「突然の入院で収入ゼロ」。フリーランスにとって、これほど怖いシナリオはありません。会社員なら傷病手当金で給与の約67%が保障されますが、国民健康保険にはこの制度が存在しないのです。
では、フリーランスは無防備なのでしょうか?
そんなことはありません。高額療養費制度、障害年金、そして2024年11月から全職種に拡大された労災保険特別加入。これらの公的制度を正しく活用すれば、民間保険に頼りすぎることなく、現実的なコストで備えられます。
この記事でわかること
- 会社員との保障格差と、フリーランスが使える公的制度の全体像
- 月額約1,000円から加入できる労災保険特別加入の仕組みと手続き
- 公的制度・貯金・民間保険を組み合わせた3パターンの実践プラン
公的制度+貯金+民間保険の「3段構え」が最適解
フリーランスの入院・休業リスクへの備えは、公的制度を軸に、貯金でつなぎ、必要に応じて民間保険で補完する。この順序が鉄則です。
なぜなら、公的制度は保険料が割安で給付内容も手厚いためです。医療費は高額療養費制度で月額約9万円以内に抑えられます。仕事中のケガなら労災保険特別加入で治療費全額+休業補償80%を受け取れます。重度の障害には障害基礎年金で年間約81万〜102万円が支給されます。
公的制度を知らずに民間保険ばかりに頼ると、毎月数万円の保険料を払いながら「公的制度で足りた」と後悔しかねません。まずは使える制度を把握し、足りない部分だけを民間保険で埋める。この考え方がコスト面でも合理的です。
CHECK
公的制度を軸に、貯金→民間保険の順で備える
高額療養費・労災特別加入・障害年金の3制度を活用
民間保険は「足りない部分を補う」位置づけに
フリーランスと会社員の保障格差|傷病手当金がない現実
フリーランスが抱える最大のリスクは、会社員なら当然受けられる「傷病手当金」がないことです。両者の保障の違いを整理し、フリーランスが置かれた状況を正確に把握しましょう。
会社員とフリーランスの保障を比較
会社員が加入する健康保険には、病気やケガで連続4日以上働けない場合に給与の約3分の2が最長1年6か月支給される「傷病手当金」があります。
一方、フリーランスが加入する国民健康保険には、この制度が存在しません。
| 保障項目 | 会社員 | フリーランス |
| 医療費の自己負担 | 原則3割 | 原則3割 |
| 高額療養費制度 | 利用可能 | 利用可能 |
| 傷病手当金 | 給与の約2/3(最長1年6か月) | なし |
| 労災保険 | 強制加入 | 特別加入のみ(任意) |
| 年金(障害時) | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 障害基礎年金のみ |
| 失業時の保障 | 雇用保険あり | なし |
フリーランスは「働けない期間の収入保障」が手薄です。月収30万円の方が3か月働けなくなった場合、会社員なら約60万円を受け取れますが、フリーランスは一切受け取れません。
フリーランスの年金保障が薄い理由
年金面でも格差があります。フリーランスは国民年金のみの加入となるため、障害年金を受給できるのは障害等級1級または2級に該当した場合だけです。
会社員なら障害等級3級でも障害厚生年金として年間約60万〜72万円を受給できます。フリーランスは3級では一切支給されません。うつ病などで「働くのは難しいが日常生活は何とかできる」という状態は3級に該当することが多く、この場合フリーランスは公的支援を受けられないことになります。
(参考)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
CHECK
フリーランスには傷病手当金がなく、休業中の収入保障が手薄
障害等級3級では障害基礎年金を受給できない
「軽度〜中度の就業不能」で最も保障格差が大きい
高額療養費制度|医療費の自己負担上限を知る
国民健康保険に加入しているフリーランスでも、高額療養費制度は会社員と同様に利用できます。この制度を理解しておけば、「入院で何百万円もかかるのでは」という不安の大部分は解消できます。
高額療養費制度の仕組みと自己負担限度額
高額療養費制度とは、1か月の医療費が所定の上限を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。入院や手術で高額な医療費がかかっても、実質的な自己負担は一定額に抑えられます。
自己負担限度額は年齢と所得によって異なります。69歳以下の場合、以下のとおりです。
