための基準を説明します。

【経費として計上できるもの】

項目内容計上条件
自動車税・重量税車の所有に伴う税金事業用車のみ
保険料(自賠責・任意)車両の保険料事業用部分を按分。長期契約の場合、按分処理が必要
ガソリン代事業運転に使用したガソリン代事業用走行分のみ経費計上。家事按分が必要
駐車場代車両の駐車場代事業専用の駐車場であれば全額経費計上
修理・メンテナンス費用オイル交換、タイヤ交換、車検費用など事業用部分を按分して計上

【経費として計上できないもの】

項目内容計上条件
リサイクル料車のリサイクル料金経費として計上不可。資産計上
プライベート使用分の費用家庭での使用にかかる費用プライベート使用部分は経費として計上不可

事業用とプライベート用の按分ルール

個人事業主やマイクロ法人では、車をプライベートでも使用することが多いため、全額を経費にすることはできません。そのため、家事按分を行い、事業使用分のみ経費として計上する必要があります。

【按分方法の例】

按分方法内容計上方法
走行距離按分年間走行距離のうち、事業用の走行距離に基づく按分例えば、年間10,000km走行し、6,000kmが事業用の場合、60%を経費に計上
使用日数按分使用日数のうち、事業用の日数に基づく按分例えば、月間20日間使用し、そのうち12日間が事業用の場合、60%を経費に計上

また、ガソリン代や保険料、駐車場代なども事業用とプライベート用で分けて処理する必要があります。税務調査の際に説明できるよう、走行記録を残しておくことが重要です。

CHECK

・車の維持費は多岐にわたり、それぞれ適切な勘定科目で経費計上する必要がある
・事業用とプライベート用の車を併用する場合、家事按分で事業使用分のみ経費計上可能
・税務調査に備え、走行記録などの客観的な証拠を残すことが重要

 「購入」と「リース」、どちらを選ぶべきか?

車を取得する際、「購入」と「カーリース」どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。それぞれの特徴を比較しながら、事業主に適した選択肢を見ていきます。

 「購入」と「リース」の違い

項目購入カーリース
所有権事業主が持つリース会社が持つ
初期費用高い(頭金・登録費用など)ほぼ不要
月々の支払いなし(ローンの場合あり)定額で支払う
減価償却必要(耐用年数あり)不要(リース料は全額経費)
経費計上減価償却+維持費毎月のリース料全額

「購入」がおすすめの人

以下に当てはまる場合は、車を購入する方がメリットが大きいです。

  • 長期間(6年以上)同じ車を使いたい人
  • 中古車を購入し、短期間で減価償却したい人
  • 走行距離制限がない方がよい人(リースは距離制限がある場合が多い)
  • カスタマイズを自由にしたい人(リース車は改造不可が多い)

「カーリース」がおすすめの人

以下のような場合は、カーリースを選ぶとメリットが大きいでしょう。

  • 初期費用を抑えたい人(頭金や登録費用が不要)
  • 毎月の経費を一定にしたい人(資金繰りが安定する)
  • 減価償却の手続きを避けたい人(リースなら処理が簡単)
  • 最新の車に定期的に乗り換えたい人(リース期間終了後に新しい車へ)

例えば、「事業が成長段階にあり、初期費用を抑えつつ経費計上をスムーズにしたい」という場合、カーリースが有利です。一方で、「中古車を購入して早く減価償却を終えたい」なら、購入が向いています。

CHECK

・車の取得方法は購入とリースがあり、それぞれ所有権や初期費用、経費計上などに違いがある
・長期間の利用やカスタマイズを希望する場合は購入が、初期費用を抑えたい場合はリース
・事業の状況や車の利用目的によって、購入とリースどちらが適しているか検討する必要がある

個人事業主やマイクロ法人にとって、車は重要な節税ツールです。購入なら減価償却による節税、リースなら全額経費化が可能。さらに、ガソリン代や保険料などの維持費も適切に計上することで、経費を最大限活用できます。事業スタイルに合った取得方法を選び、節税効果を最大化しましょう。適切な経費処理が、資金繰りの安定と事業成長につながります。

フリーランスこそ会計ソフトで経理作業を効率化|推奨ツール・導入後の効率的な会計業務の始め方

フリーランスが売上を上げる行為に集中するためには、事務処理や経理作業などのバックオフィス業務を効率化させるのがカギになります。特に経理作業は専門知識が必要で、初心者にとっては時間がかかるもの。会計業務を楽にするツールを導入することで効率化を図ります。

フリーランスが会計業務を効率よく進めるためのツールとして、会計ソフトの導入が非常に重要です。初心者でも使いやすく、事業をサポートする機能が豊富なソフトを選ぶことがポイントです。

青色申告のフリーランスには会計ソフトが必須

青色申告をするには原則として仕訳帳と総勘定元帳の2つの帳簿が必要になります。仕訳帳は日々の取引を日付順に記録する帳簿で、総勘定元帳は仕訳帳に記録された取引を勘定科目ごとに記録する帳簿です。どちらも経理の知識がある程度ないと作成が難しいのですが、会計ソフトを使うことで知識がなくても効率的に申告準備を進めることができます。

迷ったら導入すべき会計ソフトおすすめの会計ソフトの特徴と強み

会計ソフトは入力された取引をもとに自動で仕訳を行い帳簿を作成してくれるだけでなく、青色申告や確定申告に必要な書類を自動で作成する機能を持っているものもあります。これらの機能を持っているソフトを使うことで、正確な帳簿管理や確定申告をスムーズに済ませることができるのです。

会計初心者向けに優しいfreee会計

フリーランス向けに設計されたfreee会計は、会計知識がない人でも操作がわかりやすく、自動仕訳やレポート作成機能が豊富です。請求・支払業務から会計帳簿・決算書の作成、経営管理まで、会計をスムーズに効率化してくれます。

マイクロ法人フリーランス向けなMoneyForwardクラウド確定申告

MoneyForwordクラウド確定申告は、ステップに沿って入力していくだけで確定申告に必要な書類をカンタンに作成できるサービスです。銀行口座やクレジットカードからの取引明細自動取得、勘定科目の自動提案などの機能も充実しています。

領収書が多い人向けな弥生のクラウド確定申告ソフト

やよいの青色申告は、青色申告に対応した機能が充実しており、簿記知識がない人でも仕訳や帳簿の管理が簡単に行えるのが特徴です。1日あたり10,000枚まで領収書を取り込める機能があり、領収書が多い人に向いている会計ソフトです。

大手シェア会計ソフトから選べば間違いない

フリーランスによく選ばれているのは、freee・マネーフォワード・弥生の三大会計ソフトです。これらの会計ソフトにはフリーランスに必要な機能が備わっており、未経験でも使いやすい仕様になっているので3つのうちから選んで使ってみると良いでしょう。

CHECK

・会計ソフトを使えば経理知識がなくても確定申告がスムーズになる
・さまざまな会計ソフトの違いを知り、自分に合ったものを選ぶ
・大手シェア会計ソフトから選べば間違いない

会計ソフトでできること・メリット・デメリット

会計ソフトを導入するメリットは経理業務の効率と正確性が大幅に向上することです。会計ソフトでできることを詳しく知り、何がどう便利になるのかを把握しましょう。

会計ソフトの主な機能

会計ソフトは会計が初めての人でもわかりやすく経理処理ができるようになるツールです。銀行やカードの取引データを自動で取り込んだり、売上や経費を自動で計算してくれたり、必要な帳簿類を自動で作成してくれるなどとても心強い存在です。AI機能を搭載した会計ソフトではデータの自動入力だけでなく、数字のチェックもしてくれるなど便利な機能が追加されています。

