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フリ転編集部

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フリーランスとして仕事を受ける際、クライアントと口約束だけで契約を進めてしまい、後でトラブルになった経験をお持ちの方もいるでしょう。

中小企業の経営者や個人で不動産契約を行う方も、「口約束でも契約は成立するのか」「証拠がない場合はどうすればいいのか」という疑問を抱くことがあります。

2024年11月1日から施行されたフリーランス新法では、業務委託における書面または電子メール等での契約内容の明示が発注者に義務化されました。しかし、民法上では口約束も契約として成立するため、「どこまでが有効でどこからがリスクなのか」を正確に理解することが重要です。

この記事でわかること

  • 口約束契約が法的に有効となる基準とフリーランス新法での具体的な扱い
  • 口約束でトラブルになった場合の対処法と証拠収集の実務手法
  • 今後のリスク回避のための書面化・記録方法の具体的ノウハウ
目次

口約束契約は民法上有効、ただしフリーランス新法で書面交付が義務化

口約束契約は民法上では原則として有効ですが、2024年11月1日施行のフリーランス新法では、業務委託における書面または電子メール等での契約内容の明示が発注者に義務化されました。

民法では、契約は当事者間の「申込み」と「承諾」の合意があれば成立します。そのため、口頭でのやり取りでも契約として法的拘束力を持ちます。ただし、口約束には「契約内容を証明する証拠がない」という重大なリスクがあり、トラブル発生時に「言った・言わない」の水掛け論になりやすい問題があります。

一方、フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法/正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注者が業務委託を行う際、給付の内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法(電子メール・SMS・SNSメッセージ等)で明示することが義務付けられました。

重要なポイントは、書面交付を怠っても口約束による契約自体は民法上有効に成立しますが、発注者が書面交付義務を怠ると行政指導や罰則の対象となるという点です。つまり、私法上の契約の効力と、公法上の行政義務は別の問題として理解する必要があります。

口約束契約が法的に有効とされる理由と民法上の原則

口約束契約がなぜ法的に有効とされるのか、その根拠と成立要件について解説します。

民法における契約成立の要件

民法では、契約は「申込み」と「承諾」という意思表示の合致があれば成立します。この原則を「諾成契約」と呼び、口頭での合意であっても、書面がなくても、当事者間で合意があれば契約は法的に成立します。

たとえば、フリーランスのデザイナーがクライアントから電話で「来週までにロゴデザインを5万円で作ってほしい」と依頼され、「承知しました、お引き受けします」と口頭で承諾した時点で、業務委託契約は成立しています。この時点で、デザイナーには納品義務が、クライアントには報酬支払義務が法的に発生します。

(参考)法務省「民法(債権関係)改正について」

要式契約と諾成契約の違い

ただし、すべての契約が口約束で成立するわけではありません。一部の契約については、法律で書面作成が義務付けられている「要式契約」が存在します。

契約の種類書面の要否具体例
諾成契約不要(口約束でも成立)業務委託、売買、賃貸借(一部除く)
要式契約必要(書面がないと無効)保証契約、定期借地契約、定期建物賃貸借

要式契約の代表例は保証契約ですが、その他にも法律で方式が定められている契約があります(例:定期借地契約など)。たとえば、友人の借金の連帯保証人になる場合、口約束だけでは法的に無効とされ、必ず書面による契約が必要となります。これは、保証人が予期しない重大な責任を負うことを防ぐための法的保護です。

一方、業務委託や通常の売買契約は諾成契約に該当するため、民法上は口約束でも有効に成立します。

口約束契約の法的拘束力

口約束で成立した契約にも、書面契約と同等の法的拘束力があります。つまり、契約違反があれば損害賠償請求や契約解除の対象となり得ます。

たとえば、口約束で「Webサイト制作を30万円で引き受ける」と合意したフリーランスが、途中で一方的に契約を破棄した場合、クライアントは契約不履行として損害賠償を請求できる可能性があります。

逆に、クライアントが納品後に「やはり支払わない」と言った場合も、フリーランスは報酬請求権を行使できます。

ただし、ここで最大の問題となるのが「契約内容の証明」です。口約束には物理的な証拠が残らないため、トラブル時に「契約の存在」や「具体的な条件」を立証することが極めて困難になります。この点が、口約束契約の最大のリスクとなります。

