「予定納税の通知書が届かないけど、これって大丈夫?」
「自分は対象なのか、それとも対象外なのか…」
6月から7月にかけて、個人事業主やフリーランスから、こうした不安の声をよく耳にします。予定納税は確定申告をした全員に関係する制度ではなく、一定の条件を満たした人だけが対象です。通知書が来ないからといって、必ずしも問題があるわけではありません。
本記事では、予定納税の基本的な仕組みから通知書が来ない理由、自分が対象かどうかを判断する方法まで、税理士監修の情報をもとに分かりやすくお伝えします。
この記事でわかること
- 予定納税通知書が来ない3つの理由
- 自分が予定納税の対象かどうかを確認する方法
- 通知書が届いた場合の対応パターン
予定納税とは?15万円以上で前払いする制度
予定納税とは、前年の確定申告で納めた所得税が15万円以上だった場合に、翌年の税金を7月と11月に分割で前払いする制度です。
この制度の目的は、前年にある程度の所得があった人に対して、翌年の確定申告前に税金を分割で納めてもらうことです。これにより、納税者の負担を分散させるとともに、国の税収を安定させます。
対象となるのは、確定申告書第一表(第一表)の「㊿申告納税額」が15万円以上の場合です(国税庁「予定納税」)。その金額を3分割し、第1期・第2期の2回で3分の2を前払いします。
| 項目 | 金額・時期 |
| 前年の「㊿申告納税額」(例) | 30万円 |
| 予定納税基準額 | 10万円(30万円÷3) |
| 第1期納付額 | 10万円(7月) |
| 第2期納付額 | 10万円(11月) |
| 前払い合計(予定納税額) | 20万円 |
この2回で合計20万円を前払いします。翌年の確定申告では、すでに納付した20万円を差し引いた残りの金額を納税するか、払いすぎていた場合は還付を受けます。
つまり、通知書が来るかどうかは、前年の納税額が15万円以上かどうかで決まります。15万円未満であれば予定納税の対象外となり、通知書は届きません。
それでは、通知書が来ない具体的な理由について詳しく見ていきましょう。
CHECK
予定納税は前年の納税額15万円以上が対象
納付は7月と11月の2回
15万円未満なら通知書は届かない
予定納税通知書が来ない3つの理由
予定納税の通知書が届かない場合、以下の3つの理由が考えられます。
理由1:前年の申告納税額が15万円未満だった
最も一般的な理由は、前年の確定申告での納税額が15万円未満だったケースです。
第一表の「㊿申告納税額」が15万円未満であれば、予定納税の対象外となります。この金額は、所得税の計算において、源泉徴収税額や予定納税額などを差し引いた後の、実際に納付した税額を指します。
収入金額や所得金額ではなく、最終的に納めた税額が基準となる点に注意が必要です。売上は多くても、経費や控除が大きければ、最終的な納税額は15万円未満になることがあります。
たとえば、売上が1,000万円あっても、経費や各種控除を差し引いた結果、納税額が12万円であれば予定納税の対象外です。
理由2:前年の確定申告で還付を受けた
前年の確定申告で還付を受けた場合も、予定納税の通知書は届きません。
還付を受けたということは、申告納税額がゼロまたはマイナスだったことを意味します。翌年の予定納税は発生しないため、通知書が来ることはありません。
源泉徴収されている収入が多い場合や、医療費控除・住宅ローン控除などで税額が大幅に減った場合に、このケースに該当することがあります。
理由3:確定申告をしていない
そもそも前年に確定申告をしていない場合も、通知書は届きません。
ただし、確定申告が必要なのに申告していない場合は、予定納税の有無とは別に、無申告のペナルティが発生する可能性があります。副業や事業所得がある場合は、確定申告の義務があるかどうかを確認しましょう。
なお、無申告の場合でも予定納税の対象となるケースがあります。
通知書が届く時期と確認方法
予定納税の通知書は、毎年6月上旬〜中旬に税務署から郵送で届きます。通知書には、第1期と第2期の納付額、納付期限、納付方法などが記載されています。
封筒が届いたら、必ず中身を確認し、納付期限を把握しておくことが重要です。もし通知書が届かない場合は、前年の第一表「㊿申告納税額」を確認してください。ここが15万円未満であれば、予定納税の対象外であり、特に問題はありません。
CHECK
15万円未満なら通知書は来ない(最も一般的)
還付を受けた場合も通知書は来ない
通知書が来なくても問題とは限らない
予定納税通知書が届いた場合の3つの対応パターン
予定納税の通知書が届いた場合、状況に応じて適切な対応が必要です。ここでは3つの代表的なパターンをご紹介します。
パターン1:前年と同じように事業を継続している場合
前年と変わらず事業を行っており、今年も同程度の所得が見込まれる場合は、通知書に記載された金額をそのまま納付してください。
納付方法は以下の2つがあります。
| 納付方法 | 内容 |
| 納付書での納付 | 税務署や金融機関の窓口で納付 |