自動仕訳機能

仕訳とは、ビジネスにおいて発生した取引を「借方」と「貸方」に分けて仕訳帳に記入することです。記入する際には適切な勘定科目を選ぶ必要がありますが、会計ソフトでは自動で判別して仕訳伝票を作成してくれます。

領収書やレシートのスキャン保存機能

紙でもらった領収書やレシートをスキャナーでスキャンしたり、スマートフォンのカメラで撮影すると、日付や金額を自動でデータ化して会計ソフトに取り込んでくれる機能です。手入力によるミスを防止し、何よりも時短につながります。

銀行口座やクレジットカードとの連携機能

会計ソフトを銀行口座やクレジットカードと連携すると、取引情報が自動で会計ソフトに取り込まれ、支払い詳細や未払金の状態など、取引情報をリアルタイムに正確に把握することができます。

帳簿や資金繰り表などのレポート作成機能

確定申告の際に提出が必要な帳簿や、キャッシュフローを把握するための資金繰り表を自動で作成してくれる機能です。資料をまとめる時間を取られることなく売上推移や支払いスケジュールなどを素早く把握することができます。

確定申告書類の自動作成機能

フリーランスが行う会計処理の中で一番大変なのが確定申告です。毎月の収支データを会計ソフトに蓄積しておけば確定申告に必要な書類を作る手間を減らせるだけでなく、控除額の確認や記載漏れ防止などミスを防ぐことができます。

メリットは簿記の知識不要で効率的な会計業務

フリーランスが会計ソフトを使う大きなメリットは簿記や会計の知識がなくても経理業務を効率的に進められることです。自分でエクセルなどで数字の管理を行う手間と比べてスピーディに会計処理を行い、仕訳の自動化やチェック機能によりミスが少ないのが心強いポイントです。デメリットよりもメリットのほうがはるかに大きいので、会計ソフトの導入は積極的に検討しましょう。

デメリットはランニングコストのみ

機能が充実している会計ソフトを使う場合は費用がかかるのがデメリットではあるものの、その分削減できる手間や時間を考えると決して高い投資ではないでしょう。

CHECK

・会計ソフトの導入はフリーランスにとってメリットが多い
・大きなメリットは経理業務の効率と正確性が大幅に向上すること
・会計ソフトはメリットが多いので導入は積極的に

法人とフリーランスでは必要な確定申告書類の違いがある

法人とフリーランスの大きな違いは、法人登記しているかどうかです。法人登記をすると申告先や税金の種類、税率などが変わります。また、フリーランスといわれる働き方の中にも、法人を設立せずに個人で事業を営む個人事業主のフリーランスもいれば、1人で事業を回しながら法人化しているマイクロ法人フリーランスといった人もいます。

個人事業主フリーランスの場合

個人事業主とは法人ではなく個人で事業を営む自営業者のことを指します。個人事業主で確定申告をするには青色申告がおすすめですが、会計ソフトを使うことで以下の必要書類を簡単に作成することができます。

確定申告で必要な書類:

  • 確定申告書B
  • 収支内訳書
  • 青色申告決算書(青色申告の場合)

マイクロ法人フリーランスの場合

マイクロ法人とは、代表者ひとりで経営している法人のことです。実態としては個人事業主と変わらないことが多いですが、法人格の有無、経費の取り扱い方法などが大きく異なります。確定申告においても、法人に準じた申告が必要になるため個人事業主の確定申告よりも複雑な決算申告及び税務申告が必要になります。提出が必要な書類の種類も増えるので、税理士に依頼することが多いです。

確定申告で必要な書類:

  • 総勘定元帳
  • 領収書綴り
  • 決算報告書
  • 勘定科目明細書
  • 法人事情概況説明書
  • 法人税の申告書
  • 消費税の申告書
  • 地方法人税の申告書

CHECK

・法人とフリーランスでは必要な確定申告書類が異なる
・個人事業主の確定申告は比較的簡単
・マイクロ法人の場合は確定申告においても、法人に準じた申告が必要になる

本当に必要な会計ソフトの比較ポイント・選び方

会計ソフトには様々な種類があり、事業規模や自身の会計知識量にあったものを選ぶのが良いでしょう。会計ソフトを選ぶ際にチェックしておきたい比較ポイント4点を紹介します。

クラウド型であること

会計ソフトにはパソコンにダウンロードして使用する「インストール型」とインターネットにアクセスしてブラウザで使用する「クラウド型」があります。銀行の入出金記録やクレジットカードの明細などを連携して読み込むことができ、税制度の改正などにも対応してアップデートされるクラウド型がおすすめです。

青色申告に対応していること

フリーランスの確定申告に欠かせない会計ソフトは、青色申告で必要な複式簿記に対応しており、e-Tax対応で書類作成から提出までをオンラインで済ませることができるものが必須です。

口座やカードなど外部連携機能が豊富であること

会計ソフトには銀行やクレジットカードなど金融機関や電子マネーと連携してデータを自動入力し、入力の手間を削減する機能がついています。自身が使っている金融機関との連携が対応されているかどうかチェックをしましょう。

有料プランの費用が高すぎないこと

クラウド型会計ソフトにかかる費用は年間1万円前後が目安です。フリーランスとして必要な機能を満たしているものであれば十分です。必要以上にハイスペックなソフトを導入すると費用も高くなるので気を付けましょう。

会計ソフト導入後の効率的な会計業務の始め方

会計ソフトを導入したら初期設定が肝心です。自社の取引先に合わせた仕訳設定や、必要な書類のフォーマットを設定しておきます。なにかが必要になった時に設定から始めようとすると、欲しいデータがまとまっていなくていちからやり直し、といったことになりかねません。

事業用口座を開設し会計ソフトに紐づける

プライベートのお金と混ざらないように事業用口座をまず開設し、口座と会計ソフトの紐づけを行います。これにより入出金のデータを自動的に取り込むことができます。

ビジネスカードを​つくり会計ソフトに紐づける

銀行口座だけでなく、ビジネス用のクレジットカードを使う場合はカードと会計ソフトの紐づけを行うことで取引情報を自動的に取り込めます。支払いの詳細や未払金の管理が簡単になります。

​請求書や​見積書の​ツールを用意する

会計ソフトに用意されているテンプレートをもとに、請求書や見積書のフォーマットを作っておきます。

月末毎に会計ソフトで入出金の仕訳を行う

会計ソフトで自動仕訳を行うには、事前に自動仕訳ルールを設定しておきます。自動仕訳ルールとは、勘定科目などの仕訳内容を記憶し、明細が取り込まれた際に自動で仕訳できるようにしておくことです。この設定をすることで仕訳候補に勘定科目や摘要が反映されるため、仕訳業務が簡単に完了します。

最初はお金の流れを知るために会計業務は​自分で​行うべし

会計ソフトが出てくる前までは会計業務の負担削減手段として税理士に頼んでやってもらうことも選択肢の一つでしたが、現在では優秀な会計ソフトがその役割を担ってくれています。フリーランスとして自身の資金繰りを把握しておくために、まずは会計ソフトを使いながら自分で会計業務の一連の流れを経験しておくことをおすすめします。

CHECK

・会計ソフトは青色申告に対応しているものを選ぶこと
・事業規模や自身の会計知識量にあったものを選ぶのが良い
・お金の流れを知るために、まずは自分でやってみること

自分の事業規模や、自身の経理知識の度合いに合わせた会計ソフトを選び導入することで、日々の経理業務だけでなく確定申告まで効率的に済ませることができます。

【無料DLあり】フリーランスの始め方まるわかり!開業手続き・準備リスト完全ガイド

フリーランスになるにあたって、自信をもって「どんな手続きをすればよいか理解している」と言い切ることはできますか?