CHECK

口約束も民法上は諾成契約として有効に成立
要式契約(保証契約等)のみ書面が必須
口約束契約も法的拘束力を持つが証明が困難

フリーランス新法で書面交付が義務化された背景と内容

2024年11月1日から施行されたフリーランス新法では、業務委託における書面交付が義務化されました。この法改正の背景と具体的な義務内容を解説します。

フリーランス新法とは何か

フリーランス新法は、発注者とフリーランスの取引において、弱い立場に置かれやすいフリーランスを保護するために制定された法律です。

この法律が制定された背景には、フリーランスとして働く人が増加傾向にある一方で、従業員のように労働基準法で保護されず、発注者との力関係の中で不当な扱いを受けるケースが多発していたという問題があります。特に、口約束だけで仕事を進めた結果、報酬が支払われない、契約内容を一方的に変更される、といったトラブルが発生していました。

フリーランス新法は、取引の適正化と就業環境の整備について明確な規則を定めた法律です。

(参考)中小企業庁「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」

書面または電磁的方法による明示義務

フリーランス新法では、すべての業務委託事業者(発注者)に対し、フリーランスへの業務委託時に以下の事項を書面または電磁的方法で明示することが義務付けられました。

明示が必要な事項

  • 給付の内容(具体的な業務内容・納品物)
  • 報酬の額(金額および計算方法)
  • 支払期日(納品からいつまでに支払うか)
  • その他の取引条件

明示方法

  • 書面(紙の契約書)
  • 電子メール
  • SMS(ショートメッセージサービス)
  • SNSのメッセージ機能(LINE、Slack、Facebookメッセンジャー等)

重要なのは、「口頭だけで済ませてはいけない」という点です。電話やオンライン会議で条件を伝えただけでは不十分で、必ず文字として残る形で明示する必要があります。

たとえば、クライアントがフリーランスのライターに記事執筆を依頼する場合、「3,000文字の記事を1本2万円で、納品から30日以内に支払う」という内容を、メールやチャットで送信し、フリーランス側が確認できる状態にする必要があります。

適用対象となる発注者とフリーランスの範囲

フリーランス新法の保護対象となるのは、従業員を使用していない個人事業主、または1人社長の法人です。つまり、完全に1人で活動しているフリーランスが対象となります。

一方、発注者側については以下の2つに区分されます。

発注者の区分定義義務内容
業務委託事業者すべての事業者書面等での明示義務
特定業務委託事業者従業員を使用する事業者明示義務+支払期日・ハラスメント対策等の追加義務

注意すべき点は、フリーランス側が従業員を使用している場合は、この法律の保護対象外となることです。個人事業主であっても、従業員を雇用している場合は適用されません。

また、この法律は事業者が特定受託事業者(フリーランス)に業務委託をする取引を対象としています。発注者が事業者でない場合(一般消費者が個人事業主に仕事を依頼する場合など)は対象外です。

違反した場合の罰則

フリーランス新法に違反した場合、発注者は以下の措置を受ける可能性があります。

行政措置の流れ

  1. フリーランスから公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省への申告
  2. 所轄省庁による調査・指導
  3. 改善が見られない場合は勧告
  4. 勧告に従わない場合は命令・公表
  5. 命令違反の場合は50万円以下の罰金

罰金額自体は50万円と比較的少額ですが、行政指導や企業名の公表による評判リスクを考えると、発注者側は確実に対応する必要があるでしょう。

(参考)公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」

CHECK

フリーランス新法は2024年11月1日施行で書面交付を義務化
発注者は給付内容・報酬額・支払期日を書面または電子的方法で明示
違反すると行政指導・勧告・命令・罰金の対象となる

口約束契約でトラブルになった場合の具体的な対処法

口約束で契約を進めてしまい、トラブルが発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。証拠がない状況でも取れる実務的な対応策を解説します。

契約の存在を証明するための証拠収集

口約束契約でトラブルになった場合、最も重要なのは「契約が存在したこと」と「その内容」を証明することです。書面がなくても、以下のような間接的な証拠を集めることで立証できる可能性があります。

証拠の種類具体例証拠価値
メール・チャット履歴依頼内容や条件に関するやり取り
通話録音契約内容を確認した電話の録音高(事前同意なしでも可)
メモ・議事録打ち合わせ内容を記録したもの
第三者の証言契約締結の場に同席した人の証言
納品物・作業実績実際に制作・提供したもの
請求書・見積書発行した書類