| 所得区分 | 月額自己負担上限 |
| 年収約1,160万円超 | 約25万円+α |
| 年収約770万〜1,160万円 | 約17万円+α |
| 年収約370万〜770万円 | 約8万円+α |
| 年収約370万円以下 | 約5万7,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 約3万5,400円 |
年収500万円のフリーランスが入院し、医療費総額100万円(3割負担で30万円)かかった場合でも、高額療養費制度を利用すれば自己負担は約8万7,000円で済みます。差額の約21万円は後から払い戻されます。
同一世帯で直近12か月間に3回以上高額療養費に該当した場合、4回目からは「多数回該当」となり上限額がさらに下がります。年収370万〜770万円なら月額約4万4,400円まで軽減されます。
(参考)厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
限度額適用認定証を事前に取得する
高額療養費制度は本来、窓口で全額支払った後に払い戻しを受ける仕組みです。ただし、事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。
入院が予定されている場合は、市区町村の国保窓口で限度額適用認定証を申請しておきましょう。急な入院でも、入院中に申請すれば退院時の支払いに間に合うこともあります。マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、医療機関でオンライン資格確認が行われ、認定証がなくても上限額までの支払いで済む場合もあります。
ただし、差額ベッド代(個室料金)、入院時の食事代、先進医療の技術料などは高額療養費制度の対象外です。差額ベッド代は1日数千円〜数万円かかることもあるため、入院費用の見積もりには加味しておく必要があります。
CHECK
高額療養費制度で医療費の自己負担は月額約9万円以内に抑えられる
限度額適用認定証を事前に取得すれば窓口支払いも軽減
差額ベッド代・食事代・先進医療費は対象外
障害年金|長期の就業不能に備える公的保障
病気やケガで長期間(おおむね1年6か月以上)働けない状態が続く場合、障害年金を受給できる可能性があります。フリーランスが受給できるのは「障害基礎年金」で、障害等級1級または2級に該当した場合に支給されます。
障害基礎年金の受給要件と金額
障害基礎年金を受給するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
要件1:初診日の要件
障害の原因となった病気やケガの初診日が、国民年金の加入期間中にあること。20歳前、または60歳以上65歳未満で年金未加入の期間中でも可。
要件2:保険料納付要件
初診日の前日時点で、加入期間の3分の2以上の保険料納付済み期間があること。または直近1年間に未納がないこと。
要件3:障害認定日の要件
障害認定日(初診日から1年6か月経過した日)に、障害等級1級または2級に該当していること。
受給できる年金額は、2024年度の金額で以下のとおりです。
| 障害等級 | 年金額(年額) | 月額換算 |
| 1級 | 約102万円 | 約8万5,000円 |
| 2級 | 約81万6,000円 | 約6万8,000円 |
18歳未満の子どもがいる場合、子の加算として1人目・2人目は各23万4,800円、3人目以降は各7万8,300円が加算されます。
(参考)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
障害等級の判定基準と注意点
障害等級の判定は、身体障害者手帳の等級とは異なる基準で行われます。
- 1級:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
- 2級:日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする程度
具体例として、両眼の視力の和が0.04以下(1級)、一上肢の3大関節のうち2関節が用を廃したもの(2級)、うつ病により日常生活がほとんどできない状態(2級)などが該当します。
注意すべきは、「仕事ができない」だけでは障害年金の対象にならない点です。日常生活への支障の程度で判定されるため、「在宅で少しずつ仕事ができるが以前のようには働けない」という状態では2級に該当しない可能性があります。