なんとなくはわかっていても、「抜けれもがあるかも」「何か忘れていそう」と不安を感じる方も多いかもしれません。そこで今回は、フリーランスに必要な開業手続きについて解説します。

副業・複業フリーランスと独立フリーランスどちらを目指す?

これからフリーランスを目指す方にとって、まず考えるべきは「副業や複業としてフリーランスの案件を受けるか、完全に独立したフリーランスになるか」ということです。

副業や複業としてフリーランスをする場合、案件の発注元と雇用関係を結ぶため、会社員のように国民年金と厚生年金の加入対象となり、健康保険組合にも入れます。

独立したフリーランスになると、雇用関係は発生しません。個人事業主として働く場合は国民年金と国民健康保険に加入し、法人として働く場合は厚生年金の対象となり健康保険組合や協会けんぽに入ることになります。

働き方によって優劣があるわけではなく、様々な面で違いがあるので、それぞれの選択肢について「資料名:フリーランス開業の手続きカレンダー – これ1枚で独立準備は万全!【無料ホワイトペーパー】」を参考にしっかり理解しましょう。

どのようにフリーランスになるか悩んでいる方は、いきなり独立するよりもまずは副業や複業から始めてソフトランディングしていく方法をおすすめします。

フリーランスを始める際の今の会社との向き合い方

会社員として働いている方がフリーランスとして独立する場合、どのように今の会社とコミュニケーションを取ればよいのでしょうか。会社との向き合い方について、解説します。

独立・副業でも会社には必ず報告

近年は副業を認める会社が増えていますが、会社には副業を始めることを言いにくい方も多いでしょう。

しかし、会社に何も言わず始めても、確定申告を通じてバレたり、副業と本業の人脈が繋がったりしてバレたりするケースは多々あります。発覚してから「実は……」と切り出すより、事前に報告しておいたほうが信頼関係を損ねないため、前もって話しておきましょう。

他にも独立するためにリスクを抑える方法を「副業フリーランスの始め方。副業で始めるメリット・デメリットとおすすめ職種と案件探しのコツを紹介」で紹介しているので、ぜひご一読ください。

完全独立をする際にこそ円満退社

副業から始めて売上が軌道に乗ると、完全独立のタイミングとなります。この時は本業の会社を辞めることになりますが、円満に退社できるようにしましょう。

どのように会社に報告するべきかは「副業に関する就業規則別の会社に報告する具体的な流れ」にありますが、副業を始める段階で会社に報告したり、周りの人に応援してもらえるように工夫したりといったポイントがあります。

副業-会社報告

会社に所属している間にローンやクレジットカードを契約

残念ながら、日本ではフリーランスというだけで社会的信用が低いとみなされることが頻発するのが現状です。そのため、会社員という身分があるうちにやれることはやっておきましょう。特に大切なのは、ローンとクレジットカードの契約です。これらは、フリーランスになると審査落ちする確率が増えます。

フリーランスの方におすすめのカードについては「フリーランスの会計処理を効率化するクレジットカード。クレジットカードの選び方とおすすめのカードを紹介」で、ローンを組みたい方に耳よりの情報は「フリーランスの資金繰りをサポートするローン活用。ローンの種類と申し込みタイミングや融資による資金繰り方法を紹介」で解説しているので、退職前に必ずご一読ください。

また、引っ越しを考えている方は退職前に賃貸契約を結びましょう。フリーランスであるというだけで、会社員時代の倍の収入や、1年分の賃料が払えるだけの貯金の証明を見せても、入居を断られるケースは珍しくありません。

CHECK

・まずは副業や複業から始め、軌道にのってから独立したフリーランスになる
・副業を始めるときは会社にしっかり報告することで信頼関係を保てる
・会社員のうちにローンやクレジットカードの申し込み、賃貸契約を終わらせる

フリーランスは案件獲得やプライベートにも人脈は大切

フリーランスが最初にぶつかる壁は、仕事が見つからないということです。自分にスキルがあってもそれをアピールできる場は多くないですし、ポートフォリオが豊富でなければクライアントに自分の実力を示すことも難しいです。

だからこそ、人脈を広げて多くの方とつながりましょう。知り合い1人だけに営業しても仕事がもらえる確率は非常に低いですが、100人に営業すればそのうちの1人くらいは仕事をくれる可能性があります。

また、フリーランスの場合は基本的に一人で仕事をしますし、案件が終われば同じ人と関わることはありません。だからこそ、孤独を感じないようにたくさんの方と知り合いになりプライベートも充実させましょう。

具体的な人脈の広げ方は、「フリーランスにとって人脈は重要?人脈の作り方や継続的な仕事につなげるまでの道のり」で解説しています。

フリーランス開業手続きロードマップ

フリーランスとして開業するためどのような手続きが必要か、具体的な方法を知っておかなくてはうっかり何かを忘れてしまうかもしれません。何か月前からどういった書類を用意し、何を準備してどこに提出すればよいのかなど、「資料名:フリーランス開業の手続きカレンダー – これ1枚で独立準備は万全!【無料ホワイトペーパー】」で確認してください。

会社に退職願を提出し源泉徴収を受理

会社に退職届を出し、正式に辞めましょう。その際、源泉徴収の発行をお願いすることを忘れないでください。たいていの場合、最終出勤月の給与が確定した後、給与明細と一緒に受け取れます。

ハローワークで失業手当(再就職手当)を申請

退職後は、失業保険をもらいましょう。会社から離職票をもらったらハローワークに行き、申し込みします。一週間後に雇用保険説明会に参加して失業認定報告書を提出すると、4週間ごとに手当が振り込まれます。

社会保険料の手続きを申請

フリーランスは、国民健康保険と国民年金に入らなくてはなりません。会社員であれば会社が保険料の5割を負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担となります。

役所にて必要な書類を提出すると申請できるため、「フリーランスが加入すべき社会保険は?加入条件や加入手続きや保険料を抑えるコツを解説」を参考に退職後早急に手続きを進めてください。

税務署に開業届・青色申告承認申請書の提出

フリーランスになったら、原則1か月以内に開業届を提出してください。その際、青色申告承認書も出しましょう。これにより最大65万円の特別控除が受けられるようになり、節税ができるようになります。

開業届を出すメリットは様々あるため、気になる方は「フリーランスの開業届。開業届の提出のスムーズに進めるに必要な準備をステップ式で解説。」をご一読ください。

事業用口座の開設申請をし独立

フリーランスになったら、事業用の口座を開きましょう。個人で使っている口座とわけることで、お金の動きをしっかり管理できるようになります。金融機関はどこでも良いですが、店舗のある銀行であれば窓口で色々と相談ができますし、ネット銀行であれば時間や場所を問わず安い手数料で利用できます。

フリーランスにおすすめの銀行については、「フリーランス向け屋号付き事業用口座の開設方法。会計を楽にするおすすめ口座や活用法を解説」にて解説しています。

営業活動は準備期間から常に並行して行い余裕を持つ

フリーランスになってからいきなり営業をするのではなく、準備段階からしっかり進めておきましょう。繰り返しますが、フリーランスにとって最初の壁は案件獲得です。営業活動はどんなにやってもやりすぎということはないので、スキルを磨いたりポートフォリオを作ったりするのと同時並行で、営業先を見つけてコミュニケーションをとっていってください。

具体的な営業方法については、「フリーランスが直案件を獲得する営業手法。案件獲得のチャネルの種類や直営業までのステップを解説」にまとめています。

CHECK

・退職届を出し源泉徴収発行を依頼したら、失業手当を申請する
・各種保険の申請と開業届の申請手続きを行う
・準備段階から営業活動を始め、案件確保に注力する

フリーランスの独立に必要な資金はいくらから?

