フリーランスの年金の手続き|国民年金への切り替え手続き・保険料・老後資産形成の方法まで解説

フリーランスの年金受給額は、会社員に比べて少なくなります。会社員は「厚生年金」と「国民年金」の二階建て構造で年金を受け取れますが、フリーランスは基本的に「国民年金」の一階部分のみの受け取りになるためです。このため、老後の生活資金確保のため年金だけに頼らず様々な制度の活用を検討する必要があります。

フリーランスは受け取れる年金が少なくなるため、計画的な資産形成が老後の安心につながります。フリーランスになった際に必要な年金関連の手続き及び、年金額を増やすための手法をみていきましょう。

フリーランスになったら国民年金に切り替え

会社員からフリーランスになった際には、会社が手続きを行ってくれていた厚生年金から、自分で国民年金に切り替える必要があります。

国民年金は法律で義務づけられているもので、未加入や未納の場合将来の老齢基礎年金が受け取れないだけでなく、病気や事故で働けなくなった場合の障害基礎年金や、万が一亡くなったときの遺族基礎年金も受け取れなくなるので早めの手続きが必要です。

国民年金加入の手続き方法・納付方法

厚生年金から国民年金への切り替えは、最寄りの市区町村の年金窓口で国民年金の第1号資格取得手続きを行います。その際、以下のものが必要になります。

  • 退職を証明する書類
  • 身分証明書
  • 年金手帳
  • 印鑑

手続きは、原則として退職から14日以内に行う必要があります。また、配偶者も扶養に入れる場合は、配偶者の分も国民年金への加入手続きが必要になります。

手続き後、納付書が送付されるので、金融機関やコンビニ、口座振替、クレジットカード払いなどで支払います。毎月の保険料は定額で年度により金額が定められています。

手続きをしないと年金額が減少する可能性も

国民年金は、加入期間に応じて将来の受給額が決まります。そのため、未加入や未納の期間があると老後の年金額が減ってしまう可能性があります。

さらに、一定期間以上の加入がないと、年金をまったく受け取れない場合もあります。フリーランスになったら、できるだけ早く市区町村で加入手続きを行い、保険料を確実に納めることが大切です。納め忘れがあった場合でも、2年以内であればさかのぼって納付することができます。

日本の公的年金は二階建て構造

日本の公的年金制度は「二階建て構造」と呼ばれ、すべての人が対象の「国民年金(1階部分)」と、会社員や公務員などが上乗せで加入する「厚生年金(2階部分)」から成り立っています。

1階部分の国民年金は、20歳以上60歳未満の全国民が対象で、保険料は定額、支給額も一定です。40年間納めた場合の満額は、2025年現在で年約80万円です。2階部分の厚生年金は、主に会社員や公務員が対象で、保険料と支給額は収入に応じて変動します。

国民全員が対象の国民年金

国民年金は日本の公的年金制度で、20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務があります。自営業者やフリーランス、学生、無職の人も対象で、2025年度の保険料は月17,510円です。

主に会社員が対象の厚生年金

厚生年金は、日本の公的年金制度の一部で、主に会社員や公務員が加入する年金です。保険料は給与に応じて決まり、勤務先と加入者が半分ずつ負担します。厚生年金の受給額は、加入期間中の平均標準報酬額と加入期間によって計算されるため、収入が多いほど将来の年金額も増えます。

フリーランスにおける厚生年金と国民年金の違い

フリーランスが加入する国民年金は、会社員とは異なる点がいくつかあります。給与天引きされないので自分で支払わなければならないことや、国民年金保険料を控除できることが挙げられます。

フリーランスの場合配偶者も保険料を支払う

フリーランス世帯では、配偶者も国民年金の保険料を自分で納める必要があります。ただし、配偶者が会社員や公務員の被扶養者であれば、第3号被保険者として保険料の支払いが免除されるケースもあります。

フリーランスは年金を控除対象にできる

フリーランスが支払う国民年金の保険料は、「社会保険料控除」の対象となり、所得税や住民税の計算時に所得から控除できます。

社会保険料控除は、納税者本人だけでなく、生計を同じくする配偶者の保険料も対象です。控除を受けるには、支払った保険料の領収書や納付証明書を確定申告で提出する必要があります。

CHECK

・フリーランスが加入する年金は国民年金
・厚生年金は会社員や公務員が対象
・フリーランスの国民年金保険料は社会保険料控除の対象になる

フリーランスは会社員よりも年金受給額が少ない

フリーランスは原則として国民年金のみに加入するため、受け取れるのは「老齢基礎年金」のみです。一方、会社員は国民年金に加えて厚生年金にも加入しており、「老齢厚生年金」が上乗せされるため、年金受給額が多くなります。また、フリーランスの保険料は定額ですが、会社員は給与に応じた保険料を納め、その額が将来の年金にも反映されます。これらの制度の違いにより、フリーランスの年金額は会社員より少なくなる傾向があります。

国民年金の月額保険料の計算

国民年金の月額保険料は、全国一律の定額制で、年ごとに国が決定します。最新の保険料は日本年金機構のホームページで確認できます。

国民年金保険料は月々17,510円

国民年金の保険料は、収入や職業に関係なく定額になっています。ただし、前納割引や口座振替割引など支払い方法や制度によって割引が適用されることがあります。

前納制度による割引も受けられる

国民年金の前納制度は、保険料を一定期間分まとめて前払いすることで割引を受けられる仕組みです。6ケ月、1年、2年分をまとめて支払うことができます。

たとえば、2年分をまとめて支払う「2年前納」では、毎月納付する場合と比べて2年間で約17,000円の割引が受けられます。前納を希望する場合は、事前に申出書の提出が必要で、納付書に記載された期限までに支払う必要があり、早めの手続きが大切です。

フリーランスの実際の支給年金額はいくら

フリーランスが受け取る公的年金は、原則国民年金のみです。保険料を40年間納めた場合の満額は年額816,000円(月額68,000円)ですが、納付期間が短かったり、保険料の免除があった場合は受給額が減少します。厚生年金にも加入している会社員と比べると年金額は少ないと言えます。

受給開始年齢は原則65歳から

フリーランスが受け取る公的年金(国民年金)は、原則として65歳から受給が開始されますが、60~75歳の間で受給開始時期を選ぶことができます。これを繰上げ受給・繰下げ受給と呼びます。

受給額と計算方法

フリーランスが受け取る国民年金は満額で年額816,000円(月額68,000円)です。これは20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)全て納付した場合の額で、納付月数が少ないと減額されます。

計算式:国民年金受給額 = 基準額(816,000円) × 保険料納付月数 ÷ 480

納付期間・繰上げ/繰下げ受給・厚生年金加入歴で金額が上下

フリーランスが受け取る年金額は、保険料を納めた期間や受給を始める年齢によって変わります。通常は65歳から受給開始ですが、60~64歳で受け取る「繰上げ受給」を選ぶと、1ヶ月ごとに0.4%ずつ減額され、最大で30%減額されます。

一方、受給開始を遅らせて66~75歳で受け取る「繰下げ受給」を選ぶと、1ヶ月ごとに0.7%増額され、最大84%増額となります。

CHECK

・国民年金の保険料は収入など関係なく定額制
・年金の受給開始年齢は原則65歳から
・繰上げ受給・繰下げ受給で受取金額が変動する

フリーランスができる将来もらえる年金額を増やす方法

フリーランスは会社員と違って厚生年金に加入できず、将来受け取れる年金額が少なくなる傾向があります。そのため、老後の生活資金が不足するリスクが高くなります。

安心した老後を迎えるためには、早い段階から年金以外の資産形成も含めた準備を始めることが大切です。今のうちから少しずつ備えることで、将来の経済的負担を軽減することができます。

国民年金基金で2階建て年金に

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金第1号被保険者が利用できる、公的な年金の上乗せ制度です。

老後の年金をより手厚くするための仕組みで、将来の備えとして有効です。加入は、全国国民年金基金の公式サイトから必要書類をダウンロードし、郵送で申し込みます。

付加年金で手軽に支給額を増やす

付加年金は、フリーランスや自営業者など国民年金第1号被保険者が利用できる、少額で効率的に年金を増やせる制度です。

月額400円を国民年金保険料に上乗せするだけで、「200円 × 納付月数」分の年金が一生涯にわたり加算されます。ただし、国民年金基金との併用はできないため注意が必要です。加入手続きは市区町村の窓口で行います。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で所得税控除をしつつ資産形成

iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の略で、自分で年金資金を積立て・運用し、老後に年金や一時金として受け取れる制度です。

特にフリーランスにとっては、将来の年金対策と資産形成を両立できる有効な手段です。掛金は全額が所得控除の対象となり、節税効果も期待できます。金融機関によって手数料や運用商品が異なるため、事前に比較・検討が大切です。加入は、選んだ金融機関で申し込みを行います。

小規模企業共済で退職金を積み立てつつ節税

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主が自分で退職金を積み立てながら節税できる、国が運営する共済制度です。

廃業や引退時に退職金を受け取ることができ、税制上も優遇されています。加入手続きは委託団体や金融機関の窓口で行います。長く続けるほどメリットが大きいため、早めの加入で老後の安心と節税効果を高めることができます。

個人年金保険で将来のリスクに備える

個人年金保険は、公的年金の上乗せを目的に保険会社が提供する保険商品です。自分で保険料を積み立て、一定期間後や老後に年金として受け取る仕組みで、老後の収入を安定させる役割があります。選ぶ際は、運用利回りや保障内容をよく比較することが重要です。

年金だけでなく今からさまざまな資産形成をしておく

会社員のように厚生年金や企業の退職金制度がなく、公的年金だけでは老後の生活費が不足するリスクが高いフリーランスにとって、資産形成は非常に重要です。

早いうちから貯蓄や投資、iDeCoや小規模企業共済などの制度を活用し、リスクを分散しながら着実に資産を築いていきましょう。

CHECK

・年金額を増やす方法はいくつかある
・公的制度だけでなく民間制度も活用する
・早いうちから老後を見据えた資産形成をすること

フリーランスにとって、年金だけに頼る老後資金計画はリスクが高く、貯蓄や投資、公的制度などをうまく活用して計画的に資産形成をすることが大切です。基礎となる国民年金はきちんと納付しつつ、リスク分散を心掛けながら賢く老後資産を作っておきましょう。

フリーランスが営業代行を使うのはアリ?案件獲得効率化の裏にある罠

フリーランスにとって、いかに案件を確保するかは非常に重要なポイントです。営業のノウハウを知らない方や人見知りをする方などにとって、新しい仕事を得るのは簡単ではありません。そこで今回は、フリーランスが活用できる営業代行について解説します。案件獲得で悩んでいる方や、営業に苦手意識がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

営業代行を利用するメリットは多々ありますが、まずは自分で営業活動にチャレンジしてください。フリーランスでいる限り「どうやって新規案件を獲るか」はずっとつきまとう問題で、どこまでも逃げられるものではありません。

ただし、営業代行を上手く利用して仕事が増えていけば、自分はどんな業界で求められるか、どんなポートフォリオが相手に刺さりやすいかなどわかります。時間をかけずに案件を獲得し、その中で営業ノウハウを身につけましょう。

フリーランスの営業代行とは

営業代行に依頼できる内容

営業代行とは、フリーランスが行っている営業活動を代わりに依頼できるサービスです。新規顧客を探し、アポを取って案件化するまでを一任できます。具体的には、以下の内容を任せられます。

■テレアポ営業

見込み客に電話をかけ、そこから商談の機会を作る営業です。テレアポは商談にいたるまで多くの電話をかけなくてはならず、話し方や提案の仕方にもノウハウがあります。 

■メール営業・フォーム営業

企業の問い合わせ先メールアドレスや、問い合わせフォームから連絡をします。フリーランス当人の魅力や強みを、文章で表現する必要があります。

■営業資料作成

ポートフォリオなどの営業資料を作成します。これまでの実績や自分の強みをまとめることで、新規顧客とスムーズに商談を進められます。

■商談同席・代行

フリーランス本人がクライアントと商談している場に同行して商談をサポートしたり、本人不在の中で案件について話を進めたりします。

営業代行の利用者が増えている

内閣府が発表した「政策課題分析シリ-ズ17日本のフリーランスについて―その規模や特徴、競業避止義務の状況や影響の分析―」によると、フリーランスは188万人、フリーランスに近い自営業主として働いている方は202万人います。

このように、今やフリーランスとして活動する方の人数は多いですが、全員が営業を得意としているわけではありません。アポ取りや商談に苦手意識を持っている方は、一定数存在します。フリーランス人口が増える分だけ、「営業が苦手だから営業代行を活用しよう」と考える方も増加しています。

CHECK

・営業代行では、テレアポや商談代行など幅広い業務を依頼できる
・営業代行を利用するフリーランスの数は増えてきている
 ※料金相場は、固定報酬が月額30~100万円、成果報酬が1成約あたり2~5万円ほど。

フリーランスの営業代行を利用するメリット

時間効率が上がる

営業を代行することで、フリーランスは自分自身で案件獲得のために時間を使う必要がなくなります。時間効率が上がり、業務に使える時間や休みの時間が増えるのは大きなメリットです。

特に、営業に苦手意識があるとアポを取るまでに多大な時間がかかったり、営業資料がずっと作り終わらなかったりということもあります。そういった営業を苦手としている方ほど、効率性アップを強く実感できるでしょう。

直案件を獲得できる

フリーランスはエージェントを通じて仕事を請け負うことが多いですが、この場合、手元に入ってくる料金からエージェントへの仲介手数料が引かれています。エージェントにもよりますが、報酬発生の度に20~30%ほど取られることが多いです。

営業代行は初期費用はかかりますが、その後は特に支払いが発生しません。直案件で取引することになるため、マージンを取られず手取りが上がります。

ノウハウがなくても仕事が増える

営業を成功させるためには、営業についてのノウハウが必要です。相手との交渉術やプレゼン資料の作り方など、勉強するには時間がかかります。

しかし、営業代行を利用すればそういった知見がなくても案件を獲得することが可能です。本業とは関係ない勉強に時間を取られず、ノウハウなしで案件を増やしていくことができます。

CHECK

・営業代行を活用することで時間効率がアップし、直案件を獲得できる
・営業に関するノウハウがなくても、案件を獲得できる
・営業経験がないフリーランスは、営業代行を使うことで得られるメリットが大きい

フリーランスの営業代行を利用するデメリット

自分の営業スキルは伸びない

フリーランスと営業は、切っても切れない関係です。企業のように営業部が仕事を取ってきてくれることもなければ、広報部経由で仕事が入ってくることもありません。だからこそ、少なからず営業に関する最低限の知識は必要です。

しかし、営業代行を使うとそういったノウハウは学べず、営業スキルが伸びません。自分の営業力を高めるため、依頼内容をアポイント獲得までに制限し、その後の営業活動は自分で行うというスタイルがおすすめです。

顧客と関係性が築きにくい

営業代行を使うと、顧客と直接コミュニケーションを取る時間が減ってしまいます。そのため、関係性が築きにくく「相手が何を求めているのか」「どんな部分を期待されているか」などが見えにくくなってしまう点がデメリットです。

営業代行の担当者から話を聞き、相手の特徴や考えなどをしっかり頭に入れることが大切です。単に仕事を取ってきてくれる人ではなく、仕事をする上でのパートナーとして代行担当者と密に連絡をとっていきましょう。

CHECK

・営業代行を使うと、自分の営業スキルはいつまでたっても成長しない
・営業代行を間に挟むことで、顧客との関係性が築きにくくなる
・まずは営業活動から逃げずに自分でチャレンジし、少しずつ代行サービスを使うとよい

おすすめの営業代行サービス5選

ディグロス

ディグロスには、テレアポ代行とインサイドセールスを依頼できます。1,600社の実績があり、2023年の東京商工リサーチによると、法人向けテレアポ代行において年間プロジェクト数とアポイント獲得数で1位を獲得しています。

新規アプローチは1万~8万円、ウェビナー参加者などの掘り起こしは8,000円~2万円です。

イクイップ

イクイップは、ビズコールというテレアポ代行サービスを提供している会社です。低価格が売りで、コール単位での料金のみ発生し、月額固定費用や通信通話料、成果報酬費用などは発生しません。

全国一律1コールあたり99円で、300件からという小さい単位で受け付けています。

アイランド・ブレイン

アイランド・ブレインはB to B専門の営業代行です。3,500社の導入実績があり、完全成果報酬型でサービスを提供しています。ベテランの営業マンがそろっており、初回訪問後の見込客フォローや、契約受注までの営業戦略全体まで、一貫して支援してもらえる点が特徴です。

価格は、商談1件につき18,000円です。月額固定費はかからず、顧客リストの作成は無料となっています。

StockSun

StockSunは、総合的な営業サポートを行うカリトルくんというサービスを提供しています。電話営業、フォーム営業、メール営業、手紙営業、飛び込み営業に対応しており、もし自分の担当者が思うような実績を出してくれない場合は、交代可能です。

