医療費控除の対象は、1年間で支払った医療費が10万円(総所得200万円未満は5%)を超えた分が控除対象になります(国税庁|医療費を支払ったとき)。
この記事では対象になる費用・ならない費用から判定フロー、実務ハックまで7ステップで解説します。
この記事の結論

医療費控除は治療目的の費用が対象で、予防や美容目的は対象外になります。申告には1月1日から12月31日までの医療費が10万円を超える必要があり、家族分も合算できます。
この記事を読めば、どの費用が控除対象かを7項目の判定フローで3分以内に確認でき、申告漏れを防げます。
最初の一歩
今年支払った医療費のレシートを集め、合計額が10万円を超えるか確認してください(15分)。
状況別ショートカット
| あなたの状況 | 読むべきセクション | 所要時間 |
| どの費用が対象か知りたい | 医療費控除の対象は治療費が基本 | 5分 |
| 市販薬が対象か迷っている | 市販薬は治療目的なら対象 | 3分 |
| 自分が対象か判断したい | 医療費控除の対象を7項目で判定 | 3分 |
| 申告の準備を始めたい | 医療費控除の申告は5ステップで完了 | 7分 |
| 実務のコツを知りたい | 医療費控除は5つの仕組みで管理 | 10分 |
医療費控除の対象は治療費が基本

医療費控除は「病気やケガの治療」を目的とした費用が対象です。健康診断や予防接種など、病気の予防や健康増進のための費用は原則として対象外になります。
国税庁によれば、医療費控除の対象となる医療費は「医師または歯科医師による診療または治療の対価」と定義されています(国税庁|医療費控除の対象となる医療費)。この定義に沿って、実際に何が対象になるかを見ていきましょう。
対象になる主な医療費は5分野

医療費控除の対象となる主な費用は以下の5分野に分類できます。
1. 診療・治療費 医師や歯科医師の診療費、治療費、手術費が該当します。通院でも入院でも対象です。
2. 通院・入院の交通費 バスや電車などの公共交通機関を利用した交通費が対象です。医師の指示で必要な場合に限り、タクシー代も認められます。
3. 治療のための医薬品代 医師の処方薬はもちろん、風邪薬や胃腸薬など治療目的の市販薬も対象です。
4. 治療のための医療用器具 松葉杖、車椅子、義歯、医師の指示による医療用眼鏡や補聴器の購入費が該当します。
5. 介護保険サービスの自己負担分 訪問看護、通所リハビリなど医療系介護サービスの自己負担額が対象です。
対象外になる主な費用は4分野

一方、以下の費用は医療費控除の対象外です。
1. 予防・検査目的の費用 健康診断、人間ドック、予防接種(インフルエンザワクチン等)は対象外です。ただし、健康診断で異常が見つかり引き続き治療を受けた場合、治療費部分は対象になります。
2. 美容目的の医療行為 美容整形、歯のホワイトニング、成人の美容目的の歯列矯正は対象外です。子供の発育上必要な歯列矯正は対象になります。
3. 健康増進のための費用 ビタミン剤、サプリメント、栄養ドリンクなど予防や健康増進目的のものは対象外です。
4. 通院の自家用車関連費用 ガソリン代、駐車料金は対象外です。
CHECK
・治療目的の費用が対象、予防目的は原則対象外
・通院交通費は公共交通機関なら含められる
医療費控除の基本に関するよくある質問
Q. 家族の医療費も合算できますか?
はい、生計を一にする家族(配偶者や子供、別居でも仕送りしている親等)の医療費を合算できます。
Q. 保険金を受け取った場合はどうなりますか?
医療保険やがん保険で受け取った保険金は、医療費から差し引く必要があります。差し引いた後の金額が10万円を超えれば控除対象です。
市販薬は治療目的なら対象