フリーランスとして独立するためには、どのくらいの資金が必要でしょうか。「フリーランス独立に必要な初期費用。開業資金・運転資金の目安や資金調達の方法を解説」を参考に、コツコツお金を貯めておきましょう。

フリーランスとして効率的に仕事するために必要な準備

フリーランスとして働く中で、効率性を高めることが重要です。月給が決まっているわけではなく仕事をやればやるほど売上が上がるので、効率的に作業を進めて限られた時間でたくさんの案件をこなしましょう。

マイナンバーは開業届や確定申告の効率化のため事前に取得

マイナンバーを取得していない方は、早急に手続きしてください。開業届や確定申告の際、自分のマイナンバーを記入する機会があります。e-Taxを使って税務署への手続きも効率的に進められます。

他にどのようなメリットがあるかについては、「フリーランスのマイナンバー活用術。開業届から青色申告での確定申告と便利な活用方法を解説」にまとめています。

印鑑は事業用の丸印・角印・銀行印を準備

事業用として使う印鑑を準備しましょう。様々なリスクに備えること、いずれ法人化するかもしれないことを考えると、丸印・角印・銀行印の3つを買っておくことをおすすめします。

購入の際に絶対に気を付けたいポイントについては、「フリーランスが作るべき印鑑。印鑑の種類・用途・具体的な作成方法と電子印鑑の準備も解説」にて解説しています。

オフィスには投資を惜しまず作業環境を完備

初期投資を抑えることは重要ですが、作業環境を整えるためにはある程度のお金を使いましょう。コワーキングスペースに登録すると、仕事場と生活の場を分けられますし、フリーランス仲間も得やすいです。家で仕事をする場合は、長時間使っても疲れない椅子や机を買いましょう。

どうすれば生産性の高い環境を作れるかについては、「フリーランスの生産性とQOLを上げるオフィス環境作り。オフィスの選び方を中心に快適な働き方を実現する方法を紹介。」をご一読ください。

屋号は覚えやすく・事業内容がわかりやすいが基本

必須ではありませんが、フリーランスとして独立する際に屋号を作ることができます。もし作るのであれば、「何をやっているかがわかる」「複雑な名前ではなく覚えやすい」の2点がポイントです。

具体的な考え方については、「フリーランスと屋号。後から変更もできる屋号はこだわり過ぎず、まずは開業し手を動かして実績を積み上げる」を参考にしてください。

オンライン商談が多い時世でも営業ツールとして名刺は用意

「今の時代、名刺っているの?」と思うかもしれませんが、持っておいて損はないでしょう。対面での交流会に参加する際、名刺がないとなかなか新しい方と繋がれません。また、自分の事業内容をパッと伝えられる点も魅力です。

名刺を作る際は、どのような点に気を付ければよいか「フリーランスの名刺の作り方。営業ツールとして仕事につなげる名刺のポイントと発注方法・効果的な交換方法を解説」を参考にしながら考えてみてください。

確定申告のため会計ソフトを事業用口座と事前に連携

フリーランスとして働くなら、確定申告は必須です。効率的に作業ができるよう、事業用口座を会計ソフトと連携させておきましょう。確定申告については不安な点も多いと思うので、「フリーランスの確定申告。確定申告の流れや必要書類の書き方と会計ソフトを活用した効率化方法」を参考に勉強してみてください。

受発注管理のために契約書フォーマットと電子契約サービスを準備

案件が増えてくると、それぞれについてしっかり管理する必要性が高まります。受発注管理については、2024年11月から施行されているフリーランス新法に準じることが大切です。

「フリーランスの受発注管理。フリーランス新法対応の契約書フォーマットを無料ダウンロード」を参考に、契約書のフォーマットと電子契約のサービスを準備してください。

フリーランスになるためには、様々な準備が必要です。つい自分のスキルを高めることだけに集中してしまいがちですが、「手続きを滞りなく進める」「お金周りの準備を整える」といったことにも注意を払いましょう。

まだ何をしていいかわからないという方には、今回ご紹介した改行手続きのロードマップが役立つはずです。どのタイミングから、どのような書類を用意し、どのように提出すればよいか、しっかり確認してください。

自宅兼事務所のベストプラクティス!按分の経費計上と個人事業主・マイクロ法人の節税の最適解

自宅を事務所として活用する「自宅兼事務所」は、個人事業主や小規模法人にとって、コスト削減や業務効率化の面で有効な選択肢です。しかし、経費計上や税務処理において注意すべき点が多く存在します。

本記事では、自宅兼事務所の基本概念から、経費の按分方法、個人事業主とマイクロ法人の場合の経費化割合の相場、社宅との比較、不動産評価証明書による経費化割合の上昇、自宅が持ち家の場合の住宅ローンの経費計上、そして関連費用の経費計上可否について詳しく解説いたします。

自宅兼事務所の活用は、適切な経費計上を行うことで節税効果を最大化できます。個人事業主は按分計算を明確にし、法人は社宅契約を適正に組むことで、より多くの経費計上が可能です。制度を理解し、最適な方法を選択しましょう。

自宅兼事務所とは?基本的な考え方

自宅兼事務所の定義

自宅兼事務所とは、自宅の一部を事業活動のためのオフィススペースとして利用する形態を指します。この方法は、個人事業主や小規模法人が追加のオフィスを借りることなく、コストを抑えつつ事業を運営する手段として広く利用されています。

経費計上の基本ルール

自宅兼事務所として自宅を利用する場合、家賃や光熱費などの費用を事業経費として計上することが可能です。ただし、これらの費用全額を経費とすることはできず、事業で使用している部分の割合(事業共用割合)に応じて按分する必要があります。

CHECK

・自宅兼事務所は、住居を仕事場とする形態。費用は事業割合で按分し、経費計上が可能
・経費計上ルールでは、家賃や光熱費を事業利用割合に応じて按分。全額経費にはならない
・事業共用割合が重要。自宅費用の公私区分を明確にし、適切な割合で経費計上が必要

経費の按分と計算方法

按分の考え方

経費の按分には、主に「面積按分」「時間按分」「用途按分」の3つの方法があります。

面積按分は、自宅全体の床面積に対する事務所スペースの割合を求め、それに基づいて家賃や光熱費を按分する方法です。例えば、50㎡の自宅のうち10㎡を事務所として使用している場合、家賃の20%を経費として計上できます。

時間按分は、1日のうち何時間を仕事に使っているかを基準にして按分する方法です。例えば、1日24時間のうち8時間を事業に使うなら、家賃や光熱費の3分の1(約33%)を経費として計上できます。

用途按分は、特定の部屋を完全に事業用として使用している場合、その部屋に関する費用を全額経費計上し、共用部分の費用は面積や時間按分を組み合わせて計算する方法です。

住宅ローンと関連費用の取り扱い

住宅ローンのうち、利息部分は事業経費として計上できますが、元本部分は経費に含めることができません。したがって、住宅ローンを組んでいる場合は、支払利息額を確認し、按分計算を行う必要があります。