月額固定で、毎月枠が発生するトライアルで申し込むと月額10万円となります。

ambient

ambientは、テレアポに強い営業代行会社です。テレアポの効果を最大化するため包括的な施策に対応しており、単に電話をかけるだけでなく、どんな相手にテレアポをすべきかといった点も相談できます。

価格は1件250円からで、初期費用はかかりません。最低ロッドは300件からと、フリーランスにもおすすめの規模感です。

CHECK

・まずは様々な営業代行企業のHPを見て、情報をチェックする
・自分にあった予算や営業方法の企業を選ぶ
・複数の企業を比較検討する

営業代行を利用する際の注意点

対応業務の範囲と得意分野をチェックする

営業代行は、企業によって業務範囲が異なります。テレアポに特化している企業や飛び込み営業も対応している企業、テレアポやメールなど総合的に実施している企業など様々です。まずは自分がどんな営業方法を依頼したいのか考え、依頼できる企業を選定しましょう。

また、企業によって得意分野は異なります。「テレアポ実績○○件」など、HPで大きく書かれている点が強みとなるため、自分の希望とマッチしているか考えてみてください。企業ごとの違いがよく分からなければ、総合的なアプローチをしている企業がおすすめです。

料金設定が見合う金額になっているか検討する

特にフリーランスを始めたばかりのころは、営業にあまり予算をかけられません。そのため、料金設定はしっかり確認してください。HPでは一見安く見えても、実は別途固定費や初期費用などが発生することがあります。

営業代行は、問い合わせをしてすぐ契約というわけではなくまず打ち合わせになることも多いので、その段階でトータルの費用を明確にしておきましょう。

CHECK

・どんな営業方法に対応してくれるのか範囲をリサーチする
・納得感のある料金設定の企業にする
・まずは複数の候補を出して、比較検討する

フリーランスにおすすめする営業代行の使い方

自分で営業した後に活用する

営業活動は、フリーランスにとって必要不可欠です。今後、営業代行を使って仕事が見つかり続けるという保証はありません。苦手意識があっても、基本的な営業スキルを身につけておくことは、自分の身を助けるはずです。

だからこそ、いきなり営業代行を使うのではなく、まずは自分で頑張ってみましょう。チャレンジすることで「ここが苦手だな」ということがわかったり、「意外とできるかも」と気づいたりするものです。

依頼する内容はアポイント獲得までにする

営業代行はいろいろな仕事を任せられますが、依頼するのは基本的にアポイント獲得までにしましょう。前述の通り、営業スキルはフリーランスにとって重要なポイントです。すべての工程を任せてしまうと、自分のスキルアップのチャンスがなくなります。

アポイントを取ってもらったら自分でクライアントと話し、相手のニーズを引き出したり、強みや実績などを上手くアピールしたりする練習をしましょう。初めは上手くいかずとも、回を重ねるごとに少しずつスキルアップしていきます。

営業資料のアウトソースはいつでも依頼するのは良い

営業代行に依頼するタスクの中で、資料作成についてはどんどん活用しましょう。資料の作成は時間がかかりますし、自分の中に正解の型がなければどんなに労力をかけても上手くいかないケースは多々あります。

資料作りはどんどん依頼して、自分なりの正解を見つけることが大切です。その上でアレンジを加えても良いですし、商談のサポートとして作ってもらったものをそのまま活用するのも良いでしょう。

営業能力のスキルアップから逃げない

前述の通り、営業能力はフリーランスにとって非常に重要です。「営業代行があるからいいや」とスキルアップからサボっていると、長期的に見て自分にとってデメリットとなります。

営業代行を上手く使いながら、「どんな風にクライアントと話せばよいか」「どうやってニーズを引き出すか」といったことを実践から学ぶようにしましょう。

CHECK

・営業活動から逃げず、まずは自分でチャレンジする
・アポイント獲得以降は自分で営業活動する
・営業資料の作成は、いつでも依頼する

今回は、フリーランスの営業代行について解説しました。営業代行の利用者は増えており、テレアポやメール営業など様々な施策を通じて多くのフリーランスが案件を獲得しています。時間効率を高めたり直案件を獲得できたりと多くのメリットがあります。

まずは自分で営業にトライしてみて、仕事が増えて手が回らなくなったり、自分でなかなか案件を獲得できなかったりしたタイミングでぜひ活用してみましょう。

フリーランスにインボイス制度が与える影響| 売上1000万円からの対策やインボイス登録のタイミング

インボイス制度は、2023年10月から開始された消費税の仕入税額控除に関する新制度で、免税事業者だったフリーランスに特に影響が大きいものです。インボイスに登録しない場合、取引先との関係に支障が出る可能性がある一方、登録すれば消費税の納税義務と事務負担が増すデメリットもあり、慎重な検討が求められます。

インボイスに登録するかどうか、登録するとしたらどのタイミングで登録するかなどは、取引先の状況、自身の業務内容や今後のビジネス展開などを総合的に考慮して決めましょう。

インボイス制度は全フリーランスに降りかかる問題

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、特に免税事業者だったフリーランスに大きなインパクトがあります。取引先が仕入税額控除を受けるには「インボイス(適格請求書)」が必要となり、フリーランスがその発行者かどうかが取引継続の判断材料になるためです。インボイスについて詳しくみていきましょう。

そもそもインボイス制度の仕組みとは

インボイス制度とは、2023年10月1日から始まった消費税の仕入税額控除に関する仕組みです。従来、取引の請求書や領収書があれば仕入税額控除が可能でしたが、制度開始後は「適格請求書(インボイス)」がなければ控除が認められなくなりました。インボイスを発行するためには税務署に「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。

インボイス制度の対象者の具体要件は

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の対象者は、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書発行事業者」として登録された事業者です。課税売上高が1,000万円を超える課税事業者が対象となります。

課税売上高1,000万円以下の事業者であっても、取引先が仕入税額控除を受けるために適格請求書の発行を求められることがあり、取引先との関係性を維持するために「適格請求書発行事業者」として登録をする場合もあります。

CHECK

・インボイス制度とは消費税の仕入税額控除の仕組み
・適格請求書(インボイス)の発行が必要になる
・課税事業者(適格請求書発行事業者)としての登録が必要

インボイス制度、フリーランスにどう影響する?

インボイス制度は、フリーランスが「免税事業者」のままでいるか、「課税事業者(適格請求書発行事業者)」になるかによって大きく変わります。

免税事業者の場合に仕事が減る可能性も

免税事業者のままでいる場合、切り替えの手続きをせずに今まで通りの請求書の発行を続ければ良いことになります。この場合、取引先が課税事業者で仕入税額控除を受けるために適格請求書を希望している場合に免税事業者であるあなたとの取引を減らしたり、見送ったりする可能性があります。

取引先が課税事業者の場合に値引きを求められる場合も

免税業者のまま課税事業者の取引先との取引を続けようとする場合、取引先が仕入税額控除できない消費税分を発注金額から差し引く形で値引きを要求してくるケースがあります。

適格請求書での受発注業務の対応が必要に

適格請求書発行事業者になった場合、記載要件を満たした適格請求書を発行し、その写しを保存する義務が生じます。適格請求書として認められるには、以下6つの記載事項が必要になります。

① 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号

② 取引年月日

③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および適用税率

⑤ 税率ごとに区分した消費税額等

⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要

課税事業者への変更で確定申告時の消費税の申告が必要に

免税事業者が新たに課税事業者となった場合、毎年3月15日までに提出する所得税の確定申告を行ったうえで消費税の申告も必要になります。消費税の確定申告書の提出期限は毎年3月31日までになっています。国税庁の「e-Tax」や会計ソフトで申告書を作成、提出します。

経費精算で領収書の振り分けが必要に

仕入れや経費の支払いにおいて、受け取った請求書や領収書が適格請求書であるかどうかを確認し、仕分けて経理処理を行う必要があります。

CHECK

・免税事業者か、課税事業者になるかで大きく変わる
・課税事業者になると会計処理が複雑になる
・免税事業者の場合に仕事が減る可能性も

インボイスの導入での価格変更や取引停止は下請法や独占禁止法に抵触

フリーランスが不当な扱いを受けないように保護する法律として、「下請法(フリーランスなどの下請事業者が、発注元から不当な扱いを受けないように保護する法律)」や「独占禁止法(取引先がフリーランスに対して不当に不利な条件を押しつけることを禁じる法律)」が定められています。企業側がインボイス制度への対応を理由として一方的に取引停止をしたり価格変更をすることは法律で禁止されています。

フリーランスのインボイス制度における選択肢・取るべき対応は?

フリーランスのインボイス制度における対応としては登録して適格請求書発行事業者となるか、登録しないで免税事業者でいるか、のどちらかです。それぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。

インボイス制度に登録して適格請求書発行事業者となる

メリット

① 取引先との継続的な関係を維持できる

インボイス請求書の発行により取引先が仕入税額控除を受けられるため、取引先との契約継続がスムーズになります。

② 取引単価の維持

取引先が控除を受けられなくなることもないので、取引単価も今まで通りで進められます。

③ 信頼性の向上

適格請求書発行事業者として登録されていることで、税務面での信頼性が取引先から評価されやすくなります。

デメリット

① 消費税の納税義務が発生

消費税の課税業者となることで消費税を納める必要があり、その分手取りが減少します。

② 会計・経理の負担が増える

インボイス対応請求書の発行手続きや、消費税の確定申告が追加で必要となり、帳簿管理や確定申告がより複雑になります。

③ 年間のコスト増加

納税に加えて、経理処理や申告対応にかかる時間的・金銭的コストが増える可能性があります。

インボイス制度に登録しないで免税事業者となる

メリット

① 消費税の納税義務がない

消費税は免税されるため支払い義務がなく、実質的に手取りが多くなります。

② 会計や税務の負担が軽い

消費税の申告が不要なので、帳簿や確定申告の手間が少なくなります。

デメリット

① 取引先にとって不利になる

インボイス対応請求書を発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けられず実質的なコスト増になります。

② 仕事や契約を断られる可能性

インボイス請求書に対応していない場合、取引先によっては取引終了となるなど案件数が減るリスクがあります。

③ 報酬が減額されることも

取引先が控除できない分、消費税分(10%)を報酬から差し引かれることがあるため、実質的な手取りが減る可能性があります。

フリーランスがインボイス発行事業者になるとどうなる?

インボイス発行事業者の登録は取引先との信頼性を高める一方で、消費税の納税義務と会計処理の複雑さが伴います。

売上1000万円以下でも消費税を払うことに

フリーランスがインボイス発行事業者になると、売上1,000万円以下でも消費税を払う必要が出てきます。適格請求書発行事業者となった場合、売上から消費税を納めなければならず、インボイス登録前と同じ売上だったとしても消費税分がマイナスとなります。

複雑な会計処理から税理士への依頼が必要なことに

インボイス発行事業者になると消費税の計算が加わり会計処理が複雑になります。売上に含まれる消費税と、仕入れにかかる消費税の差額を計算して納税する必要があるため、帳簿の管理や確定申告が難しく、税理士に依頼が必要になることが多いです。

売上1000万円以下のフリーランスはインボイス制度に登録すべき?

売上が1,000万円以下の免税事業者は、インボイス制度への登録義務はありません。ただし、取引先の要望や今後の事業拡大を見据えた場合、インボイスへの登録を検討したほうが良い場合もあります。登録すれば適格請求書を発行できますが、同時に消費税の納税義務も発生します。

インボイス制度の対応をとらない場合に考えられる末路

企業が仕入税額控除を受けるためにはインボイス請求書が必要であり、取引先の企業側としてはインボイス対応をしている業者との取引を優先します。インボイスに対応していない場合、値下げ交渉や契約の打ち切りなどのリスクがあります。特に広告、IT、デザイン業界で法人クライアントとの契約が多い場合、インボイス対応をするのが好ましいでしょう。

主要取引先の種別(課税事業者・免税事業者)で考えられる末路

取引先が課税事業者か免税事業者かによって、フリーランスがインボイス対応しない場合の影響は大きく異なります。課税事業者の場合は、インボイスに対応していない場合、取引が減る可能性があります。相手が免税事業者の場合は特に問題はありません。

インボイス制度の経過措置が終わるまで待つという選択肢

免税事業者との取引の際に、インボイス対応の請求書でなくても一定割合の仕入税額控除を受けられる措置があります。2026年9月末までは消費税の納税額を売上にかかる消費税額の2割に、2029年9月末までは5割に軽減することが可能です。制度の影響を見極めつつ、この期間に準備・判断するというのも選択肢の一つです。

CHECK

・インボイスに登録することで得られるメリットは大きい
・取引先が免税業者の場合はインボイスに登録しなくても問題ない
・経過措置制度期間中は様子を見てみるという選択肢もあり

インボイス制度の特例的な負担軽減措置とは?

インボイス制度が導入された2023年10月1日以降、免税事業者との取引がある課税事業者の急激な負担を軽減するため、6年間の仕入税額控除の経過措置が設けられています。これにより、一定の割合の仕入税額控除を受けることができます。

2割特例(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)

2割特例とは、インボイス制度に対応して課税事業者になった元・免税事業者の小規模事業者に対する、消費税納税額の軽減措置です。売上にかかる消費税額の2割だけを納税することとしています。2023年10月の制度開始と同時に導入され、2026年9月30日までの3年間限定で適用されています。

少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)

少額特例とは、一定規模以下の事業者(中小企業・個人事業主・フリーランスなど)に対する事務負担の軽減措置です。税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイス対応でなくても帳簿への記載のみで仕入税額控除が認められます。2029年9月30日までの6年間限定で適用されています。

返還インボイスの交付義務免除

返還インボイス交付義務免除の措置は、税込1万円未満の返品や値引きに対して、返還インボイスの交付を義務付けないというものです。この免除措置により、小規模な取引や少額の返品・値引きがあった場合、返還インボイスを発行する必要がなくなります。この措置には期限は定められていません。

CHECK

・インボイス制度には負担軽減措置がある
・少額特例は2029年9月30日まで
・フリーランスの税込1万円未満の課税仕入れも控除可能

結局、いつからインボイス制度に登録すべき?

フリーランスがインボイス制度に登録するタイミングは、事業の規模や取引先との関係、税務上のメリット・デメリットを考慮して慎重に決める必要があります。インボイス登録を遅らせることで負担を軽減できる場面もありますが、早期に登録することで得られるメリットもありますので慎重に検討しましょう。

年間売上が1000万円を超える見込みの場合

売上が1000万円を超える場合は課税事業者に当たるため、早めにインボイス発行事業者としての登録も済ませておくのがスムーズです。

取引先からインボイス制度への登録の督促がある場合

法人企業が取引先の場合、インボイスの登録を求められるケースが多いです。取引継続のためにはインボイスへの登録を前向きに進めましょう。

・インボイス制度に登録するべきタイミングを見極める

・年間売り上げが1000万円を超える場合は登録が必要

・取引先から登録を求められるケースもある

職種ごとのフリーランスのインボイス制度の登録のタイミング・判断軸は?

フリーランスがインボイス制度に登録するタイミングは決められているわけではありません。職種や働き方によって判断が異なり、適切なタイミングで対応することでビジネスチャンスを広げたり、クライアントからの信頼を高めたりするきっかけにもつながります。

Webデザイナーはクライアントワークが始まったら登録すべき

Webデザイナーの主な仕事は、Webサイトのデザインやバナー制作、ランディングページ制作などです。

クライアントワーク中心であるWebデザイナーにとって、取引先の多くが課税事業者である可能性が高く、インボイス制度への登録は取引の継続性や新規案件の獲得において大切な要素となります。インボイスに対応しているデザイナーのほうが選ばれやすいため、クライアントとの取引が始まったタイミングで登録をするのがおすすめです。

Webエンジニアは複数の取引が始まったら登録すべき

Webエンジニアは、Webアプリケーションの開発、システム構築、サーバー管理など幅広い業務を行い、仕事の多くは企業からの直接依頼やプロジェクト単位での参加となり、BtoB取引が中心です。

特定の企業と継続的な取引が始まったタイミングや、複数の企業から安定的に案件を受注できるようになった段階で、インボイス登録を具体的に検討しましょう。特に、月額での準委任契約や長期プロジェクトへの参画が決まった場合は、速やかな対応が望ましいです。

Webライターは作家業以外の仕事を受けるなら登録すべき

Webライターは個人のブログ運営やnoteなどでのコンテンツ販売、小説やエッセイ執筆などの作家業のほかに、企業のオウンドメディアの記事執筆、SEOコンテンツ作成、広告コピーライティングといった、明確に企業をクライアントとする仕事もあります。

企業クライアントとの取り引きをメインで行う場合は、インボイス登録を行うと良いです。

Webディレクター・マーケターは独立したら登録すべき

WebディレクターやWebマーケターは、クライアント企業のWeb戦略立案、プロジェクト管理、広告運用、SEO施策など企業のWeb活用を多岐にわたって支援する役割を担います。

多くの場合、ある程度の規模を持つ企業がメインターゲットとなり、取引先企業の多くが課税事業者となるため、フリーランスとして独立・開業するタイミングでインボイス登録を行うことが望ましいです。

具体的に、インボイス制度の登録はどう進める?