特に有効なのは、メールやLINE、Slackなどのチャット履歴です。「○○の案件、お願いできますか?」「5万円で承ります」といったやり取りがあれば、それ自体が契約成立の証拠となります。

通話録音については、日本では自分が当事者となっている会話を録音することは合法です(相手の同意は不要)。ただし、録音していることを事前に伝えておく方が、後のトラブル回避には有効です。

事後的に書面化する交渉テクニック

トラブルが表面化する前、または初期段階であれば、口約束の内容を事後的に書面化することでリスクを大幅に減らせます。

実務手法:確認メールの送信

口約束で合意した後、できるだけ早く以下のような確認メールを送りましょう。

件名:【ご確認】○○案件の業務委託条件について

お世話になっております。
先日お電話でご依頼いただきました○○案件につきまして、
条件を以下の通り確認させていただきます。
■業務内容:
(具体的な納品物や作業内容)
■報酬額:
XX万円(税込・税抜を明記)
■納期:
20XX年XX月XX日
■支払期日:
納品後XX日以内
上記内容で問題なければ、このメールへの返信にて
ご承認いただけますと幸いです。

何かご不明点がございましたら、お気軽にお申し付けください。

このメールに対して相手が「承認します」「問題ありません」と返信すれば、それが契約内容を示す証拠となります。仮に返信がなくても、「送信した事実」と「相手が異議を唱えなかった事実」が証拠として機能します。

実務手法:業務開始前の念押し確認

業務着手前に、改めて条件を確認する一文をチャットやメールで送ることも有効です。

「念のため確認ですが、今回の案件は○○を△△円で、XX日までに納品という理解で進めてよろしいでしょうか?」

この一文があるだけで、後から「そんな条件は聞いていない」と言われるリスクを大幅に減らせます。

少額訴訟・支払督促の活用

口約束契約に基づく報酬の未払いなど、金銭トラブルが60万円以下(訴額が60万円を超えない)の場合、少額訴訟制度を利用することで、通常の訴訟よりも迅速かつ低コストで解決できる可能性があります。

少額訴訟の特徴

  • 対象金額:60万円以下の金銭請求
  • 審理回数:原則1回(即日判決も可能)
  • 費用:訴額に応じて数千円から1万円程度
  • 手続き:本人で対応可能(弁護士不要)

また、相手が争わない場合は、支払督促という手続きも有効です。これは、裁判所から相手に支払命令を出してもらう制度で、相手が異議を申し立てなければ、そのまま強制執行(差し押さえ)が可能になります。

ただし、いずれの手続きでも「契約の存在と内容を証明する証拠」が必要です。前述の証拠収集を確実に行った上で、これらの法的手段を検討しましょう。

フリーランストラブル110番の活用

フリーランス新法の施行に伴い、フリーランストラブル110番という相談窓口が設置されました。この窓口では、弁護士による無料相談(電話・メール・対面・オンライン)を受け付けています。

口約束契約でのトラブルについても、「どのような証拠があれば立証できるか」「次にどう行動すべきか」といった具体的なアドバイスを受けられます。一人で悩まず、専門家の意見を早めに聞くことが重要です。

(参考)フリーランス・トラブル110番

CHECK

メール・チャット履歴が最も有効な証拠
事後的な確認メールで契約内容を書面化可能
60万円以下なら少額訴訟・支払督促が活用できる

口約束契約のリスクと「言った・言わない」トラブルの実例

口約束契約が引き起こす典型的なトラブル事例と、そのリスクを具体的に見ていきます。

フリーランスの典型的なトラブル事例

事例1:報酬額の認識違い

WebデザイナーのAさんは、クライアントから電話で「コーポレートサイトのリニューアルを30万円でお願いしたい」と依頼され、口頭で承諾しました。納品後、クライアントから「30万円は税込だと思っていた。税抜なら支払えない」と言われ、報酬が減額されてしまいました。

この事例では、「30万円が税込か税抜か」という重要な条件が書面で明示されていなかったため、Aさんは不利な立場に追い込まれました。仮にメールで「報酬30万円(税別)」という一文があれば、このトラブルは防げたはずです。

事例2:納品物の仕様変更

ライターのBさんは、クライアントから「3,000文字の記事を5本」という口約束で仕事を受けました。しかし、3本目を納品した時点で「やはり1本あたり5,000文字に変更してほしい。追加料金は払えない」と一方的に要求され、大幅な作業量増加を強いられました。