また、障害年金の受給開始まで初診日から最短でも1年6か月かかります。この間の収入確保がフリーランスにとっての課題です。
CHECK
障害基礎年金は等級1級で年間約102万円、2級で約81万円を受給可能
受給開始まで初診日から最短1年6か月かかる
「仕事ができない」だけでは該当せず、日常生活への支障が判定基準
労災保険特別加入|2024年11月から全職種対象に
従来、労災保険に特別加入できるフリーランスは、建設業の一人親方やITエンジニアなど限られた職種のみでした。2024年11月1日から制度が大幅に拡大され、業種・職種を問わずすべてのフリーランスが特別加入できるようになりました。
(参考)厚生労働省「令和6年11月1日から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となりました」
特別加入制度の概要とメリット
労災保険の特別加入制度を利用すると、仕事中や通勤中のケガ・病気に対して以下の補償を受けられます。
| 給付の種類 | 内容 |
| 療養(補償)給付 | 治療費が全額補償(自己負担ゼロ) |
| 休業(補償)給付 | 休業4日目から給付基礎日額の80%を支給 |
| 障害(補償)給付 | 後遺障害が残った場合に等級に応じた年金・一時金 |
| 遺族(補償)給付 | 万が一の場合、遺族に年金・一時金を支給 |
注目すべきは休業(補償)給付です。フリーランスにはない「傷病手当金」に相当する保障を、仕事中のケガ・病気に限定されるとはいえ公的制度で得られます。働ける状態に回復するまで支給が続くため、長期療養でも安心です。
加入方法と保険料の計算
労災保険に特別加入するには、厚生労働省が認可した「特別加入団体」を通じて申請します。個人で直接加入はできません。
2024年11月以降、全職種のフリーランスを対象とする特別加入団体として以下が設立されています。
- フリーランス労災保険組合(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が運営)
- 連合フリーランス労災保険センター(日本労働組合総連合会が運営)
保険料は「給付基礎日額×365日×保険料率(0.3%)」で算出します。
| 給付基礎日額 | 年間保険料 | 月額換算 |
| 3,500円 | 約3,800円 | 約320円 |
| 1万円 | 約1万950円 | 約910円 |
| 2万円 | 約2万1,900円 | 約1,825円 |
| 2万5,000円(上限) | 約2万7,375円 | 約2,280円 |
給付基礎日額を2万円に設定した場合、年間保険料は約2万2,000円(月額約1,800円)です。この保険料で仕事中のケガによる入院時に治療費全額+日額1万6,000円の休業補償を受けられます。民間の所得補償保険と比較して、コストパフォーマンスは極めて高いといえます。
ただし、労災保険は「仕事中または通勤中」のケガ・病気のみが対象です。プライベートでの事故や、仕事に関係のない病気は補償対象外となります。
加入時の注意点
特別加入を検討する際には、以下の点に注意が必要です。
| 条件 | 詳細 |
| 対象者 | BtoBフリーランス(企業から業務委託を受けて働く方) |
| 対象外 | 一般消費者のみを相手にしている事業者、従業員を継続的に雇用している場合 |
| 例外 | BtoBとtoCの両方をしている場合はtoC業務中の事故も補償対象 |
| 既存制度がある職種 | 建設業の一人親方、ITエンジニア、アニメーション制作者などは業種別団体から加入 |
CHECK
2024年11月から全職種のフリーランスが労災保険に特別加入可能に
年間約1万〜3万円の保険料で治療費全額+休業補償80%を受けられる
仕事中・通勤中のケガ・病気のみが対象、プライベートは対象外
民間保険の活用|就業不能保険と所得補償保険
公的制度だけでは不安が残る場合、民間の就業不能保険や所得補償保険で補完することを検討します。ただし、公的制度でカバーできない部分を見極めたうえで必要な保障を選ぶことがポイントです。
就業不能保険と所得補償保険の違い
どちらも病気やケガで働けなくなったときの収入減少に備える保険ですが、性質が異なります。
| 項目 | 就業不能保険 | 所得補償保険 |
| 取扱会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
| 保険期間 | 60歳・65歳まで(長期) | 1年・5年(短期更新) |
| 給付期間 | 就業不能が続く限り満了まで | 1〜2年程度 |
