フリーランスや副業をしている会社員の中には、「少額だからバレないだろう」「忙しくて後回しにしていたら期限が過ぎた」という方も少なくありません。しかし、確定申告をしないと大きなペナルティを受ける可能性があります。しかし、確定申告をしないと思わぬペナルティが待っています。
本記事では、無申告のリスク、修正申告の期限、今からできる対処法を実例とともに解説します。
この記事でわかること
- 無申告が税務署にバレる3つの理由
- 無申告加算税と重加算税の税率と計算方法
- 税務調査前に自主申告すれば軽減できるペナルティ
確定申告しなかったらどうなる?無申告のリスク
確定申告を怠ると、税務署から「お尋ね」が届いたり、税務調査が入ったりします。無申告は必ずバレる仕組みになっています。
無申告がバレる3つの理由
「少額だからバレない」と考える方がいます。しかし、税務署には無申告を発見する仕組みが複数あります。
実際には以下の3つの理由で、無申告は必ず税務署に把握されます。金額の大小に関わらず、無申告はリスクが高い行為です。
1. 支払調書による把握
取引先や企業は、報酬を支払った際に「支払調書」を税務署に提出しています。誰にいくら支払ったかは税務署に把握されています。
例えば、出版社やテレビ局からギャラや印税を受け取った場合、源泉徴収されているから大丈夫だと思いがちです。しかし、支払調書で税務署が収入を把握しています。確定申告をしないと「納税が足りない」とバレます。
2. 反面調査による発覚
税務調査が入った際、調査対象者の取引先にも調査が入ることがあります。これを「反面調査」といいます。
一人に税務調査が入れば、同じスキームを使っていた他の利用者全員に芋づる式に調査が入るケースもあります。
3. 情報提供による発覚
国税庁には情報提供を受け付ける窓口があります。「あの人は稼いでいるのに確定申告をしていない」という情報が寄せられると、税務署は調査を開始します。
情報提供は、元従業員、取引先、近隣住民、さらには家族からも寄せられることがあります。特に、SNSで高額な買い物や豪華な生活を発信している一方で、確定申告をしていない場合、情報提供されるリスクが高まります。匿名での情報提供も可能なため、誰が通報したか特定することは困難です。
CHECK
支払調書で税務署が収入を把握
反面調査で芋づる式にバレる
情報提供窓口で密告される可能性
無申告のペナルティは?
確定申告をしなかった場合、以下のペナルティが課されます。ペナルティには3種類あり、それぞれ税率が異なります。
無申告加算税
期限内に申告しなかった場合にかかる罰金です。税務調査が入る前に自主的に申告するか、税務調査後に申告するかで税率が大きく変わります。
| 申告タイミング | 税率 |
| 税務調査前に自主的に申告 | 税額の5% |
| 税務調査後に申告 | 税額の15%(50万円超の部分は20%) |
重加算税
悪質な隠蔽や仮装が認められた場合、さらに重い罰金が課されます。意図的に売上を隠したり、虚偽の経費を計上したりした場合に適用されます。
| 状況 | 税率 |
| 無申告の場合の原則 | 税額の40% |
| 申告済みで隠蔽・仮装があった場合 | 税額の35% |
延滞税
納付期限から納税までの期間に応じて利息がかかります。延滞税の税率は年によって変動しますが、近年は年8%台後半で推移しています。
通常の無申告加算税の場合は延滞税が1年分で打ち止めになる措置があります。しかし、重加算税の場合は全期間分が課されます。
CHECK
無申告加算税は税額の5%から20%
重加算税は税額の35%から40%
延滞税は年8%前後で推移(年度によって変動)
実例:確定申告を放置した結果どうなったか
実際に無申告で大きなペナルティを受けた3つの事例を紹介します。
事例1:長年無申告だった芸人に降りかかった処分
ある芸人は、2009年に法人を設立後、長期にわたり無申告を続けました。
| 期間 | 状況 | 税務署の対応 | 結果 |
| 2010年〜2012年 | 3年間無申告 | 税務署からお尋ね | 申告・納税 |
| 2013年〜2015年 | 再び3年間無申告 | お尋ね | 申告のみで納税せず |
| 2016年5月 | – | – | 銀行預金を差し押さえ |
| 2016年〜2018年 | 3度目の無申告 | 国税局の本格調査 | 重加算税(40%)が課される |
最終結果
- 旅費・衣装代・高級腕時計など約2,000万円が経費否認
- 追徴税額:約1億円+住民税
- 2018年12月:過去4年分の修正申告+3年分の期限後申告
- 芸能活動自粛に追い込まれる
繰り返しの無申告により、税務署ではなく国税局が本格的な調査に入りました。当初は無申告加算税で済んでいたものが、悪質と判断され重加算税40%に引き上げられました。その結果、莫大な追徴課税となりました。