書面契約があれば、「仕様変更時の追加料金」や「変更範囲の制限」といった条項を盛り込むことができますが、口約束ではこうした保護策がないため、発注者の一方的な変更を受け入れざるを得なくなるリスクがあります。

事例3:支払期日の未定による資金繰り悪化

エンジニアのCさんは、スタートアップ企業からシステム開発を受注しましたが、支払期日について口約束では「なるべく早く払う」としか聞いていませんでした。納品から3カ月経っても支払われず、「うちも資金繰りが厳しいからもう少し待ってほしい」と言われ続け、Cさん自身の生活費にも困る事態となりました。

フリーランス新法では、特定業務委託事業者(従業員を使用する発注者)は、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務が定められています。しかし、口約束では支払期日が不明確なため、こうした長期未払いが発生しやすくなります。

不動産・賃貸契約での口約束リスク

フリーランス以外でも、不動産取引における口約束はリスクが高くなります。

事例4:賃貸契約の条件変更

賃貸物件を口約束で借りた入居者が、「敷金は家賃1カ月分」と聞いていたにもかかわらず、契約書では「家賃2カ月分」となっていたというケースがあります。口頭での説明と書面の内容が異なる場合、最終的には書面の内容が優先されるため、入居者は不利な条件を受け入れざるを得なくなります。

事例5:リフォーム工事の追加費用

自宅のリフォームを工務店に依頼した際、「見積もりは200万円」と口頭で聞いていたものの、工事完了後に「材料費が高騰したため250万円になった」と追加請求されるケースもあります。見積書や契約書がなければ、当初の金額を証明することが困難です。

証拠がない場合の立証困難性

口約束契約でトラブルになった場合、最大の問題は「契約内容の立証が極めて困難」という点です。

民事訴訟では「主張する側が証明責任を負う」という原則があるため、「報酬30万円で契約した」と主張する側が、その事実を証拠で示さなければなりません。証拠がなければ、裁判所は「契約内容が不明確」として請求を認めない可能性が高くなります。

また、仮に第三者の証言があったとしても、その証言の信用性が争われることもあり、決定的な証拠とはなりにくいのが実情です。

CHECK

報酬額の税込・税抜認識違いで減額されるリスク
仕様変更を一方的に要求され作業量が増加するリスク
支払期日未定で資金繰りが悪化するリスク

今後のリスクを回避するための書面化・記録方法の実務ノウハウ

口約束契約のリスクを回避するため、今日から実践できる具体的な書面化・記録方法を解説します。

契約書を作成する際の必須記載事項

正式な業務委託契約書を作成する場合、以下の項目は必ず明記しましょう。

項目記載内容
業務内容具体的な納品物・作業範囲
報酬額金額・税込/税抜の別・支払方法
支払期日納品後○日以内など
納期具体的な日時
著作権・知的財産権成果物の権利の帰属先
契約解除条件どのような場合に解除できるか
秘密保持義務業務上知り得た情報の取り扱い
再委託の可否第三者への再委託が可能か

特に重要なのは、「仕様変更時の追加料金」「支払い遅延時の遅延損害金」「成果物の検収期間」といった、トラブル時の対応を事前に定めておくことです。

実務ノウハウ:テンプレート契約書の活用

弁護士に契約書作成を依頼すると数万円から数十万円のコストがかかります。しかし、中小企業庁や経済産業省、各種業界団体が無料で提供している「業務委託契約書のひな形」を活用することで、コストをかけずに一定レベルの契約書を作成できます。

重要なのは、ひな形をそのまま使うのではなく、自分の業務内容に合わせてカスタマイズすることです。特に「業務内容」「報酬」「納期」の3点は、案件ごとに具体的に書き換える必要があります。

簡易的な発注書・受注書の運用方法

毎回正式な契約書を作成するのが難しい場合、発注書と受注書のやり取りでも一定の法的効力を持たせることができます。

発注書に記載すべき内容

  • 発注日
  • 発注者名・連絡先
  • 業務内容(具体的に)
  • 納品期日
  • 報酬額(税込/税抜明記)
  • 支払期日
  • 支払方法

受注書に記載すべき内容

  • 受注日
  • 受注者名・連絡先
  • 発注書の内容を承諾する旨
  • 署名または記名押印

この発注書・受注書のやり取りは、メールやPDF送付でも有効です。重要なのは、「双方が同じ内容を確認・承諾した」という証跡を残すことです。

実務ノウハウ:電子契約サービスの活用

近年は、クラウドサインやfreeeサインといった電子契約サービスが普及しています。これらのサービスを使えば、以下のメリットがあります。

  • 契約書の作成・送信・署名がオンラインで完結
  • 契約締結日時がタイムスタンプで記録される
  • 契約書の改ざん防止機能がある
  • 印紙税が不要(紙の契約書に比べてコスト削減)