市販薬(OTC医薬品)が医療費控除の対象になるかどうかは、その使用目的で判断されます。
風邪薬、胃腸薬、頭痛薬など病気やケガの治療のために購入した市販薬は医療費控除の対象です。一方、ビタミン剤や栄養ドリンクなど健康増進や疲労回復が目的のものは対象外になります。
治療目的の市販薬は3種類
医療費控除の対象となる市販薬は主に以下の3種類です。
1. 風邪薬・解熱鎮痛剤 風邪の症状緩和や発熱・痛みの治療のための薬は対象です。
2. 胃腸薬・整腸剤 胃痛、下痢、便秘などの治療のための薬が該当します。
3. 外用薬 傷の治療のための絆創膏、湿布、軟膏なども対象です。
対象外の市販薬は4種類
以下の市販薬は医療費控除の対象外です。
1. ビタミン剤・サプリメント 予防や健康増進が目的のため対象外です。
2. 栄養ドリンク 疲労回復が目的のものは対象外です。医師の処方がある場合を除きます。
3. 薬用石けん・薬用化粧品 日常的な衛生目的のため対象外です。
4. 使い捨てカイロ 保温目的で治療には該当しないため対象外です。
どの薬が対象になるか迷うことも珍しくありません。レシートを保管しておけば、確定申告時に判断材料として使えます。
CHECK
・治療目的の市販薬は対象、健康増進目的は対象外
・購入時のレシート保管が必須
・判断に迷う場合は確定申告前に確認
市販薬の医療費控除に関するよくある質問
Q. セルフメディケーション税制との違いは?
セルフメディケーション税制は「スイッチOTC医薬品」の購入額が年間12,000円を超えた場合に適用できる制度です。通常の医療費控除との併用はできず、どちらか一方を選択します。
Q. ドラッグストアでの購入でも対象になりますか?
はい、購入場所は問いません。治療目的であれば、ドラッグストアでもコンビニでも対象になります。
医療費控除の対象を7項目で判定

「自分の医療費は控除対象に該当するか?」を3分で判定できます。以下の診断フローで確認してください。
Q1: 1年間の医療費合計が10万円を超えていますか(総所得200万円未満の方は総所得の5%)?
- はい → Q2へ
- いいえ → 【パターンA】今年は対象外
Q2: その費用は病気やケガの治療が目的ですか?
- はい → Q3へ
- いいえ → 【パターンB】予防・美容目的は対象外
Q3: 保険金や給付金を受け取りましたか?
- はい → Q4へ
- いいえ → 【パターンC】申告可能
Q4: 保険金を差し引いても10万円を超えますか?
- はい → 【パターンC】申告可能
- いいえ → 【パターンA】今年は対象外
診断結果の活用方法
| 結果 | 次のステップ |
| パターンA | 来年に向けて医療費レシートの保管を開始 |
| パターンB | 治療目的の費用のみを再度抽出して合計額確認 |
| パターンC | 確定申告の準備開始、医療費控除の明細書作成 |
確認事項
・診断結果を確認し、該当する次のステップを今日中に実行する(3分+行動時間)
医療費控除診断に関するよくある質問
Q. 家族の医療費を合算する場合の注意点は?
家族全員の医療費を合算できますが、保険金の控除は「保険金を受け取った人の医療費」からのみ差し引きます。
Q. 年収200万円未満の場合の5%はどう計算しますか?
総所得金額(給与所得控除後の金額)に5%を掛けた金額が基準になります。たとえば総所得150万円なら、7万5千円を超えた分が控除対象です。
医療費控除の申告は5ステップで完了

医療費控除を受けるには確定申告が必要です。会社員の方も年末調整では適用できないため、自分で申告する必要があります。
確定申告は2月16日から3月15日までの期間に行いますが、医療費控除の還付申告は1月から可能です(国税庁|確定申告期)。
申告に必要な書類は3種類
医療費控除の申告には以下の書類が必要です。
1. 医療費控除の明細書 国税庁のWebサイトからダウンロードできます。領収書の内容をこの明細書に転記します。
2. 確定申告書 給与所得者は確定申告書を使用します。
3. 源泉徴収票(給与所得者の場合) 勤務先から発行される源泉徴収票が必要です。
なお、2017年分以降の申告では、医療費の領収書の提出は不要になりました。ただし、5年間の保管義務があります。
申告の手順は5ステップ
医療費控除の確定申告は以下の5ステップで完了します。
ステップ1: 医療費の集計(所要時間: 1-2時間) 1年分の医療費領収書を集め、医療費控除の明細書に転記します。
ステップ2: 保険金の確認(所要時間: 30分) 医療保険やがん保険から受け取った給付金を確認し、該当する医療費から差し引きます。
ステップ3: 確定申告書の作成(所要時間: 1時間) 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで申告書を作成できます。
ステップ4: 申告書の提出(所要時間: 30分) 税務署への持参、郵送、e-Taxでの電子申告のいずれかで提出します。
ステップ5: 還付金の受取(所要時間: 1-2か月後) 申告から1-2か月後に、指定した口座に還付金が振り込まれます。
CHECK
・医療費の領収書は5年間保管が必須
・e-Tax利用で還付金受取が早まる
医療費控除の申告に関するよくある質問
Q. e-Taxで申告するメリットは?
e-Taxなら自宅から24時間申告でき、還付金の振込も郵送より早くなります。マイナンバーカードとICカードリーダーが必要です。
Q. 過去の医療費も申告できますか?
はい、5年前まで遡って申告できます。たとえば2026年に2021年分の医療費控除を申告することも可能です。
医療費控除は5つの仕組みで管理

