その働き方、本当に得してる?年収で見る「フリーランス続行or撤退」ジャッジ
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フリ転編集部 山脇
大手新聞社で編集オペレーターを務めた後、奈良日日新聞社に入社し、制作課主任として編集業務全般(紙面組版をはじめ、記者・広告制作、デザイン業務など)に従事。休刊後はフリーランスとして本格的に活動を開始し、新聞組版のほか、地方紙やウェブメディアでの原稿執筆も行う。
フリーランスとして働く魅力は、時間や場所に縛られない自由な働き方や、努力次第で収入を上げられる可能性にあります。しかし、安定性や福利厚生の面では会社員に劣る部分もあるため、「このまま個人事業主を続けるべきか」と悩む方も少なくありません。特に年収によっては、会社員に戻った方が手取りが増える場合もあります。また、一定以上の収入になると法人化した方が税制上有利になることもあります。
この記事では、個人事業主として続けるべきか、会社員に戻るべきか、あるいは法人化すべきかの判断基準を年収を中心に解説します。ご自身のキャリアプランや生活スタイルに合わせた働き方を選ぶための参考にしてください。

フリーランスを続けるか否かは年収だけで判断せず、時間給・手取り額・社会的信用も考慮しましょう。年収500万円未満なら会社員復帰、800万円以上なら法人化を検討するタイミングです。働き方に唯一の正解はなく、自身のライフスタイルと将来目標に合わせて柔軟に選択することが成功へのカギです。
目次
フリーランスから会社員に戻った方がいい年収の目安
会社員の年代別平均年収と比較する
まず、会社員の平均年収を知ることで、自分のフリーランスとしての収入と比較検討することができます。以下の表は年代別の会社員平均年収の目安です。
年代 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
20代前半 | 約300万円 | 約270万円 |
20代後半 | 約380万円 | 約320万円 |
30代前半 | 約450万円 | 約350万円 |
30代後半 | 約520万円 | 約380万円 |
40代前半 | 約580万円 | 約400万円 |
40代後半 | 約620万円 | 約410万円 |
50代前半 | 約650万円 | 約420万円 |
50代後半 | 約630万円 | 約400万円 |
フリーランスの年収が同年代の会社員平均を下回っている場合は、会社員に戻ることを検討する価値があるかもしれません。特に独立して間もない場合や、安定した収入を得られていない場合は注意が必要です。
時間給で比較する・損切りの考え方
年収だけでなく、実際に働いている時間で割った「時間給」で比較することも重要です。フリーランスは仕事の獲得や経理などの業務も自分で行うため、実働時間が長くなりがちです。
例えば、年収500万円のフリーランスが週60時間(年間約3,000時間)働いているとすると、時給は約1,670円です。一方、同じ年収500万円の会社員が週40時間(年間約2,000時間)働いているとすると、時給は2,500円となります。
雇用形態 | 年収 | 年間労働時間 | 時間給 |
フリーランス | 500万円 | 3,000時間 | 約1,670円 |
会社員 | 500万円 | 2,000時間 | 約2,500円 |
時間給が会社員より著しく低い場合や、年々下がっている場合は「損切り」を考える時期かもしれません。特に独立後3年経っても収入が安定しない場合は、キャリアの見直しが必要です。
キャリアを積み直す・将来のリトライ視点
フリーランスとして行き詰まりを感じたら、一度会社員に戻ってキャリアを積み直すという選択肢もあります。特に以下のようなケースでは、会社員への転身を検討する価値があります:
- スキルの陳腐化を感じている
- 新しい分野にチャレンジしたい
- 人脈を広げたい
- 将来的に再度独立する基盤を作りたい
会社員として働くことで、組織の中でのスキルアップや、安定した収入を得ながら将来の独立に向けた準備をすることができます。多くの成功したフリーランスは、会社員としての経験を経てから独立しています。
「会社員→フリーランス→会社員→再度フリーランス」というキャリアパスも珍しくありません。年収300万円未満のフリーランスであれば、特に若い世代では一度会社員を経験することでキャリアの選択肢を広げられる可能性があります。
CHECK
・フリーランスの収入が同年代の会社員平均を下回る場合は見直しが必要
・年収だけでなく時間給でも比較することで働き方の効率を把握できる
・キャリアの停滞を感じたら会社員に戻ることで将来の再挑戦がしやすくなる
フリーランスから法人化した方がいい年収の目安
マイクロ法人の意義とメリット
個人事業主として一定以上の収入がある場合、法人化を検討する価値があります。小規模な法人(いわゆる「マイクロ法人」)には以下のようなメリットがあります:
- 税制上の優遇を受けられる可能性がある
- 社会的信用が高まる
- 事業継続性や資産保全の観点で有利
- 家族を役員や従業員として雇用できる
法人は個人と異なり、利益に対して段階的に法人税が課されるため、一定以上の所得がある場合は税負担が軽減される場合があります。また、法人として契約することで、より大きな案件や継続的な取引につながりやすくなることもあります。
法人化を検討すべき利益の目安
法人化を検討すべき年収の目安は以下の通りです。
年収(事業所得) | 法人化の検討 |
500万円未満 | 一般的には個人事業主のままが有利 |
500万円~800万円 | 生活スタイルにより判断(グレーゾーン) |
800万円~1,000万円 | 法人化を検討する時期 |
1,000万円以上 | 法人化が有利になるケースが多い |
ただし、これはあくまで目安であり、事業内容や経費の構成、生活スタイルなどによって最適な選択は変わります。特に年収500万円〜800万円のグレーゾーンでは、専門家に相談して判断することをおすすめします。
法人化による節税方法の基本