引越費用は、事業目的での引越しであれば、その費用の一部を経費として計上できます。例えば、新しい住居が業務のために必要な立地である場合や、業務拡張に伴う移転であれば、合理的な範囲で計上可能です。

敷金・礼金についても、事業利用分に相当する割合を経費化できます。例えば、賃貸物件の50%を事業用として使用する場合、敷金・礼金の半分を経費計上できます。

光熱費やインターネット費用も、事業利用部分を按分し、適切な割合で経費として処理できます。一般的には、使用時間や使用スペースを基準にして計算し、税務調査時に説明できるよう記録を残しておくことが重要です。

【経費計上の可否一覧】

費用項目経費計上可否備考
家賃事業使用割合に応じて按分
住宅ローン利息元本部分は対象外
住宅ローン元本×経費計上不可
引越費用事業目的であれば一部計上可
敷金・礼金事業用部分のみ按分
光熱費使用割合に応じて按分
インターネット費用事業用割合を明確に
固定資産税事業使用割合に応じて按分
火災保険料事業使用割合に応じて按分
修繕費事業に関連する部分のみ可
通信費(電話代)事業用部分を明確に区分

CHECK

・経費按分は、面積や時間で計算。住宅ローン利息は経費だが、元本は対象外
・光熱費やネット代も事業利用分を按分し、記録が重要。引越や敷金礼金も事業割合で計上可能
・家賃、ローン利息、敷金礼金、光熱費、ネット代は按分で経費化可能。元本や私的費用は不可

自宅兼事務所の活用と最適な選択肢

個人事業主にとっての最適な選択肢

個人事業主は、自宅の家賃や光熱費を按分し、20%〜50%程度を経費として計上することが一般的です。按分方法は、使用する部屋の面積や使用時間などを基準に、合理的に計算する必要があります。例えば、自宅の延床面積が100㎡で、仕事で使用する部屋が30㎡の場合、面積按分による経費化割合は30%となります。また、1日のうち8時間を仕事に使用する場合、時間按分による経費化割合は約33%となります。

ただし、税務調査時に説明できるよう、按分方法を明確にしておく必要があります。日頃から、仕事で使用する部屋の面積や使用時間を記録しておくと良いでしょう。また、税務署から問い合わせがあった際に、合理的な説明ができるように準備しておくことも重要です。

マイクロ法人と経費計上の選択肢

マイクロ法人の場合、法人契約で自宅を社宅として扱うことで、家賃の50%〜100%を経費として計上できる可能性があります。社宅として経費計上する場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 法人契約で賃貸借契約を締結する
  • 家賃の支払いも法人名義の口座から行う
  • 仕事で使用するスペースとプライベートのスペースを明確に区分する

ただし、適正な契約が求められます。税務署から、家賃の設定や使用状況について確認される可能性があるため、客観的な証拠を残しておくことが重要です。

自宅兼オフィスと社宅、どちらが有利か

個人事業主の場合は、自宅の家賃を按分して経費計上する方法が一般的です。一方で、法人化して社宅契約を結ぶことで、より多くの費用を経費化できる可能性があります。

社宅契約のメリットとしては、経費計上できる割合が高いことが挙げられます。しかし、社宅契約には税務リスクや契約上の要件があるため、慎重な判断が必要です。例えば、家賃の設定が相場よりも高い場合や、仕事で使用するスペースが少ない場合は、税務署から否認される可能性があります。

どちらの方法が有利かは、個人の状況によって異なります。税理士などの専門家に相談し、最適な方法を選択することをおすすめします。

不動産評価証明書の活用

不動産評価証明書を活用することで、経費計上割合を正当化しやすくなります。不動産評価証明書は、固定資産税の評価額を証明する書類です。この書類に記載された評価額を基に、仕事で使用するスペースの割合を計算することで、より正確な按分が可能となります。

これにより、適正な経費計上が可能となり、税務対策としても有効です。税務署から、経費計上割合について確認された際に、客観的な証拠として提示することができます。

CHECK

・個人事業主は按分で経費計上、記録と説明準備を徹底
・法人は社宅扱いで高経費化、契約と区分明確化が必須
・個別状況で選択、専門家相談推奨。証明書で根拠を強化

自宅兼事務所の活用は、コスト削減と業務効率化の大きなメリットがあります。しかし、経費計上には明確なルールがあり、適切な按分や記録が不可欠です。個人事業主と法人では経費化の方法が異なるため、自身の事業形態に合った選択をすることが重要です。適切な手続きを行い、税務リスクを回避しながら、自宅兼事務所を最大限に活用しましょう。

フリーランスにとって人脈は重要?人脈の作り方や継続的な仕事につなげるまでの道のり

フリーランスとして安定的に仕事を獲得するには、人脈の活用が欠かせません。しかし、「人付き合いが苦手」「人脈を作るのが難しい」と感じている人は少なくありません。また、「そもそも人脈とは何なのか?」「どうやって作ればいいのか?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

本記事では、フリーランス協会が公開している『フリーランス白書2024』の結果をもとに、フリーランスの仕事獲得における「人脈」の重要性や、効果的な人脈の作り方、活かし方について詳しく解説します。

さらに、仕事につながる人脈の特徴や悪い人脈の見極め方、築いた人脈をどのように仕事に結びつけるのかまで具体的な方法を紹介するので、自分に合った人脈を見つけ、案件獲得につなげるのに役立ててください。

人脈づくりはフリーランスにとって永遠の課題

フリーランスにとって、「人脈づくり」は永遠の課題です。仕事を得るために人脈が大事なのは分かっていても、「実際にどこでどうやって作ればいいのか分からない」といった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。

特に、独立したばかりの頃は、実績が少なく信頼も築けていないため、安定した案件を継続的に獲得するのが難しく、収入の波も大きくなりがちです。

私自身、独立当初はクライアントとどうつながればいいのか分からず、手探り状態でした。独立から5年経った今でも、案件が減ったり契約が終了するたびに「次の仕事をどう探そう?」と焦燥感に駆られることがあります

それでは、どのような場所に行き、どのような行動をすれば、無理なく人脈を広げ、仕事につなげることができるのでしょうか?

ここからは、人脈の作り方や仕事につなげる方法について詳しく解説していきます。

そもそも人脈とは?

皆さんは、「人脈」という言葉にどんなイメージを持っていますか?

仕事につながる大切なつながりと考える人もいれば、「損得勘定が見え隠れする関係性」「打算的な人間関係」などと、ネガティブに感じる人も少なくありません。

また、せっかくある程度の自由があるフリーランスという働き方を選んだにも関わらず、無理に人間関係を広げることに違和感を感じる人もいるでしょう

ここでは、フリーランスにとっての「人脈の種類」を整理し、「仕事につながる人脈とは何か?」を考えていきます。

「人脈」は友人・知人だけじゃない

「人脈」とは、友人や知人だけに限られません。以下の表は、フリーランスにとっての人脈の一部を整理し、まとめたものです。

人脈の種類具体例
クライアント企業の担当者(法人案件)直接の依頼主(個人クライアント)継続案件を依頼してくれるリピーター
ビジネスパートナー外注先(デザイナー・エンジニア・翻訳者など)共同でプロジェクトを進める業務提携先販売やプロモーションをサポートするパートナー
紹介者・つなぎ役先輩フリーランス・同業の仲間企業の元同僚・取引先フリーランスエージェント・マッチングサービス運営者
支援者メンター・コーチ(経験者からのアドバイス)税理士・弁護士など専門家金融機関担当者(資金調達やビジネス口座の相談)
学び・コミュニティの仲間業界の勉強会・交流会の参加者オンラインサロンやFacebookグループのメンバースクール・講座で出会った仲間
フリーランスの友人・信頼できる仲間ビジネス関係を超えて支え合える友人気軽に相談できるフリーランス仲間

このように、人脈とは必ずしも新しく作るものではなく、すでにある関係を活かすことも含まれます

CHECK

・人脈に対してネガティブなイメージを持つ人も多い
・人脈は友人や知人だけに限られない
・人脈とはすでにあるつながりも含まれる

フリーランスにとって人脈は本当に大事?