「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する方法はオンライン(e-Tax)と郵送でのどちらでも可能です。申請後、税務署から届く「登録番号」を請求書に記載し、会計ソフトを使っている場合はインボイス対応に設定を変更します。

e-Taxからの申請する場合

マイナンバーカードとインターネット環境があれば、自宅からオンラインで申請できます。

準備するもの

  • マイナンバーカード(またはID・パスワード方式)
  • ICカードリーダー または マイナンバー対応スマートフォン

手順

  • 国税庁のe-Taxサイトにアクセスし、ログインする
  • 「申請・届出」→「適格請求書発行事業者の登録申請」画面に進む
  • 画面の指示に従って申請書に入力する
  • 入力内容を確認し、電子署名を行って送信すれば完了

郵送での申請方法する場合

登録申請書を国税庁のウェブサイトからダウンロード・印刷する

必要事項を記入の上、管轄のインボイス登録センターへ郵送

不安や懸念点は政府の相談窓口に

フリーランスとしてインボイス制度に不安や疑問がある場合は、公的な相談窓口を活用できます。

インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)|国税庁

電話番号: 0120-205-553(通話料無料)

受付時間: 平日 9:00~17:00(土日祝・年末年始除く)

制度の概要や登録方法、免税事業者の対応、軽減措置についてなど、基本的な質問に丁寧に対応してくれます。

CHECK

・インボイス制度の登録判断軸は職種によっても異なる
・インボイス制度の登録はオンラインもしくは郵送で手続き可能
・迷ったら政府の相談窓口を活用しよう

インボイス制度はフリーランスに大きな影響を及ぼします。登録しない場合、取引の継続や報酬維持が難しくなるケースがあります。制度には経過措置(2割特例・少額特例)もあるためタイミングも合わせて慎重な判断を行いましょう。

案件獲得できない理由。フリーランス初心者が陥りがちな罠と抑えるべき営業のポイント

フリーランスとして活動を始める際、最初に立ちはだかる壁が「案件が獲得できない」という事態です。どんなにスキルがあっても、仕事がもらえなくては意味がありません。そこで今回は、特にフリーランス初心者の方に向けて、案件獲得の方法について解説します。今回紹介するポイントを押さえて、どんどん営業活動をしていきましょう。

フリーランス初心者にとって、案件獲得は大きな壁となります。しかし、フリーランスとして活動していく限り、営業活動はずっと必要です。まずは行動量を増やし、「どうすれば成功するか」「失敗するときの要因は何か」を考えてみてください。たくさん行動することで、自分なりの成功パターンがつかめるはずです。

フリーランスの案件獲得チャネル

マッチングサービス

マッチングサービスには多くの案件があるので、たくさんの選択肢の中から興味のある案件を探すことができます。契約の際は間にマッチング会社が入るため、報酬金額や納期、業務内容などのトラブルを防ぐことも可能です。

特に、クラウドソーシング型は初心者でも案件が獲りやすいので、まずは登録してみましょう。自分にできそうなものや興味があるものには、躊躇せずどんどん応募してください。

フリーランスエージェント

フリーランスエージェントが紹介してくれる案件は、単価が比較的高いものが多いです。自分のスキルや経験をベースに、エージェントが自分に合った案件を探して紹介してくれます。

単価交渉などはエージェントに任せられるため、自分は仕事に集中できる点がメリットです。ただし、マッチングサービスよりも初心者向けの案件が少なく、獲得までのハードルはやや高いと言えます。

フリーランスコミュニティ

フリーランスコミュニティに入ることで、案件を獲得するケースもあります。案件獲得はもちろん、上司や同僚がおらず孤独になりがちなフリーランスにとって、同じ立場の仲間ができることも大きいでしょう。

ただし、フリーランスコミュニティの中には案件紹介をメインとしておらず、単純に知り合いを増やしたりセミナーで知見を共有したりといったことを目的としている場合もあります。

どのコミュニティがどんな特徴を持っているか、事前に調べてから入会しましょう。

具体的なコミュニティの比較検討には、「フリーランスが所属しておくべきコミュニティをフリ転編集部が徹底調査。駆け出しフリーランスにもオススメなコミュニティを厳選して発表!」が役立ちます。

SNS発信

InstagramやXなど、SNSを通じて案件を獲得することもあります。情報発信をすることでブランディングにつながり、ポートフォリオを投稿して新規顧客に対するアピールもできます。

ただし、過激な発言は炎上のもととなるので、投稿する時には「誰も傷つかないか」「不快に感じる人はいないか」といった点に注意しましょう。

CHECK

・フリーランス初心者にはマッチングサービスがおすすめ
・エージェントを活用すると、ハードルはやや高いが高単価の案件を獲得しやすい
・フリーランスコミュニティに入ったり、SNSで発信したりすることで案件を得られることもある

フリーランス初心者が案件を獲得できない理由

営業スキルが低い

企業であれば営業部や広報部から仕事が来きますが、フリーランスの場合は自分で行動して案件を獲得しなくてはなりません。

そのため、営業スキルが低いといつまでも仕事ができないといったことにもなります。

まずは営業に慣れることが大切なので、SNSやブログで情報発信したり、営業メールを送ったり、求人サイトからたくさん応募したりと、行動量を増やしましょう。

少し営業したからすぐに案件が得られるということはないので、とにかく複数のチャネルでたくさんアクションを起こすことが重要です。具体的な方法は、「フリーランスが直案件を獲得する営業手法。案件獲得のチャネルの種類や直営業までのステップを解説」を参考にしてください。

ポートフォリオがない

ポートフォリオがなければ、クライアントは「このフリーランスは何ができるのか」「どんな強みがあるのか」などを知ることができません。

せっかく面談の時間をもらっても案件獲得につながりにくいので、まずはしっかりポートフォリオを作成しましょう。

何をどのように掲載すればいいか、仕事が来るポートフォリオのポイントが何かについては、「フリーランスの仕事がくるポートフォリオの要点。記載する項目と守るべき権利の範囲を解説」をご覧ください。

人脈が狭い

人脈が狭いと、そもそも営業をかける相手が少なくなります。フリーランスにとって人脈の広さは案件獲得の生命線とも言えるので、どんどん増やしていきましょう。

知人友人はもちろん、過去に仕事をしたクライアントやコミュニティで知り合った人、前職の同僚などどんな方からも仕事がもらえるチャンスはあります。

今自分が何をしているか、どんなスキルがあるかを多くの人にアピールしてください。

市場価値を理解していない

自分の持っているスキルはどのくらいの価値があるのか、市場価値を把握しましょう。例えばマッチングサービスを見てみると、どのような案件がいくらの報酬で募集されているかがわかります。

自分のサービスに対して法外に安い・高い価格を設定しないよう、自分の価値がどの程度なのか常に正しく判断してください。

CHECK

・営業スキルを高めどんどん営業活動を行う
・ポートフォリオを作って自分をしっかりアピールする
・人脈を広げて営業先を増やす

フリーランスが案件を獲得するコツ

ポートフォリオを作る

前述の通り、ポートフォリオは営業活動に役立ちます。クライアントに確認し、外に出してもよいものは自分の実績としてまとめ、誰でも閲覧できるようにしましょう。

内容が整理できれば、サービス化して提供するのも一手です。

エージェントとスキルを棚卸する

自分に何ができるか整理する時、他人の手を借りた方がよいこともあります。特に、エージェントは多くのフリーランスと接していて一定の知見があるので、一緒に棚卸しましょう。

これにより、新規顧客と会話する時、自分にできることをわかりやすく言語化して伝えられるようになります。

人脈を活かす

前述の通り、フリーランスにとって人脈は重要です。以前一緒に仕事をしたクライアントや、会社員時代の関係者に営業してみましょう。

まったくの初対面の人を相手にするより、あなたのスキルや人柄をわかってもらっている分、案件獲得の成功率は高まります。

クラウドソーシングを活用する

クラウドソーシングは低単価の案件も多いですが、実績作りには役立ちます。初心者向けなど自分にあった案件に応募し、経験を積むことで市場価値を高めましょう。

具体的には、Workship、CrowdWorks、Lancers、レバテックといったサービスが利用できます。それぞれの詳細は「クラウドソーシングとエージェント、どっちがおすすめ?フリーランスのための案件獲得サービスカオスマップ無料ダウンロード」をご覧ください。

CHECK

・ポートフォリオを作り自分のスキルや実績をアピールする
・スキルを棚卸してアピールポイントを整理する
・人脈やクラウドソーシングを通じて実績を作っていく

フリーランス初心者の案件獲得における注意点

複数サービスに登録する

案件獲得のためには、複数のサービスに登録することが重要です。一つに絞るメリットはほとんどないので、「マッチングサービス3つとエージェントサービス2つ」など、多くのサービスを利用して案件獲得のチャンスを広げましょう。

継続受注を狙う

毎回ゼロから案件を探すのは、非効率です。一度仕事をした相手に「またこの人にお願いしたい」と思ってもらい、継続受注をできるようにしましょう。

そのためには、「レギュレーションを守る」「納期通りに納品する」といった当たり前のポイントはもちろん、「求められたレベルより上のクオリティで提出する」「連絡はすぐに返す」「予定より早めに仕事を仕上げる」といったプラスアルファの努力が必要です。

スケジュールを管理する

案件に応募してから実際に作業が始まるまでは、時間がかかることもあります。一つ決まったからといって安心するのではなく、常に複数の案件を抱えるように心がけてください。

ただし、作業時間が短くなると仕事のクオリティが下がってしまうものです。しっかりスケジュール管理をして、無理のない時間配分で進めていきましょう。

CHECK

・案件獲得のチャンスを広げるために、複数のサービスを利用する
・クオリティの高い仕事をして、継続受注を狙う
・無理のないよう、スケジュールをしっかり管理する

フリーランス初心者の方は、まず複数のマッチングサービスとエージェントサービスに登録してください。

コミュニティにも入り、人脈を広げて仕事がもらえる先を増やしましょう。同時に、ポートフォリオを作ることも重要です。

話を聞いてもらうチャンスを得た時に案件獲得につなげられるよう、自分の実績やスキルをアピールできる材料として活用しましょう。

メールテンプレあり!あなたの営業メールでは案件が獲れない?クライアントに刺さる書き方教室

フリーランスとして活動する上で営業活動は非常に重要ですが、具体的にどうすればよいかわからないという方は多いです。そこで今回は、フリーランスの営業メールについて解説します。営業メールには何をどのように書けばよいのか、注意点は何かなど解説するので、これから営業メールを作る方はぜひ参考にしてください。

フリーランスにとって、営業メールで案件を獲れるか否かは非常に重要です。「メールのひとつやふたつ、書けなくても問題ないだろう」と甘く見ていると、売上が伸びず生活が苦しくなってしまう可能性もあります。クライアントに刺さる営業メールを作るのは、決して難しいことではありません。今回紹介したポイントの一つひとつを丁寧におさえて、しっかり仕事を得続けられるフリーランスになりましょう。

営業メールの重要性

フリーランスは、企業のように営業部や広報部があるわけではなく、自分自身で案件を見つけなくてはなりません。そのため、自分を売り込む手段を多く持ち、様々な面から営業することが重要です。営業メールは、その一つとしておすすめの手段です。

また、会話よりも文面でコミュニケーションを取った方が、自分のスキルや強みを整理して伝えられます。相手にわかりやすく情報を届けられるため、「こういう点が得意なら、この課題を解決してくれるかもしれない」と自分に対するイメージを持ってもらいやすいという点でも、営業メールは有効です。

営業メールの作り方

営業メールの送り先の選定方法

営業メールは、企業のコーポレートページにある問い合わせ先に送りましょう。メールアドレスが載っている場合はそちらに送信し、問い合わせフォームがある場合はそこから送信してください。協業案内などの問い合わせ窓口があれば、そこから問い合わせましょう。

また、Wantedlyなどの求人サイトも活用できます。どんな企業がどんな求人を出しているかチェックし、リスト化して整理しましょう。そこで、自分のスキルや強みがマッチしそうな企業を選定して、メールを送ってください。

営業メールの設計方法

メールを作る際、まず件名にこだわりましょう。ありきたりな内容では埋もれてしまいますし、件名がなければ開いてもらえることはほぼありません。誰が何の目的で送ったかが一目でわかるようにすることで、内容を見てもらえる確率が上がります。

内容で気を付けるべきポイントは、7つあります。多いと感じるかもしれませんが、案件獲得につなげるため以下に気を付けましょう。

自分のHPを添える

自分のポートフォリオやスキル一覧をまとめたHPのURLを載せましょう。メールに実績などをあまりに長々と書くと最後まで読んでもらえなくなるため、メールには一部を記載して詳しくはHPを見てもらうという方法がベターです。

相手企業にどのように役に立つかを書く

相手にとってどんなメリットがあるかを明確にしましょう。単に「SEOライティングが得意です」と書くのではなく、「御社の○○というサービスを○○の顧客層に知ってもらうため、SEO記事を作成します」といったところまで踏み込んでください。

実名と顔を出し、拠点を明らかにする

自分が営業メールを受け取る側だとした時、どこの誰だかわからない人に仕事を頼もうとは思いませんよね。営業メールでは必ず自分の名前と活動拠点を書き、写真も載せるようにしましょう。

どういったスキルがあるかを具体的に書く

「何でもできます」といった曖昧な文章は、まったくアピールになりません。例えばイラストレーターであれば、「ポップな雰囲気のイラストが得意です。特に子供向けサービスのイラストの経験が豊富で、小学生を対象とした○○という商品のイラストを制作しました」といったように、具体的に書きましょう。

料金について記載する

あなたのスキルや強みを気に入ってもらっても、料金がわからなければクライアントは検討できません。目安でよいので、だいたいの価格をメールに記載してください。

ポートフォリオを載せる

あなたの強みやスキルをわかってもらうには、ポートフォリオを見てもらうのが一番です。過去の実績の中で特に自信があるものや、相手のニーズと近そうなものをメールに添付しましょう。

週の稼働時間を記載する

具体的にどのくらい働けるのか、平日・土日の何時ごろに稼働できるかを記載しましょう。ここまで具体的に書くことで、相手は自分に仕事を任せるイメージができるようになります。連絡がつきやすい時間帯も書けるならベストでしょう。

CHECK

・まずは企業のコーポレートサイトや求人サイトを見て、営業メールの送り先を選定
・営業メールにはわかりやすい件名を付け、自分のスキルが具体的にどのように役立つか記載
・料金や稼働時間などをのせることで、相手が具体的に検討できるように

具体的な状況別の営業メールの文面例

募集がない企業への新規営業は、先ほど解説した「自分のHPを紹介する」「稼働時間や料金を明確にする」といったポイントが重要です。あなたのことを知らない方にも「仕事を頼んでみようかな」と思ってもらえるよう、丁寧に情報をのせましょう。

募集案件に対する応募・提案への営業メールは、募集している内容に対して自分が十分なスキルを持っていることを明らかにしましょう。具体的な実績をもとにアピールできるとベターです。

既存クライアントへの単価交渉については、メール一通で話しが終わるとは限りません。メールをきっかけに話し合いの場が設けられ、直接交渉するケースも多いでしょう。そのため、まずはメールで自分の意思を明確にし、ミーティングの場を設けるようにする流れがおすすめです。

募集がない企業への新規営業

件名:HP制作におけるライティング協力のご提案/山田太郎
本文
初めまして、東京を拠点にフリーランスライターとして活動している山田太郎と申します。突然のメール失礼いたします。
今回、貴社のHP制作事業において、ライティング面でぜひお手伝いさせていただきたくご連絡いたしました。

私はこれまで30社以上の企業HP制作に携わっており、キャッチコピーの制作やクライアントへのインタビューをもとにしたライティングなどを担当してきました。

具体的には、下記の私のHPに実績を記載しております。(URL)

現在、最大で週4日・8時間での稼働が可能です。
ボリュームや期日、担当範囲にもよりますが、1サイトあたり5万円から承っております。

もしお時間がございましたら、ぜひ一度対面やオンラインでのお打ち合わせをさせていただけませんでしょうか。
以下の日程などご都合いかがでしょうか?
◯月◯日(月)◯時~◯時
◯月◯日(火)◯時~◯時
◯月◯日(水)◯時~◯時
◯月◯日(木)◯時~◯時
◯月◯日(金)◯時~◯時