| 振替納税 | 事前に登録しておけば、指定口座から自動引き落とし |
この場合、特別な手続きは必要ありません。納付期限(第1期:7月31日、第2期:11月30日)までに納付を完了させましょう。
パターン2:業績が大幅に下がっている場合
前年に比べて売上や利益が大幅に減少しており、「今年は前年ほど税金を納めることにならないだろう」と予想される場合は、予定納税の減額申請を検討すべきです。
減額申請が適しているケースの例
- コロナ禍などで売上が大幅に減少した
- 大型案件が前年だけで、今年は通常の業務に戻った
- 経費が増えて利益が圧縮されている
減額申請を行うことで、今年の実際の所得に応じた金額に予定納税額を調整できます。
パターン3:法人成りまたは廃業した場合
個人事業を法人化(法人成り)した場合や、事業を廃業した場合も、予定納税の減額申請が必要です。
法人成りした場合
法人成りをすると、個人事業主としての所得はなくなり、法人からの給与所得に切り替わります。給与所得のみであれば通常は確定申告が不要となるため、予定納税も必要ありません。
ただし、個人事業の廃業届を税務署に提出していても、予定納税の通知書は届く場合があります。これは、前年の確定申告の情報に基づいて自動的に通知が送られるためです。
減額申請書を提出して予定納税額をゼロにする手続きを行いましょう。申請をしないと、不要な税金を前払いすることになり、後から確定申告で還付を受ける手間が発生してしまいます。
廃業した場合
廃業した場合も同様に、今年の所得がほとんど発生しないか、すでにゼロになっているはずです。減額申請書を提出し、予定納税額をゼロまたは実態に応じた金額に減額することができます。
CHECK
前年と同じ事業継続なら通知書どおりに納付
業績悪化なら減額申請を検討
法人成り・廃業の場合も減額申請が必要
予定納税の減額申請とは?制度の概要と申請方法
予定納税の減額申請は、今年の所得が前年より大幅に減少する見込みがある場合に、予定納税額を実態に合わせて調整できる制度です。
業績悪化や法人成り、廃業などの理由で申請できます。ここでは、減額申請ができる条件、申請期限、そして申請しない場合のリスクについて解説します。
減額申請ができる条件
予定納税の減額申請は、今年の所得が前年よりも大幅に減少することが明らかな場合に利用できる制度です。
減額申請の理由として認められる主なケースは以下の通りです。
| 減額理由 | 内容 |
| 業績の悪化 | 売上減少や利益圧縮により所得が減る見込み |
| 廃業 | 個人事業を完全に廃業した |
| 休業 | 一時的に事業を休止している |
| 災害による損失 | 自然災害などで事業資産に損失が発生 |
| 法人成り | 個人事業を法人化した |
逆に、単に「納付が厳しい」「資金繰りが苦しい」といった理由だけでは減額申請は認められません。あくまで、今年の所得税額が前年より少なくなる見込みがあることが条件です。
減額申請の期限
減額申請には厳密な期限があります。
- 第1期分(7月納付分):7月15日まで
- 第2期分(11月納付分):11月15日まで
※ただし、年によって納付期限が前後する場合があります。最新の期限は国税庁の情報をご確認ください。
この期限を過ぎると、その期の減額申請はできなくなってしまいます。6月に通知書が届いたら、すぐに今年の業績を確認し、減額申請が必要かどうかを判断することが大切です。
減額申請をしない場合のリスク
減額申請をしないまま放置すると、以下のリスクがあります。
1.予定納税の納付義務は消えない
減額申請をしなければ、通知書に記載された金額の納付義務が確定します。納付しない場合、延滞税(および場合によっては加算税)が課される可能性があります。
2.不要な前払いと確定申告の手間
たとえば法人成りした場合、本来は個人の確定申告が不要になるケースでも、予定納税を納付してしまうと、その還付を受けるためにわざわざ確定申告をしなければならなくなります。
6月〜7月のタイミングで適切に減額申請を行うことが最善の対策です。
CHECK
減額申請は所得減少が見込まれる場合に利用可能
申請期限は7月15日と11月15日
申請しないと延滞税や余計な手続きが発生
予定納税減額申請書の書き方【具体例で解説】
実際に減額申請書を記入する際のポイントを、具体例を交えて解説します。
減額申請書の入手方法
減額申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。正式名称は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」です。
記入の基本情報
まず、以下の基本情報を記入します。
- 提出先税務署名:住所または事業所の所轄税務署
- 提出日:申請書を提出する日付(7月15日までに提出する場合はその日付)
- 住所・氏名:フリガナを忘れずに記入
- 職業:確定申告書に記載した職業と同じもの
通知を受けた金額の記入