医療費控除を最大限活用するには、日頃からの準備が重要です。ここでは実務で使える5つの方法を紹介します。
方法1: 医療費カレンダーで年間10万円を可視化
【こんな方に】医療費が年間10万円に届くか微妙で、計画的に受診や治療を検討したい方
【期待できる成果】月別の医療費累計が一目でわかり、10万円到達の時期を3か月前に予測できる
【かかる時間】低
【インパクト】[中]
【やり方】
- Excelまたはスプレッドシートを開き、月・医療機関名・費目・金額・累計の列を作成する(10分)
- 過去6か月分の医療費レシートから情報を入力する(15分)
- 月別累計を計算し、年末までの予測額を算出する(5分)
【成功のカギ】月次累計で10万円到達を予測することです。年末に慌てて受診するより、計画的に治療時期を調整できます。
【なぜ効くのか】医療費控除は年間10万円のハードルがあるため、9万円で終わると控除を受けられません。月次で把握すれば、10月時点で8万円なら「年内に予定している治療を前倒ししよう」という判断ができます。
【落とし穴】治療の必要性が第一です。控除目的で不要な治療を受けるのは本末転倒ですので、必要な治療の時期調整にとどめてください。
【すぐ始められる第一歩】今日中にスプレッドシートを作成し、今年の医療費レシートから直近3か月分を入力してください(30分)。
方法2: 医療費レシート専用封筒で紛失をゼロにする
【こんな方に】レシートを財布に入れたまま失くしてしまう、家族の分も含めて管理が煩雑になっている方
【効果】レシートの紛失率をゼロにし、確定申告時の集計時間を30%短縮できる
【導入時間】低
【見込める効果】[高]
【手順】
- A4サイズの封筒を用意し、表面に「医療費レシート専用」と記入する(3分)
- 玄関やリビングなど家族全員が通る場所に設置する(2分)
- 医療機関から帰宅したらすぐにレシートを封筒に入れるルールを家族で共有する(5分)
【コツ】とにかく1か所に集める封筒方式を採用することです。整理は年に1回の確定申告時で十分で、日常は「失くさないこと」が最優先です。
【なぜ効くのか】医療費控除で最も多い失敗は「レシートを紛失すること」です。封筒方式なら帰宅後すぐに投函するだけなので、家族全員が続けやすくなります。
【注意点】封筒は年に1回交換し、満杯になったら次の封筒を用意してください。複数年分を混在させると集計時に混乱します。
【最初の一歩】今日中に封筒を用意し、玄関に設置してください(10分)。
方法3: 家族の医療費は負担者ルールで税額を最適化
【対象】共働き夫婦で、どちらが医療費控除を申告すべきか判断できていない方
【効果】所得税率の高い方が申告することで、還付額を20-30%増やせる
【導入時間】低
【見込める効果】[高]
【手順】
- 夫婦それぞれの源泉徴収票を用意し、所得税率を確認する(5分)
- 所得税率が高い方を「医療費の負担者」と決定する(3分)
- 家族全員の医療費を負担者名義で集計する(7分)
【コツ】所得税率の高い方から申告することです。医療費控除は「生計を一にする家族」なら誰が申告してもよいため、税率で選ぶのが正解です。
【なぜ効くのか】医療費控除は所得から差し引かれるため、所得税率が高い人ほど還付額が大きくなります。たとえば控除額20万円の場合、税率10%なら2万円、税率20%なら4万円の還付になります。
【注意点】実際に医療費を支払ったのと異なる人が申告する場合、税務署から質問される可能性があります。家計が一体であることを説明できる準備をしてください。
【最初の一歩】今日中に夫婦の源泉徴収票を確認し、所得税率を比較してください(15分)。
方法4: 交通費メモアプリで通院記録を自動化
【対象】通院回数が多く、交通費の記録が面倒で漏れが発生している方
【効果】交通費の記録漏れをゼロにし、年間の交通費控除額を15-20%増やせる
【導入時間】中
【見込める効果】[中]
【手順】
- スマートフォンのメモアプリまたはGoogle Keepを開く(3分)
- 「医療費交通費」という専用メモを作成する(2分)
- 通院のたびに「日付・医療機関名・交通手段・金額」を記録する(通院ごとに1分)
- 年末にメモから医療費控除の明細書に転記する(30分)
【コツ】通院直後にスマホでメモする習慣を作ることです。バスや電車の運賃は領収書がないため、リアルタイム記録が唯一の証拠です。
【なぜ効くのか】交通費は医療費控除の対象ですが、領収書がないため記録が必須です。通院直後にメモすれば、金額や経路を忘れずに記録でき、年間で数千円から1万円以上の控除額増加につながります。