ご多用な恐れ入りますが、どうぞ、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
ーーーーーーー
山田太郎
mail:~~~@~~~
tel:080~~~~
HP:URLーーーーーーー
ーーーーーーー

募集案件に対する応募・提案

件名:HPイラスト案件への応募/山田太郎
本文
初めまして、関西を中心にイラストレーターとして活動している山田太郎と申します。
求人サイト○○にて、HPに掲載するイラストの募集を拝見し、メールさせていただきました。

私は2020年からイラストレーターとして活動しており、これまで50社以上の案件に携わってまいりました。
一例として、下記のサイトに掲載されているイラストを制作しています。
・(URL)
・(URL)
・(URL)

今回の募集にあった「~~~」「~~~」という条件について、すぐにお役立ちできるスキルを持っております。
稼働時間や料金につきましても、募集案内にあった通りの条件で承れます。

一度詳しいお話を伺う機会をいただけませんでしょうか。
もしお時間がございましたら、ぜひ一度対面やオンラインでのお打ち合わせをさせていただけませんでしょうか。
以下の日程などご都合いかがでしょうか?
◯月◯日(月)◯時~◯時
◯月◯日(火)◯時~◯時
◯月◯日(水)◯時~◯時
◯月◯日(木)◯時~◯時
◯月◯日(金)◯時~◯時

ご多用な恐れ入りますが、どうぞ、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
ーーーーーーー
山田太郎
mail:~~~@~~~
tel:080~~~~
HP:URL
ーーーーーーー

既存クライアントへの単価交渉

件名:業務内容増加に伴う単価についてのご相談/山田太郎
本文
〇〇株式会社○○様
お世話になっております。山田太郎です。
いつもご依頼をいただき、誠にありがとうございます。

先日、追加の業務内容につきまして伺いました。
本件、ぜひ尽力させていただければと考えています。

一方で、業務内容の変更により、稼働時間が増加が見込まれ、また求められるスキルも高度化することから、
大変恐れ入りますが、単価の見直しをご検討いただけないかと思いメールをさせていただきました。

これまで同様、品質を担保するためにもご検討いただけますと幸いです。

詳しいご提案内容について、ぜひミーティングのお時間を頂ければ嬉しく存じます。
もしお時間がございましたら、ぜひ一度対面やオンラインでのお打ち合わせをさせていただけませんでしょうか。

以下の日程などご都合いかがでしょうか?
◯月◯日(月)◯時~◯時
◯月◯日(火)◯時~◯時
◯月◯日(水)◯時~◯時
◯月◯日(木)◯時~◯時
◯月◯日(金)◯時~◯時

ご多用な恐れ入りますが、どうぞ、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
ーーーーーーー
山田太郎
mail:~~~@~~~
tel:080~~~~
HP:URL
ーーーーーーー

CHECK

・自分のスキルや実績のわかるポートフォリオをのせる
・稼働時間や料金について明確にする
・対面やオンラインミーティングなどを提案する

営業メールの注意点とマナー

営業メールを送信する時間帯を考える

営業メールは、中旬の火曜から木曜の営業時間内がおすすめです。月初や月末は〆作業などで忙しいことが多く、月曜と金曜もあわただしくしているケースが少なくありません。

また、土日に送ってしまうと週明けには他のメールに埋もれてしまうこともあるので、気を付けましょう。

結論から伝える

丁寧なメールにしようと思い、挨拶などが長くなってしまうミスはよくあります。それでは本題に入る前に削除されてしまうので、結論から入るようにしましょう。相手がメールを読み始めて10秒以内に要件がわかることがベストです。

フリーメールは避ける

フリーメールは自動的に迷惑メールに振り分けられる可能性があります。わざわざ迷惑メールをチェックする方はほとんどおらず、どんなに良いメールを送っても、読んでもらえなければ意味がありません。しっかりと、独自ドメインを利用しましょう。

レイアウトに気を付ける

ぱっと見て読みにくいメールは、読んでもらえないと考えてください。適切な場所で改行を入れること、行間が広すぎず狭すぎないことなど、レイアウトに気を付けるだけで読んでもらえる可能性は高まります。

また、長すぎるメールも相手に悪印象なので気を付けましょう。

テンプレの一斉送信は避ける

どの企業にも対応できる、テンプレ的なメールは送らないでください。読んだ方も「一斉送信しているだろう」とわかってしまいますし、具体的なことが書けないので相手に刺さることはありません。

面倒でも、1社ごとに分析して「どんな内容が魅力的に見えるか」を考えてください。

CHECK

・中旬の火曜から木曜の営業時間に送る
・結論から書き、何のメールかわかりやすくする
・改行などレイアウトに気を付ける

営業メールは、書いていくうちに磨かれていくものです。完璧なメールを作ろうと思っているといつまでも送れないので、「とにかく動く」を意識しましょう。

まずは送信してみて、どんな反応が返ってくるかを確かめてください。

「この内容は入れた方がいい」「こういうポートフォリオは見てもらいやすい」など、送付数や成果をメモしておくと、より効率的に改善ができるためおすすめです。

知らないと損する?電子帳簿保存法の保存義務、フリーランスが取るべき対応とは

2023年10月にはインボイス制度の開始、2024年1月には電子帳簿保存法の義務化、そして2024年10月にはフリーランス新法の施行など、ここ数年、フリーランスを取り巻く制度が次々と整備されています。

こうした目まぐるしい変化は、自由な働き方を支える一方で、各制度への理解や実務対応をフリーランスにも強く求めるシーンも増えています。特に「電子取引データの保存義務」は、対応が遅れがちにもかかわらず、見落とせない義務の1つです。

この記事では、「電子取引における保存ってなに?」「結局、自分に何が必要なの?」といった疑問に答えながら、フリーランスがやるべきことや対応のコツについて、わかりやすく解説します。

電子取引におけるデータ保存義務って何?

電子取引における「データ保存義務」とは、請求書や領収書などをメールやWebでやりとりした場合に、そのデータを電子のまま保存しなければならないというルールです。これは、2022年の電子帳簿保存法改正により義務化され、2024年1月から本格的に運用が始まりました。

紙に印刷して保存する方法は認められないため、対象者はデータのまま保存する必要があります。取引の電子化が進む中で、税務調査への対応を効率化する目的で制定されました。データ保存義務に違反した場合、罰則もあります

ここでは、フリーランスならおさえておきたい、データ保存義務の対象者や違反した場合の罰則について見ていきましょう。

データ保存義務はフリーランスも対象?

請求書や領収書をメールやWebで受け取っているなら、フリーランスでも電子取引の保存義務が発生します。「個人だから関係ない」と思っていると、実は対象だった…なんてケースも少なくありません。

違反すると、青色申告の取り消しや加算税などのリスクもあるため、油断は禁物です。まずは、自分が対象かどうかをしっかり確認しておきましょう。

データ保存義務に違反するとどうなる?

電子取引データの保存を怠ると、税務署に注意されるどころでは済みません。最悪の場合、青色申告の取消や経費の否認、重加算税の対象になるなど、フリーランスにとって大きな痛手となる可能性があります。

たとえば、データ保存が不十分だと、「帳簿が信頼できない」と判断され、推計課税の対象になります。経費計上も認められず、実際より多くの税金を支払うハメになるケースもあるでしょう。

さらに、悪質だとみなされれば、重加算税(最大50%上乗せ)の適用もあります。つまり、保存ミス1つが数十万円〜百万円単位の損失につながるリスクがあるということです。

「データ保存ぐらい、あとでやればいいや」と放置してしまうと、税務調査で一気に不利になるかもしれません。

そのため、日頃から適切に保存・管理することが、自分の身を守る一番の対策になります。

CHECK

・フリーランスも対象になる可能性がある
・違反すると、重い税務リスクにつながる
・日頃から適切に保存・管理する必要がある

データ保存義務の実態は?

電子帳簿保存法の義務化により、多くの企業や個人が対応を進めていますが、現場では「手間が増えた」「複雑で分かりにくい」といった声も少なくありません。

ここでは、実際の対応状況や現場のリアルな声をもとに、データ保存義務の「今」を見ていきましょう。

多くの人や企業が負担を感じている

電子帳簿保存法の義務化により、多くの企業が対応を進める一方で、実務面での負担感も無視できません。たとえば、リコージャパンの調査によると、全国の中堅・中小企業のうち86%がすでに対応を進めているものの、93%が「業務効率化が必要」と回答しています

また、Sansan株式会社の調査では、経理担当者は月4.5時間、非経理担当者も月4.1時間の業務増という結果が出ており、導入後の作業負担が深刻化していることがわかります。

実際、ネットでも「電子取引のチェックが4つも増えて地獄のようだ」「システムに自動取り込みしてほしい」といった声が散見されており、現場では対応して終わりでは済まない状況です。

フリーランスの場合も、請求書や領収書のやり取りがメールやチャットなどで完結するケースが多いため、対象になっている可能性は十分にあります。

そのため、対応を後回しにするのではなく、「どのようなデータを、どのように保存すればいいか」を今のうちに確認しておくことが大切です。

参照:
電帳法対応に関する調査を実施、93%の企業が「業務効率化が必要」と回答 | リコーグループ 企業・IR | リコー

Sansan、「電子帳簿保存法に関する実態調査」を実施〜電帳法対応で、経理担当者の業務が一人あたり月4.5時間増加。紙と電子の混在による業務負担増が明らかに〜 | Sansan株式会社

CHECK

・義務化が進む一方で、現場では作業負担が増加
・多くの人や企業が業務効率化の必要性を感じているのが現状
・対応を後回しにせず、今のうちに準備を始めることが大切

フリーランスは具体的に何をすればいい?

電子取引データの保存義務があるとわかっても、実際に何をすればいいのか分からないというフリーランスもいるのではないでしょうか。

ここでは、フリーランスが最低限やっておくべき対応について、簡潔に紹介します。

より詳細な実践方法については、以下の記事も参考にしてください。

インボイス登録した課税事業者の場合は?

インボイス制度に登録した課税事業者の場合、電子取引データの保存義務に加えて、保存対象となるデータの範囲や形式にも注意が必要です。

たとえば、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)をデータで保存し、その形式や検索性などが要件を満たしている必要があります。

保存すべきデータって?

電子帳簿保存法では、請求書や領収書、契約書、見積書など、従来紙で保存していた書類に相当する電子データを保存する必要があります。

具体的には、メールやWeb上で受け取った請求書・領収書、ECサイトでの購入履歴、クラウドサービスからのダウンロードデータなどが該当します。

これらのデータは、受け取った場合だけでなく、送信した場合も保存対象となります。保存形式は問いません。PDFやスクリーンショットでも問題ないでしょう。

参照:電子取引データ|国税庁

保存方法は?どうやってやればいいの?

電子取引データは、改ざん防止のためのいずれかの措置を講じて保存する必要があります。具体的には、以下の方法のいずれかで対応可能です。

  • タイムスタンプを付けて保存する
  • 訂正・削除の履歴が残るクラウドサービスなどで保存する
  • 改ざん防止に関する事務処理規程を整備し、その手順に沿って保存する

また、「日付・金額・取引先」で検索できるようにしておくことも求められています。専用システムがなくても、ファイル名を統一ルールで付ける、Excelで索引簿を作成するといった方法で対応可能です。

税務調査などでデータを提示できるよう、モニターやプリンターの準備も必要です。対応を後回しにせず、今のうちに保存方法を見直しておきましょう。

参照:電子取引データ|国税庁

どんなツールが便利?選び方は?

電子取引データの保存には、改ざん防止や検索性の確保といった要件を満たす必要があります。これらの条件をクリアするためには、電子帳簿保存法に対応したクラウド会計ソフトや請求書管理ツールを活用するのが有効です。

たとえば、freeeやマネーフォワードなどの主要な会計ソフトは、タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の保存、検索機能の確保に対応しています。導入にあたっては、ツールが「電子帳簿保存法対応」と明記されているかを確認することが重要です。

対応の手順としては、まず自社の取引形式を整理し、必要な保存機能を明確にしたうえで、対応可能なツールを選定する流れが基本となります。複数のサービスを併用している場合は、保存場所やファイル名のルールを統一することで、業務の属人化や検索漏れのリスクを防ぐことが可能です。

CHECK

・対象となる保存データを把握する
・正しい保存方法を選定する
・自分に合ったツールを導入する

フリーランスが保存時に気をつけるべきことは?

電子取引データの保存には、いくつかのルールや注意点があります。ここでは、フリーランスがとくに意識すべきポイントを3つに分けて紹介します。

改ざん防止の要件

電子取引データは、タイムスタンプを付けて保存するか、訂正・削除の履歴が残るシステムで保存する必要があります。事務処理規程を作成・運用する方法でも対応可能です。

検索性の確保

保存したデータは「日付・金額・取引先」で検索できるようにしておくことが求められます。前述したクラウド会計ソフトなど、対応機能を備えたツールを活用すると便利です。

紙での保存との違い

電子で受け取ったデータを、印刷して保存するだけではNGです。紙で受け取った書類は、紙保存でも問題ありませんが、スキャンして電子保存する方法も認められる場合があります。

CHECK

・タイムスタンプや履歴機能で改ざん防止に対応する
・「日付・金額・取引先」で検索できるように整理する
・電子で受け取ったものは電子のまま保存する必要がある

めんどくさいけど…やらなかったらどうなる?

電子取引データの保存は、「やっていないからすぐに罰則を受ける」という性質のものではありません。しかし、対応を後回しにしていたことが、税務調査の場面で思わぬリスクとして跳ね返ってくる可能性があります。

ここでは、保存義務を行った際の税務調査・経費否認リスクなどについて解説します。

税務調査で「帳簿の信頼性」が疑われる

税務調査では、帳簿や領収書、請求書の保存状況が厳しくチェックされます。

とくに、電子取引に関するデータについては、「紙に印刷して保管しているだけ」「改ざん防止措置が取られていない」といった状態では、帳簿の信頼性に欠けると判断されるリスクがあります。

このように判断された場合、調査官から「本来の取引内容が正確に記録されていない」とされ、経費としての否認や推計課税といった不利益な対応につながる可能性があるでしょう。

経費として否認されるケースもある

電子取引に関する保存要件を満たしていないと、たとえ実際に事業のために支出した費用であっても、「証拠不十分」として経費として認められないケースがあります

たとえば、クラウドサービスで取得した請求書をPDFで保存していたものの、タイムスタンプも履歴も残っていなかった場合、「このデータは改ざんされていないと証明できない」と判断され、経費から除外されるおそれがあります

特にフリーランスの場合、1つひとつの経費が事業利益に直結するため、少額の否認でも税額に大きな影響が出る可能性があるでしょう。

帳簿全体の否認=加算税リスクの引き金になる可能性がある

一部のデータ保存の不備がきっかけとなり、帳簿全体の信頼性が疑われると、さらに大きな税務リスクが発生します。

たとえば、保存が不十分な取引が複数見つかった場合、「意図的な隠ぺいまたは仮装」とみなされ、重加算税(本来の税額に最大50%上乗せ)の対象になる可能性もあります

つまり、保存方法1つのミスが、帳簿全体の信頼を揺るがす要因となりかねないため、注意しましょう。

CHECK

・帳簿の信頼性が疑われる可能性がある
・経費として否認される恐れがある
・帳簿全体が加算税対象になるリスクがある

めんどうな保管、ちょっとでもラクにするには?