「通知を受けた金額」欄には、予定納税の通知書に記載されている金額をそのまま転記します。
| 例:前年の申告納税額が30万円の場合予定納税基準額:30万円(前年の申告納税額)第1期:10万円第2期:10万円 |
この部分は通知書の金額をそのまま写すだけなので、特に計算は不要です。
減額申請の理由を記入
「減額申請の理由」欄では、該当する理由を選択します。主な選択肢は以下の通りです。
- 廃業
- 休業
- 業績不振
- 災害
今回の例では「廃業」を選択します。たとえば、令和4年3月3日付けで法人成りした場合、その日付を記入します。
申告納税見積額の計算
ここが最も重要な部分です。今年の所得税の見積額を計算します。
1.所得金額の記入
事業所得の場合、「営業等」欄に所得金額(収入-経費)を記入します。
| 法人成りにより個人事業の利益がゼロになった場合:営業等:0円合計所得金額:0円 |
2.所得控除の記入
所得金額がゼロの場合、所得控除の記入は不要です。「所得から差し引かれる金額」もゼロとします。
3. 課税される所得金額と税額の計算
減額申請書の「申告納税見積額等の計算書(別紙)」に記入する税額を計算します(国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」)。
- 課税される所得金額:0円
- 総合課税分の税額:0円
- ㊴申告納税見積額:0円
この「㊴申告納税見積額」とは、今年の所得税額の見積りを指します。減額申請後の予定納税額の基準となります。
申請金額の記入
最後に、先ほど計算した「㊴申告納税見積額」の金額(この例では0円)を、減額申請書の上部「申請金額」欄に転記します。
これにより、第1期・第2期ともに予定納税額がゼロになるという申請が完成します。
添付書類
基本的には、減額申請書のみで申請可能です。ただし、申告納税見積額を具体的に算出した根拠資料の添付を求められる場合があります。
たとえば
- 収支内訳書(簡易版)
- 法人成りの場合は登記簿謄本
- 廃業届の控え
税務署によって対応が異なる場合があるため、不安な場合は事前に電話で確認することをおすすめします。
CHECK
減額申請書は国税庁HPからダウンロード可能
通知書の金額と今年の見積額を記入
廃業や法人成りの場合は見積額をゼロにできる
よくある質問(FAQ)
予定納税に関して、個人事業主やフリーランスからよく寄せられる質問をまとめました。通知書が来ない場合の対応、減額申請の重要性、払い忘れた場合のペナルティについて、実務的な観点から回答します。
Q1.予定納税の通知書が来ないのですが、何か手続きは必要ですか?
通知書が来ない場合、あなたは予定納税の対象外です。前年の申告納税額が15万円未満だったため、予定納税の義務はありません。特に手続きは不要で、翌年の確定申告だけを通常通り行えば問題ありません。
Q2.減額申請をしなかった場合、どうなりますか?
減額申請をしないと、通知書に記載された金額の納付義務が確定します。納付しない場合は延滞税が発生します。
また、法人成りなどで本来確定申告が不要な場合でも、予定納税を納めてしまうと還付を受けるために確定申告が必要になり、余計な手間が発生します。
Q3.予定納税を払い忘れた場合のペナルティはありますか?
予定納税の納付期限を過ぎると、延滞税が発生します。延滞税は納付期限の翌日から実際に納付するまでの日数に応じて計算されます。
ただし、減額申請を期限内に行っていれば、減額後の金額が納付すべき額となるため、その金額までの延滞税しか発生しません。
まとめ:予定納税は自分の状況を正しく把握することが大切
予定納税の通知書が来ない理由は、前年の申告納税額が15万円未満だったためです。通知書が届かないことは何も問題ではなく、予定納税の対象外であることを意味しています。
一方、通知書が届いた場合は、自分の今年の状況を確認し、適切な対応を取ることが大切です。前年と同じように事業を継続しているなら通知書どおりに納付し、業績が悪化している場合や法人成り・廃業をした場合は減額申請を検討しましょう。
特に減額申請は、7月15日という厳しい期限があるため、6月に通知書が届いたらすぐに判断することが求められます。
今日から実践できる3つのアクション
- 前年の第一表「㊿申告納税額」を確認する
- 6月に通知書が届いたら、すぐに今年の業績を見積もる
- 減額申請が必要な場合は7月15日までに手続きを完了させる
予定納税の仕組みを正しく理解し、自分の状況に合った対応をすることで、無駄な税金の前払いや延滞税を避けることができます。
出典・参照元
本記事は以下の情報源をもとに作成されています。
- 国税庁「予定納税」
- 国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」
※記事内容は2025年11月11日時点の税制・法令に基づいています。税制改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は国税庁または税理士にご確認ください。