フリーランスにとって、人脈は本当に大事なのでしょうか。ここでは、実際の案件獲得ルートをもとに解説します。

フリーランスの仕事獲得ルートの6割が「人脈」経由

フリーランス白書 2024』によると、「Q.仕事はどのようなところから見つけますか。(複数回答)」という問いに対し、「人脈(知人の紹介含む)」と答えた人は61.6%にのぼります。次いで「過去・現在の取引先」が58.9%、「自分自身の広告宣伝活動(Web・SNS・新聞・雑誌など)を活用している人は33.2%、「エージェントサービスの利用」は23.2%となっています。

この結果を見ても、人脈はフリーランスとして働くうえで非常に重要な要素であるといえるでしょう。

過去や現在の取引先も重要な人脈の一部

人脈というと、友人や業界の知り合い、イベントで知り合った人を想像してしまいがちですが、過去や現在の取引先も重要な人脈の一部です。実際に、『フリーランス白書 2024』の案件獲得ルートを見ると、「人脈(知人の紹介含む)(61.6%)」の次に「過去・現在の取引先(58.9%)」が続いています。

初回の案件獲得だけでなく、取引先との信頼関係ができていれば、リピート案件や紹介につながる可能性も高まります。

CHECK

・人脈を活用して仕事を獲得しているフリーランスは多い
・過去や現在の取引先も重要
・取引先との信頼関係を築くことが大事

フリーランスによく見られる人脈づくりの悩み

フリーランス白書 2024』によると、今の働き方において就業環境や仕事上の人間関係、達成感および充実感、プライベートとの両立、スキル・知識・経験の向上に満足している人が半数以上を超える一方で、「多様性に富んだ人脈形成」に満足している人は、たった33.9%しかいません。

これは、多くのフリーランスが人脈づくりに頭を抱えていることを物語っています。以下では、フリーランスによく見られる人脈の悩みを深掘りしていきます。

人脈がない

フリーランスになったばかりの人が抱えがちな悩みの1つが、「人脈がないこと」です。会社員時代と違い、自然に人脈が広がる機会が少なく、自分から動かないと仕事につながる関係は生まれません。そのため、何から始めればいいのか分からず、不安を感じてしまう人は多いです。

人脈の作り方がわからない

人と関わる意欲はあるものの、「具体的にどこで出会い、どう関係を築けばいいのか分からない」という悩みを持つ人もいます。そもそも何をすれば仕事につながるのかが見えないと、行動に移しづらいでしょう。

人付き合いが苦手

人と関わること自体には抵抗がないものの、初対面での会話や関係構築が苦手で悩んでいる人もいます。「話しかけるのが怖い」「雑談が続かない」などの理由で、せっかくの出会いを仕事につなげられないケースもあるでしょう。無理に社交的になるのではなく、自分なりの関係の築き方を見つけることが大切です。

そもそも人と関わりたくない

人間関係に惑わされずに自由に働きたくて、フリーランスを選んだ人は少なくありません。意図的に人脈を作ろうとする行為やあからさまに営業っぽい行為に、抵抗がある人もいるでしょう。フリーランスとして、「自分のペースで仕事をしたい」と考えるのは自然なことです。

必要以上に人と関わることなく、適度な距離を保ちながら仕事を得られる方法を考えることも、選択肢の1つです。

打算的な人間関係に違和感を感じる

「この人とつながれば得をする」という損得勘定が透けて見える関係に、違和感を覚える人も少なくありません。表面的な付き合いを増やすよりも、本音で話せる関係を大事にしたいと考えるフリーランスも多いです。無理に広げるよりも、信頼できるつながりを深める方が、結果的に良い人脈につながることもあります。

CHECK

・何をすれば仕事につながるのかを考えて行動する
・自分なりの関係の築き方や距離感を見つける
・無理に人脈を広げるのではなく、信頼できるつながりを深める

もっとも収入につながる案件獲得ルートは?

ただ案件を獲得するだけでなく、高単価の収入を得たいと思っているフリーランスも多いでしょう。それでは、もっとも収入につながるのは、一体どのようなルートなのでしょうか。

人脈を活用する

フリーランス白書 2024』によると、「Q.その中で、最も収入が得られる仕事はどのようなところから見つけたものですか。」という質問に対し、1位と2位を「過去・現在の取引先(32.7%)」「人脈(27.9%)」が占めています。1位の「過去・現在の取引先」を含めると、約6割のフリーランスが、人脈を活用した案件獲得で高収入を得ていることが伺えます。

CHECK

・フリーランスの約6割が人脈を活用して高収入を得ている
・SNSやブログ、noteで実績を発信する
・WantedlyやIndeedなどのフリーランス向けサービスを活用する

自分で広告宣伝活動を行う

SNSやブログ、noteは無料で広告宣伝ができるツールです。これらのプラットフォームを活用し、自分のスキルや実績を発信することで、直接クライアントから仕事を得ることができます。特に、専門性のあるコンテンツを発信し続けることで、指名での依頼が増える可能性があります。有益な情報や専門知識を発信することで、自分の強みを可視化することが可能です。

ただし、広告宣伝活動を行っても、すぐに結果が出るわけではありません。そのため、継続的な発信が求められます。また、たくさんのフリーランスがいる中で多くの人にリーチするためには、ただブログを更新するのではなくSEOになどに努めるなど、継続的な努力が大切です。

フリーランス向けサービスを利用する

近年では、WantedlyやIndeedをはじめ、さまざまなフリーランス向けサービスが普及しています。フリーランスエージェントやマッチングサービス、クラウドソーシングを利用することで、案件を探す手間を減らしながら仕事を獲得可能です。特にエージェント経由の案件は、高単価かつ長期契約になりやすい傾向があります

一方で、手数料や契約の制約があるため、条件をよく確認することが重要です。

人脈づくりのためにSNSはやるべき?

フリーランス白書 2024』によると、「Q.仕事はどのようなところから見つけますか。」という問いに対し、約3割が「自分自身の広告宣伝活動(Web・SNS・新聞・雑誌など)」と回答しています。この結果を見ても、仕事を獲得するうえでSNSの活用は有用です。以下では、人脈づくりのためにSNSを活用するメリットについて解説します。

人脈づくりに役立てられる

『フリーランス白書 2024』によると、「Q.取引をしたフリーランスとの関係性や出会いのきっかけについて教えてください。」という問いに対し、「SNSでつながった人」は「もともとの友人・知人」「友人・知人の紹介」に次いで3位です。

例えば、ビジネス系SNSの呼び声高いLinkedInでは、さまざまな求人が掲載されており、ビジネス的な関係構築にも役立ちます。Facebookは、「フリーランスライター」「Webデザイナー」「翻訳者」など、職種ごとのコミュニティが充実しており、フリーランス向けのビジネス勉強会やオンラインイベントが告知されるため、リアルな交流につながりやすいのが特徴です。