事例2:副業収入を無申告にした科学者
ある科学者は、研究所からの給与約1,000万円に加え、書籍の印税やテレビ出演料で年間1億円超の副業収入を得ていました。
| 項目 | 内容 |
| 無申告期間 | 2006年〜2008年(3年間) |
| 無申告の理由 | 源泉徴収されているから納税不要と勘違い |
| 税務調査 | 2009年8月に国税局の調査 |
| 申告・納税 | 2009年11月に過去3年分の期限後申告 |
| 追徴税額 | 約1.6億円 |
高額所得者の場合、ギャラや印税から源泉徴収されていても、それだけでは税金が足りません。確定申告でさらに納税する必要があります。無申告だと莫大なペナルティが発生します。
事例3:仮想通貨で儲けた人と節税コンサルの脱税スキーム
2017年頃、仮想通貨で大儲けした人が「節税コンサル」を利用して無申告にするスキームが流行しました。
| 項目 | 内容 |
| 仮想通貨の利益 | 約8,000万円 |
| スキーム内容 | 節税コンサルに8,000万円を「コンサル料」として振込 |
| キャッシュバック | コンサルから現金約6,000万円を返金 |
| 表面上の処理 | 経費8,000万円で利益相殺、税額0円で無申告 |
結果
- 反面調査で芋づる式に全員バレる
- 8,000万円の経費が否認される
- 本来の税額約4,400万円+重加算税
- コンサルに払った差額約2,000万円も戻らず
- コンサルは脱税で検察に告発され有罪判決
このような「節税スキーム」は脱税行為です。一人に税務調査が入れば、同じスキームを使っていた全員に調査が入ります。節税コンサルに支払った費用も戻らず、本来の税金と重加算税のダブルパンチになります。
CHECK
繰り返し無申告は重加算税40%
源泉徴収だけでは足りない場合も
節税スキームは脱税で刑事告発
修正申告の期限と対処法
無申告に気づいたら、できるだけ早く対応することが大切です。放置すればするほど、税務署からの追及が厳しくなります。
修正申告とは?
確定申告の内容に誤りがあった場合や、申告をしていなかった場合に、正しい内容を申告し直すことを「修正申告」といいます。この手続きにより、過去の申告を訂正できます。
厳密には、申告期限後に初めて申告する場合は「期限後申告」、すでに申告した内容を訂正する場合が「修正申告」です。いずれの場合も、できるだけ早く対応することが重要です。
修正申告の期限
「修正申告(および期限後申告)には法的な期限はありません。いつでも申告できます。
しかし、税務調査が入る前か後かで、ペナルティの金額が大きく変わります。以下のタイミングをしっかり理解しておきましょう。
1. 税務調査が入る前に自主的に申告
無申告加算税が5%と最も軽いペナルティで済みます。また、延滞税も1年分で打ち止めになる措置があります。早めに対応することが最善策です。
2. 税務調査後
無申告加算税が15%(50万円超の部分は20%)に跳ね上がります。さらに、悪質と判断されれば重加算税40%が課される可能性もあります。
3. 過去何年分まで遡るか?
| 状況 | 遡及年数 |
| 通常 | 3年分 |
| 悪質な場合 | 5年から7年分 |
無申告に気づいたら今すぐやるべきこと
無申告に気づいた場合、放置すればするほどペナルティが重くなります。以下の3つのステップで、できるだけ早く対応しましょう。
ステップ1:過去の収入・支出を整理する
まず、過去3年分(悪質な場合は5年から7年分)の収入と支出を整理します。以下の資料を集めましょう。
- 取引先からの支払調書
- 銀行口座の入出金履歴
- 領収書やレシート
資料が不足している場合は、銀行に過去の取引明細を請求したり、取引先に支払調書の再発行を依頼したりすることも可能です。完璧に揃わなくても問題ありません。揃う範囲で集めましょう。
ステップ2:税理士に相談する
自分で対応するのが不安な場合は、税理士に相談しましょう。税理士は過去の申告内容を正確に整理し、適切な修正申告をサポートしてくれます。
特に、税務調査が入りそうな場合や、複数年分の無申告がある場合は、税理士に依頼することで、税務署との交渉や書類作成をスムーズに進められます。税理士費用は発生しますが、重加算税を回避できれば結果的に節約になります。
ステップ3:できるだけ早く申告・納税する
税務調査が入る前に自主的に申告すれば、ペナルティを最小限に抑えられます。無申告加算税は税務調査前なら5%、税務調査後なら15%から20%です。
申告書を提出したら、すぐに納税も行いましょう。申告だけして納税を後回しにすると、延滞税が加算され続けます。分割納付が必要な場合は、税務署に相談すれば対応してもらえることもあります。
CHECK
税務調査前の自主申告で加算税5%
税務調査後は加算税15%から20%
悪質な場合は5年から7年遡る
無申告でもOKな人とは?