法人化した場合の主な節税方法には以下のようなものがあります:
- 給与と役員報酬の調整:利益を全て個人の所得とせず、法人内に一部を残すことで、所得税の累進課税を回避できます。
- 経費の計上:個人では認められにくい経費も、法人であれば事業に関連するものとして計上できる場合があります。
- 退職金制度の活用:将来的な退職金の積み立てを経費として計上できます。
- 家族の雇用:配偶者や子どもを役員や従業員として雇用し、所得分散を図ることができます。
例えば、年収1,200万円のフリーランスが法人化して役員報酬を600万円に設定し、残りを法人の利益とした場合、個人と法人で税負担が分散され、トータルの税負担が軽減される可能性があります。
CHECK
・所得が一定以上なら法人化で信用や節税効果を得られる
・年収800万円を超えたら法人化を本格的に検討するべき
・法人化により報酬調整や所得分散で税負担を抑えられる
フリーランスを続けるか否かの判断基準
可処分所得としての手取り比較
フリーランスの手取り金額は、会社員と比較して多いのか少ないのかを確認することが重要です。以下は年収別のフリーランスの手取りの目安です。
年収 | 経費率30%の場合の手取り | 経費率50%の場合の手取り |
300万円 | 約230万円 | 約260万円 |
400万円 | 約300万円 | 約340万円 |
500万円 | 約360万円 | 約410万円 |
600万円 | 約420万円 | 約480万円 |
700万円 | 約480万円 | 約550万円 |
800万円 | 約540万円 | 約620万円 |
900万円 | 約590万円 | 約680万円 |
1,000万円 | 約640万円 | 約740万円 |
1,500万円 | 約930万円 | 約1,070万円 |
2,000万円 | 約1,210万円 | 約1,380万円 |
※ この表は社会保険料や税金を概算で差し引いた目安であり、個人の状況によって実際の手取りは変動します。
手取り金額だけでなく、継続的に収入を得られるかというリスクも考慮する必要があります。会社員の場合、毎月安定した給与が得られますが、フリーランスは案件の有無によって収入が大きく変動する可能性があります。
可処分時間の比較
お金だけでなく「時間」の価値も重要な判断基準です。フリーランスの最大のメリットは時間の自由度が高いことですが、実際には仕事量が多くなりがちな面もあります。
項目 | 会社員 | フリーランス |
労働時間の自由度 | 低い(固定勤務が基本) | 高い(自分で調整可能) |
休暇取得の自由度 | 会社規定による | 自分で決められる |
勤務場所の自由度 | 会社による(テレワーク可の場合も) | 高い(場所を選ばない) |
仕事の選択自由度 | 低い(与えられる仕事が基本) | 高い(案件を選べる) |
労働時間の総量 | 一般的に固定(残業あり) | 案件量による(多くなりがち) |
子育てや介護などのライフイベントがある場合、時間の融通が利くフリーランスの方が適している場合もあります。しかし、自己管理能力が求められるため、働きすぎてしまうリスクもあります。
社会的信用と安定性
金融機関からの融資や住宅ローン、賃貸契約などにおいて、会社員は「安定した収入がある」と見なされるため、フリーランスよりも有利な場合が多いです。
項目 | 会社員 | フリーランス | 法人経営者 |
住宅ローン審査 | 有利 | やや不利 | 実績による |
クレジットカード審査 | 有利 | やや不利 | 実績による |
賃貸契約 | 有利 | やや不利 | 実績による |
資金調達 | 会社による | 個人信用のみ | 法人信用あり |
健康保険・年金 | 会社負担あり | 全額自己負担 | 法人負担可能 |
フリーランスとして3年以上の安定した収入実績があれば、これらの社会的信用面での不利な点は徐々に解消されていきます。また、法人化することで、個人事業主よりも社会的信用が高まる傾向があります。
働き方の自由度・責任・ストレス
最後に、精神的な側面も重要な判断基準です。自分の性格や価値観に合った働き方を選ぶことで、長期的に活躍できる可能性が高まります。
項目 | 会社員 | フリーランス |
仕事の責任範囲 | 担当業務のみ | すべて自己責任 |
人間関係ストレス | 社内人間関係あり | 基本的に少ない |
営業の必要性 | 少ない(職種による) | 必須(自分で仕事を獲得) |
収入の変動 | リスク低い(安定) | 高い(変動あり) |
スキルアップ機会 | 会社による研修あり | 自己投資が必要 |
将来の不安度 | 相対的に低い | 相対的に高い |
フリーランスは「自由」と引き換えに「責任」を負う働き方です。自分で決断し、結果に責任を持つことにやりがいを感じる方には向いています。一方、安定志向の強い方や、チームでの仕事に喜びを感じる方は会社員の方が向いているかもしれません。
CHECK
・フリーランスは手取りと収入の安定性を比較することが重要
・可処分時間や自由度と働きすぎのリスクを見極める必要がある
・社会的信用や精神面の特性も働き方の選択に影響する
個人事業主を続けるか、会社員に戻るか、あるいは法人化するかの判断は、単純に年収だけで決められるものではありません。この記事で解説した以下のポイントを総合的に考慮して、自分に最適な選択をしましょう。
- 年収500万円未満のフリーランスは、同年代の会社員平均と比較して検討する
- 年収800万円以上で安定している場合は、法人化を検討する価値がある
- 時間給換算で会社員より低い場合は、キャリアの見直しを考える
- 手取り収入だけでなく、時間の自由度や社会的信用も重要な判断基準
- 自分の性格や価値観に合った働き方を選ぶことが長期的な成功につながる

働き方の選択に「正解」はなく、ライフステージや目標によって最適な選択は変わります。現在の状況と将来の目標を見据えて、柔軟に働き方を変えていくことが大切です。どの働き方を選ぶにしても、自分のスキルを磨き続け、市場価値を高めていくことが、長期的な安定と成功につながる共通のカギとなるでしょう。