| 保険料 | 加入時年齢で固定が多い | 更新時に上がる可能性あり |
| 精神疾患 | 保障対象の商品が増加 | 対象外の商品が多い |
短期間の休業(数か月程度)に備えるなら所得補償保険、長期間の就業不能(数年以上)に備えるなら就業不能保険が適しています。
加入を検討すべきケース・不要なケース
民間保険の必要性は個人の状況によって異なります。
加入を検討すべき場合
- 扶養家族がいて自分の収入に依存している
- 住宅ローンや事業資金の借入があり毎月の返済義務がある
- 貯金が生活費3か月分未満で収入が途絶えるとすぐに困窮する
- 労災保険特別加入ではカバーできない「仕事外の病気・ケガ」にも備えたい
不要または優先度が低い場合
- 十分な貯金(生活費1年分以上)がある
- 配偶者にも安定した収入がある
- 仕事の性質上、体調不良でも収入が完全にゼロにならない
フリーランスにとって民間保険は「最後の安全網」という位置づけが適切です。公的制度と貯金で基本的な備えを整え、それでも不安が残る部分を補完するという考え方をお勧めします。
保険選びのチェックポイント
就業不能保険・所得補償保険を選ぶ際の確認事項は以下のとおりです。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| 「就業不能」の定義 | 「入院または医師の指示による在宅療養」か「一切の仕事ができない状態」かで給付ハードルが異なる |
| 免責期間の長さ | 60日・180日など、給付金が支払われない期間。この期間は貯金でカバーが必要 |
| 精神疾患の保障 | うつ病・適応障害が対象か、対象でも給付期間に制限があるか |
| 保険料と給付金のバランス | 月額10万円給付の場合、30歳男性で月額1,500〜3,000円程度が相場 |
CHECK
短期休業なら所得補償保険、長期の就業不能なら就業不能保険
民間保険は「公的制度で足りない部分を補う」位置づけ
「就業不能」の定義と免責期間を必ず確認
貯金の目安|生活費の何か月分を確保すべきか
公的制度と民間保険に加え、貯金による備えもフリーランスには欠かせません。収入が途絶えた場合に必要な貯金額の考え方を整理します。
最低限必要な貯金額の算出方法
フリーランスが備えとして持っておくべき貯金額は、最低でも生活費の3〜6か月分が目安です。
根拠は以下のとおりです。
- 病気やケガで働けなくなると、基本的には即座に収入が止まる
- 障害年金の支給開始まで最短でも1年6か月かかる
- 民間の就業不能保険に加入していても、免責期間(60〜180日)は給付を受けられない
月々の生活費が30万円なら、最低90万〜180万円の貯金が必要という計算です。扶養家族がいる場合や住宅ローンの返済がある場合は、6か月〜1年分を目標にするとより安心です。
効率的な貯金の仕方
フリーランスの収入は変動しやすいため、「収入があった月に多めに貯金する」という方法だと支出の多い月に取り崩してしまいがちです。
より確実に貯金を増やすには、毎月の売上から先に一定額を貯金用の別口座に移す「先取り貯金」が有効です。売上の10〜20%を目安に、生活費とは完全に分けて管理しましょう。
貯金の一部は普通預金に、残りは定期預金やネット銀行の高金利預金に分けておくと、急な出費にも対応しつつ利息も得られます。ただし、この「備え」のための貯金は投資には回さず、元本保証の形で保有しておくべきです。いざというときにすぐ使えることが最優先だからです。
CHECK
生活費の3〜6か月分の貯金を目安に確保
「先取り貯金」で売上の10〜20%を別口座に
備えの貯金は投資に回さず、元本保証で保有
3つの備えを組み合わせた実践プラン
公的制度、民間保険、貯金の3つを実際にどう組み合わせればよいか、3パターンの具体例を紹介します。
プラン1:最低限のコストで備えたい場合
想定:月収30万円、独身、住宅ローンなしのWebデザイナー
| 項目 | 内容 |
| 公的制度 | 労災保険特別加入(給付基礎日額1万円)、年間保険料約1万1,000円 |
| 民間保険 | 加入せず |
| 貯金 | 生活費4か月分の120万円 |
仕事中のケガ・病気なら労災保険で治療費全額+日額8,000円の休業補償を受けられます。それ以外の病気・ケガは貯金でカバーし、長期化した場合は障害年金の申請を検討。年間の保険コストは約1万1,000円です。
プラン2:家族がいて手厚く備えたい場合
想定:月収50万円、配偶者と子ども1人、住宅ローン返済中のITエンジニア