情報収集ができる

SNSを活用すれば、業界の最新情報やトレンドをリアルタイムでキャッチできます。特に、同業のフリーランスや企業アカウントをフォローすることで、有益な情報が集まりやすくなります。 仕事のヒントや新しい案件につながる情報も得られるため、効率的な情報収集ツールとして活用できます。

X(旧・Twitter)では、「#Webライター」「#Webデザイナー」などで検索すれば、仕事を募集している人とつながれる可能性があります。業界のトレンドやリアルな声をキャッチアップしたり、共通の仲間を見つけたりするのにも有益です。

セルフブランディングに活かせる

受け身で待っているだけでは、仕事は入ってきません。SNSで自身のスキルや実績を積極的に発信することで、仕事の依頼や認知度向上につなげることができます。特に、専門知識や経験を活かした投稿は、信頼度を高める要素となります。継続的な発信をすることで、「この分野ならこの人」と認識されやすくなるのもポイントです。

Instagramやポートフォリオサイトでクリエイティブ系の実績をアピールしたり、LinkedInでビジネススキルやキャリアの強みを発信したりすることで、ターゲットに合ったセルフブランディングが可能です。発信の内容に応じて、適切なプラットフォームを選ぶことが、より効果的なブランディングにつながります。

CHECK

・LinkedInやFacebookで関係や交流を深める
・Xのハッシュタグを活用して求人や仲間を見つける
・実績や強みを継続的に発信してセルフブランディングに役立てる

人脈づくりにおいて大切なことは?

「知り合い」は多くても、仕事につながらなければ意味がありません。ここでは、仕事につなげるにあたって大切なことについて見ていきます。

約束を守る

「仕事につながる人脈」は、関係性の深さや信頼の高さがキーです。例えば、「期日を守る」「レスポンスを早くする」「小さな約束を大事にする」などの積み重ねが、自身の価値を高め、結果的に案件獲得のチャンスを生みます。信頼関係が築ける人脈こそ、長く続く仕事につながるのです。

迅速に行動する

フリーランスにとって、レスの速さは安心感や信頼の獲得に直結します。逆にいうと、返信の遅さは信頼の失墜につながりかねません。出社スタイルと異なり、リモートでは画面の向こうで相手がどのように仕事を進めているのか、本当に納期に間に合うのか見えないためです。

リモートワークでは直接顔を合わせる機会が少ないからこそ、返信の速さが信頼の指標になります。素早く行動することは、誠意ややる気のアピールにもつながります。

相手との共通点を意識する

共通点があると、関係が自然と深まり、仕事の依頼や紹介につながりやすくなります。趣味、キャリアの経歴、得意分野など、意識的に相手との共通点を見つけることが大切です。「この人とは価値観が合う」「一緒にいて楽しい」と思ってもらえれば、関係が続きやすく、「一緒に仕事をしたい」と思ってもらいやすいです。結果的に、案件の機会も増えるでしょう。

CHECK

・小さな約束を守って信頼関係を高める
・迅速なレスポンスに努める
・相手との共通点を見つける

人脈はどうやって作ればいいの?

それでは、実際に人脈は一体どのように作ればいいのでしょうか。ここでは、仕事につなげられる人脈を作るための具体的な行動や手段について解説します。

SNSを活用してつながりを広げる

SNSで「#仕事募集中」「#フリーランスライター」などのハッシュタグを活用し、案件を募集している企業や個人を探す方法があります。また、自分自身が「ライターとして案件を受け付けています」と発信することで、仕事のチャンスを引き寄せることも可能です。

最近では、フリーランスを束ねているディレクターや企業がSNSを通じてフリーランスを探すケースも増えており、思わぬ縁につながることもあります。

元同僚や昔の仲間とつながる

新しい人脈を開拓しようと思うと、ハードルが高く感じる人もいるかもしれません。そこで、時をさかのぼって昔の仲間たちにコンタクトを取ってみるのも1つの方法です。過去に一緒に働いた人は、すでにあなたのスキルや仕事ぶりを知っているため、紹介や案件につながりやすい傾向があります。また、一緒に働いた経験があるため、案件を円滑に進めやすいのも利点です。 

先輩フリーランスに話を聞く

フリーランス白書 2024』によると、フリーランスの約半数は、他のフリーランスからの受注を経験しています。すでにその道を歩んでいる先輩フリーランスに話を聞くことで、どのように継続的に人脈を構築しているかのヒントをもらえます。また、そこから生まれた縁で案件を振ってもらえたり、プロジェクトに一緒させてもらえたりすることもあるでしょう。

元取引先との関係を活かす

独立前に対企業で仕事をしていたなら、元取引先の担当者に独立した旨を伝えてみるのも有効な方法です。すでにあなたのスキルや仕事ぶりを知っているため、実績が少ない段階でも安心して依頼してもらえる可能性があります。独立直後の案件獲得は特にハードルが高いため、過去のつながりを活かすことで、スムーズに仕事を得られるチャンスが広がるでしょう。

同じ目的のコミュニティに参加する

業界の勉強会やオンラインサロンに参加すると、同じ目標を持つ人たちとつながりやすく、仕事のチャンスも生まれやすくなります。実際に、コミュニティ経由で案件を獲得したフリーランスも多く、活動の幅を広げることで新たな可能性が広がるでしょう。また、リアルのミートアップやイベントに足を運び、直接顔を合わせることで、オンラインよりも信頼関係を深められ、より確実な人脈につなげられます。

イベントや交流会で名刺を配る

イベントや交流会では、名刺を渡すだけでなく、その後のつながりを意識することが大切です。 名刺交換した相手とSNSを交換し、定期的にコンタクトを取ることで関係が深まり、仕事につながる可能性も高まります。FacebookグループやPeatixで業界イベントを探し、積極的に参加するのも有効な方法です。

CHECK

・SNSのハッシュタグを活用してつながりを広げる
・元々あるつながりを活用・強化する
・定期的にコンタクトを取るなど、その後のつながりを意識する

人との出会い方・探し方

人脈の作り方が分かったところで、具体的にどこで出会うかについて深掘りします。

学びの場で人脈を広げる

スクールや講座に参加することで、同じ目標を持つ人とつながりやすく、人脈が広がるきっかけになります。実際に、『フリーランス白書 2024』によると、「Q.学びの効果として、得られたものをお答えください。」の問いに対し、約2割のフリーランスが「人脈が広がった」と答えました

また、「必要な業務に役立った」「受注できる案件の幅が広がった」と回答した人が約4割、「より高度な仕事ができた」と回答した人も約3割いるなど、人脈以外にもメリットを得ているフリーランスが多いことが分かります。

例えば、ノマドニアのような短期集中型プログラムでは、学びながら実際に仕事につながるネットワークを築けることもあります。オンラインスクールなら、テック系やクリエイティブ系の分野で、全国の受講生とつながるチャンスがあります。

コミュニティやビジネスネットワークを活用する

オンラインサロンや業界別の勉強会に参加すると、実際に仕事を発注する人や、フリーランス仲間とのつながりを築きやすくなります。Facebookコミュニティなどのプラットフォームでは、海外フリーランス向けの案件情報も共有されることがあり、新たな仕事の機会が広がることもあります。同業種同士のオフ会や交流会、セミナーに参加することで、情報収集ができ、同じ目的や共通点を持った参加者間でより深い関係を築きやすくなります。

また、異業種交流会に参加するのも1つの方法です。 同業の知り合いは多くても、異業種とのつながりが少ない人は意外と多いものです。例えば、Webエンジニアがサイトのコピーを書けるライターを探していたり、カメラマンがインタビューもできるライターを求めていたりと、異業種同士で仕事を紹介し合うこともあります。