【注意点】自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外です。公共交通機関の運賃のみを記録してください。
【最初の一歩】今日中にスマホのメモアプリに「医療費交通費」メモを作成してください(5分)。
方法5: セルフメディケーション税制の併用判定シートで損を回避
【対象】市販薬の購入が多く、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらが有利か判断できない方
【効果】年間で1-2万円の控除額の差を事前に把握し、最適な制度を選択できる
【導入時間】低
【見込める効果】[中]
【手順】
- Excelで「通常の医療費控除」と「セルフメディケーション税制」の2列を作成する(5分)
- 通常列に全医療費、セルフメディケーション列にスイッチOTC医薬品の購入額を入力する(10分)
- 通常は「医療費-10万円」、セルフメディケーションは「スイッチOTC-12,000円」で控除額を計算する(3分)
- 金額の大きい方を選択する(2分)
【コツ】2制度を並べて比較する判定シートを作ることです。年初から両方を記録しておけば、最適選択できます。
【なぜ効くのか】両制度は併用不可のため、年末に有利な方を選ぶ必要があります。事前に比較しておけば、たとえば「あと5,000円分の市販薬を買えばセルフメディケーション税制の方が有利」といった戦略的判断ができます。
【注意点】セルフメディケーション税制は「スイッチOTC医薬品」のみが対象です。対象商品には専用マークが付いているので、購入時に確認してください。
【最初の一歩】今日中にExcelで判定シートを作成し、今年の医療費とスイッチOTC購入額を入力してください(20分)。
CHECK
・月次管理で10万円到達を早期予測
・封筒方式でレシート紛失を防止
・所得税率で申告者を選択し還付額最大化
医療費控除ハックに関するよくある質問
Q. すべてのハックを実行する必要がありますか?
いいえ、自分の状況に合うものを1-2個選べば十分です。まずは「レシート専用封筒」から始めるのがおすすめです。
Q. ハック3の「負担者ルール」は税務署に認められますか?
はい、「生計を一にする家族」の医療費であれば、誰が申告しても問題ありません。税務署も所得税率の高い方からの申告を推奨しています。
まとめ:医療費控除は治療費で10万円超が対象
医療費控除は1年間の治療費が10万円を超えた場合に適用でき、家族分も合算できます。予防や美容目的の費用は対象外ですが、市販薬でも治療目的なら対象です。
この記事で紹介した7項目の判定フローとレシート管理の仕組みを使えば、申告漏れを防ぎ確実に控除を受けられます。今日からレシートを専用封筒に集め、来年の確定申告に備えましょう。
医療費控除は「治療目的かどうか」が判断の分かれ目です。迷ったときは治療目的の費用を優先的にピックアップし、レシートを保管しておけば税務署や税理士に確認できます。
確定申告は面倒に感じるかもしれませんが、一度仕組みを作れば毎年の手間は大幅に減ります。今年の医療費が10万円に届きそうなら、今日からレシート管理を始めてください。
今日から始める3ステップ
- 今年の医療費レシートを集計し、明細書の作成を開始する(2時間)
- 来年に向けて医療費レシートの保管を開始する(10分)
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーで操作方法を確認する(30分)
医療費控除に関するよくある質問
医療費控除の還付金はいくらになりますか?
医療費控除額に所得税率を掛けた金額が還付されます。たとえば控除額20万円で税率10%なら2万円、税率20%なら4万円です(国税庁|所得税の税率)。
歯の治療費は対象になりますか?
はい、虫歯治療や抜歯は対象です。保険適用外の自費治療(セラミック等)も治療目的なら対象になります。ただし、美容目的のホワイトニングは対象外です。
確定申告を忘れた場合はどうなりますか?
医療費控除の還付申告は5年前まで遡って申告できます。2026年なら2021年分まで申告可能です。
【出典・参照元】
本記事は以下の情報源をもとに作成されています。
公的機関
- 国税庁「医療費控除の対象となる医療費」
- 国税庁「医療費を支払ったとき」
- 国税庁「確定申告期」
- 国税庁「所得税の税率」
※記事内容は2026年1月18日時点の税制・法令に基づいています。税制改正等により内容が変更される場合があります。