電子帳簿保存法への対応が求められるなか、どのようにすれば効率よく保存できるか、頭を悩ませているフリーランスも少なくありません。「すべてデータで残せばいいのでは?」と考え、領収書や請求書をまるごとデータ管理するフリーランスも見られます。

こうしたデータ管理の手段としては、会計ソフトの活用が代表的です。たとえば、会計ソフトに連携することで、クラウド上に取引情報を一元管理し、紙での管理を最小限に抑えるケースなどがその一例として挙げられます。

すべての取引を電子化する必要はありませんが、「データで受け取れるものは電子で受け取り、紙の場合もすぐにスキャンする」といった対応を意識することで、保存漏れや手続き忘れのリスクを大幅に減らすことができます。

ここでは、保存をスムーズにするための工夫について、具体的に見ていきましょう。

そもそも電子化された状態で受け取る

保存の手間を減らすには、受け取る時点ですでにデータ化されていることが重要なポイントになります。

たとえば、取引先から届く請求書や契約書がPDFなどの形式で送られてくれば、社内でスキャンや変換をする必要もなく、そのまま保存要件に沿った対応がしやすくなります。

もちろん、すべての取引が電子化されている必要はありません。郵送などで届いた紙の書類でも、受領後すぐにスキャンしてデータとして保管すれば、対応可能です。

受け取る書類をなるべく電子化しておくことで、支払い漏れや保存漏れといった業務上のリスクも最小限に抑えることができます。

現場で迷わないためのルールを作る

業務を効率的に進めるには、「何をどう保存するか」の判断基準を明文化しておくことが効果的です。

たとえば、「FAXで届いた書類はすべて自動でPDF化する」「契約書は可能な限り電子締結を推奨する」といったルールを設定しておけば、書類ごとの対応をその都度判断する必要がなくなります。

さらに、「紙での保存が必要なものには『紙保存』と記載したシールを貼り、保管場所を統一する」といった具体策を講じることで、担当者間での認識のズレを防ぐことも可能です。

ルールが整備されていれば、フリーランス本人だけでなく、将来的にチームで作業する場面でも、情報の取り扱いがブレなくなるため、対応が進めやすくなります。

CHECK

・会計ソフトなどでデータ管理を効率化
・書類は受領時点で電子化しておくと便利
・保存ルールを明文化すれば、迷わず対応可能に

まだまだ課題やグレーゾーンもたくさん…

実務の現場では、電子帳簿保存法への対応に関してさまざまな課題やグレーゾーンが存在しています。ここでは、現場でよく挙がる具体的な課題と、今後の展望についてチェックしていきましょう。

紙書類と電子取引データが混在している

現場では、郵送で届く紙の請求書とPDFの電子データが混在し、整理が難しいという声が多く聞かれます。

特に税務関連では、同じ内容が紙と電子の両方で届くこともあるため、「どちらを保存すべきか」「重複しないようにどう管理するか」といった悩みも多い傾向です。

また、制度が過渡期にある中、「すべてを電子で管理するのは現実的に難しい」という声も少なくありません。高齢の事業者やITに不慣れな層では対応が困難な場面も多く、超高齢化が進んでいる日本において、スキル格差や負担感の大きさが課題になっています。

会計ソフトの導入・運用が進まない

また、会計ソフトの導入や運用に関しても、コストや操作性の問題から導入が進まないケースもあります。これらの課題に対して、税理士や専門家の意見を参考にしながら、適切な対応策を検討することが求められています。

明確なガイドラインがない

たとえば、取引メールの本文やSNSのDMなど、正式な書類以外のやり取りが保存対象となるかどうかについては、明確なガイドラインがないため、対応に苦慮している事業者も多いようです。

「電子帳簿保存法の対策セミナーでも、取引メールの保存範囲が十分に説明されていない」といった声もあり、たとえば売上計上に関係するやり取りを削除していた場合には、帳簿不備とみなされ重加算税のリスクが高まるという懸念も出ています。

しかし、実際には「DMやメールをすべて保存するのは現実的でない」という声も多く、「どこまで保存すれば十分か」という基準の不明確さが、現場の混乱を招いています。

現場や専門家の声から見る、今後の電子帳簿保存法

電子帳簿保存法への対応は、制度の整備だけでなく、現場のIT環境や業務の変化にも密接に関わっています。税理士や経理担当者、会計ソフト企業など、さまざまな立場の声からも、今後の方向性が少しずつ見えてきています。

たとえば、会計ソフト「freee」では、インボイス番号を自動で読み取り、事業者情報を検索・表示できる機能が実装されるなど、保存の“手間”を減らす自動化の流れが加速しています。

また、税理士の中からは「これからは税務もデジタル化に強くないと対応できない時代が来る」との声もあり、電子帳簿保存法は単なる「保存義務」ではなく、業務全体のデジタル対応の一環と捉える視点が広がっています。

一方、実務では「メールで請求書を受け取って印刷保存しているが、将来的にNGになるのでは?」という不安の声も散見されます。現時点では認められている対応でも、将来的なルール変更やガイドラインの見直しがある可能性は否定できません。

このように、現場や専門家のリアルな声からも、「効率化」と「ルールの明確化」への期待と課題が交錯しており、今後の動向を注視していく必要がありそうです。

令和7年度税制改正で見直しの方針も明示されている

2024年(令和6年)7月に公開された「令和7年度税制改正の大綱」では、電子取引における電磁的記録の保存制度に関する見直しが正式に盛り込まれました。これは、今後の電子帳簿保存法の運用に大きな影響を与える可能性があります。

たとえば、重加算税の加重措置に関しては、保存要件を満たした「特定電磁的記録」については対象外とする方向で見直しが進められています。この「特定電磁的記録」には、訂正・削除の履歴が確認できるシステムで保存されたデータや、帳簿との相互関連性が確保されているデータなどが該当します。

さらに、青色申告特別控除(65万円)の適用要件についても、帳簿の電磁的保存だけでなく、こうした一定のシステム要件を満たした電子保存をしていれば要件を満たすとする方向での緩和が予定されています。

これらの改正案は、2027年(令和9年)以降に適用が開始される見通しです。中小企業やフリーランスにとっては、ツールやシステムの整備によって、より実務に即した柔軟な運用が可能になることが期待されています。

CHECK

・紙と電子の混在やIT格差が混乱を招いている
・会計ソフト導入や保存範囲の判断が難しい
・令和7年度改正で制度の見直しが進められている

電子帳簿保存法は、私たちフリーランスにとって決して他人事ではありません。

インボイス制度、フリーランス新法、そして電子帳簿保存法の義務化…。制度が次々と変わる中で、何をどうすればいいのか分からず、後回しにしてしまっている人も多いのではないでしょうか。

しかし、電子帳簿保存法は、私たちフリーランスにとって、税務上のリスクから身を守るための「備え」です。

難しく感じるからこそ、「まずはここから」という入り口を見つけて、1つずつ整えていくことが大切です。最初は完璧じゃなくても問題ありません。少しずつ対応を始めておくことで、後々のリスクを防ぐことができます。

また、義務だからといやいや対応するのではなく、仕組みを理解し、自分の仕事のスタイルに合った方法でコツコツ整えていくことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

ただ言われるがままに従うのではなく、制度の内容を正しく知り、自分自身で考えて選ぶ姿勢こそが、これからのフリーランスにはますます求められるのではないでしょうか。

フリーランスの節税対策|税金額の計算・所得控除・ふるさと納税活用法まで解説

フリーランスは支払うべき税金が多く、自身で計算をしなければならないため大変です。税金を低く抑えるためには、それぞれの税金の算出方法と節税方法を知っておきましょう。

フリーランスにとって、納税と節税は非常に重要です。資金繰りを適切に管理し、納税額を減らすための対策がフリーランスの成功を大きく左右します。

フリーランスが支払う税金は5種類

フリーランスが支払う主な税金は「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」「固定資産税」の5つで、税額は収入によって異なります。税金を払うためには所得額を計算し確定申告を行うことが必要です。

所得税・復興特別所得税の計算・節税方法

所得税とは1年間の所得に対して支払う税金で、復興特別所得税とは所得税額に対する付加税で所得税に対して2.1%上乗せで計算されます。

計算方法:所得税 = 課税所得×税率−控除額

 ※課税所得 = 総収入−必要経費−基礎控除−その他の控除

復興特別所得税 = 所得税額 × 2.1%

累進課税の所得税・復興特別所得税の算出方法と計算例

所得税の累進課税とは、所得が多くなるほど税率も高くなる仕組みのことです。所得税・復興特別所得税ともに累進課税で計算されます。

課税所得所得税率 
0~195万円5%
196~330万円10%
331~695万円20%
696~900万円23%
901~1800万円33%

例えば課税所得が500万円の場合、以下の計算となります。

500万円 × 20%(所得税率) – 427,500円(控除額) = 572,500円

所得税・復興特別所得税の支払いのタイミングは天引き&確定申告

フリーランスは前年の1月1日~12月31日までの所得を翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告をしますが、所得税・復興特別所得税も原則として同じタイミングの3月15日が納付期限となっています。

所得税・復興特別所得税は控除活用と経費計上で節税

所得税・復興特別所得税は、控除の活用と経費の計上によって節税することができます。

所得税率が課される「課税所得額」を低くする方法と、所得税額から直接減らせる「税額控除」を利用する方法があるので上手く活用しましょう。

住民税の計算・節税方法

住民税は、所得税の確定申告書をもとに計算され、「所得割」と「均等割」の2つで構成されています。

住民税の所得割・均等割の算出方法と計算例

計算方法:住民税 = 所得割 (一律10%)+ 均等割(世帯割)

例えば所得が500万円の場合、所得割は500万円 × 10% =50万円、均等割は5,000円となり、住民税は合計の505,000円です。

住民税の支払いのタイミングは6月末・8月末・10月末・翌1月末の年4回

フリーランスや自営業者の場合、住民税は普通徴収となり、年4回払いで市区町村から納税通知書が送られてきます。

住民税はiDeCo・医療費控除の活用や親の扶養化で節税

住民税の節税には、iDeCo(個人型確定拠出年金)や医療費控除、家族の扶養を活用する方法があります。

個人事業税の計算・節税方法

個人事業税とは、特定の事業を営む個人事業主やフリーランスが事務所のある自治体に納付する地方税のことを指します。個人事業税は経費への計上が可能です。

業種によって税率が変わる個人事業税の算出方法と計算例

個人事業税は業種によって納めるべき税率が異なります。また、1年間を通して事業をおこなっている場合290万円の控除が適用されます。

第一種事業第二種事業第三種事業
税率5%税率4%税率5%
飲食店、旅館、運送業など畜産業、水産業などデザイン業、コンサルタント、士業など

計算方法:納税額 = (前年の事業所得金額 – 各種控除額)× 業種に応じた税率

例えば所得が500万円・必要経費が100万円の場合、所得から経費・控除額を差し引いた課税所得は500万円-100万円-290万円=110万円となり、その5%=5.5万円が個人事業税になります。

個人事業税の支払いのタイミングは8月と11月の年2回

都道府県により詳しい日程は異なりますが、8月と11月の2回に分けて、前年分の確定申告をもとに計算された納税通知書が届きます。

個人事業税は減価償却費の特例や損失の控除の活用で節税

所得が290万円以下なら個人事業税は非課税になるので、所得額を下げることで節税につながります。減価償却費の特例や損失の控除が適用できるか確認してみましょう。

消費税の計算・節税方法

年間の所得が1,000万円を超えるフリーランスは、課税事業者となって消費税を納める必要があります。

課税事業者になるには、管轄の税務署に「消費税課税事業者届出書」の提出が必要です。

課税事業者に一律掛かる消費税の算出方法と計算例

計算方法:納税額 = 課税売上高の消費税 – 課税仕入高の消費税

例えば、税込の売上が1,000万円、経費が330万円の場合、売上高の消費税は1,000万円×0.1=100万円、経費(売上高)の消費税は300万円x×0.1=30万円となり、納付消費税は100万円-30万円=70万円となります。

消費税は消費毎&決算の2ヶ月以内に支払い

消費税は取引ごとに清算し、決算後2ヶ月以内にまとめて納めます。

消費税の免税事業者は2年間は原則納付義務がない

フリーランスの場合、年間の課税売上高が1,000万円未満、もしくは開業してから2年以内であれば、消費税の免税事業者となり消費税を納付する必要はありません。

固定資産税の計算・節税方法

フリーランスが事業に使っている資産には、固定資産税がかかる場合があります。この場合の固定資産は土地や建物だけでなく、事業用の設備や備品(償却資産)も対象となります。

償却資産を持っている場合に掛かる固定資産税の算出方法と計算例

償却資産とは事業に使用する資産のことで、パソコンや業務関連の機器・ソフトウェアで取得価額が10万円以上のものを指します。

償却資産を購入した際は固定資産税を納税する義務が発生します。固定資産税の標準税率は1.4%です。

計算方法:納税額 = 固定資産税評価額×標準税率1.4%

固定資産税の納期は年4回で自治体毎に異なる

原則年4回に分けて納付書が届くので、届いたタイミングで支払いを行います。第1期分の納付書は毎年4月〜6月頃に届きますが、スケジュールは自治体により異なります。

償却資産の合計額が150万円未満であれば償却資産税はかからない

償却資産の合計が150万円未満の場合は固定資産税が課税されませんが、資産の多少に関わらず申告が必要となります。

CHECK

・支払う税金は「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」「固定資産税」の5つ
・税額は確定申告の内容に基づいて計算される
・支払いのタイミングはそれぞれ異なるのでスケジュールを押さえておく

社会保険も実質的な税金の一部

フリーランスが支払う社会保険料(国民健康保険や国民年金)は、実質的に税金の一部といえます。

フリーランスの場合、社会保険料も自分で納付しなければならないため、税金と同じように計画的な支払いが求められます。

社会保険料の計算方法

フリーランスが支払う社会保険は「国民健康保険」と「国民年金」の2つです。どちらも全額所得控除の対象で、年収が少ない場合は軽減措置もあります。

国民健康保険の計算方法:所得割+均等割+平等割

※所得割 = (前年所得 – 43万円) × 所得割率

※均等割 = 均等割額 × 加入者数

※平等割 = 定額/自治体により異なる

国民年金:全国一律で2025年度は月額16,980円(年額203,760円)

社会保険と所得税を加味したフリーランスの年収別手取り一覧

フリーランスの手取り額は、年収に応じて所得税や社会保険料(国民健康保険、国民年金)などが差し引かれます。

以下に、年収別の手取り一覧をまとめていますが、税金や保険料の額は地域や個人の状況により異なるため目安としてご確認ください。

年収(税引前)所得税社会保険料手取り額
300万円約15万円約40万円約245万円
400万円約30万円約50万円約320万円
500万円約45万円約60万円約395万円
600万円約60万円約70万円約470万円
800万円約100万円約90万円約610万円

CHECK

・社会保険も実質的な税金の一部
・フリーランスの社会保険料は全額所得控除の対象
・フリーランスの手取り額は、年収に応じて異なる

フリーランスにできる手残りを増やすための節税対策

フリーランスにとって節税対策は、手残りを増やすために非常に重要です。

青色申告特別控除や必要経費の計上、各種所得控除を活用することで適切な節税になり、実際に手にする金額を大幅に増やすことができます。

青色申告特別控除を必ず受ける

青色申告を選択することで、一定の条件を満たせば最大65万円の控除を受けることができ、税負担を大きく軽減できます。

青色申告特別控除を受けるには、確定申告時に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。

この申請書は、初めて青色申告を行う年の3月15日までに提出しなければならないのでタイミングを逃さないようにしましょう。

各種所得控除を漏れなく申告する

所得控除を適用することで、課税対象となる所得が減少し、結果的に支払う税金を軽減することができます。

主な所得控除には基礎控除、社会保険控除、医療費控除、住宅ローン控除などがあります。

確定申告で必要経費を確実に計上する

確定申告で必要経費を確実に計上することは、フリーランスにとって非常に重要な節税対策です。

経費を適切に計上することで、課税所得が減少し支払う税金を軽減できるので、領収書と証拠書類を必ず保管し、事業に関連する経費は漏れなく計上しましょう。

売上高・利益によってはマイクロ法人化を検討する

個人事業主から法人に切り替えることで得られる税制面でのメリットを受けるため、法人化の検討も手段のひとつです。

マイクロ法人とは経営者1人がすべての事業を行っており、従業員を雇っていない法人のことを指します。

扶養・専業従事者に事業支援してもらい給与を払う

個人事業主が家族に給与を支払う場合、青色事業専従者給与を活用することができます。

個人事業主が家族に対して行う給与支払いが適切であれば、経費として計上できる制度で、節税につながります。

小規模企業共済の加入を検討する

小規模企業共済は、個人事業主が将来の退職金や年金資金を積み立てるための制度であり、節税対策にも有効な手段です。

収入の一部を共済に積み立てると積立額を全額経費として計上できるため、税金の負担を軽減することができます。

フリーランスが高すぎる税金を払えないときの対策

フリーランスが税金を払えない場合は、まず税務署や税理士に相談しましょう。

納税納期の変更や分割措置の検討が可能です。放置すると延滞税が増え、差し押さえの可能性もありますので早めに相談しましょう。

督促が始まる前に税務署や自治体に分割払いが可能かを相談する

税金を支払わずに放置すると税務署や自治体から「督促状」が届き、これを無視すると延滞税が加算され、最終的には財産の差し押さえなどをされる可能性があります。

督促される前に分割払いや猶予を相談することが重要です。

所轄の税務署に猶予を設けてもらえるかを相談する

督促前に税務署に相談をすることで、納税の猶予を申請できる制度があります。

必要に応じて、申請書類や収支状況の資料を提出し、支払い計画を立てることで猶予が認められる可能性があります。相談は早いほど有利なので早めの行動が大切です。

ファクタリングやローンの利用を検討する

フリーランスが税金を払えない場合、ファクタリングや事業者向けローンの利用も検討できます。

ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる方法で、即日の現金化もできますが、手数料がかかりますので慎重に検討しましょう。

どうにもならない場合は自己破産を検討する

フリーランスが税金を払えない場合、最終手段として自己破産を考えることもあります。

ただし、フリーランスが自己破産した場合、借金は免除されますが税金は免除されません。自己破産を考える前に他に出来ることがないか専門家に相談することをおすすめします。

税金は自己破産でも免除されないためCF表で計画的な資金繰り

税金は原則として自己破産しても免除されない非免責債務のため、自己破産しても税金の支払い義務は残ります。

自己破産になるまで行く前に、キャッシュフロー表(CF表)を使った計画的な資金繰りや支払い計画を立てておくことが重要です。

CHECK

・手取り額を増やす節税手法はさまざま
・税金が払えない時は早めに税務署や税理士に相談する
・キャッシュフロー表で資金繰りの計画をきちんとたてておくこと

フリーランスにとって、税金の管理は大切な課題です。確定申告や節税対策をうまく活用することで、納税額を抑えることができます。また、万が一支払いが難しい場合でも、早めに相談し適切な対応を取ることが重要です。計画的に税金と向き合うことで、安定した事業成長をすることができます。

フリーランスに税理士は必要?依頼をすべきケースと事業と相性の良い税理士の探し方を解説

税理士に依頼するのはお金がかかるので、本当に必要かどうか悩みますよね。フリーランスとして外部に依頼できるものは積極的に活用すると良いですし、税理士がいると「節税効果が期待できる」「会計・税務の手間や不安が減る」「経営アドバイスや資金調達のサポートをもらえる」など多くのメリットがあります。

小規模なうちは会計ソフトを活用して自力での対応も可能ですが、事業拡大、複数の収入源、法人化を考えるタイミングでは税理士の専門知識が大きな助けとなります。税理士は記帳代行や税務申告だけでなく、節税対策、資金調達、経営相談など多様なサポートをしてくれます。

フリーランスに税理士は必要か?