すべての人が確定申告をする必要はありません。一定の条件を満たす場合、確定申告は不要です。
以下に該当する場合、確定申告が不要となるケースです。ただし、還付金を受け取れる可能性がある場合は、申告することで得をする場合もあります。
会社員・アルバイト・パート
年収2,000万円以内で、1か所のみで勤務し、年末調整を受けている場合は確定申告不要です。年末調整で所得税の精算が完了しているためです。
ただし、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受ける場合は、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。
年金受給者
年金収入が400万円以下で、源泉徴収されている場合は確定申告不要です。年金から所得税が天引きされているためです。
ただし、医療費控除や扶養控除などを受ける場合は、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。
個人事業主・フリーランス
合計所得が48万円以下の場合(住民税を考慮すると45万円以下が安全)は確定申告不要です。所得が基礎控除額以下のため、納税額が0円になるためです。
ただし、青色申告特別控除を受けたい場合や、赤字を繰り越したい場合は、確定申告をすることで翌年以降の節税が可能です。
最終的な納税額が0円になる場合
経費や控除を差し引いた結果、納税額が0円であれば確定申告は不要です。納税義務がないためです。
ただし、源泉徴収されている場合は、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。特にフリーランスの方は、確定申告で還付を受けられるケースが多いでしょう。
CHECK
会社員は年収2,000万円以内で年末調整済みならOK
年金受給者は400万円以下で源泉徴収済みならOK
個人事業主は合計所得48万円以下ならOK
2024年から厳罰化!無申告のペナルティが強化
2024年以降、無申告に対する罰則が大幅に強化されました。繰り返し無申告を行う人や高額な無申告に対して、より重いペナルティが課されます。
この改正により、無申告のリスクはさらに高まりました。以下で、具体的な強化内容を確認しましょう。
繰り返し無申告の場合
2024年以降、無申告を繰り返す人への罰則が大幅に強化されました。過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合、さらに10%加算されます。
この強化により、無申告を繰り返すことは極めて高いリスクとなりました。以下の表で、強化後の税率を確認してください。
| 税の種類 | 通常税率 | 強化後 |
| 通常の無申告加算税 | 15%から20% | さらに+10% |
| 重加算税 | 40% | 50% |
300万円超の部分にさらなる加算
高額な無申告に対しても、罰則が強化されています。納税額が300万円を超える部分については、通常の無申告加算税に加えてさらに10%の加算税が上乗せされます。
例えば、納税額が500万円の場合、300万円を超える200万円部分には、通常の加算税に加えてさらに10%が課されます。高額所得者ほど、無申告のリスクが大きくなります。
CHECK
2024年以降は繰り返し無申告で+10%
重加算税は最大50%
300万円超の部分はさらに+10%
よくある質問
無申告に関する実務的な疑問にお答えします。
Q1. 無申告に気づいたらどうすればいい?
できるだけ早く税理士に相談し、期限後申告の準備を始めましょう。税務調査が入る前に自主的に申告すれば、無申告加算税が5%と最も軽いペナルティで済みます。
過去3年分の収入・支出を整理し、支払調書や銀行口座の入出金履歴、領収書などの資料を集めることから始めてください。
Q2. 無申告加算税と重加算税の違いは?
無申告加算税は、期限内に申告しなかった場合に課される罰金です。税務調査前なら5%、税務調査後なら15%から20%です。
重加算税は、悪質な隠蔽や仮装が認められた場合に課される罰金で、税率は35%から50%です。意図的に売上を隠したり、虚偽の経費を計上したりした場合に適用されます。
Q3. 税務調査はどのくらいの確率で来る?
税務署は支払調書や反面調査、情報提供などで無申告を把握しています。金額の大小に関わらず、無申告は必ずバレる仕組みになっています。
特に、繰り返し無申告を続けたり、高額な所得がある場合は、税務調査が入る可能性が高まります。早めに対応することが重要です。
まとめ:確定申告は必ず期限内に!
本記事では、確定申告をしなかった場合のリスクと対処法について解説しました。
無申告は支払調書、反面調査、情報提供により必ず税務署に把握されます。税務調査が入る前に自主申告すれば無申告加算税は5%で済みますが、税務調査後は15%から20%、悪質な場合は重加算税40%から50%が課されます。
2024年以降は罰則がさらに強化されており、繰り返し無申告の場合はさらに10%が加算されます。高額な無申告に対しても、300万円を超える部分にさらに10%が上乗せされます。
今日から実践できる3つのアクション
- 過去3年分の収入・支出を整理する
- 税理士に相談して修正申告の準備を始める
- 税務調査が来る前に自主的に期限後申告を実施する
無申告に気づいたら、できるだけ早く対応することが重要です。税務調査が入る前に自主的に申告すれば、ペナルティを最小限に抑えられます。正しく申告することが、最も確実で安全な方法です。
出典・参照元
本記事は以下の情報源をもとに作成されています。
- 国税庁「確定申告を忘れたとき」
- 国税庁「加算税制度」
※記事内容は2025年11月10日時点の税制・法令に基づいています。税制改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は国税庁または税理士にご確認ください。