月額数千円から1万円程度で利用できるサービスが多く、フリーランスや中小企業でも導入しやすい価格帯です。特に、複数のクライアントと継続的に取引する場合は、導入を検討する価値があります。

メール・チャットでの契約条件確認の具体的な文面例

正式な契約書を作成する時間がない場合でも、メールやチャットで契約条件を確認し、相手の承諾を得ることで、証拠を残すことができます。

文面例1:業務委託の確認メール(フリーランス→クライアント)

件名:【ご確認】Webサイト制作の業務委託条件について

○○様
お世話になっております。△△です。
先日お電話でご依頼いただきましたWebサイト制作につきまして、
以下の条件で承らせていただきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■業務内容
・コーポレートサイトのデザイン・コーディング
・レスポンシブ対応(PC・スマートフォン)
・お問い合わせフォーム実装
・納品形式:HTML/CSS/JavaScriptファイル一式
■報酬
300,000円(税別)
※修正は2回まで無料、3回目以降は1回につき10,000円
■納期
2024年12月15日
■支払期日
納品日から30日以内に、下記口座へお振込みください。
(銀行名・支店・口座番号)
■著作権
納品完了および報酬全額のお支払い完了時点で、
成果物の著作権は貴社に譲渡いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
上記内容でご承諾いただける場合は、
このメールにご返信いただけますと幸いです。
ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

よろしくお願いいたします。

このメールに対して「承諾します」「問題ありません」という返信があれば、それが契約成立の証拠となります。

文面例2:口頭確認後の念押しチャット(チャットツール用)

お電話ありがとうございました。
念のため、今回の案件内容を確認させてください。
📝案件概要
・記事執筆(3,000文字×5本)
・報酬:1本あたり20,000円(税込)×5本=100,000円
・納期:11月30日
・支払い:納品後14日以内
上記の理解で進めてよろしいでしょうか?
問題なければ、このメッセージに👍をお願いします。

このように、チャットツールでも「リアクション機能(スタンプ)」を使って承諾の意思表示をもらうことで、簡易的な契約確認が可能です。

通話録音・議事録作成の習慣化

電話やオンライン会議で契約内容を話し合う場合、通話録音または議事録作成を習慣化しましょう。

実務ノウハウ:通話録音の実践方法

  • スマートフォンの通話録音アプリを利用(Android:「通話レコーダー」、iPhone:「TapeACall」など)
  • Zoom・GoogleMeetなどのオンライン会議ツールの録画機能を活用
  • 録音開始前に「記録のために録音させていただきます」と一言伝える(法的には不要だが、トラブル防止のため推奨)

実務ノウハウ:議事録のテンプレート活用

録音が難しい場合は、打ち合わせ後すぐに議事録を作成し、相手に送付して確認を求めましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
打ち合わせ議事録
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日時:2024年11月22日14時00分から14時30分
参加者:○○様(発注者)、△△(受注者)
■決定事項
1.業務内容:○○
2.報酬:○○円
3.納期:○○月○○日
4.支払期日:納品後○○日以内
■次回アクション
・△△が○○日までに初稿を提出
・○○様が○○日までにフィードバック
上記内容に相違がございましたら、○○日までにご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この議事録に対して相手から異議がなければ、「内容を承諾した」とみなすことができます。

CHECK

契約書には業務内容・報酬額・支払期日・納期を必ず明記
発注書・受注書のやり取りでも法的効力を持たせられる
確認メール・チャット・議事録で証拠を残す習慣が重要

フリーランス新法以外にも知っておくべき関連法律

口約束契約のリスクを理解する上で、フリーランス新法以外にも関連する法律があります。

下請法との違いと適用範囲

フリーランス新法と似た法律に「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」があります。下請法は、発注者が下請け事業者に対して不当な代金減額や支払遅延を行うことを禁止する法律です。

項目下請法フリーランス新法
適用条件資本金による基準あり(例:資本金1,000万円超の発注者→1,000万円以下の下請け)資本金要件なし
保護対象法人・個人事業主(従業員の有無は問わない)従業員を使用していない個人事業主・1人社長法人のみ
書面交付義務ありあり
支払期日納品後60日以内納品後60日以内のできる限り短い期間内