フリーランスが税理士を頼むべきかは、収入や業務内容によって異なります。事業規模がそこまで大きくなく、会計ソフトで問題なく会計処理が出来ている場合は税理士に頼む必要はありません。取引内容が複雑だったり、今後事業を拡大する予定があるなどの場合は依頼を検討してみましょう。依頼費用がかかりますので、節税対策と費用負担のバランスも合わせて判断が必要です。

収入が低い場合は会計ソフトで自身で手続き

会計ソフトを使えば、税理士に頼むことなく自分で会計処理を簡単に行えます。自分で処理できる範囲であれば、税理士にお願いする必要はないでしょう。ただ、フリーランスとしての本業に集中するために会計業務を外注して業務を効率化させる目的として税理士に依頼するというのも手段のひとつです。

事業規模が大きくなる見込みができてから依頼がベター

事業規模を拡大させていく段階の、早いタイミングで弁護士に頼むことを検討すると良いでしょう。取引が複雑になる前にあらかじめ会計処理の仕組みを準備しておいたり、事前の節税対策を進められるなど、具体的かつ専門的なアドバイスをもらうことができます。事業が成長するにつれて会計処理や税務関連の対応が複雑になるため、早めに専門的なサポートを得ておくと安心です。

フリーランスが税理士に依頼するよくあるタイミング

フリーランスが税理士に依頼するタイミングは、自分の知識では対応しきれない事業規模や会計処理になってきた時が目安です。また、青色申告や節税対策をしっかり行いたい場合や、法人化を視野に入れ始めた段階で相談するのも効果的です。

売上が安定したタイミングから依頼する

売上の安定が実現したら、納税額を抑えるために経費の適切な計上や控除の活用を積極的に行います。これらの専門的なアドバイスを税理士からもらうことで、節税効果や会計処理にかかる時間の削減につながります。

開業したタイミングから依頼する

フリーランスとして事業を開始した直後は、資金繰りなどお金に関する不安や悩みが多い時期です。税理士に依頼することで、初期の段階から正しい税務処理だけでなく開業届や確定申告など必要な書類の準備をするサポートも受けられます。

確定申告だけスポットで依頼する

税理士は毎月の契約ではなくスポットでの依頼も可能です。特に確定申告関連が不安な場合は、確定申告だけスポットで依頼することで正確な申告ができます。また、長期契約前に一度依頼をしてみることで税理士との相性の良さを図れることもメリットです。

CHECK

・収入規模や業務内容によって税理士に頼むかどうか判断する
・自分で会計処理が問題なくできる規模であれば外注不要
・事業規模が大きくなる見込みができてから依頼すると良い

税理士の依頼がおすすめな具体的なケース

売上の拡大・節税対策・経理の負担軽減・法人化の判断など、様々なタイミングで税理士に依頼をするのが有効なケースがあります。お金のことを相談できる、税金・会計のプロがいることはフリーランスにとって大変心強いものです。

課税売上1,000万円を超えている場合

売上が伸びて所得が増えると、所得税の税率が高くなるためきちんとした節税対策が必須になります。税理士に相談することで、適切な税制を有効に利用した節税効果が期待できます。

複数の収入源がある場合

複数の収入源があると会計処理が複雑になります。帳簿・申告ミスによるリスクを防いだり、節税の幅を広げるために税理士のアドバイスを得ると良いでしょう。また、それぞれの収入源の資金繰り状況や、どの事業に注力すると良いのかなど、経営相談もしてもらえるため事業成長の後押しになります。

インボイス登録事業者の場合

フリーランスがインボイス制度に登録し「適格請求書発行事業者」となった場合、インボイス対応の請求書処理が必要となります。消費税に関する専門知識を持ちながら複雑化する請求書の発行や管理に対応できるのが税理士のメリットです。

海外との取引がある場合

海外取引に関する税務は複雑で、日本の税法だけでなく、相手国の税制や国際税務を考慮する必要があります。税理士のサポートを受けることで、対応するべきことが対応でき、税務リスクを最小限に抑えられます。

特殊な業種形態を営んでいる場合

業界専門の慣習があるなど特殊な業種形態を営んでいる場合、税理士に依頼することで専門的な税務知識と業種理解に基づいた正確な申告と節税対策を受けることができます。特殊業種では収入や経費の扱いが一般と異なることが多く、自己判断ではミスや申告漏れのリスクが高まります。税理士に依頼することで税務署からの指摘リスクを減らすことができます。

会社設立を考えている場合

売上や利益が大きくなってきたら法人化をしたほうがメリットが大きい場合があります。法人化するべきかどうかの判断やどのタイミングで踏み切るのが最適かなど、税理士からの専門的なアドバイスをもらえるのは大きな利点です。事業の収益状況をもとに、法人化による節税メリットがあるかどうかを具体的に判断してもらえます。

法人化するタイミングでは顧問税理士が必要になる

顧問税理士とは法人や個人事業主などを対象として一定期間の顧問契約を結んだ税理士のことです。法人化をすると個人事業に比べて会計処理や税務申告が複雑になり、決算書の作成など複雑な手続きが多くなります。顧問弁護士を持つことでこれらの業務のサポートだけでなく税務署や役所への届け出や経営面のアドバイスなどを多角的に受けることが可能になります。

CHECK

・税金・会計のプロがいることはフリーランスにとって心強い
・課税売上1,000万円を超えたら税理士の検討をすると良い
・法人化するタイミングでは顧問税理士が必要になる

税理士に依頼できる業務と恩恵

税理士に依頼できる業務は多岐にわたりますが、主に税務や会計に関連する業務が中心です。フリーランスにとって、税理士に依頼できる業務を理解しておくと、ビジネスの運営や節税、経営の効率化がしやすくなります。

記帳代行

毎月の収入や支出を整理して、税務申告に必要な書類を整えます。自社で導入している会計ソフトがある場合は、使っているソフトに対応可能かどうかの確認もすると良いでしょう。

税務書類作成

税務署への各種届出書類の作成や提出も代行してくれます。これにはもちろん確定申告書類も含まれます。

税務代理

税務署への申告や各種届出を税理士が代理対応してくれます。フリーランスが自分で行う場合と比べて専門知識に基づいた適切な手続きができ、スムーズに進められます。

資金調達のサポート

事業内容や事業計画を踏まえた最適な融資の選定から、銀行や金融機関から融資を受ける際のアドバイスや申請のサポート、資金繰りのアドバイスまで対応してくれます。事業計画書の作成サポートなど、融資を受けやすくなるためのアドバイスまでもらえ、事業成長を後押ししてくれます。

税務相談

節税対策はもちろん、税務に関する専門的なアドバイスがもらえると同時に、最新の税法改正に関する情報も得られます。

税務調査への対応

税務調査が入った場合、税理士が立ち会って対応を行うことができます。具体的には調査に必要な書類などの準備、実際の調査の際の立ち合いや説明、調査後の対応まで任せられます。

CHECK

・税理士に依頼できる業務は幅広い
・日々の記帳代行だけでなく経営面でのアドバイスまで
・どんな業務を依頼できるかを知っておくことが重要

フリーランスが税理士への依頼費用の相場

フリーランスが税理士を頼む場合の費用相場は月額1万円〜4万円と幅広くなっています。税理士にお願いする内容や頻度、そして事業の売り上げ規模などにより料金が変わってきます。

確定申告のスポット依頼の場合の相場

確定申告を一括で依頼する場合は3万円〜10万円程度が相場です。白色申告のほうが依頼単価が低く、複式簿記が必要な青色申告のほうが単価が高い傾向にあります。複雑な経費計上や複数の収入源がある場合も料金が上がります。

税務相談など顧問契約の場合の相場

定期的に税務相談や経理サポートを受ける場合、月額2万円〜10万円程度になります。事業が大きくなり一人で会計作業をするのに不安を感じはじめたときや、税務だけでなく経営やお金の管理に関するアドバイスを定期的に受けたいと考え始めたら、顧問契約も検討しましょう。

フリーランス税理士契約をすることで節税はできるか?

税理士に会計処理を頼むことで自分では気づかない、見逃しがちな支出を経費として計上できるようアドバイスしてくれるため、税金を減らす手助けになります。その結果事業所得が減り、課税対象の金額が少なくなることで節税につながるのです。また、税法上の特例や優遇措置など節税に関する最適な方法を提案してくれることで税金を軽減させることができます。

専門知識による効果的な節税対策はできる

フリーランスが税金を節約する主な方法の一つは、経費を適切に計上し、各種所得控除を活用して課税対象となる所得を減らすことです。税理士に頼むことで素人では気づかない経費や、専門知識がないとわからない優遇措置などを的確に使うことができ、節税対策になります。

節税にはまとまった現金が必要でもあり安定した売上は必須

売上があまりにも少ない場合、経費を計上しても赤字となり節税効果が小さくなってしまいます。経費を計上することで節税効果を得るためには、それに見合った売上が必要なのです。

CHECK

・税理士への依頼方法はスポット依頼と顧問契約
・依頼内容や頻度、事業の売上規模により費用が変わる
・税理士契約することで費用はかかるが節税対策が可能

フリーランスが税理士を選ぶ際に確認したい項目

税理士事務所は数多くあるので、どこに依頼すればよいか悩むかもしれません。専門分野の知識や料金体系、評判など考慮しながら検討しましょう。

必要なサービスが業務範囲に含まれるか

税理士によってアドバイスできる内容の幅は大きく異なります。確定申告に強いのか、税務・会計改善のアドバイスが専門なのか、自社として求めるサービスに合っているかを確認しましょう。

担当者との相性が良くコミュニケーションを取りやすいか

フリーランスの場合、税務に関する疑問が出てきた際にすぐに相談できる相手がいると安心です。レスポンスが早く、かつ親身に対応してくれる税理士を見つけると心強いです。

積極的に節税対策を提案してくれるか

フリーランスとしての事業経営に合わせたアドバイスをしてもらうことで事業収益の最大化につながります。例えば収入が増えた場合に最適な節税方法を再提案するなど、状況に合わせて積極的に提案をもらえるとしっかりとした節税になります。

業界や業種特有の専門知識を有しているか

フリーランスにはIT系からメディア系、コンサルティングなど幅広い業界・職種があり、自分の属する業界特有の商慣習や注意点を理解している税理士が良いでしょう。

ITツールに明るいか

メールやチャットなどオンラインでコミュニケーションを取りやすかったり、会計ソフトなどのクラウドツールや確定申告の電子申請方法などの最新知識を持っている税理士だとスムーズにやり取りができます。

フリーランスが税理士を探すおすすめの方法

同業者の知り合いや、フリーランス仲間がいれば、おすすめの税理士を紹介してもらうのも良い手段です。自分で探す場合は、オンラインの紹介サービスを使って効率的に見つけましょう。

会計ソフトの税理士紹介サービスを活用する

会計ソフトの税理士紹介サービスとは、クラウド型会計ソフトを利用しているユーザーに対して、会計ソフト運営会社が税理士を紹介するサービスです。使っている会計ソフトの知識を持った税理士を紹介してもらえるので、相談がしやすいのがメリットです。

マネーフォワード

全国40,000名超の士業事務所とパートナーシップを持ち、大手税理士法人から個人事務所まで幅広いニーズに合わせて無料で紹介。ITツールに強く、クラウド会計の導入実績が豊富な税理士・社労士を紹介してくれます。

フリー会計

freee税理士コーディネーターがfreee認定資格を持つ全国の税理士事務所から要望に沿った税理士を紹介。面談調整やお断り連絡などもコーディネーターが行ってくれるので探すのに費やす手間がかかりません。

専門の税理士紹介サービスを活用する

税理士紹介サービスを利用することで、自分の業務に最適な税理士を見つけて税務に関する専門的なサポートを受けることができます。フリーランス専門に紹介してくれるところもあります。

税理士紹介ドットコム

納得のいく税理士と出会うまで何度でも無料で紹介してくれるサービス。コーディネーターが間に入り条件面の交渉なども行ってくれます。

税理士紹介センター

成約手数料など一切不要で、無料で税理士を紹介してくれます。最短で申込当日に紹介も可能で、業界に合わせた税理士を見つけてくれます。相性の合う税理士が見つかるまで何度も紹介してくれるサービスです。

事業の成功は会計を担う税理士選びも大切な要因

税理士は仕訳や確定申告を手伝ってくれるだけでなく、税務や経営に関するアドバイスを行い事業の成長をサポートしてくれる心強いパートナーです。信頼できる税理士を見つけることで、ビジネスの成長を後押しすることができます。

大手が必ずしも良いとは限らない

相性の良さが税理士選びで大切なポイントのため、税理士事務所の規模はそこまで気にする必要はありません。税理士の得意ジャンルや費用面、お願いしたい事に対応してくれるかどうか、などを細かく擦り合わせて、自社のニーズに合った人を見つけ出すことが大切です。

必ず複数の税理士と面談をしてから決める

複数の税理士と面談し、比較検討するのが良い税理士を見つけるカギになります。税理士の専門知識、対応の速さ、説明のわかりやすさ、料金体系などを比較し、自分のニーズに最も合っている税理士を選ぶようにします。

CHECK

・業界知識や料金体系、評判など考慮しながら税理士選びを行うこと
・税理士紹介サービスは数多くある
・必ず複数の税理士と面談をしてから決めること

駆け出しのフリーランスは自分で会計を。安定したら税理士に依頼

まずはお金の流れを知るために自分で会計業務を行うことも経験です。会計ソフトを上手く使いながら、金の流れを可視化し、自身の資金繰りを把握しておくことで、税関連としてどこを強化する必要があるのかわかってきます。そのうえで経理業務の効率化や資金繰り・税務面のアドバイスを税理士にあおぐことで、事業強化につながります。

信頼できる税理士を選ぶためには、業界知識・相性・料金体系などを比較検討し、紹介サービスを活用すると効率的です。最初は自分で会計を経験し、お金の流れを理解した上で、タイミングを見て税理士と連携しながら事業を拡大させましょう。

フリーランスの確定申告ガイド|スケジュール別の必要な手続き・書類・控除や修正申告の方法を解説

フリーランスになると、会社員時代はやらなくてよかった面倒なことを自分でやらなくてはなりません。その代表例ともいえるのが、確定申告です。1年間の売上と経費を計算し、正しく納税する必要があります。

今回は、初めて確定申告をする方も一人で完結できるよう、具体的な方法を解説していきます。

フリーランスに確定申告はいつから必要?