過去のつながりを活かす

新しい人脈を作る前に、まずは元同僚や取引先に相談してみるのも有効な方法です。すでに仕事の実績がある関係性のため、営業のハードルが低く、スムーズに案件につながる可能性があります。また、業務委託先の企業との関係を維持することで、別の仕事を紹介してもらえるチャンスも広がるでしょう。

自分に合った出会い方を見つける

人脈づくりの方法は1つではありません。そのため、自分に合ったスタイルを選ぶことが大切です。人付き合いが苦手ならオンライン交流を中心に、フリーランス仲間を増やしたいならコワーキングスペースやノマドイベント、業界のつながりを広げたいなら、カンファレンスやMeetupイベントに参加するなど、目的に合った出会い方を意識すると効率的です。

CHECK

・学びの場やビジネスネットワークに参加する
・元同僚や取引先に相談する
・自分の目的に合った出会い方を意識する

良い人脈、悪い人脈の見極め方

ただがむしゃらに人脈づくりをするのではなく、良い人脈を築く必要があります。それでは、良い人脈、悪い人脈とは、どういったものを指すのでしょうか。

長期的に価値を生み出せる人脈

良い人脈とは、互いに信頼し合い、長期的に支え合える関係です。仕事の依頼や紹介だけでなく、悩みを相談できたり、新しい学びを得られることもあります。テイカーの姿勢で居続けるのではなく、相手に有益な情報を届けたり、仕事を紹介したり、お互いに価値を与え合える関係の構築も大切です。

一時的なつながりではなく、継続的に価値を共有できる関係こそ、仕事の機会を広げる人脈といえるでしょう。

何も生まれない人脈

名刺交換だけで終わる関係や、表面的なつながりにとどまる人脈は、結果的に何の価値も生まれません。また、「何となく付き合っているけど話が合わない」「関係を続ける意味が見いだせない」と感じる場合は、無理に維持する必要はありません。エネルギーを注ぐべき人脈を見極めることが大切です。

避けるべき人脈

出会いの中には、ビジネスの勧誘や保険の営業を目的とした人もいます。また、表面的なつながりは、仕事に直接結びつくことが少なく、時間を無駄にするリスクがあります。人脈づくりの場では、単なるつながりを増やすのではなく、「何を得たいか?」を明確にすることが重要です。「学びたい」「新しい仕事につなげたい」など、自分の目的を意識して関係を築くことが、人脈の質を高めるポイントになるでしょう。

CHECK

・良い人脈とは、互いに信頼し合い、長期的に支え合える関係
・表面的なつながりからは何も生まれない
・単なるつながりを増やすのではなく、目的を明確にすることが大事

人脈ができても仕事につながらない…どうすれば?

人脈ができても、実際に仕事につなげることができずに頭を抱えているフリーランスは少なくありません。築いた人脈を仕事につなげるには、一体どうしたらいいのでしょうか。

ただの「知り合い」ではなく「仕事を頼みたくなる人脈」を築く

人脈があっても、仕事につながらなければ意味がありません。「この人に仕事を頼みたい」と思われるためには、自分の知識やスキルを発信し続けることが大切です。営業が苦手な場合でも、ブログやSNSで実績やモチベーション、自分の価値を伝えることで、自然と仕事の依頼が来るようになります。

フリーランスで活動していることを周囲に伝える

「仕事を頼みたい」と思われるためには、まずは自分がフリーランスとして活動していることを知ってもらうことが重要です。人材を探している人に「アサインできる人物だ」と認識されるだけでも、仕事のチャンスが増えます。知人や取引先に「仕事を探してます」と軽く伝えるだけでも、意外な案件につながることがあります。

得意なことや実績を発信する

自分の得意なことを発信し、自分が何ができるのかを明確に伝えることで、仕事の依頼につながりやすくなります。実績がない場合、最初は「無料でやります」と告知またはDM営業を行い、実績を積んだ人もいるようです。実績のある発信を続けることで、信頼度が上がり、次の案件へとつながる可能性が広がります。自己分析を行い、自分の強みを知っておくことも重要です。

仕事につながる認知を広げる

https://twitter.com/moco191112/status/1886520062615462357?ref_src=twsrc%5Etfw”>February 3, 2025

フリーランスで安定した仕事を得るには、地道な発信や行動を積み重ねることが欠かせません。フリーランスでやっている活動をSNSで発信したり、積極的に声をかけたりすることで、時間差で仕事につながることもあります。多くの案件を獲得している人は、圧倒的に行動量が多いのも特徴です。

1回の仕事をリピート案件につなげる

1回の仕事をリピート案件につなげるためには、1つひとつの仕事に丁寧かつ迅速に取り組み、「仕事がしやすい」「クオリティが高い」と思ってもらうことが大切です。一定のクオリティを担保することはもちろん、レスや納品の速さもやる気やモチベーションのアピールや信頼につながります。

また、単発の仕事で終わらせず、「◯◯の案件があったらまたお願いします」と伝えることで、次の依頼につながる可能性が高まります。実際に、リピート案件を得ているフリーランスの多くが、クライアントとの関係を意識的に築いています。信頼関係を深めることで、継続案件や紹介につながることもあるでしょう。

CHECK

・自分がフリーランスとして活動していることを伝える
・自己分析を行い、自分が何ができるのかを明確に発信する
・丁寧かつ迅速な納品を心がけ、リピート案件につなげる

人脈を活かし、仕事につなげ、育てるコツ

安定しているフリーランスは、一体どのように人脈を活かし、継続的に受注しているのでしょうか。人脈は「築いたら目的達成」ではありません。築いた人脈を活かして仕事につなげ、育てるコツを押さえておきましょう。

行動し続ける

人脈を活かすには、ただ機会を待っているのではなく、自ら動き続けることが大切です。仕事を得る人は、出会いの場に足を運び、新しい人と積極的に関わっています。一度築いた人脈も、定期的なアクションがなければ、仕事につながるチャンスを逃してしまいます。

定期的に連絡を取る

仕事を誰かに依頼したいと思っていても、クライアント側が単にあなたの存在を忘れてしまっているだけのこともあります。定期的に連絡を取ることで、「この人に頼もう」と思い出してもらいやすくなります。「声をかけやすい人」でいることが、継続的な仕事につながるポイントです。

継続的にコミュニティに参加する

築いた人脈は、一度できたら終わりではなく、継続して関わり続けることで価値が生まれます。 コミュニティに定期的に顔を出し、関係を維持することで、新たな仕事のチャンスが広がります。関係を途絶えさせない努力が、長期的な人脈形成の鍵です。今ある人脈を大切にすることで、他のクライアントを紹介されるなど、新たな出会いが生まれる可能性があります。

CHECK

・受け身にならずに自ら動き続ける
・定期的に連絡を取り、「声をかけやすい人」でい続ける
・継続して関わり続け、長期的な人脈を形成する

人脈は築いたら終わりではなく、活かしてこそ意味がある

多くのフリーランスが人脈を活用して案件を獲得しており、フリーランスにとって人脈は仕事を得る大きな武器になります。

しかし、ただ知り合いを増やすだけでは十分ではありません。人脈ができても仕事につながらない場合は、「この人に頼みたい」と思われるような発信や行動が重要です。

また、一度つながった関係も、放置すれば自然と途切れてしまいます。人脈を意味あるものにするためにも、定期的な連絡や継続的な関わりを意識しながら、価値を提供し合える人脈を育てていきましょう。

Exit mobile version