| 項目 | 内容 |
| 公的制度 | 労災保険特別加入(給付基礎日額2万円)、年間保険料約2万2,000円 |
| 民間保険 | 就業不能保険(給付金月額15万円、精神疾患保障あり)、月額約3,000円 |
| 貯金 | 生活費6か月分の300万円 |
仕事中のケガ・病気なら労災保険で日額1万6,000円、それ以外の病気・ケガでも就業不能保険で月額15万円を受け取れます。年間の保険コストは約5万8,000円(労災約2万2,000円+就業不能保険約3万6,000円)です。
プラン3:十分な資産がある場合
想定:月収80万円、独身、金融資産2,000万円以上のコンサルタント
| 項目 | 内容 |
| 公的制度 | 労災保険特別加入(給付基礎日額2万5,000円)、年間保険料約2万7,000円 |
| 民間保険 | 加入せず |
| 貯金 | 生活費1年分以上を確保済み |
十分な資産がある場合、民間の就業不能保険は費用対効果が低くなります。仕事中のケガ・病気は労災保険でカバーし、それ以外は資産で対応するシンプルなプランで十分です。年間の保険コストは約2万7,000円のみです。
CHECK
独身・住宅ローンなしなら年間約1万円の保険料で基本的な備えが可能
家族ありなら労災+就業不能保険で年間約6万円の保障設計
資産が十分なら労災保険+貯金のシンプル構成でOK
Q&A|フリーランスの入院・休業に関するよくある質問
フリーランスの入院・休業対策について、よく寄せられる質問をまとめました。
Q:労災保険特別加入は「仕事中」のケガしか補償されないのですか?
仕事中に加えて「通勤中」のケガ・病気も補償対象です。
ただし、業務との因果関係が認められない病気(風邪、インフルエンザ、持病の悪化など)やプライベートでの事故は対象外です。仕事中かどうかの判断は、業務遂行性(仕事をしていたか)と業務起因性(仕事が原因か)の両面から行われます。
Q:高額療養費制度を使っても、入院時の食事代や差額ベッド代は自己負担になりますか?
高額療養費制度の対象は保険診療の自己負担分のみです。
入院時の食事代(1食460円程度)、差額ベッド代(個室の場合1日数千円〜数万円)、先進医療の技術料などは全額自己負担となります。入院費用の総額を見積もる際には、これらの費用も考慮に入れてください。
Q:労災保険特別加入の給付基礎日額は、いくらに設定すべきですか?
現在の月収の30分の1を目安に設定することをお勧めします。月収30万円なら日額1万円、月収60万円なら日額2万円が目安です。
ただし、上限は日額2万5,000円(月額換算約75万円)までなので、それ以上の収入がある方は上限で加入し、不足分は貯金や民間保険で補完することになります。
まとめ:公的制度を軸に、自分に合った備えを設計しよう
フリーランスの入院・休業リスクへの備えは、「公的制度+貯金+民間保険」の3段構えが基本です。
まず公的制度を最大限活用しましょう。高額療養費制度で医療費の上限を抑え、2024年11月から全職種対象となった労災保険特別加入で仕事中のケガ・病気に備え、重度の障害時には障害基礎年金の申請を検討します。
次に、生活費の3〜6か月分の貯金を確保します。公的制度の支給開始までの「つなぎ」として、また民間保険の免責期間をカバーするために必要です。
そして、公的制度と貯金だけでは不安が残る部分を民間保険で補完します。扶養家族がいる方、住宅ローンがある方、仕事外の病気にも備えたい方は、就業不能保険への加入を検討してください。
今日から実践できる3つのアクション
- 労災保険特別加入の対象か確認し、加入団体を調べる
- 現在の貯金額が生活費3〜6か月分に達しているか確認する
- 高額療養費制度の自己負担限度額を把握し、限度額適用認定証の取得を検討する
出典・参照一覧
本記事は以下の情報源をもとに作成されています。
- 厚生労働省「令和6年11月1日から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となりました」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- フリーランス協会「フリーランス労災保険組合」
- 日本労働組合総連合会「連合フリーランス労災保険センター」
※記事内容は2025年11月27日時点の制度・法令に基づいています。制度改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省・日本年金機構または社会保険労務士にご確認ください。