まずは、フリーランスの方にとって、確定申告がどのタイミングで必要になるか解説します。

フリーランスの確定申告の必要なケース

フリーランスでは、確定申告が必要なケースが3つあります。

本業で48万円以上の利益がある場合

本業を続けながら副業でフリーランスの案件を受けている方は、本業の利益が48万円以上になった時点で確定申告が必要です。フリーランス案件の利益がほとんど出ていなくても必要になるため、「あまり儲けがないから大丈夫」と勘違いしないようにしましょう。

本業以外の複数の収入がある場合

本業以外に、いくつかの収入がある方も確定申告が必要です。こちらも売上や利益に関係なく、仕事をした時点で必ず確定申告をしなくてはならないので注意しましょう。

株・不動産投資の収入がある場合

金額を問わず、株や不動産投資の収入がある方は確定申告が必要です。フリーランスの案件を受けている・いないに関わらず、投資で収益が出た年は確定申告をしましょう。

フリーランスの確定申告の不要なケース

フリーランスの案件を請けていても、確定申告が不要なケースがあります。

本業の利益が48万円以下の場合

確定申告をする場合、48万円の基礎控除が適用されます。基礎控除とは、所得金額から差し引けるもので、年間合計所得金額が2,500万円以下の方全員に与えられます。本業の利益が48万円以下の場合、基礎控除が適用されると課税対象となる所得がゼロになるため、確定申告は不要です。

本業が赤字で経費もない場合

本業が赤字で経費もない場合、課税所得がないため確定申告は不要です。ただし、青色申告をしておけば損失を最大3年間繰り越せるため、翌年に大きな黒字になる見込みがある場合は確定申告をしておくのも一手でしょう。

青色申告・白色申告はどちらを選ぶべき?

確定申告には、青色と白色の2種類があります。それぞれの違いについて解説します。

手間はかかるが青色申告の最大のメリットは節税

青色申告は、最大65万円の特別控除が適用されるため大きな節税効果があります。また、赤字の年に青色申告しておくことで翌年に繰り越し税金を減らせます。

複式簿記で記帳し、損益計算書や貸借対照表などを作成しなくてはならないので手間はかかりますが、高い節税効果があるため白色よりおすすめです。

原則節税は難しいが白色申告の最大のメリットは簡易さ

白色申告は、単式簿記で記帳でき、貸借対照表の作成も不要なため非常に簡単です。今年だけ副業をする予定の方や、控除を気にしない方は白色申告でよいでしょう。

しかし、これからずっとフリーランスでやっていくのであれば青色申告を強くおすすめします。会計ソフトを利用すれば、自分で計算しなくても自動で経費精算や各種提出書類作成などができるため手間もそれほどかかりません。

確定申告はどのように行う?

確定申告は、具体的にどのように行えばよいかについて解説します。

会計ソフトで課税所得を計算する

まずは、会計ソフトを選びPCにインストールします。月ごとの売上や経費を入力すると、自動で収支や利益を算出できます。青色申告の場合、特別控除の65万円も自動で計算できます。

レシートを取り込んだり、クレジットカードや銀行口座と連携させたりすることで、手入力しなくても自動で金額が入力されます。

所得控除に関わる資料から課税所得を計算する

課税所得とは、売上から所得控除を引いた金額です。控除には48万円の基礎控除以外にも、社会保険料控除や配偶者控除などがあります。会計ソフトを使えば、質問に答えて金額を入力していくだけで自動計算できます。

確定申告の必要性を判断する

計算した結果、年間所得が48万円を超えていたら確定申告が必要です。もし48万円未満だったとしても、翌年以降もフリーランスとして活動予定があればぜひ申告してください。

所得税が必要な書類を準備する

売上と経費の記録、口座やクレジットカードの取引明細など、必要な書類をそろえましょう。ふるさと納税を活用した方は、自治体から発行される受領書も忘れないでください。青色申告の方は損益計算書と貸借対照表も必要ですが、これも会計ソフトが自動で作成します。

所得税を税務署・e-Taxで納付する

確定申告書を提出します。所得税は、税務署の窓口やコンビニから払えます。締め切り間際の税務署は非常に混雑しているため、わざわざ出向くのではなくe-Taxでの申告と納付がおすすめです。マイナンバーカードとICカードリーダー、またはマイナポータルアプリがあれば自宅から完結します。

CHECK

・本業で48万円以上の利益がある場合や、本業以外の複数の収入がある場合は、確定申告が必要
・青色申告は、手間はかかるものの節税効果が高い
・会計ソフトを活用することで、課税所得を計算や提出書類の作成が簡単にできる

フリーランスに関係する税金の種類は?

フリーランスとして働くうえで、どのような税金が関係するのか解説します。

■所得税

利益に対する課税です。上記の方法で、確定申告を通じて納税します。所得税は累進課税となっており、利益の5~45%を納める必要があります。

■住民税

市区町村に支払う税金です。道府県民税・都民税は4%、区市町村民税は6%課税されます。

■個人事業税

フリーランスとして年間290万円以上の所得があると発生します。税率は3~5%で、業種により異なります。所得税と住民税の申告をする場合、個人事業税の申告は不要です。

■消費税

もともと、課税売上高1,000万円以下の事業者であれば消費税は免除されていましたが、インボイス制度によって登録事業者は全員課税対象となりました。確定申告同様、会計ソフトで自動計算して納付しましょう。

フリーランスの節税はどう進める?

フリーランスにとって、いかに節税するかは重要なポイントです。以下の7つは簡単にできるので、ぜひ取り組んでみてください。

青色申告で申告をする

「手間はかかるが青色申告の最大のメリットは節税」で説明した通り、青色申告をするだけで控除が得られて節税になります。多少の手間はかかりますが、白色ではなく青色で申告しましょう。

経費を確実に計上する

売上が小さいほど、納税額は安くなります。経費を計上しなければ売上が大きくなってしまうため、かかった経費はしっかり計算してください。まずは、経費の種類を正しく理解するところから始めましょう。

減価償却を正しく活用する

減価滅却とは、固定資産を購入した年から数年にわたって経費を分割計上する処理方法です。例えば、200万円の機械を買った年に200万円の経費として計上するのではなく、毎年40万円ずつ5年にわたって経費計上するといったことができます。

使える控除を活用する

控除を活用すればするほど所得額が小さくなり、納税金額も少なくなります。下記のような控除は必ずチェックしてください。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除

ふるさと納税を活用する

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付をして、返礼品をもらう仕組みです。確定申告をすることで、所得税と住民税の控除を受けられます。

マイクロ法人の活用を検討する

マイクロ法人とは、少人数で運営する小規模法人です。個人事業主と組み合わせることによって、収益の流れを分散させて税負担を軽減できます。

倒産防止共済を活用する

中小企業倒産防止共済とは、一社が倒産したことによりその取引先が連鎖的に倒産する事態を防ぐための仕組みです。共済に入ることで、何かあった時に共済金を借入できます。掛け金は全額経費として計上できるため、節税につながります。

CHECK

・フリーランスには所得税や住民税など複数の税金が関係する
・節税のためには、青色で申告し、経費を確実に計上することが大切
・ふるさと納税や倒産防止共済などを活用することで、高い節税効果が期待できる

確定申告の還付金はいつ返還される?

確定申告の還付金は、e-Taxで申告した場合は、申告から1~3週間以内、紙で申告した場合は1~2か月が目安です。確定申告期間は時間がかかることも多いため、早めに受け取りたい方は1月1日から2月15日までに申告しましょう。

確定申告をミス・遅れた場合にはどうなる?

確定申告の内容にミスがあったり、期限内に申告できなかったりした場合どうなるか、解説します。

修正申告によりミスを後から修正できる

確定申告にミスが見つかったら、修正申告を行います。e-Taxページの「確定申告書等作成コーナー」にある「新規に更正の請求書・修正申告書を作成する」から修正可能です。

無申告加算税がかかる場合

確定申告期間から遅れた場合は期限後申告となり、青色申告の特別控除は10万円のみになり、無申告課税が課せられます。

延滞税がかかる場合

期限を過ぎてから申告すると、遅れた日数に応じて延滞税が課せられます。申告のタイミングが遅れれば遅れるほど延滞税が増える可能性があるので、できるだけ早く提出しましょう。

重加算税の課税があり得る場合

隠蔽目的など悪質性が認められた場合、重加算税が課せられます。何度も続けると最大50%の課税が発生するので、必ず提出してください。

CHECK

・確定申告の内容にミスがあったら、修正申告により修正できる
・期限が過ぎてから確定申告すると、無申告加算税が課される
・悪質な無申告だと認められると、重加算税が課される

確定申告に必要な書類はどのようにいつまで保存すべき?

確定申告で使った書類の保存期間は、下記の通りです。

  • 帳簿:7年間
  • 決算関係書類:7年間
  • 領収書や請求書:5年間
  • 確定申告控え:5年間
  • 所得控除証明書:5年間

2024年以降、電子取引でやり取りした書類はデータ保存が義務化されているので気を付けましょう。

確定申告をスムーズに行うにはどうする?

手間がかかり面倒な確定申告ですが、コツをおさえればスムーズに準備を進められます。具体的な方法を、6つ解説します。

クラウド会計ソフトで月次で帳簿をつける

確定申告のタイミングで一年分の売上と経費を計算しようとすると、膨大な時間がかかります。そのため、クラウド会計ソフトを使って月次ごとに整理しましょう。毎月コツコツ作業しておけば、直前になって膨大な作業に追われることがなく、余裕が生まれるのでミスも減らせます。

請求書などの取引資料を電子管理する

請求書などの取引資料は、電子管理しましょう。アナログでの管理は手間がかかりますし、2024年以降は電子データでの保存が義務化されています。

契約書については、誰が何をしたかを証明する電子署名と、いつ何を作成したかを証明するタイムスタンプが必要です。

日頃からクレジットカードで経費を支払う

クレジットカードと会計ソフトを紐づけましょう。これにより、経費をクレジットカードで使った時に自動で金額などの情報が入力されます。クレジットカードを使うことでキャッシュフローの改善につながりますし、年会費の経費計上によって節税効果も狙えます。

紙の領収書は会計アプリで毎日取り込みする

電子データではなく、紙で領収書をもらうこともあるでしょう。そんな時はためこまず、会計アプリに毎日取り込んでください。写真を撮るだけで金額などが入力されるため、ためこまなければ大した手間にはなりません。

マイナポータルの連携機能で控除資料をダウンロードする

e-Taxと連携させることで、マイナポータルから控除資料をダウンロードできます。各種控除申請書が一括で手に入りますし、e-Taxで確定申告を作る時にデータが自動で入力されて便利です。

e-Taxを活用して申告を行う

-e-Taxを使って申告することで、青色申告特別控除として65万円が適用されます。また、申告期間中の税務署は非常に混むため、窓口に並ぶ時間を短縮できる点もメリットです。インボイス制度にも対応しているため、事業者登録した方も安心してe-Taxを活用できます。

税理士はいつからつけるべき?

年間売上が1,000万円を超えたら、税理士をつけることを検討してみてください。1,000万円未満の場合、税務処理はシンプルですし税理士を雇っても報酬支払が負担になるだけです。また、税務署に行けば無料で相談にのってもらえるため、あえて税理士を雇う必要はないでしょう。

今回は、フリーランスの確定申告方法について解説しました。フリーランスになったら、まずは確定申告をしなくてはならないかどうかを確認しましょう。確定申告する場合、メリットが大きいのでぜひe-Taxから青色申告をしてください。最初は複雑に思えるかもしれませんが、会計ソフトを使えば初心者の方も一人でできるため、ぜひ頑張りましょう。

フリーランス新法のリアルを調査!トラブル回避のために知っておきたいことを解説

フリーランスとして働くうえで、突然の報酬未払いや一方的な契約解除などのトラブルに遭遇した経験がある人は、決して珍しくありません。とはいえ、発注者との関係性を重んじて「声を上げにくい」「泣き寝入りするしかない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

そのような背景の中、2024年10月に施行されたのが「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」です。フリーランス新法は、これまでグレーだった取引のあり方に一定の基準を設けるもので、フリーランスにとって大きな転換点といえます。

しかし、実際のところ、フリーランス新法の中身や実態はどうなっているのでしょうか。本記事では、フリーランス新法の基本知識をはじめ、フリーランス新法施行後の実態、発注側のクライアントや受注側のフリーランスがそれぞれ取るべき行動、実際にどのような契約トラブルが防げるのかなどについて解説します。

フリーランス新法はフリーランスを守るための法律

2024年10月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」は、フリーランスと発注者の間で起こりやすい契約トラブルを防ぐために制定されました。

この法律では、契約条件の明示や報酬の支払い期日など、発注者に対して具体的な義務が課されます。違反があった場合には、公正取引委員会が是正勧告や命令を出すことができ、従わなければ企業名と違反内容が公表される仕組みです。

フリーランス協会が公開している『フリーランス白書 2024』でも、最も期待されている行政対応として「違反事例の公開」が挙げられており、透明性の確保への関心が高まっています。

最大のメリットは、フリーランスが一方的な契約変更や報酬の未払いといったトラブルから守られる点です。明文化されたルールがあることで、声を上げづらい立場にある人でも法的な後ろ盾を得やすくなりました。

また、後ほど詳しく解説しますが、適用されるのは法人だけでなく、発注者が個人事業主であっても、事業者であれば対象になります

今のフリーランスの実態は?

それでは、実際のところ、今フリーランスとして働く人たちはどんな状況に置かれているのでしょうか。ここでは、現場の声やデータをもとに、その実情を見ていきましょう。

低賃金かつ過酷な労働

フリーランスの中には、「下請け」として正当な対価が支払われないまま、重い業務を抱えている人も少なくありません。中には実質的に雇用と変わらない働き方を強いられ、偽装請負のような状態になっているケースも見受けられます

実際、『フリーランス白書 2024』によると、今の働き方「全般」に対して満足している人は約7割いる一方で、「収入」「社会的地位」に満足している人は約3割に留まっています。

また、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約の発注者が一方的な都合により、『今回は、当初に取り決めた報酬の額の8割しか支払えない』と伝えてきた場合」の対応について、約3割ものフリーランスが「そのまま受け入れる(受け入れないと、今後の取引が切られる又は減らされるおそれがあったため)」と回答しているのが現状です。

フリーランス新法では、契約内容の明示義務や報酬の支払いルールが整備され、こうした不公平な扱いを是正することが期待されています。

報酬の未払い

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明示する義務が発注者側に課されているため、遅延トラブルの予防につながることが期待できます。

報酬が約束の期日に支払われず、何度も催促してようやく振り込まれるといった経験をしたことのあるフリーランスも少なくありません。実際に、内閣官房の『令和4年度フリーランス実態調査結果』でも、契約書に記載するべき事項として「支払期日」を重視する人は約半数にのぼっており、報酬の遅延や未払いがフリーランスにとって大きな不安要素であることが分かります。

契約条件の不透明さ

フリーランス新法では、発注者に契約条件の明示が義務づけられており、曖昧なまま業務が始まることを防ぐ効果が期待されています。業務内容や報酬、納期など、契約の根幹となる条件が曖昧なまま仕事が始まるケースは今も少なくありません。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』では、「取引条件が十分示されなかった」と答えた人が23.0%、交渉できないまま契約した人は57.9%にのぼっています。

フリーランス同士の取引によるトラブルも少なくない

フリーランス同士の取引によるトラブルも珍しくありません。主なトラブルとして、納期遅延や契約不履行、報酬の未払い、事前合意のない作業追加などが挙げられています。

このような取引もフリーランス新法の対象となり得ることから、フリーランス同士の取引によるトラブルの減少が期待されます。『フリーランス白書 2024』によると、発注時・受注時ともに、約1割のフリーランスが他のフリーランスとの契約トラブルを経験しているのが実情です。

一方で、実際には形式的な対応にとどまり、形骸化してしまうリスクもあるのが現実です。制度に頼るだけでなく、フリーランス自身が自らを守る意識を持つことも、今後いっそう重要になっていくでしょう。

フリーランス新法の認知度は?

フリーランス新法が施行されてから、しばらく経ちます。それでは、フリーランス新法は、一体どの程度浸透しているのでしょうか。

フリーランス新法の認知度は8割

『フリーランス白書 2024』によると、「フリーランス新法」という名称を見聞きしたことがある人は83.6%にのぼります。この結果を見ると、法律名自体はかなり広く知られており、フリーランスの間でも一定の認知は進んでいるといえるでしょう。

一方、内容を理解している人は少ない

認知度が8割以上にのぼる一方で、同調査によると、新法の内容をある程度理解しているフリーランスは、33.7%にとどまっています。さらに、「あまりよく知らない」が約半数、「見聞きしたことがない」も16%近く存在するのが現状です。つまり、名称だけが一人歩きし、制度の中身までは浸透していないといえるでしょう。

フリーランス新法に期待することは?