下請法は資本金要件があるため、小規模な発注者とフリーランスの取引はカバーされていませんでした。フリーランス新法は、この「すき間」を埋める形で制定されたのです。

つまり、フリーランスが取引を行う際、相手の資本金規模によっては「下請法」または「フリーランス新法」のいずれかが適用されることになります。場合によっては両方が同時に適用されることもあります。

民法の契約不適合責任

口約束契約でも、納品物に不具合があった場合には「契約不適合責任」が発生する可能性があります。

契約不適合責任とは、納品物が契約内容に適合していない場合、発注者が以下の権利を行使できる制度です。

  • 追完請求(修正・代替品の提供を求める)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除

口約束契約の場合、「契約内容に適合しているかどうか」の基準があいまいになりやすく、トラブルの原因となります。書面で「納品物の仕様」「検収基準」を明確にしておくことで、こうしたリスクを回避できます。

(参考)法務省「民法(債権関係)改正について」

消費者契約法との関係

一般消費者が事業者と契約する場合、「消費者契約法」により、不当な契約条項は無効とされることがあります。

たとえば、リフォーム業者が一般消費者と口約束で契約した後、不当に高額な追加費用を請求した場合、消費者契約法に基づいて契約の一部が無効とされる可能性があります。

ただし、フリーランスと発注者の取引は「事業者間取引」に該当するため、消費者契約法は適用されません。そのため、フリーランスは自分自身で契約内容をしっかり管理する必要があります。

CHECK

下請法は資本金要件あり、フリーランス新法は要件なし
契約不適合責任により納品物に不具合があれば修正・減額請求される
フリーランスは事業者間取引のため消費者契約法の保護対象外

よくある質問

口約束契約に関して、実務でよく寄せられる疑問について回答します。

Q1:口約束だけで契約した場合、後から契約書を作成しても有効ですか?

はい、有効です。契約成立後に契約書を作成することを「事後的な書面化」といいます。既に口約束で合意した内容を書面に落とし込み、双方が署名・捺印することで、後のトラブル防止に役立ちます。

ただし、相手が書面化に応じない場合は強制できないため、契約前の書面化が最も確実です。

Q2:メールでのやり取りだけでも契約として成立しますか?

はい、成立します。メールでの「申込み」と「承諾」のやり取りがあれば、それだけで契約は法的に成立します。

フリーランス新法でも、電子メールは正式な契約条件の明示方法として認められています。重要なのは、業務内容・報酬・納期・支払期日などの主要条件が明確に記載されていることです。

Q3:口約束で合意した内容と、後で受け取った契約書の内容が違う場合、どちらが優先されますか?

原則として、最終的に署名・捺印した書面の内容が優先されます。

ただし、口約束の内容を証明できる証拠(録音・メール等)があり、かつ契約書の内容が錯誤や詐欺によるものであることを立証できれば、契約の無効や取消しを主張できる可能性があります。いずれにせよ、署名前に契約書の内容をよく確認することが重要です。

まとめ:口約束は有効だが証拠がないとリスク大、書面化が最善の自己防衛策

口約束契約は民法上では有効ですが、2024年11月1日から施行されたフリーランス新法では、業務委託における書面または電子メール等での明示が発注者に義務化されました。発注者は書面化を怠ると行政指導や罰則の対象となり、フリーランス側も証拠がないことで不利益を被るリスクが高まります。

トラブルを防ぐためには、契約書や発注書・受注書の作成、確認メールの送信、通話録音・議事録作成といった「証拠を残す習慣」が不可欠です。

今日から実践できる3つのアクション

  • 口約束後は必ず確認メールで契約条件を文書化し相手の承諾を得る
  • 電話・会議の録音または議事録作成を習慣化する
  • 正式な契約書が難しい場合は発注書・受注書のやり取りで証跡を残す

口約束だけで進めてしまった取引でトラブルが発生した場合は、フリーランストラブル110番や弁護士に早めに相談し、適切な対処法を検討しましょう。どんなに小さな案件でも「書面化の徹底」を意識し、自分自身を守る行動を取ることが重要です。

【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な取引や法的判断については、弁護士等の専門家にご相談ください。

出典・参照元

本記事は以下の情報源をもとに作成されています。

※記事内容は2025年11月22日時点の税制・法令に基づいています。税制改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は国税庁または弁護士にご確認ください。

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