フリーランス新法への期待は、賛否が分かれています。

『フリーランス白書 2024』によると、フリーランス新法によって契約トラブルが軽減されることに「期待している」と答えた人(10段階評価で6以上)は、全体の6割にのぼります。一方で、4割は「それほど期待していない」(5以下)と回答しており、評価は分かれているのが実情です。

ここでは、『フリーランス白書 2024』をもとに、特に期待値が高かったポイントを中心に見ていきましょう。

契約条件の明確化・取引先の意識向上

契約書に明記されるべき内容を曖昧にされた経験を持つ人は少なくありません。フリーランス新法によって契約条件の書面化が義務づけられることで、法務知識の乏しい発注者にも意識改革が促されることが期待されています。

契約の基本が最低限守られるという前提が整うことは、大きな安心につながるでしょう。

不当な契約変更・解除の防止

フリーランスとして働くにあたって、発注側の都合で突然契約が打ち切られたり、報酬が一方的に減額されたりする不安を抱える人は多いです。

フリーランス新法ではこれらの行為が禁止され、契約解除には30日前の通知または正当な理由の提示が必要になりました。

ただし、解除そのものが禁止されているわけではなく、30日前の通知または正当な理由があれば契約の終了は可能です。民法651条1項では、「各当事者は、いつでも委任を解除することができる」ことが定められており、業務委託契約もこれに該当します。任意解除そのものが法的に制限されるわけではないため、過度な期待をしすぎないよう注意が必要です。

支払い遅延の解消・取引の健全化

納品から日にちが経っているにも関わらず、なかなか報酬が支払われないといった声は少なくありません。フリーランス新法では支払い期日を定め、遅延には罰則があるため、健全な取引慣行の定着が期待されています。

特に資本金の少ない企業との取引では、大きな抑止力になるでしょう。

育児・介護への配慮

フリーランスには、子育てや介護をしながら働いている人もいます。子供がまだ幼く、体調不良の際の対応に追われ、頭を抱えているケースもあります。子育てや介護と両立しながら働くフリーランスにとって、柔軟な働き方への配慮は切実な課題です。

フリーランス新法の施行によって、6ヶ月以上の契約では、こうした事情に応じた業務配分を発注者に求めることが可能になります。このように、声を上げにくかった状況が制度によって後押しされることに、期待が寄せられています。

どんな契約トラブルが防げるの?

ここでは、フリーランス新法によって具体的にどのような契約トラブルの防止につながるか、なぜ防げるようになるのかについて深掘りします。

口頭契約や曖昧な契約条件によるトラブル

フリーランスという働き方の特性上、契約が曖昧になりやすく、口頭でのやりとりや条件の不明確さによるトラブルが目立っていました。

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、「主な契約において、業務を開始する前に、依頼者から、取引条件が書面・メール・SNS・規約など形に残る方法(保存・記録可能な方法)で十分に示されていますか」という質問に対し、条件が十分に示されていないと感じるフリーランスは、約4割にのぼっています。

フリーランス新法では、契約前に発注者が契約条件を「書面または電子データ」で明示することが義務化されました。これにより、口頭だけでの契約や曖昧な取り決めを避ける仕組みが整います。そのため、「言った・言わない」といったトラブルの防止や、契約時点での認識ズレの減少が見込めるでしょう。

報酬の未払いや遅延

フリーランスの取引では、報酬の支払い遅延や未払いなどのトラブルも少なくありません。支払いスケジュールが明確に定められていなかった、「後で払う」といったあいまいな対応をされた、などの声も聞かれます。

こうした問題に対応するため、フリーランス新法では、報酬の「支払い期日」を契約時に明記することが発注者に義務づけられました。

さらに、報酬は原則として60日以内に支払うことが定められており、トラブルが起きた際にも法的根拠に基づいて催促しやすくなっています。「いつ支払われるのか」が明確になることで、フリーランス側の安心感にもつながります。

一方的な契約解除や報酬減額

一方的な契約解除や報酬減額もよく見られるケースです。これを受けて、6ヶ月以上の契約を解除する場合は、事前の通知や正当な理由の開示が求められるようになりました。また、報酬の一方的な減額や変更も禁止されており、突然の契約変更に対する歯止めが期待されています。

契約内容が明文化されることで、フリーランス側が不利益を被りにくくなる仕組みが整います。こうした規定によって、クライアント側の不誠実な対応を抑制する効果も期待できるでしょう。

ハラスメントや不当な要求

正規雇用ではないことから「外注」として軽視され、不当な扱いを受けるケースは後を絶ちません。

納品した成果物に対して、過度な修正を求められたり、必要以上に厳しいフィードバックを受けたりするといった声も多く聞かれます。単発や短期契約が多いため、関係性を築きにくいのも要因の1つです。

フリーランス新法では、発注者によるハラスメント防止措置も義務の1つとされています。業務に関係のない私的な連絡や高圧的な言動、過度な修正要求なども、対象になり得る行為です。働くうえでの安心感を高めると同時に、フリーランスが泣き寝入りせず、適切な対応を求めやすくなることが期待されます。

契約内容の不透明さと交渉のしにくさ

業務委託という立場柄、報酬や工数について意見を伝えにくいと感じるフリーランスは少なくありません。

また、契約内容の不透明さに対する不安の声も多く聞かれます。契約内容の不透明さに契約条件の文書やデータによる明示が義務化されることで、交渉の土台が明確になります。

これによって、曖昧なスタートや、「とりあえずやってみてから相談」といった取引のあり方が減ることが想定されます。また、発注側の認識も改まり、交渉が前提となる習慣への一歩につながるでしょう。

フリーランスが条件提示や質問をしやすくなる環境が、少しずつ整備されることが期待されます。

 【発注側】クライアント側の対応はどう変わる?

フリーランス新法の施行により、発注者にはいくつかの義務が課されるようになりました。従業員を使用しているかどうかによって義務の範囲は異なりますが、すべての発注者に契約条件の明示が求められます。

さらに、報酬支払いルールの明確化やハラスメント対策など、発注側の責任が明文化された点も特徴です。

ここでは、主に発注側が対応すべき義務について見ていきましょう。

契約条件の書面化と明確化

発注者は、契約前にフリーランスへ業務内容や報酬などの条件を文書や電子データで明示する義務があります。

これにより、口頭でのあいまいな取り決めや「言った・言わない」のトラブルを防ぐことが目的です。情報を形として残すことが、安心して業務を進める土台になります。

報酬の支払い期日の設定・期日内の支払い

報酬の支払いは、最大60日以内に支払うことが原則となりました。契約時点で具体的な期日を明記することが義務化され、報酬遅延の防止につながります。支払いのタイミングが明確になることで、フリーランスにとっても安心材料となるでしょう。

禁止行為の明確化

フリーランス新法では、禁止行為も明確化されました。発注者は、フリーランスに対して不当な契約変更や報酬の減額、返品の強要などを行ってはなりません。

これらは禁止行為として明示されており、違反した場合は是正勧告や企業名の公表などの対象となります。フリーランスの立場を守るための明確なラインが設けられた形です。

ハラスメント防止措置の義務化

クライアントによるパワハラやモラハラの防止も、発注者の義務として明文化されました。これには、業務上の指導を超えた言動や、過度な修正要求、プライベートへの干渉などが該当します。発注者は、適切な対応を講じることが必須です。これにより、フリーランスが安心して働ける環境づくりが求められています。

募集情報の正確性の確保

求人や業務委託の募集においても、発注者は内容を正確に記載する義務を負います。誤解を招く曖昧な表現や実態と異なる条件を提示することは、フリーランス新法の違反にあたる可能性があります。

そのため、初期段階から誠実な情報の提供が必須です。

育児・介護と業務の両立に対する配慮

6ヶ月以上の契約では、フリーランス側の申し出に応じて、育児や介護との両立に配慮した業務配分を行う義務があります。

働く環境やライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を実現しやすくなる制度です。多様な働き方を支えるための新たな仕組みとして、注目されています。

長期契約時の契約解除ルールの明示

6ヶ月以上の契約を中途解除する場合は、あらかじめ定められた期間前の通知(事前通知)や、正当な理由の開示が必要です。

急な打ち切りによる不利益を防ぎ、安定した受注環境を整えることが目的です。継続的な契約ほど、こうしたルールの整備が安心感につながります。

【受注側】フリーランスは実際に何をすればいい?

フリーランス新法の施行によって、発注者に義務が課されるようになりましたが、受注側も内容を理解し、自衛する姿勢が必要不可欠です。

ここでは、契約書の確認や報酬の支払い期日、トラブル対応など、フリーランス自身がやるべき基本的なポイントを整理します。

契約書を必ず受け取り、内容を確認する

業務委託契約は、口頭ではなく必ず書面または電子データで取り交わしましょう。

業務範囲や報酬額、支払い方法に加え、納品形式や工数についての確認も重要です。たとえば、ライターなら修正回数、翻訳者ならフォーマットや提出方法、報酬が税込価格か税抜価格かなど、見落としがちなポイントがトラブルの原因になります。

想定以上に工数が多く、「思っていたよりも負荷が重い」と不満を抱えるフリーランスは少なくありません

フリーランスはアルバイトや正社員のように時給や月給制ではなく、成果物やプロジェクト単位で報酬が支払われることが多いため、最初の段階で工数や条件を明確にしておくことが重要です。

また、途中解約や違約金の有無についても、事前に確認しておくと安心です。

報酬の支払い期日を確認する

フリーランス新法では、報酬の支払い期日を明記する義務があります。

支払いのタイミングが契約書に記載されていない、もしくは不明瞭な場合は必ず確認しましょう。原則として、業務の完了または給付の受領から60日以内の支払いが求められます。

不当な契約解除や報酬減額に注意する

契約期間中に一方的に契約を解除されたり、報酬を減額された場合は、違法となる可能性があります。6ヶ月以上の契約では、事前通知や正当な理由の説明が必要です。

契約内容をしっかりと記載・保管し、不当な対応には適切に対応しましょう。

ハラスメント被害に対処する

業務と関係のない連絡や高圧的な言動、過度な修正要求などは、ハラスメントに該当する場合があります。

発注者側には防止措置の義務があるため、問題を感じた場合は相談窓口の活用も視野に入れましょう。

たとえば、「個人LINEではなくSlackやChatworkなどのビジネスチャットを使う」「やりとりはDMではなくオープンなチャンネルで行う」といった工夫も有効です。不快なやりとりがあった場合に備えて、日頃から記録や証拠を残しておくとよいでしょう。

フリーランス新法はすべてのフリーランスに適用されるの?

「フリーランス新法」という名前から、すべてのフリーランスが対象だと思われがちですが、実はそうではありません。発注者や契約の条件によって、適用の有無が変わる仕組みになっています。

それでは、一体どのようなフリーランスに適用されるのでしょうか。

発注者が「特定業務委託事業者」の場合に適用される

フリーランス新法は、発注者が「特定業務委託事業者」に該当する場合、より多くの義務が課されるようになっています。

「特定業務委託事業者」とは、フリーランスに業務委託を行う事業者のうち、以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 法人であって、2人以上の役員がいる、または、従業員を使用している事業者
  • 個人事業主であって、従業員を使用している事業者

つまり、従業員を使用しているか、一定の組織体制がある発注者が「特定業務委託事業者」となります。ただし、従業員を使用していない事業者であっても、「業務委託事業者」として契約条件の明示義務など一部の義務は共通で課されるため、完全に対象外というわけではありません

一方、受注者側である「特定受託事業者(=フリーランス)」は、以下のいずれかに該当する人を指します。

  • 個人であって、従業員を使用していない者
  • 法人であって、1人代表のみ、かつ従業員を使用していない者

この定義には業種の制限はなく、ライター、エンジニア、一人親方、フードデリバリー、弁護士なども含まれます(いずれも従業員を使用していない場合に限ります)。

なお、フリーランス同士の取引であっても、発注側が「事業者」として業務を行っていれば、明示義務などが適用されるケースがあります

参照:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 (フリーランス・事業者間取引適正化等法) Q&A|内閣官房

働き方によって適用範囲が変わる可能性がある

契約上は業務委託でも、実態として発注者の指揮命令下で働いているケースなど、労働者性が強い場合は、労働基準法などの労働関係法令が適用される可能性があります。

この場合、フリーランス新法ではなく、雇用に近い立場として別の法制度が適用されるため、注意しましょう。働き方の「実態」によって判断される点が、ポイントです。

フリーランス同士の取引でも適用されるケースがある

発注者がフリーランスであっても、事業者として業務を委託していれば、法律の適用対象となる場合があります。従業員を使用していない場合は、「特定業務委託事業者」には該当しませんが、契約条件の明示義務など一部の規定は適用されます。

取引形態よりも事業者性が判断基準となるため、注意してください。

単発案件や短期間の取引でも適用される場合がある

契約期間の長さにかかわらず、契約内容が業務委託に該当し、発注者が事業者であればフリーランス新法の適用対象となります。

一方で、発注者が個人で業として行っていない場合(例:一般消費者など)は対象外です。あくまでも事業者としての発注かどうかが重要です。

フリーランス新法の今後の課題は?

フリーランス新法には、契約トラブルを減らす仕組みが盛り込まれていますが、課題が残っているのも事実です。ここでは、施行後に見えてきた運用面での懸念や、今後の改善点について見ていきましょう。

契約書の義務化が形骸化する可能性

契約書の書面交付が義務化されても、実際の運用が形式的にとどまる懸念があります。実際に、株式会社みらいワークスが実施した『フリーランス・副業プロフェッショナル人材への働き方とキャリアに関する実態調査』によると、約7割の人が、フリーランス新法施行後に「特に大きな変化は感じていない」と回答しています。

また、テンプレをそのまま流用したり、実態と異なる条件が記載されるケースも想定されます。フリーランスが本当に守られるには、契約書の中身に目を通し、必要があれば交渉することが重要です。

報酬未払いや遅延の実効性

報酬支払いのルールは整備されましたが、未払いへの対応がフリーランス任せになりやすい点が課題です。泣き寝入りを防ぐには、支払い遅延の事実を示す証拠の記録や、相談窓口の利用も視野に入れる必要があります。

制度があっても、実効性を持たせるためのサポート体制が求められます。

フリーランスが交渉力を持てるとは限らない

法的なルールが整っても、実際の取引現場では「言いづらい」「断られるかもしれない」といった心理的ハードルが残っています。『令和4年度フリーランス実態調査結果」では、20%のフリーランスが「交渉の余地はあったが、実際には交渉を行わなかった」と回答しているのが実情です。制度を活かすには、交渉することが当たり前になる環境づくりも必要となります。

フリーランス側の意識や知識が追いつかない可能性

制度が整備されても、「知らなかった」「契約書をよく読まなかった」という状態では、守られる権利も活かしきれません。最低限の法律知識や契約の読み方を理解することが、自衛の第一歩となります。

フリーランス新法をきっかけに、フリーランス自身が契約への意識を高めることが求められています。

発注側の法順守が徹底されない可能性

『令和4年度フリーランス実態調査結果』によると、約4人に1人のフリーランスが「契約書に明記されていた条件が、後から一方的に変更されたことで不利益を受けた」と述べています。

制度があっても、発注者側の意識や理解が不十分なままでは、トラブルは防ぎきれません。法の順守を促す周知や、違反事例の公開が重要になっていくでしょう。

発注側が発注を控える可能性

制度によってフリーランスが守られるようになる一方で、発注する側が面倒と感じて発注自体を控える可能性も懸念されています。

人事と現場が離れている場合に、ルールを理由に契約を打ち切られてしまったケースなどが考えられます。

とくに大企業などで、法務や人事が厳格に動く場合、現場が柔軟に契約できなくなるケースも想定されるでしょう。制度の意義を正しく伝え、発注側にも理解とメリットを感じてもらう働きかけが求められます。

フリーランス新法は、うまく使えば心強い味方に

フリーランス新法は、私たちフリーランスの気持ちに寄り添い、守ってくれる、「フリーランスの味方」ともいえる制度です。

会社に属していない私たちは、これまで契約や仕事において「自己責任」を強いられることも少なくありませんでした。しかし、会社に守られていない働き方だからこそ、社会がルールで守る仕組みが必要です。

契約トラブルや報酬の未払いといった、長年見過ごされがちだった問題に対して、ようやくルールが整い始めました。契約条件の明示義務や報酬の支払期日の設定、ハラスメント防止措置など、これまで「空気」だったマナーが、明確な義務としてルール化された点は大きな進展です。

一方で、実態がいまだ偽装請負に近いと感じている声も多く、SNSなどでは「フリーランス新法施行後も、環境の変化を実感できない」「フリーランス新法を知らない人が多い」という意見も少なくありません。認知度は高くても、理解度や運用面でのギャップはまだ大きいのが現状です。

特に受注者側であるフリーランス自身の知識不足も、課題の1つです。制度の中身を知らなければ、たとえ不当な取引を受けていても気づけず、適切に対応できないまま泣き寝入りしてしまう可能性があります。

フリーランス新法は、上手に活用すれば私たちフリーランスの強い味方になってくれます。制度を形骸化させないためにも、法制度に頼りきるのではなく、フリーランス自身が理解や知識を深め、自衛意識を持つことが、今後さらに重要になっていくのではないでしょうか。

Exit mobile version